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憲昭からの発信

憲昭からの発信 − 論文・対談

座談会 消費税増税反対のたたかいをどう構築するか

 2007年11月14日、佐々木憲昭議員は、日本共産党中央委員会の理論政治誌『前衛』の座談会に出席し、国会論戦と消費税増税を巡る動きなどについて報告しました。  

 座談会のテーマは、「消費税増税の大キャンペーンのねらいとそのウソをつく──新たな情勢のもと、いまこそ増税中止の国民的共同の輪を」というものです。
 この座談会は、『前衛』2008年2月号に掲載されました。

座談会 消費税増税反対のたたかいをどう構築するか

  • 佐々木憲昭(日本共産党消費税・庶民増税阻止闘争本部事務局長、衆議院議員)
  • 梅村早江子(消費税をなくす全国の会事務局長)
  • 松本秀典(消費税廃止中央各界連運営委員、東京土建書記次長)
  • 小川裕之(消費税廃止神奈川県各界連事務局長、神奈川県商連常任理事)

『前衛』2008年2月号

 編集部 与党が過半数割れした参議院選挙の結果を受けて、さまざまな分野で国民の要求実現の運動が高まっています。こうした国民要求を逆手にとるように政府・与党、財界などからいっせいに「社会保障給付の伸びをまかなうには消費税増税しかない」などと増税キャンペーンが強まっています。本日は、各界でご活躍のみなさんにお集まりいただき、消費税増税をめぐる情勢の特徴、「増税やむなし論」のウソ、国民との根本的な矛盾などを浮き彫りにする討論をお願いしたいと思います。増税中止を求める国民的な共同をつくりあげていくたたかいの展望がつかめる内容にしていただければと考えています。

増税をめぐる情勢 増税攻撃と反対世論はつばぜりあい

 増税のねらい見抜いた国民による厳しい審判

 佐々木 まず、消費税をめぐる全体の情勢をどう見るかです。昨年夏の参議院選挙のあとの政治状況は、それ以前とは様相が大きく変わりました。それは消費税増税をめぐる問題でも同様です。これまで繰り返されてきた増税・負担増に対する積もり積もった国民の怒り、それにもとづく選挙での厳しい審判が大きな影響をあたえました。
 参議院選挙の時は、どうだったか。振り返ってみると、自民党はマニフェストの中で「秋以降、早期に本格的かつ具体的な議論を行い、2007年度をメドに消費税をふくむ税体系の抜本的改革を実現する」と明記していました。ただ、明記はしたけれども、選挙戦では大争点になるのを避けるという戦術をとりました。一方、民主党は参院選では消費税率5%維持というスタンスをとり、以前のように消費税増税ということは言わない、そういう態度をとりました。
 選挙の当初、安倍首相は、マスコミに「参議院選挙の争点にしないのか」と問われて「次の総選挙の争点になる」と答えていました。参院選の争点から隠そうとしていたわけです。しかし途中で、ある民放テレビで安倍首相は「私は消費税を上げないとはひと言も言っていない」と言いました。その途端、急に火がついて、消費税増税問題が選挙の大きな争点に浮かび上がりました。国民の怒りも集中しました。当時の世論調査では「消費税増税反対」が高い比率を占めました。
 結局、その怒りの中で、自民党と公明党の消費税増税派がきびしい審判をうけ敗北をするという結果をむかえたわけです。安倍内閣と与党は逃げを打ったが、結果的には、そのねらいを見抜いた国民によって、これ以上の増税・負担増にノーという審判をつきつけられた。与党の敗北はその結果でもあったと思います。私も、国会でとりあげましたが、8月5日付の「朝日新聞」に載った高齢者からの投書が印象的でした。それはこう書いています。「自民の歴史的大敗に終わった参院選を私は、『じじ・ばばの反乱』と受け止めている。年寄りをばかにしてきた政権与党への仕返しだ」。
 選挙直後の8月4日付「朝日新聞」で、日本経団連政治対策委員長の大橋光夫・昭和電工会長が「消費税の引き上げは必要だが、秋に予定される税制改革の議論は遅れてしまうというのは免れない」と言いました。これは、選挙の結果、消費税増税をごり押しできなくなったという認識を示したものです。財界が、当面の「展望」をみいだすことができなくなったという意味で、国民の審判は大ショックだったわけです。

 10月以降の財界・政府与党による増税への巻き返し

 佐々木 ところが重大なのは、昨年10月以降、財界や政府与党の側からさまざまな巻き返しが始まったことです。たとえば、舛添厚生労働大臣は、社会保障の「抑制路線はそろそろ限界だ」と言いながら、そのために「消費税増税を考えねば」と強調しています。政府は、社会保障をさらに削り込みながら、消費税大増税に踏み込む姿勢を変えていません。たとえば、自民党税調の与謝野馨小委員長(前官房長官)は、10月16日に、こんなことを言いました。「(民主党との)協議が始まる前提は自民党が正論を言うかどうかだ。1%ずつ上げて選挙で負けるんだったら、ドーンと上げなくてはいけない」と、2〜3%程度の引き上げを念頭に置く考えを示したと報道されています。
 10月17日に聞かれた経済財政諮問会議(議長は福田首相)では、消費税増税を「社会保障と税の一体改革」ということで御手洗冨士夫氏(日本経団連会長)ら民間議員が提起しています。そのベースになっているのが、内閣府の試算です。2011年に国・地方の基礎的財政収支バランスを確保するため6.6兆円の増税、2025年では最大30兆円超の増税が必要だとしています。それを、消費税と所得税の増税でまかなうという内容になっています。11月19日の「財政制度等審議会」の「建議書」によると、ヨーロッパ並みの財政再建を実現するためには、現時点で29兆円の財政改善が必要だとしています。
 11月20日の「政府税制調査会」の「答申」では、「消費税は、税制における社会保障財源の中核を担うにふさわしい」と明記し、「消費税率を引き上げていくことによって賄うとの姿勢を明らかにする」と、税調答申としては3年ぶりに消費税率引き上げの必要性を明記しました。さらに11月21日、「自民党財政改革研究会」の「報告書」が出されました。それには、2010年代半ばに消費税率を10%程度引き上げることを提案しています。
 12月13日の「与党税制改正大綱」では、消費税を年金など社会保障の「費用を賄う主要な財源」と位置づけ、この財源を「充実することを検討する」と明記しました。また12月18日には、政府が今後の社会保障政策と負担の在り方を検討する国民合議を設置し、今年1月に初会合を開く方針を決め、民主党などに参加を呼びかけています。
 これら一連の動きを見ていると、政府・与党が一体となって、増税への必死の巻き返しが急速に強められたことがわかります。しかし、必ずしもその巻き返しが成功するとは限りません。これらの「答申」や「大綱」では、消費税を上げる時期や幅については、ふれることができませんでした。国民の怒りの強さと参議院での与野党の力関係の逆転という新しい状況かあるからです。私たちは、増税派の巻き返しを許さないために、いっそうたたかいを強めなければならないと思います。
 増税勢力は、今年がだめなら来年にはと、虎視耽々とねらっているわけですから、いまのたたかいが、今後の国民の暮らしと日本経済を左右する重要なカギになると思います。そういう点で、これまでのたたかいに大いに確信をもって国民の期待に応えてがんばっていく必要があります。

