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憲昭からの発信

憲昭からの発信 − 論文・対談

誌上シンポジウム 『政治とカネ』問題を追求する

『前衛』2007年7月号
阪口徳雄(弁護士、政治資金オンブズマン共同代表)
佐々木憲昭(日本共産党衆議院議員)
山本豊彦(「しんぶん赤旗」日曜版副編集長)

■報告1

事務所費、経常経費でわかった不明朗な「政治とカネ」の実態
阪口徳雄


◆市民が光熱水費問題を告発
 政治資金オンブズマンが、政治家のカネの「入」の問題と同時に、「出」の問題にあらためて注目をする契機になったのが、昨年12月の佐田玄一郎・行革担当大臣が辞任した、後援会の経費を議員会館を所在地とする政治団体の事務所費に付け替えていた事件です。
 今年1月3日に、「しんぶん赤旗」が、「家賃ゼロの衆参議員会館に多額の『事務所費』支出/自民・民主議員ら18人が年1000万円超事務所費」という告発が、大きな衝撃をあたえました。この報道が国会議員の「出」を大きくクローズアップしました。政治資金規正法21条の収支報告書では、事務所費や経常経費については明細や領収書を添付する義務がないことを悪用している事件が「赤旗」の報道で判明したのです。タダであるはずの議員会館を所在地とする政治団体の事務所費として、伊吹文明文科大臣の4000万円、松岡利勝農水大臣の3300万円という巨額の数字には本当に驚きました。このときに伊吹、松岡両大臣を東京地検に告発しようと準備しました。しかし告発すれば、彼らが国会や記者会見の場で、「告発をうけたので、司直の場で話します」と逃げる可能性もあり、見送ったという経過があります。そうしているうちに、今度は、松岡大臣の光熱水費が問題になり、この問題での国会質疑が一通り終わった段階の4月2日に、東京地検に告発しました(告発状は政治資金オンブズマンのホームページにあります)。
 松岡大臣の資金管理団体である新世紀懇談会は、事務所の住所を国会の議員会館においていて、光熱水費の支出は国費で賄われているにもかかわらず、光熱水費として毎年400万円〜780万円も支出しています。これは虚偽であることが明白ですし、こんなふざけた話はありません。
 事務所費が問題になった当初、少なくないマスコミの論調には間違いがありました。本来、政治資金規正法では、会計帳簿をつくり(9条)、領収書を徴収する義務(11条)があります。12条の総務大臣などに収支報告書を出す段階で、明細と領収書の添付義務がないにすぎないのです。それを、明細も領収書もとるように改正すべきだと主張していました。
 自民党の議員は、何かにつけ領収書添付は大変だと主張しています。しかし、もともと集めてなければ、政治資金規正法違反なのです。つまり、事務所費や光熱水費などについては、彼らが、もともと領収書を集めたり、明細を書いたりしていないことを「自白」したようなものです。場合によっては、不明朗なカネを事務所費や光熱水費の名目で隠蔽しているのではないかと疑わざるをえないわけです。