 消費税問題を参院選の争点に押し上げた反対世論

 梅村 そうですね。私も、参院選の大敗北によって、当初の計画通りに消費税増税をすすめることができなくなった政府・財界が、権力を駆使して、巻き返しを図ってきていると思います。とくに昨年12月9日に「朝日新聞」が「消費増税なしに安心は買えぬ」とした大型社説を掲げたことは、これまでの延長線上ではない、増税派の力が大きく動いていることを強く感じさせました。しかし、このたたかいに絶対に負けるわけにはいきません。
 昨年の暮れは、原油高のもとで、年の瀬の暮らしの不安が広がりましたね。物価か上がれば消費税の負担も自動的に増えます。先日の署名行動でも、「夫が亡くなった。お金かかかると、病院に行かなかったら手遅れに」「パートを掛け待ちにしてやっとの生活。保障が何もない私たちに、なぜ消費税の増税なのか」の切実な声が寄せられました。「税金に殺される」「電車にいつ飛び込もうかと思っている」とのせっぱつまった声には、話し込んでしまいました。一生懸命働いているのに、年収200万円以下の労働者が1000万人を超えるという働き世代。雪だるま式の負担増で、つめに火を灯すように暮らしている年金世代。
 政府はこうした人々の暮らし、命をどう考えているのか、税金は国民の暮らしをよくするためにあるはずじゃないのか、署名に出れば出るほど、怒りを感じずにいられません。格差と貧困をいっそう拡大する消費税の増税を絶対に許してはならないと、決意を新たにしています。
 福田首相は「08年は消費税は上げない」と言いましたが、これは「総選挙が終われば実施する」という国民への増税宣言だと思います。次期総選挙か決定的に大事ですね。政府・財界は、09年の基礎年金の国庫負担2分の1ヘの引き上げを、消費税増税の絶好のチャンスだ、もうこの時しかないと必死です。しかし、私は、恐れるに足りない、国民が力をあわせれば今度の計画も断念させることができると確信します。
 私たちが昨年10月に開いた全国総会で、会の世話人でもある大門実記史参議院議員が、「政府・財界は、97年に5%アップした直後から、すくにでもさらなる税率アップをしたかった。それを食い止めてきたのは、『なくす会』、各界連をはじめ、国民の世論と運動と、日本共産党がいっしょにたたかってきたからです」と発言され、多くの参加者が「そうだ」と深く確信しました。
 よく、日本の国民運動は力が小さいと言われる方かいますが、そんなことはないと思うんですね。とくに「消費税ノー」「増税ノー」をめぐる日本の国民パワーは、時の内閣を倒したり、選挙に大きな影響を与えるなど、ものすごい力を持っています。国民は、消費税導入後のこの19年間、毎日の暮らしを通して、税の使い方・とり方に対する厳しい目を養い、主権者としての意識を大きく高めてきたのではないでしょうか。とくに、昨年の参院選後の変化は非常に顕著ですね。
 消費税をなくす会は、「消費税法が強行導入された1988年の12月24日の怒りを忘れない」と、毎月、「24日宣伝」を、消費税廃止各界連絡会と力を合わせて取り組んできました。私たち事務局も、近くのJR巣鴨駅前(束京・豊島区)で、18年間、毎月どんなことかあっても欠かさす、「24日宣伝」を行ってきました。ですから、この宣伝に出ると、国民の意識動向の変化が実によくわかるのですね。以前は署名をよびかけても、“どうせ上がっちゃうでしょう。ムダよ”という声か少なくなかったのですが、参院選後、“やってもムダ”という声は、まったくと言っていいほど聞かなくなりました。参議院選挙で、自民、公明を大敗北に追い込んだことは、「あきらめずに声をあげれば、政治を変えることができる」という確信を、国民の胸にしっかりと植えつけたのだと思います。そしてさらに、年末あたりから、「消費税10%ってテレビでやっていた。こういう署名がどっかでやってないかって探していた」と言う方か増えています。

 働き盛り世代の多数が増税反対

 梅村 こうした国民世論の変化と声は、世論調査でもハッキリ示されています。11月4日付の朝日新聞の調査では、「社会保障の財源を確保するための消費税増税」に「納得できない」が54%になっています。この数年間、同じような設問に対する世論調査の結果は、賛否がだいたい桔抗していたんですね。それが昨年の参議院選挙あたりから、「納得できない」が10ポイントぐらい多くなってきています。それは国民の暮らしが切実になり、どんな理由があっても、増税なんかされたら困るということが、国民のぬきさしならぬ気持ちだからだと思います。とくに、「納得できない」の割合は、30代、20代、40代の働き世代で高くなっています。私白身、今、4歳と1歳の子どもの子育て真っ最中で、ときどき保育園のお母さんたちと食事会をするのですが、以前は経済的な問題や政治の話はあまり話題にはなりませんでした。しかし、最近では、子どもの病気の話から始まって、子どもの医療費の無料化、雇用、増税の話など、話にならないときはありません。
 さらに消費税は「福祉や高齢化社会のため」と導入されたのに、福祉はよくなるどころか悪くなるばかりだとの疑念が世論調査に表われていると思います。国民は、自らの生活実感と体験から、政府・財界の、「社会保障のためなら消費税増税が必要」という国民だましに、そう簡単には屈しない力を、育んできています。それを、国民的な運動にできるかどうか、私たちの仕事はとても大きいですね。
 消費税増税が本当は、誰のためで、何のためなのかが、非常にわかりやすくなってきており、大きく訴えていく時期だと感じています。
 先ほど佐々木議員から、選挙後には、いったんは消費税増税はすぐにはできないという様相があったのが、秋からがぜん消費税増税の発言があいついでいるとありました。
 私は、その決定的な契機となったのは、9月20日に御手洗経団連会長が「基礎年金は全額消費税で」と発言したことではないかと思います。参議院が与野党逆転した国会を見て、財界が丸裸になってのりださざるを得なくなった。この翌日、自民党総裁選に立候補中だった福田首相は、年金を税方式でいくことを検討する考えを示し、消費税は5%引き上げになるだろうと発言しました。
 民主党の鳩山幹事長け、自分たちの考えに見識をしめしていただけるのは非常にありかたいと、歓迎の意向を表明しました。昨年11月の突然の自民と民主の密室での連立協議も、消費税増税問題があったことは周知のことです。
 「金儲けこそ活力の源泉」と言ってはばからない財界は、大企業の「国際競争力」を強め、いっそうの利益を確保したいと考え、その資金調達のために、大企業の税や社会保障負担を軽減すること、それをみずからにはまったく痛みのない消費税で穴埋めすることを、企業献金をエサに、政府・政党に強く求めているのです。みずからの利益のためには庶民の暮らしをいくら踏みつけにしてもいいという、なんと横暴な考えでしょうか。
 「社会保障の財源に消費税増税が必要」とのごまかしを跳ね返していくためには、財源問題と同時に、消費税増税の本当の目的は、財界・大企業のための減税の穴埋めにしようということ、大企業の社会的責任の放棄であることを、ひろく知らせていきたいと思います。そして、憲法を生かして、国民みんなが人間らしく暮らしていくためにも、応能負担の原則や生活費に税金をかけないという、税とはそもそもどうあるべきかを改めて国民的に問うていく運動が求められていると感じています。

 非正規雇用を拡大し、賃金破壊すすめる消費税

 松本 梅村さんが紹介された「朝日新聞」の世論調査では「消費税の引き上げが必要だ」と答えた人が43%で、「必要はない」が49%です。その一方で、「社会保障の財源確保のための引き上げが必要だ」に「納得できる」は36%しかなく、「納得できない」が54%にのぼっています。
 一時期、消費税の引き上げはやむなしという意見がけっこう強かったように思います。私ども東京土建の組合員は、人が良い人がけっこう多いものですから(笑い)、国のためだとか、社会保障のためだと言われると、しょうがないなと考える人もいます。私たちは消費税導入当初から、社会保障のためといいながら、社会保障は切り縮められるし、無駄な公共事業の拡大や法人税の減税、軍事費を増やすことに使われていくんだと、税のあり方、使い道を一生懸命、組合員に説明し訴えてきました。この間のさまざまな社会保障改悪の動きから、実際に消費税が社会保障に使われていないし、高齢化社会のためにも使われていない、これは実感としてもわかってきているのではないかと思います。
 安倍首相が参院選の途中で「消費税を上げないとは一言も言っていない」と報道された直後、インターネットの主なブログに書き込まれたキーワードで「消費税」の使用回数が、それ以前の3倍以上に跳ね上がったのです。国民の関心が一気に高まったと感じます。消えた年金問題などもありますが、増税に対する国民の怒りが今回の自民党の敗北という結果につながったのではないかと思います。
 安倍さんは当初、次の選挙で増税の審判を受けるんだという趣旨の発言をしましたが、その中身をよく見ますと、次の総選挙の前に増税をしてから審判を受けるという意味です。選挙で増税を訴えるのではなくて、増税したあとに選挙で審判を受けるというねらいでした。いったん増税されますと、なかなか元にもどすことは困難になりますが、そういった点でも今回の参院選の結果は非常によかった。
 いま私たちの建設業界は非正規雇用でもっているような実態があります。小泉政権の下、新自由主義の「構造改革」で労働法制の規制緩和によって、非正規雇用やフリーターが増大しています。そうした中で消費税がそれを加速しています。消費税は賃金税とも言われるように、賃金と利益にかかる税金です。施工会社が消費税コストを切り下げようとすると、直接雇用で工事をおこなうのをやめて外注にすると、消費税が安くなります。消費税が導入されてから、正社員から外注へ身分換えする流れが加速されているのです。消費税によっても日本型雇用形態が破壊されていく。本当の悪税だと思います。建設業界は今、建設投資がどんどん縮小していて、08年見通しではピーク時の60%ぐらいに落ち込む見込みです。賃金も、ピーク時は90年代半ばですが、そこから一貫して落ち続けて、昨年はちょっと待ち直したが、20年前の低い水準にまで落ち込んでいます。その大きな原因のひとつが、消費税による賃金破壊なのです。
 05年以来、憲法が改悪されかねないと憲法学習をすすめる中で、憲法が求める税金ということを学習しました。憲法の求める税金は、直接税による累進課税が実質的に一番平等な税金です。最低生活費には課税するなというのも憲法上の原則です。消費税が私たちの雇用を破壊し、商売も破壊してきたというのが、私たちの生活の実態だと思います。消費税増税に対する反撃がこの間ずっとすすんできて、今回の選挙結果にあらわれたのだと思います。