◆どこに使われる? 自民党の政策活動費
 私達は、これまでも自民党の国会議員のサイフは七つあると言ってきました。一つが、個人収入の本当のサイフです。これは普通の国民と同じサイフで、違反すると所得税法違反になります。二つめが、政党の選挙区支部というサイフで、企業献金、団体献金の受け皿になっています。三つめが、資金管理団体というサイフで、国会議員が自ら代表になって個人献金、政治団体からの受け皿です。松岡、伊吹らの事務所費問題が議論となっているサイフです。四つめが、公職選拳法に定める公職の候補者としての選挙活動に関するサイフです。五つめが、資金管理団体以外の政治団体というサイフで、後援会とか励ます会などです。この二つめから五つめのサイフについては、いずれも選挙管理委員会や総務大臣に届ける義務があります。ややこしいのが、六つめの、自民党本部から組織活動費、最近では政策活動費とよばれるものを受け取る時のサイフです。さらに七つめに、裏ガネを扱う『裏サイフ』です。旧橋本派に届けられた1億円は、結局、誰かの『裏サイフ』に入ったという事件です。先日、村岡兼造元官房長官に有罪の判決がでたのは、このサイフに関しての、収支報告書の不実記載罪、虚偽記載罪ですが本当は誰かの裏サイフに入った金です。
 これら全体を見ないと政治資金の不透明さの実態はわかりません。こうして見ると、事務所費や経常経費などは小さな金額にすぎません。逆に、六つめにのべたものについては、自民党の収支報告書を見ると、組織活動費や政策活動費の名目で、自民党の議員に配られているもので、この数年間も多い年で85億円、少ない年でも30億円の規模で行われています(オンブズマンのホームページには、自民党の議員別の毎年の政策活動費も載せています)。本来、1994年の政治資金規正法の改正で、政治家への寄付が禁止され、政治家が政党から受け取る政治資金も、資金管理団体に入れることが基本になりました。しかし、政治資金規正法21条2の「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」の条項に、「政党がする寄附については、適用しない」という規定が同時に入ったことで、政党から政治家への寄付が行われています。しかし、議員個人に配られたあと、それがどこでどう使われたのかはいっさいわからないのです。
 とくに幹事長への支出は大きく、森喜朗元首相が幹事長時代には、年間約10億円、安倍晋三首相の幹事長時代にも年9億円配られています。幹事長が受け取ったお金は、その後、誰かに配っていると推測できます。ならば、虚偽記載ではないかとの告発を森元首相に対して行ったのですが、東京地検は先の条文があり、その支出も政治活動として行われている以上、嫌疑はないという姿勢です。しかし、政治資金規正法は、政治資金は、政党支部か資金管理団体、その他の団体が政治活動費という形で、その出入りを記載することで、はじめて透明性を確保できるという考え方で成り立っているのです。政策活動費(組織活動費)だけは、どこに使われたかわからないということが、野放しにされていることは、大きな問題なのではないでしょうか。

◆派閥から国会議員への配布も不透明
 よく指摘されるおカネの流れに、国会議員が派閥からもらうものがあります。しかし、派閥は政党ではないので、先の政治資金規正法21条2に従えば、これは違法です。実は、派閥のカネの流れを見ると面白いことに気がつきます。たとえば、これは2004年に調べたことなのですが、平成研究会(旧橋本派)の資金収支報告書を見ると、くり越し残高が何と20億円もあるのです。同じように、松岡大臣の資金管理団体にも繰越金が約3億円存在します。しかも、億単位のおカネがあれば、定期預金にするのが普通です。しかし、収支報告書には、これらのおカネが、普通預金ないしは現金など分類の記載の必要のないものとして処理されているのです。
 これはどういうことでしょうか。実際には、派閥のメンバーなどに配っているのだけれど、政党ではない派閥が政治家個人に寄付ができないために、収支報告書には書けないでいるのではないか。そういう疑惑をもたれても当然でしょう。
 いずれにしても、こうした不明朗な疑惑は、やはり国会の責任で明らかにすべきです。疑惑がもたれるようなものについては、国会の責任で釈明させる、そのことが問われているのです。

◆5万円未満の支出は「闇」に
 総務省や地方の選挙管理委員会などに報告義務のある支出についても、不明朗さがあります。その1つが、1件5万円未満の支出です。ここには、報告する際には、明細や領収書を添付する義務がないからです。政治資金オンブズマンのメンバーである公認会計士の調査では、たとえば松岡大臣の場合、資金管理団体である「新世紀政経懇談会」の政治活動費3600万円のうち、開示されているのは13%にすぎず、ほとんどが5万円未満で個別開示されていないのです。
 このように政治資金全体からみれば、自民党の政策活動費という巨額の「闇」があり、個々の国会議員レベルでの5万円未満の「闇」があり、そして事務所費や経常経費という「闇」が不透明なままになっているわけです。ここにもメスが入らなければならないのです。
 政治資金は、ある意味で、何に使おうと自由です。たとえば大会費であろうと、調査費であろうと、その是非については、国民が判断することがらなのです。しかし、その収支は、法律にもとづいて、透明性のあるものでなければなりません。入ったカネは入ったものとして、出たカネは出たものとしてきちんと報告するという制度であるべきなのです。透明性を明らかにするというのが政治資金の趣旨です。そのいちばん大きな部分に不透明な部分がある。そのことこそが問われているのです。