 住民税や医療に加えて消費税増税なんてとんでもない

 小川 消費税増税反対をめぐる世論が大きく変わっていることを私も実感しています。この間のとりくみの中で感じていることをいくつか紹介しますと、一つは、消費税廃止中央各界連が昨年11月に行なった各党国会議員への要請行動での経験です。今までですと要請に行っても「はい、わかりました」で終わるという状況でしたが、今回、神奈川選出の自民、公明、民主の国会議員のところをまわったとき、議員に直接会えなかったのですが、秘書の対応がまったく違っていました。こちらの話をきちんと聞くとともに、「○○先生はどう考えているのですか」という質問に対して、「私どもも増税ありきではありません。ムダな税金の使い方がいろいろあるでしょう。そこをただしていくことが今、先決ではないでしょうか」などという答え方でした。非常に気をつかっているという感じがしました。こうしたことは選挙の結果が、そういうふうに変えてきているのだと思います。
 二つめは、宣伝行動の中で感じた変化です。私たち神奈川里各界運では毎月24日前後に横浜の伊勢佐木町という大きな商店街で、15人から多いときは40人ぐらいの方が参加して宣伝行動をおこなっています。このなかで本当に変わったなと感じているのは、とにかく対話になることです。先日、ひとりの高齢者で年金暮らしの方がいきなり寄ってきて、最初に一言「何とかしてほしい」と言うのです。なんだろうと思っていると、「税金がこれ以上あがったらたまらない。それでなくても、この6月に住民税か値上げになって、もう税金を払うのもたいへんだ。それに消費税なんてとんでもない」とのことでした。その時、私たちはハンドマイクで08年4月から後期高齢者医療制度が導入され、負担増などたいへんなことになりますという訴えをしていたところだったので、「税金と医療保険と、本当にどうしてくれるんだ」と怒っていました。
 また、同じく商店街で宣伝行動をやっていた時、行くたびにいつも「うるさい」とか「じゃまだ」とか言っていたある店のシャッターが、閉まっていたんです。たまたまそこに社長さんがいたので、どうしたんですかと声をかけたら、「もう商売はやっていけない。本当にあなたたちが言っていたことを、今、私はこの店を閉めてみて初めてわかった。税金で商売がつぶされた。何のための税金なんだ。…」と言っていました。つまり税金の取り方、使われ方に関心が寄せられているんじゃないでしょうか。
 昨年10月2日の政府税制調査会企画会合終了後の記者会見で、政府税制調査会の法人課税の主査をつとめる井福利宏委員(東大教授)は、“私個人としては、消費税を上げる形での企業減税、企業活性化のための減税というのは選択肢からはずすべきではなく…”と述べて、法人税減税の財源として消費税増税も有力な選択肢だとしています。中小業者の方たちに、彼らの発言を知らせると、「本当にそうだ。おれたちはこれだけ苦労している。大企業はあれだけもうかっていて法人税を減税する。その減税分に消費税をあてるなんていうのはとんでもない」という声が、今すごく起きています。こうした事実も多くの人は知らないので、こういうことをどんどん知らせていくことが本当に大事だと感じています。知れば知るほどよりいっそう怒りが広がるし、運動が広がっていきます。先はどの世論調査の結果にもこうしたことがつながっていると思います。

 誰のための消費税増税か 財界の手前勝手な議論

 佐々木 関連して言いますと、今回の消費税増税の大キャンペーンの背後に、財界の意図が働いていることを見抜くことが重要です。たとえば、2007年1月1日に出された日本経団連のいわゆる「御手洗ビジョン」(「希望の国、日本」)では、消費税を2011年度までに2%引き上げ、2015年までにさらに3%上げると書き込みました。財界として、こういう数字をはっきりと出したことは重大です。他方で日本経団連は、法人税実効税率を40%から30%に引き下げることも打ち出しています。御手洗会長は、マスコミに法人税引き下げの財源を問われて「消費税がある」と答えています。ほんとうに露骨な財界・大企業の手前勝手な議論だと思います。
 この点について、私は10月10日の衆院予算委員会で福田総理を追及しました。バブル期の1990年度に、資本金10億円以上の大企業は、経常利益が18.8兆円、その時に企業が払った税金は13.9兆円でした。それが2005年度になりますと、経常利益は32.8兆円と約2倍近く増えています。ところが、税負担の方は13.7兆円と、わずかですが逆に税負担は減っています。つまり利益が倍になっても、税負担は減るほど大規模な大企業減税が行われたわけです。日本経団連は、それをさらに下げろと主張しているのです。欧米と比べても日本の法人税は決して高くはありません。にもかかわらず、さらに下げろという理不尽な主張をする。庶民への増税でそのつけを払わされているのです。ほんとうに腹が立ちますね。
 このことについては、同じ経済団体でも日本商工会議所の方は少しニュアンスが違っています。11月2日付「朝日新聞」の岡村日商次期会頭へのインタビューで、「消費税率のアップによる経済のマイナス効果についての議論がない。中小企業は税率の上昇分を価格転嫁しにくい。消費が本格的に回復せず、中小企業に閉塞感があるタイミングで、財源として消費税を論じるのは問題だ」と述べています。

 法人税など10年前に戻すだけで5兆円の財源が

 佐々木 政府のいろいろな試算が出る時には、消費税の試算しか出してこないのが問題です。私は財務省に、法人税増税の試算を出せと言ったのです。そうしたら「計算がむずかしいから出せません」と。そんなバカなことがあるかと厳しく批判したことがあります。
 私たちが言っているのは、たとえば大企業の法人税を10年前にもどすだけで4兆円、つまり減税しすぎている部分を元にもどすだけです。何もむずかしいことを言っているわけではありません。減税しすぎたのだから、元にもどしてあたり前に払いなさいと言っているだけです。もう一つは、証券優遇税制で、株の取り引きでポロ儲けしているホリエモンのような人たちが、莫大な減税を受けています。それが年間1兆円の規模なのです。政府はそういう減税はやめますと言いながら続けてきたわけです。これらを元にもどすだけで、あわせて5兆円の財源ができます。何も税制をむずかしく変えることではなくて、簡単なことで財源が出てくるのです。
 日本共産党は、国民の立場に立って浪費を一掃し、大企業と大資産家にたいするゆきすぎた減税をただすこと、年間5兆円にのぼる軍事費に縮減のメスを入れること、とくにアメリカの戦争支援のための支出を中止することを提案しています。また、著しく高い実際価格となっている兵器価格に抜本的メスを入れる。この道こそ消費税にたよらないで安心できる社会保障を築く道であり、同時に国の財政の健全化、国民経済の健全な発展を保障する道なのです。
 税金といえば、「消費税を上げるしかない」という議論があたりまえのように言われていますが、別な道があるということを、こちらから攻勢的に主張していく必要があるのではないかと思います。

 民主党の財源論の弱点、「大連立」について

 佐々木 民主党は、基礎年金を全額税方式でということを言っていますが、では、その税をどこからもってくるのでしょうか。民主党は、消費税を当面は上げないといいますが、大企業減税と軍事費という「二つの聖域」にメスを入れる立場はありません。参院選の「マニフェスト」では、15.3兆円の「財源」を暮らしのために捻出できると宣伝しましたが、それは「地方への補助金削減や所得税増税」などのように、強引に実施すれば国民に被害を与えるものがあったり、「浪費の削減」についても重複や水増しがあるようです。
 当初、民主党は消費税増税を念頭において、基礎年金を全額税方式でと提案していました。民主党は財源論では大きな弱点をもっていたため、財界は「基礎年金の財源は消費税でいい」「消費税を上げて全額税方式なら賛成だ」と言い出した。それに自民党も同調して、その方向で検討したらどうかと言いはじめているのです。民主党は「当面、消費税を上げない」と言っていますが、それをどこまで貫くことができるか、たいへん危うい感じがします。
 経済財政諮問会議で使われた内閣府の数字を見ると、現行の「基礎年金の給付額」をすべて税でまかなう場合は、必要な財源は消費税率にして5%、約12.4兆円になるという試算があって、さらにこれまで保険料を払っていない人もふくめて65歳以上の全高齢者に基礎年金を払う場合は、これに加えて2%分の追加財源が必要になるとしています。ですから5%から7%の消費税の引き上げが必要ということになっていく。これは重大な大増税です。
 国会で大門実紀史参議院議員がその点について質問をしました。基礎年金の全額税方式で消費税に移行した場合は、厚生年金の企業の保険料負担がこれまで約4兆円あったのに、ゼロになります。大企業は、この年金部分の企業負担も軽減されることになります。財界にとっては、法人税減税に加えて、二重、三重に自分たちの利益につながっていくのです。
 民主党税制調査会(藤井裕久会長)が発表した2008年度税制改正大綱では、法人税率の引き下げを明記したり、消費税を将来引き上げる方向を容認するなど、さまざまな問題が含まれています。
 民主党がゆさぶられると、先はどの「大連立」という話にもつながっていくわけです。福田・小沢密室協議で何か話し合われたかは表に出ていないのですが、その後の報道で、自衛隊海外派兵恒久化法ではほぼ一致した、消費税増税でも話しあいが行われたと言われている。そうすると、民主党自身のもっている消費税依存という政策の組み立て方が、今度は自民党との連立に発展して、消費税増税大連立内閣みたいなことになっていく。こうなると、たいへん恐ろしい政治状況が生まれるのではないか。したがって、民主党の弱点に対しても、厳しく批判していく必要があるのではないかと思います。
 大連立の話は、いま民主党のなかでは「封印」されていて、あまりふれないような形になっています。しかし、いつ再燃してくるかわからないという下地があります。われわれは大いに警戒して、民主党はマニフェストで消費税増税はやらないと言っていたのだから、増税ということになれば、国民に対する重大な裏切りになると、国会のなかでも大いに主張し、タガをはめていくために努力したいと思います。

 軍事費の聖域にメスを入れる

 梅村 軍事費の問題は、今、国民の大きな関心事であり、「聖域」にメスをという訴えが、とてもわかりやすくなっていますね。「世界一高い戦闘機 接待費込み」という川柳がある新聞にのり、昨年末にはサラリーマンたちが忘年会で会計の時に「山田洋行に付けておいてくれ」というのが一つの流行になったそうですね。防衛省の軍事利権をめぐる汚職は「国民の税金をなんだと思っているのか」と、強い批判の声となっています。
 消費税をなくす会は、「消費税 憲法変えれば 戦争税」というのを一つの合言葉に運動をすすめてきました。
 消費税は、フランスやドイツで、戦費調達のための税金として誕生しました。日本でも、消費税が導入されるとき、自民党幹部が「これでアメリカの要請に応えられる」と述べました。
 私たちは、結成の時、「消費税がただ所得に逆進する不公平税制というだけでなく、日本の支配階級が、軍拡政治の財源として熱望している重大な政策であると自覚する。そして、軍縮も要求し、消費税のからくりも批判し、廃止のための党派をこえた共闘にも努める。そうした人々の自覚的な参加によって、消費税廃止をめざす大衆的政治同盟をつくる」ことをめざしました。私は、いま改めて、この会の結成の目的がたいへん重要だったと思っています。
 東京の会から始まった「税金のムダ遣いウオッチングツアー」は、昨年はオリンピック予定地などをまわりましたが、今年は横田基地を見学する予定です。また、沖縄のウオッチングツアーは、嘉手納基地などを見学し、米兵一人当たり年1300万円もの予算をだしていることに、「日本人が電気代やガス代が払えず餓死する事件も起きているのに、なんで米兵の水光熱費まで、俺たちの税金でまかなわなきゃいけないのか」との声が続出しました。
 また、私たちは、「憲法九条と消費税」と題した学習会を各地で開いています。全国の会では、2年半前、東大名誉教授の原朗先生を講師に学習会をひらきました。
 先生は、戦前、10年に一度または5年に一度くらいにおこなわれた戦争の中で、たとえば日清戦争では、1ヵ月あたりの戦費が1年間の一般会計歳出の3.74倍使ったとか、太平洋戦争では9.61倍も使われた数字を紹介しながら、このもとで、「欲しがりません、勝つまでは」と国民の暮らしが犠牲にされたことを話されました。そして「戦後、9条で戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権を否認した。その結果、戦前の財政支出の大部分を占めた軍事費の重圧がなくなり、福祉や教育など他の支出にまわすことができるようになった。その後の経済の高度成長も、根本のところで憲法9条によって支えられていたのではないか」と話されました。
 平和で豊かな生活は9条あってのことですね。消費税増税反対と憲法9条を守る運動を根っこのところでつなげて運動していきたいと思います。

 軍事費のムダと軍事利権の闇の解明は中心課題

 佐々木 軍事利権にまみれた勢力が軍拡をすすめていることも大問題です。逮捕された守屋前防衛事務次官は、米国言いなりに「米軍再編」を取り仕切ってきた中心人物で、3兆円にのぽる「米軍再編」予算までが利権の対象、政・軍・財の食い物にされていたという疑惑が広がっています。疑惑は歴代防衛大臣、政治家にまでおよびつつあります。
 「日米同盟」だとか「国益」だと言って「米軍再編」を押し付けながら、みずからの手は利権にまみれていたわけですから、ほんとうに許せません。国民には大増税・負担増を押し付けながら、軍事費に年間5兆円もの税金をつぎ込む。しかもそれが、「水増し」「口利き」「天下り」などで、日米の軍需企業、政治家、官僚の食い物にされてきたのです。

 米軍再編の費用負担や「思いやり予算」はひどい

 小川 神奈川県は沖縄についで第二の基地県です。今、横須賀への原子力空母の配備、座間への米陸軍新司令部の移転、厚木基地の爆音問題など、米軍基地強化が神奈川県民にとって大きな苦しみになっています。いま保守の市長なども含めて大きな反対運動が起こっています。
 座間の星野市長は、「戦車に轢かれても米軍の再編強化に反対する」と述べていますし、昨年12月2日に開催された座間集会には1万3000人の方々が参加し、その前日に聞かれた岩国集会(山口県)の1万1000人に続いて、大きく集会が成功しました。
 米軍再編にともなう日本側負担も莫大ですし、米軍への「思いやり予算」もたいへんな額です。税の使い道にとっても軍事費のムダの追及は大事だと思います。「思いやり予算」でつくられた逗子・池子の米軍宿舎は、日本の一般庶民の住宅よりもはるかに大きなもので、寝室が1人1部屋あったり、風呂場も1軒に2つも3つもあるとか、基地内の学校にプラネタリウムがあるとか、それを「思いやり予算」でつくってやっている。ふざけるなと言いたくなるくらいですね。

さまざまな消費税の矛盾が噴出 税を通して日本経済のあり方が問われる

 消費税の特例措置の改悪−−中小業者には「損税」

 小川 業者にとっては、消費税が導入されてさらに住民税が昨年上がったこともあり、税金が払えないという状況がかなり出てきています。たとえば建設業者の方なんですが、元請けから「消費税分をカットしてくれ」と言われ、「いや、とんでもない」という話をすると、「いいんだよ、下請けさんはあんただけではないんだから」と、泣く泣く消費税分かカットされるという状況が生まれています。消費税はもらえなくても払わなければいけない。したがって消費税の転嫁分か払えないということで滞納になっていく。滞納になると差し押さえの強化で、売掛金が差し押さえされたりで、商売が行き詰まったという方も、この間ずいぶん出てきています。税金で商売がつぶされる実態も出てきていることで、業者は怒りをもっている。このことを強く感じています。

 佐々木 さきほど引用した岡村日商次期会頭のインタビューでも「中小企業は税率の上昇分を価格転嫁しにくい」と述べていました。税金で商売がつぶされる事態となっています。熱海のある中小業者が、税金を払えなくて売掛金を差し押さえられたために自殺をするという痛ましい例も国会で取り上げたことがあります。大企業だけがポロもうけして、そのしわ寄せを庶民と中小企業に全部おわせていくやり方をしている。本当に怒りを覚えます。

 松本 私たちの組合は建設産業の職人と親方で組織されていますが、組合員の生活と営業は、配偶者特別控除の原則廃止や公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止などの大増税で大きな影響を受けました。
 とりわけ大きな影響を受けたのが、いまお話のあった小規模事業者の消費税特例措置の改悪です。免税点を1000万円に下げ、簡易課税の適用上限も5000万円に下げたために、消費税の納付額が2倍、3倍になった組合員が多いのです。これ以上、商売を続けられないという悲鳴に近い声があがっています。しかも、建設業界では元請けの力が圧倒的に強く、元請けから指値発注で、この全額でやってくれと言われると、やらざるを得ない場合が多いのです。また、個人のお客さんとの関係でも弱いのです。お客さんから、消費税の分ぐらい少しまけてよと言われれば、少しまけざるを得ない。よく消費税は「益税」と言われますが、私たちの組合では「損税」だと話し合っています。大手企業にとっては消費税の転嫁は容易ですが、中小零細業者にとっては消費税を転嫁できず、「担税」なのです。