◆政治資金規正法「改正」はすり替え
 こうした点から見れば、今回、自民・公明の与党が合意したと言われている政治資金規正法の「改正」案は、きわめて不真面目なものであると言わなければなりません。その前に、まず、政治家が、自らの手で、疑惑の真実が何かを明らかにしなければならない。それは何も明らかになっていません。事務所費にしても、不正な処理であったことを民主党の一部は認めましたが、自民党の中川昭一政調会長にしろ、伊吹大臣にしろ、松岡大臣にしろ、何千万円という大きなおカネが、事務所費の名でどこに消えたのかは何も明らかにしていない。それをしないで、領収書の添付だけをやろうとしても、それはインチキであり、すり替えにほかならない。何よりも、帳簿に記載し、領収書を徴収していなければ違法行為なのですから。
 改正論議の中身もいい加減です。与党合意の内容は、資金管理団体だけを対象として、5万円以上の支出については、事務所費、経常経費についても報告の際に領収書の添付を義務付けるというものです。しかし、そこでは、政党支部は対象とされていません。つまり、政党支部の「出」を明らかにしない。その他の政治団体、派閥、後援会も同様です。いま、資金管理団体でやっていることを、政党支部にもっていけばいいだけの話です。政党支部は従前どおり、総額開示で領収書の添付もいらない。しかも、5万円未満は、不必要です。これでは、参議院選挙向けのごまかしとしか言いようがありません。政治資金規正法の改正と言っても、真実を解明したうえで改正するのではなく、いまあるものに蓋をするだけの改正論議であると言わざるをえません。

◆企業献金に問題が
 私たちは、株主オンブズマンという組織で、政治献金についての株主代表訴訟を2000年からはじめました。しかし、今回の松岡大臣に対する告発のように、「政治とカネ」の問題は、企業献金だけではなく、政治家の不正問題や賄賂、収支報告の虚偽記載などいろいろあります。先の森元首相に対する組織活動についての告発は、株主オンブズマンが中心となって行ったものです。しかし、これは直接、企業と関係あるものではありません。やはり「政治とカネ」の問題は独自にとりくむ必要があるだろうという議論のなかで、政治資金オンブズマンが立ち上がったという経過があります。
 これまでも、日歯連からの1億円の不正献金をめぐって、橋本龍太郎元首相と平成研究会の会計責任者を告発しています。橋本元首相は不起訴になりましたが、検察審査会に申し立てを行い、検察審査会は捜査して、起訴すべきだという意見を出しました。しかし東京地検は結局2回目も不起訴にしてしまいました。
 企業献金をめぐっては、最近は、熊谷組政治献金等株主代表訴訟が行われました。これは、大手ゼネコンが自民党に献金したことを問うた事件でした。献金は、会社の目的の範囲外の行為であり、公序良俗に違反し、著しく社会的に不相当な行為であるから、それを行ったことは取締役の注意義務に違反するという株主代表訴訟の形で問いかけたものです。私たちが、ここで主張したいちばんの論点は、企業献金は、国民一人ひとりが献金する金額よりはるかに大きな金額を拠出できる。まして、産業界が政治献金を集めれば巨額になり、その政治への影響力ははかり知れず、国民の参政権を侵害するという点でした。
 一審は、それをほぼ認め、「会社あるいは産業団体による政治資金の寄附の規模加何によっては、国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害するおそれがあることは否定できない。……そのため、会社あるいは産業団体による政治資金の寄附は謙抑的でなければならず」としたのです。しかし、高裁の判決は、政治資金規正法で企業献金の総額規制がある以上、その枠内であれば問題はないというもので、最高裁も、原告の上告を棄却しました。
 政治資金規正法は、もともと政治献金を認めた立場で、その最高額も1億円までできることになっています。しかし、1億円を超える献金など常識的にありえません。大手の大企業でも3000万〜5000万円、トヨタのような超巨大企業でも7000万円ぐらいです。1億円の最高限は何の規制にもならないのです。
 しかも、その法律を決めたのは国会議員です。したがって、国会議員の手で、法律を改正することはかなりむずかしいと言わなければなりません。アメリカなどが政治献金を禁止したのは裁判所の手によってです。しかし、日本の裁判官は、そうした立場には立たなかった。国民の大多数は、企業献金禁止に賛成でしょう。おそらく7、8割の人は、企業献金はおかしいと思っています。だからこそ、こうなれば、国民がひも付き議員を選ぶというのではなく、政治献金を受けない、企業献金を受けない政党を選ぶということが大事になっているのだと思います。