 佐々木 経産省の調査でも、転嫁できないのは半分ぐらいあるという数字が出ています。転嫁できないばあいは、身銭を切って自分が負担するわけです。そうなると「間接税」ではなくて「直接税」の性格を帯びてきます。
 それは業者を直撃しており、やっていけないと店をたたむ方々がたいへん多いのです。国会の質問で、「税金をあずかっていないばあい、どこから全をもってくるのか」と財務大臣に聞きました。財務大臣は、「それは預かることが前提ですから」と答えにならない答弁をするのです。預かっていないのですから「身銭を切る」しかないではありませんか。

 地方交付金べらしによる消費税増税への誘導

 小川 最近、地域で暮らしや福祉の問題と自治体の施策についての話の中で出されるのが、地方消費税増税の問題です。全国の知事会や市長会の中でも、国から自治体への税源移譲の関連で地方消費税を増やしてほしいという論議がなされています。これは「三位一体」改革や地方分権の名による地方財政改革で大幅に地方交付金が減らされて、国からの財源があてにできなくなり、各自治体では自主財源の確保として議論されているものです。税金の使い方が問われる問題です。
 先日、地域での宣伝の中で、そのことにふれましたら、聞いていた人の中に「しょうがないんじゃないの、1%ぐらい」と言っていた方がいました。まさに「税金をだれのために、どのように使うか」が問われてきていると思います。

 梅村 私たちの昨年10月の総会でも、富山など各地から、地方自治体で増税反対の意見書採択の要請をすると、「今、地方財政が大変だから、地方消費税の増税を検討すべき時では」という答えが返ってくるとの発言が相次ぎました。
 総会では、小泉内閣の「三位一体」の地方財政改革によって地方交付税などが減らされ、そのしわ寄せが子どもや高齢者にきていると生々しく紹介されました。奈良県では、県予算で地方交付税が4、5年前と比べて、年1000億円ぐらい減らされ、紙オムツの支給や福祉電話代が削減されていると発言がありました。また、香川県でも、地方行政改革の第1次削減計画の中で、妊婦の無料検診が2回しかなかったものがバッサリ削られ、第2次計画では乳幼児医療無料化をはじめ、障害者や母子家庭に対する措置をバッサリ削る計画であり、これに対するたたかいがひろがっていることが紹介されました。
 国が、「小さな政府」と言って、地方の住民の福祉・教育を切り縮めておいて、こんどは、福祉や教育が悪くなっているから、地方消費税を上げろというのは二重、三重の国民だましです。

 松本 地方消費税は地方税にふさわしくない税金だと思います。消費税全体の中で地方消費税だけ独立してあるわけではないのです。なぜ独立させられないかというと、たとえば、輸出戻し税のしくみがあるからです。消費税は最終消費にかかるだけではなくて、取り引きの各段階の業者、事業所にかかります。消費税は「売り上げにかかった消費税」から「仕入れにかかった消費税」を差し引いた額を、事業者が税務署に納付するしくみです。「売り上げ分」より「仕入れ分」が多い場合は、差し引くとマイナスになり、税務署から事業者に還付されます。輸出品には課税ができませんので、その商品の製造・仕入れの際に支払った消費税相当分か還付されます。たとえば愛知県に本社のあるトヨタは2000億円規模の戻し税があります。それをその県だけでは無理になるので、地方消費税分をいったん全国にプールして配分するしくみにしています。地方消費税というのは、独立した地方の財源としてふさわしくないものです。大企業の輸出戻し税について一言くわえますと、先に話がありましたが、大企業は「コスト削減」といって下請けに消費税分の値引きを強要している場合が多いのです。そうすると実際には負担していない消費税を、中小下請け業者がコストをたたかれて血の汗を流しながら納めている消費税から「還付」してもらうことになってしまうのです。これも大きな問題です。

 国民分断、負担の押し付け合いの一方、大企業だけは…

 佐々木 自治体の財政がこんなにひどくなったのは、小泉改革に大きな原因があります。地方は自己責任でやりなさい、国は面倒をみませんと、簡単に言うとそういう理念にたって無慈悲な政策を実行してきた結果です。
 その手法は、社会保障をどんどん削っておいて、たいへんだから、なんとかしてくれと悲鳴をあげさせ、それなら消費税を増税するぞという発想と共通するものです。国民にとっては悪魔の選択です。相手を痛めつけておいて、さらに増税を押しつけるなどというのは、絶対に許されないやり方です。
 いちばん肝心なことは、大企業が税金を払っていない、大金待ちが税金を減税されている、それをまともに払えば国民は何も苦しい思いをしないですむということです。彼らの作戦は、国民の間に対立をつくり出して国民を分断すること、国民の間で負担の押しつけ合いをさせることです。国民にすべてのしわ寄せをして、大企業と大金持ちだけはぬくぬくとしていることです。そういう今の日本の社会の仕組みの根本にまでさかのぼった批判を、私たちの方から、普通の会話の中で誰にでもわかるように話していくことが、たいへん大事ではないかと思います。
 昨年10月の予算委員会の質問では、そういう角度から迫りました。「一方で増税を国民に押しつけて、大企業だけ減税っておかしいと思いませんか」と福田総理に聞いたら、答弁に立だないのです。財務大臣が出てきて、「企業が国を選ぶ時代だ」と反論にならないことを言いました。それなら高齢者は国を選べるのか、庶民は国を選べるのか。選べない国民に過酷な税金の取り立てをやって、国を捨て世界中どこでももうけることができる巨大企業に減税するなんて、とても国民は受け入れられない。その怒りを、根本的な日本の社会のしくみ・原理から説明し、怒りを組織していくことが必要ではないかと感じています。

 松本 「企業が国を選ぶ」というけれども、海外に進出した企業へのアンケート調査では、「企業が進出先を選ぶ動機は何か」との設問に「賃金」と答えている企業が最も多いという報道がありましたね。

 佐々木 そうです。経済産業省の調査で一番多いのは「賃金が安いこと」、それから「市場がそばにあるところに工場をつくる」という理由です。

 松本 だから私はいつも言っているのです。「企業が国を選ぶとか、あるいは大金持ちが税金を上げると出ていくとか言っている企業経営者や大金持ちこそ愛国心を持て」と。日本の国のためならば、いくら税金を払っても惜しくないということこそ、愛国心ではないかと思います。

 佐々木 日本の大企業は、アジアを中心に世界でもうける仕組みをつくっているわけです。だからこそ国内で労働者をかかえることについては冷淡で、低賃金を押しつけ、下請単価をたたく、大企業製品の輸出のために農業はつぶれてもけっこうという冷たい発想になるのです。つまり「日本を捨てて世界でもうける」という発想になっている。その点では、巨大企業・多国籍企業に愛国心はないのです。そういう大企業の横暴を規制して、国民に奉仕するような企業に変えるという声を広げることが必要です。それが、大企業に対する民主的規制につながっていくのです。

 法人税減税要求の裏に財界から自民・民主へ企業献金

 梅村 だいたい今の日本の大企業は、多くが多国籍企業であり、御手洗経団連会長が会長をつとめるキヤノンも、半分以上の株は外国人が持っているそうですね。利益は日本国民に還元する気持ちはもうとうなく、投資をどこからでも誰からでも増やせばいいと、少なくない外国の投資家たちに流れているのではないですか。
 その点で一昨年、外国株50%以上の企業の政治献金の禁止を廃止したことは重大ですね。大企業が、自民や公明、民主に献金し、引き換えに、法人税減税などを求める流れに拍車をかけだのではないかと思います。私たちは、昨年2回、民主党に申し入れをし、党の税調担当の衆議院議員と懇談しました。ムダを削るとは言いますが、軍事費のムダと大企業や大資産家減税を元に戻すべきとは、言えませんでしたね。企業献金がそうさせているのではないでしょうか。逆立ち税制をただして、「公正」な社会を実現するためにも、企業献金の禁止は最重要の課題です。

 佐々木 2001年の小泉内閣が成立した時から2006年までの5年間で、大企業の経常利益が約2倍になっています。ところが、株主への配当金は4倍にも増えているのです。しかも、大量の株式を保有・売買している大資産家への証券優遇税制、つまり株の売買で得た譲渡益への減税、あるいは配当金に対する減税は、2007年度だけで約1兆円にのぼっています。いま、日本の巨大企業の株主のだいたい3分の1は外国の企業・投資家ですから、株主配当のかなりの部分が外国にまわる形になっています。これは、上限を設けて、さらに延長することになりました。
 また、この5年間で役員の給与・賞与が2倍になっているのに、従業員の給与はおさえられマイナス1.4兆円になっています。賃金をおさえて大企業の利益を伸ばし、経営者や大株主がふところを肥やしているのです。
 この大企業のもうけの一部が政治献金にまわっているのです。経団連は自民党と民主党の二つの政党に通信簿をつけて、点数がよければ献金を増やす、いわばニンジンを馬の鼻の先にぷら下げ尻をたたいています。自民党が一生懸命、日本経団連言いなりの政策を実行すると献金が増えていく。これもひどい仕組みだと思うのです。愛国心のない大企業が政治を買収して、国民に非常に冷たい仕打ちをする。根本にあるのが、まさに階級対立です。その怒りが参院選での1票として示されたのだと思います。

 梅村 お金の流れ方が逆ですよね。本来、税や社会保障は、富んでいる人、企業が負担して弱者にまわってくるべきものであるのに、今は弱者から強者にお金がまわって、ましてや外国の投資家にまでいっている。
 この逆立ちした税制を正すことは、逆立ちした政治を正すこと。税の不公平を正そうとすれば、財界やアメリカの方を向いた今の政治を、国民の方に向く政治に変えることは避けて通れないことが、わかりやすくなってきた、そうした情勢ではないかなと感じます。

 この間の体験で税金のとり方、使い道に関心が高まる

 小川 本当にそうですね。みなさん、6月からの住民税増税の問題もふくめて、税についての関心が高まってきています。調べてみてビックリしたのですが、総務省が行財政の改革(削減)プランを出せということで、神奈川県の各自治体が計画をつくって出しています。どういう内容か見ましたら、共通しているのが二つあった。一つは、社会福祉という市民生活と直結している部分についての削減です。県税事務所の業務を民間委託にするとか、川崎市では市立保育園をなくして民間化するとか、伊勢原市では市営住宅、保育料、国民健康保険税、介護保険料さらには下水選科等の見直しをうち出しています。
 もう一つは、滞納者に対する徴収の強化です。横浜市では、職員1人に対して年間の差し押さえ件数の目標を示して50件としています。目標を達成した上位3人については表彰するということまでやってきています。昨年おこなわれた決算委員会で、50件の月標に対して1人平均70件の差し押さえをやっているという結果が明らかにされました。納税者の権利を踏まえた形で、どこまで滞納者の具体的な事情に即した徴税がおこなわれているのか、監視していかなければなりませんが、こうしたことが今、全国各地でやられています。
 また問題なのは、小田原市や全国的にも広がりを見せている「行政サービス制限条例」です。この条例は、住民税をはじめ地方税を滞納している人には自治体のサービスを制限するという条例です。税金を「会費」として位置付けているという、とんでもないことがおこなわれていたり、水道まで休・停止させるという人権問題になるようなことがおきています。
 こうしたことから多くの人の中で、税金のとり方、使われ方の問題に、現実を通じて関心が高まってきていると感じています。そういった意味で、小泉首相が「大企業が競争力をつけて、もうかるようにしてやれば、日本の経済がよくなり、労働者や中小企業・業者の暮らしもよくなる」と言っていましたが、とんでもありません。

 大企業栄え国民疲弊という日本経済のあり方が問われる

 佐々木 たしかにそうですね。私も昨年出した『変貌する財界−−日本経団連の分析』(新日本出版社)で分析しましたが、日本経団連の役員を出している大企業は、30数年ぐらい前と比べると、企業あたりの規模が10倍ぐらいに巨大化しています。総資産が10倍、売上高も10倍です。ところが正規労働者数は、2倍程度にしか増えていません。しかも、全労働者の3分の1が非正規雇用になっています。富める企業はますます富み、働くものはいくら働いても豊かにならない、これがこの間の特徽だったと思います。
 高度成長時代は、まだ全体が伸びる状況がありましたが、今は、庶民から吸い上げて大企業がますます肥え太るということが、いっそう露骨になってきています。しかも大企業の戦略は、先ほど言ったように外国にどんどん出ていって“国を捨て世界でもうける”というやり方になっています。アジアの労働者は日本の6分の1とか10分の1の賃金ですから、それを目的に海外で工場をつくり、低賃金労働者を搾取していくのです。
 そうなると、大企業は国内でどういうことをやるようになるか。ひとつは、アジアなみに日本の賃金を下げろ、あるいは下請単価もアジアなみに下げろという圧力を強めてきます。愛知県のある親企業が下請企業に発注した発注表を見てビックリしたのは、「韓国価格」と書いてあったことです。こんな発注の仕方が堂々とおこなわれている。下請け業者は、韓国と同じ条件・同じ単価ではとうていできないわけです。そうなると、日本の中小企業はもう生きていけない、ギリギリのところに追い込められていく。労働者にたいしても賃金を下げろという。正社員の賃金はそう簡単には下がらないからリストラで減らし、賃金の低い非正規雇用を大きく増やして、全体で賃金を引き下げていく、そういうことを可能にするため、労働法制の規制緩和をしてきたわけです。ですから大企業のあり方、日本経済のありようが、以前とは大きく変わっているのです。
 さらに重要なのは、外国に出ていった工場から逆輸入を増やす。あるいは外国の工場に日本から製品や部品を輸出するようになる。そうなると、国境措置があり関税があるのはじゃまだという考え方が出てくる。各国の国境措置を取り払うべきだという発想から、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などの国際協定を結ぼうという動きになるのです。
 そうすると、大企業はそれでいいけれども、アジアの農産物が日本にどんどん入ってくる。そうなると、日本の農業がつぶされていく。このように、大企業が栄えると日本の農業はつぶされるということになります。日本の巨大企業が多国籍企業化すればするほど、そうなっていくわけです。日本の経済のありようが大きく変貌しつつあります。それに対する各階層の怒りと変革のエネルギーが、マグマのようにずっと広がってきている。これが今の実態ではないでしょうか。
 参議院選挙で自公の過半数割れという事態を招いたのは、そういう国民の怒りが示されたからです。多くの国民は、「対決」姿勢を示した野党第一党の民主党に投票した。しかし、日本共産党のたたかいが国民の怒りに火をつけ、自民・公明を少数に追い込む原動力になったのです。日本共産党の議席は若干減りましたか、全体としてみれば国民的な政治変革の一翼をになってたたかい、一定の成果をあげたと言える。その点では、大いに確信をもっていいのではないかと思います。次の総選挙で、日本共産党が伸びればもっと大きな変化が起こってくると思います。

増税攻撃に、どのように国民のなかで反撃し、どのように反対運動を広めているか

 07年増税決定を押しとどめた運動に確信をもって

 松本 私たち東京土建では、05年3月の大会で「07年決戦に勝利する」ことを方針に掲げました。07年には、憲法改悪が危ない、消費税も危ない、社会保障もさらに改悪されかねないと、この三つを許さないために「07年決戦」に勝利しようと運動を組み立てていきました。
 06年秋には、万灯という大きな提灯に明かりをつけた提灯デモに支部ごとにとりくみました。東京都内の38支部中、37の支部・44ヵ所で1万3200人が参加して夜間のデモ行進をしました(1支部は雨で中止)。
 恒例の3.12の重税反対統一行動にとりくみ、また、昨年6月には住民税の大幅増税に反対して地域宣伝行動をおこないました。各界連や「なくす会」など他団体にもよびかけて、住民税の納税通知書が送られてきたあとの6月12日を中心に都内85ヵ所で162団体が参加して、参加者1384人という、いっせい宣伝行動になりました。チラシも3万枚近く配布しました。
 各地域で創意あるとりくみをしました。消費税増税に反対か賛成かというシール投票を文京区の商店街でやったところ100人以上の方が投票して反対が95%だったこと。立川駅での宣伝では、学生さんがこれ以上、消費税を上げられると困ると、自分たちのなかまにも訴えてくれて、あとで署名を届けてくれたとか。江戸川支部では10ある駅頭でいっせいに分会ごとに宣伝行動をして、1支部だけで213人が参加するという大きなとりくみになった、など。そうしたたたかいが、消費税を参議院選挙の争点に押し上げたのではないかなと思っています。
 社会保障の安定的な財源として消費税がねらわれていますが、自民党単独ではできにくい状況が生まれましたので、民主党を抱き込んでいくために大連立という動きがつくられています。そういう大連立の策動を許さないために民主党の議員にも、国民の大きな民意をどうするんだ、国民の側に立てと、いま訴えています。
 いま中央各界連が1000万署名を提起していますが、東京土建も昨年中に20万やろうととりくんできました。
 私どもの上部団体は全建総連ですが、3年ほど前から本腰を入れて消費税増税反対、庶民大増税反対という声を高らかにあげてたたかっています。全建総連の全国キャラバン行動では、すべての都道府県を2カ月間かけて宣伝力―でまわり、それに呼応して各県連が宣伝行動にとりくんでいます。チラシや宣伝入りポケットティッシュ、いろいろな学習資料もつくり、大きなとりくみになってきています。昨年6月には東京・日比谷野音で、5395人が参加して庶民大増税反対の集会を開きました。これは全建総連が単独でしかも税金問題に限っての集会としては、88年に消費税導入反対で組合組織の主婦の会が中心となって8477人の集会をやったとき以来の20年ぶりの大きなとりくみになりました。

 1000万署名に呼応して神奈川で100万署名を

 小川 今、神奈川各界連では、全国1000万署名目標の方針が出る前から神奈川では100万署名をやろうといっていたのです。昨年中に50万の目標でとりくみ、11月段階で約30万ぐらいまでいっていますので、引き続きがんばろうととりくんでいます。署名を集めるためには、各地域で声をあげていくことが大事と、全県40ヵ所で増税反対の声をあげようと32ヵ所で計画が作られました。地域のすみずみから声をあげていくことが必要だろうと思います。08年3月までには、神奈川で100万達成をめざしています。
 そのためにも宣伝は本当に大事だと思います。私は県各界連の事務局長としてはまだ2年ほどですが、県の各界連でのとりくみとしては、消費税が導入されてから、18年間ずっと毎月、宣伝署名行動を取り組んできました。それが大きな力になっているかなと思います。県各界連では、労働者や建設、医療、女性などさまざまな民主団体の方々と、それぞれの団体が当面している問題について話し合ってきましたし、宣伝のときも参加団体から必ず一言訴えをしてもらうようにしています。
 たとえば、民医連の方が医療改悪の問題を含めて消費税の話をしたとき、あるご婦人の方が、「私はしょっちゅう病院に通っていて、通院のための交通費や治療費などの支払いなどで、今たいへんなんだ」と話し始めました。それでこちらも一緒に話しているうちに今度は別な人が話に割り込んできたんです。話に入りこんできた方はなんと看護師さんだったのです。看護師さんと民医連の方と、その患者の方と、三者による対話になっちゃって、さらに人が集まってという形で。それぞれの立場で話すと、そういうことができるのがいいのかなと思っています。聞く方もいろいろな角度からの活かあって要求や実情に合うということで違ってくるのかなというのもあると思います。

 各界連と「なくす会」で網の目のネットワークを

 梅村 今日のテーマは「消費税増税反対のたたかいをどう構築するか」ですが、私は、今なによりも求められているのは、消費税廃止各界連絡会が呼びかけた「消費税増税反対1000万人対話・署名」が現在、約300万人になっていますが、これを通常国会末をめざして一日も早く達成しようという呼びかけにこたえて、団体・個人が全力をあげることではないかと思います。1000万人をやり上げることは、5%アップ反対以来の運動となりますが、これは、現在の国会をゆり動かすとともに、総選挙で消費税問題を大争点に押し上げ、「消費税増税ノー」の審判をくだす大きな力になるに違いありません。
 そのためにも、消費税廃止各界連絡会と消費税をなくす会を、地域、職場、学園で、網の目のようにつくり、ひろげていくことが大事だと思います。冒頭で紹介しましたが、今、「声をかければ、かけるだけ、署名が広がる」情勢です。この国民の怒りに私たちの運動のほうが追いついていない。
 また、消費税は、ある限り、増税がねらわれるもので、廃止こそ求められます。しかし、消費税は、支配階級にとって、自らの権力を維持するためのぶ“究極の税金”であり、戦略的課題として、これからも死活にかけて増税を推進しようとしてくるでしょう。これとたたかうためには、息の長い、粘り強い運動が必要であり、いつどんなときにも消費税に厳しい目をもって追及し続ける組織が、地域、草の根になければならないと思います。
 消費税をなくす兵庫の会は、18年間にわたって、毎月、10数の草の根の会が、宣伝を続けています。みんなで助け合い、休んだことかありません。換算すれば、3日か4日に1回は、兵庫県内に、「増税ノー」「消費税ノー」の声と旗が立っていることになります。長崎の会も、すでに183回の宣伝を続けています。
 政府・財界にとって、こうした草の根での「継続は力」の活動こそ、一番の脅威なのではないかと思います。
 学習合に行くと、「『各界連』があるから『なくす会』はなくても」とか、逆に、「『なくす会』があるから『各界連』はいいのでは」という質問を受けます。
 団体共闘が中心の消費税廃止各界連は、1987年につくられ、1989年の消費税導入阻止の運動に大きな力を発揮し、今日まで重要な役割を果たしています。消費税をなくす会は、消費税導入の翌年1990年に、消費税を廃止するためには各界連とともに、個人参加の大衆的政治同盟が必要だと会をつくりました。「なくす会」は各界連の加盟団体の一つでもあります。私は、両方それぞれの重要な役割があり、両方つくりましょう、と話しています。
 各界連は、今、松本さんや小川さんからのお話のように、団体がその力を発揮し、非常にダイナミックな運動を展開されていますね。団体の多くの構成員にも一気に運動を広げることが可能です。
 一方、「なくす会」は、個人加盟のボランティアでつくられた組織です。団体には属していない人たちや、どこからも声がかからない人たちのところに行って、対話して、会員になってもらい、手づくりニュースなどを通じて、いつまでも「消費税ノー」の気持ちを持ってもらう、自覚的な有権者・国民を一人ひとりふやしていこうという会です。また、団体や職場、組合、学生自治会の中にも、「○○の会」をつくっています。団体には、さまざまな要求がありますので、その構成員に、常に、消費税のことを考えてもらえるようにと、会をつくっているのです。
 こうした各界連と「なくす会」が縦糸と横糸になって、網の目に全国でネットワークをはりめぐらしていくことが力強い消費税増税反対運動を構築していくのではないかと思います。
 先日、暉峻淑子先生と対談する機会があり、「格差をなくすには、社会保障、環境を含めた生活の福祉、雇用の創出に財政支出をきりかえなければなりません」と述べながら、それを国に実行させるためには、「生活者である私たちが差別よりも支えあう連帯を望んでいることを再確認する必要がある」とお話しされました。感銘しました。
 政府・財界は、国民の消費税増税反対運動を抑えるため、「消費者から受け取った消費税を業者がふところに入れている」とか、「現役世代と年金世代」などと国民を対立的に描き、分断させようとしています。
 昨年11月の国税庁の「税を考える週間」では、各地の「間税会」(消費税を中心とした間接税の納税者などで組織している団体)が、中学生などから「標語」や「作文」を募集。千葉・佐原の間脱会が行った「税の標語」では、「消費税 少しのお金が 大きな力」「消費税 みんなでつくる 理想の国」などが優秀賞に選ばれました。学校教育、子どもたちを巻き込んだ増税策動は許せません。
 そもそも税や社会保障というのは「助け合い」の制度です。暉峻先生は、人間はもともと助け合うことに喜びを感じるようにできているともおっしゃっていました。「なくす会」の運動も対話を広げる中で共感しあい、国民が連帯して主権者として自発的に立ち上がるエネルギーを、地域で職場で学園で育くんでいくものにしたいと思います。

 多くの経済団体も連合も消費税増税反対を表明

 梅村 「なくす会」は、結成して18年、会員が144万人、草の根の会が1675に広がってきました。
 沖縄の宮古島には昨年、会が新しくできましたが、会の結成には、地元の婦人会の著名な方が名を連ねてくださっています。その方かおっしゃるのは、宮古島には琉球王朝の時代から明治憲法が制定されるまでの長きにわたって、人頭税というものがあった。今でもその人頭石というのが残っているのですが、高さ143センチの石の前に立たせて背丈がそこに達すると税がかけられた。今の日本の消費税は、赤ちゃん誕生の瞬間から担税者になる。人頭税よりひどい税金だと。
 また、東京のあるタクシー会社では、職員が500人いる職場で、「水揚げからも消費税がとられ、家に帰ってもまた消費税がかかる、増税は反対だ」と、管理職もふくめて175人もの会がつくられました。また大企業の職場の中でも会がつくられています。
 いまは連合の高木会長も、政府税調の委員として、消費税増税には異議を唱え、認められないと言っています。国民の圧倒的多数が労働者です。職場や労働組合の中での会づくりに思いきって力を注いでいきたい。そして、全国中小企業団体中央会など多くの経済団体が、消費税増税反対の意見表明などをしています。「増税反対」 一点での運動の広がりに力をつくしていきたいと思います。

 「増税反対署名で断る人はいない」

 松本 私たち東京土建では毎月24日に定例の宣伝にとりくんでいます。先細りの時期もあったのですが、「07年決戦勝利を」と提起してから、毎月とりくむ支部が増えてきています。先ほどふれた昨年6月の住民税増税反対のときは24日に、38支部中34支部が65ヵ所で宣伝行動をおこないました。この3年ほど年ごとに、24日の宣伝行動にとりくむ支部が増えてきています。毎月でなくとも2ヵ月おきとか3ヵ月おきという支部もありますが、増えています。
 その中で「労働組合が消費税増税反対なんて言っているのを初めて聞いた。これからもがんばってくれ」と通りがかりの人から激励されたという話も聞いています。また北支部の経験ですが、大きな団地にいっせい宣伝・署名行動に入って、留守の家には1週間後に署名をとりにきますというチラシをつけて署名用紙を配ってきたところ、後日訪問したら、玄関のドアーに何軒もはってあったり、郵送で送り返してくれたりして、反応がよかったという経験も生まれています。

 小川 この増税反対署名は、団地へ行っても、どこに行っても、ドアをあけてくれ、対話になる署名ですね。足を出していけば本当に広がっていく署名です。

 梅村 そうですね。今、私たちも署名用紙を、なるべく個人に、これまで届いていないところに1枚、1枚届けていくことを大事にしています。

 小川 本当に対話になると自信をもってやれますね。

 ウソ、ごまかしを打ち破る学習が大事

 梅村 それと学習が大事になっていますね。私たちの運動で、この1、2年、ヒットしているのが、東京の会が始めた紙芝居学習合です。また、大阪では掛け合いトーク学習会をしています。わかりやすくて中身は深いという運動がやっていけたらと思っています。街頭での宣伝・対話では、うまく話せないという悩みもあるので、対話型ポスターをつくっています。

 松本 基本は学習だと思います。組合員のための学習討議資料やパンフレット、チラシなどをつくって、各支部やその下の分会、さらにその下の群という基礎組織での学習会をすすめています。私たちも宣伝用に180センチメートル×180センチメートルの大きな垂れ冪風の看板をつくって、車の側面に取り付けて、一目で何をやっているのかがわかるような目立つ宣伝を各支部でとりくんでいます。先はどもふれましたが、この間、消費税の簡易課税制度が改悪された問題や、確定申告の問題で学習会にとりくんでいます。確定申告では、毎年1月、2月の時期には税金への関心・要求がものすごく高まるのです。組合の中では、消費税の増税のねらいや、所得税増税のねらい、財源問題について学習し、そういう組合員の理解を深めていくことで、運動を強めているところです。

 小川 学習というのは本当に必要だなと実感しています。昨年6月の住民税増税の時、神奈川の各地域でいっせいに学習合が取り組まれました。1ヵ月間で少ないところで5人、多いところで300人の方が参加した、合わせて1000人が学習会に参加しました。私たちもそんなに広がると思わなかったのですが、毎日どこかしらで学習会がおこなわれていました。これが大きな力になって運動が取りくまれたと思います。学習会の切り口はいろいろあっていいと思います。
 私はとくに、住民税という問題から入って消費税の問題とも表裏一体の関係にあることを説明してきましたし、社会保障の分野の方には、福祉や社会保障が改悪されているのに、消費税を福祉のために使うというウソを明らかにしてきました。今、後期高齢者医療制度の問題、医療や介護、障害者自立支援法など社会保障のどのテーマから入っても、財源の問題を通してつながっているわけですから、どんな分野からでも消費税の問題点を浮き彫りにしていくことが大事と思います。

 消費税増税反対の共同と国会の力関係を変えるために

 梅村 消費税増税を食い止めるかどうか、総選挙が決定的ですね。昨年末に「なくす会」は、森山裕財務副大臣に申し入れをしましたが、国民に信を問わず、消費税増税をすすめるのは、おかしいのではないかと話しました。
 増税反対の一点で、参院選後の新しい国会に向けた運動を広げていくと同時に、総選挙で消費税増税問題を大争点にしていきたい。
 私たちは特定の政党を支持する会ではありません。しかし、私たちは、増税を食い止め、消費税をなくすために、国会の力関係を変えようという会です。結成以来、どこの党が消費税をめぐってどう言っているのか、どういう政治をつくれば、消費税増税を食い止めることができるのか、「情報提供」型の宣伝・対話をすすめ、増税勢力に審判をくだす運動をおこなってきました。
 この点で今度の総選挙では、自民と民主が「社会保障財源」などとして、消費税増税で一致する危険性があることを、広く国民に知らせていかなければと思います。
 そして、私自身は、この18年間の運動を通じて、消費税増税計画を断念させるためには、共産党にがんばってもらいたいと思っています。年に何度か各政党に要請しますが、いま、政党の中で「いかなる理由があろうと消費税の増税には絶対反対だ」との態度をとっているのは共産党だけですね。5%アップの翌年の98年の参議院選挙では、「3%に戻せ」が大きな世論になり、その後の国会に「消費税減税法案」が提出され、私たちの運動も前進しました。その大きな力は、なんといっても、共産党が参議院選挙で15議席を得て23議席となり、予算を伴う議案提案権をもったことでした。1年1年の先延ばしでなく、消費税増税計画そのものが出てこれないようにするためにも、共産党の大躍進を願っています。

 増税への怒りは広がっている。大連立による増税を許さない国民的な増税中止の運動をつくろう

 佐々木 この問、2、3年をふり返ってみても、増税反対の運動が画期的に広がっていると実感しています。たとえば、中小業者にたいして、消費税の納税義務が売り上げ3000万円から1000万円に下げられた時のことを思い返すと、ほとんど国会の中でまともな議論がなくて、あっという間に強行されました。業者の方々が必死に訴えても、なかなか各階層に浸透しなかったという感じがありました。しかし今は、まったく状況が違う。怒りが大きく広がっていると思います。
 当時、日本共産党本部に消費税増税阻止闘争本部を立ち上げましたが、その時の議論をふり返ってみると、消費税の問題は、サラリーマンや労働組合の中になかなか入らない、消費税増税にたいして関心が薄いだけでなく、「消費税は多少上がっても所得税が下がればいい」という議論がけっこうあったのを思い起こします。
 その当時と比べると、わずか2、3年の間にサラリーマン・労働者の中に増税反対の気運が大きく広がりました。自民党と公明党が、「サラリーマン増税をやらない」と言いながら強行した定率減税の廃止は、増税に対する怒りに火をつけたと思うのです。その上にさらに消費税増税ということで、労働者・サラリーマンの中に消費税増税に対する怒りも、かつてなく広がっています。高齢者は、まさに直撃を受けています。今でさえギリギリのところにきているわけで、高齢者の怒りの1票が参院選に集中したと思います。そういう方々は、消費税増税にはもうとても耐えられないと悲鳴をあげています。
 このように見てくると、この数年間のみなさん方のたたかいが、国民全体の意識を変え、増税反対の気運を大いに盛り上げ、国を動かすほどの大きな力を発揮していると思います。まだ道半ばですが、私はたたかいは大きく前進していると確信をもてるし、さらに広がる可能性を秘めていると思います。
 もともと彼らは、2003年にスケジュールを決めたとき、消費税の税率アップは2007年末に決定する、そして2008年の通常国会で消費税増税法案を通すということだったのです。当初、彼らの描いていたスケジュールは崩れました。それは、われわれの当面の勝利といってもよい。しかし、彼らは少しでもスキがあれば巻き返そうと、大々的なキャンペーンを張り、「大連立」まで念頭に置きながら執念深くねらっています。今度は、2009年度の実現をめざしています。
 しかし仮に、「大連立」でそんなことをやったら、自民と民主の二大政党が、国民の怒りの中で泥船に乗ったまま沈んでいくような状況を、われわれがつくっていくという腹がまえでやっていく必要があるのではないか。そういう意味で、心張り棒としてがんばってきた日本共産党の国会での議席をもっと増やしたい。そうなれば、いっそう大きな役割を果たせるのではないかと思います。
 今は若干、数が少なくなっていますが、それでも世論と運動に依拠しながらたたかって、これだけの成果、当面の増税を許さないというところまで、みんなで追い込んでいるわけです。今度は逆立ち税制を直し、憲法原則にもとづく、民主的な税制改革を実現していく、そういう展望をもち大いに確信をもって、元気いっぱいがんばっていきたいと思います。

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