◆官房機密費の「闇」も隠されたまま
 このように「政治とカネ」の問題で、国民が正しい選択ができるためにも、情報の開示をどれだけ行えるかが大事です。政治資金についての収支報告は、毎年3月末に提出され、それが開示されるのは9月です。そこで、今回、オンブズマンのメンバーが、松岡大臣の今年3月の収支報告書で光熱水費がどうなっているのかの開示を求める訴訟を起こしました。光熱水費の支出があれば追加告発を視野に入れての開示を求めたわけです。これだけ松岡大臣の光熱水費が議論になっているわけで、今年の収支報告書ではゼロであることが予想されます。そうなれば、いっそうこれまでの支出は何であったかか問われます。その開示が選挙が終わってからでは、国民は正しい政治選択ができるとは思えません。選挙の前に開示してこそ価値があります。
 この2年間、大阪地裁は、情報公開法にもとづいての開示請求を認める判決をだしています。ところが、この敗訴判決を受け総務省は、昨年、政治資金規正法を改悪し、情報公開法に穴をあけてしまいました。9月に官報で告示するまでは、開示しなくてよろしいというものに自民党と民主党、公明党がいっしょになって改悪してしまった。今回、このような法律は、国民の知る権利の侵害である、憲法違反であるという理由にてその取消訴訟を出しました。
 熊谷組の企業献金についての訴訟は残念ながら負けましたが、訴訟はやればやったなりの意味があります。メディアも、こんな争点があったのかと必ず報道してくれます。その宣伝の効果は大きいものがあると考えています。
 さらに、安倍首相らの官房長官時代の官房機密費について、その開示を求める訴訟もメンバーの一人が提訴しました。この機密費の問題も「政治とカネ」の重要なテーマです。ご承知のように、官房長官は毎月1億円の機密費をもらいます。しかし、それはどこに消えたのかはわかりません。年間12億円、これこそ税金です。この官房機密費の情報公開請求に対して、内閣官房は、拒否をしているのですが、これに対する訴訟です。一般論としては、機密性のある支出もあるとは思います。しかし、これまで、「赤旗」がスッパ抜いた加藤紘一メモのようなものを見ても、およそ、秘密らしきものはありません。国会議員のパーティ券の購入や会議費、飲食費などの支出だけです。そんなものは秘密でもなんでもありません。その国会議員への支出部分の情報だけでも開示しろと要求しているのです。こんな不明朗な支出が、税金の「出」であっていいはずはありません。私たちも、政治家のカネにかかわって存在する大きな「闇」の解明のために頑張りたいと思っています。

■報告2

日本経団連による献金促進策こそ最悪の「政策買収」
佐々木憲昭


一、相次ぐ政治腐敗事件が問いかけた企業献金
 私のほうからは、主に財界による政治献金の問題についてお話ししたいと思います。
[93年には斡旋を中止]
 「政治とカネ」で何か問われているかを考えるとき、この十数年の変化を検証することが必要だと思います。この点については、私の編著『変貌する財界−日本経団連の分析』(新日本出版社、07年1月)の第4章「政治資金の流れにみる財界支配」(担当・山本陽子)で詳しく分析しています。以下、最近の新しい動向を含めその主要な内容を紹介しておきましょう。
 1980年代末から90年代にかけて、リクルート事件、佐川急便事件、金丸巨額脱税事件、ゼネコン汚職と、政権党・自民党にかかわる政治腐敗事件が次々と発覚しました。それを背景として、93年に、自民党が政権から転落し細川護煕連立政権が誕生します。そのとき掲げられた「政治改革」の中心課題について、細川首相は、「政治腐敗事件が起きるたびに問題となる企業・団体献金については、腐敗のおそれのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切ることといたします」とのべました(1993年8月23日の所信表明演説)。
 このとき提起された「政治改革」は、政治家個人への企業・団体献金の禁止と引き換えに政党助成金をつくること、中選挙区制に代わる選挙制度として小選挙区割を導入することでした。これが、その後の政治とカネをめぐる状況に大きな影響をあたえることになりました。
 このとき旧経団連は、世論の批判の中で政治献金の斡旋をとりやめざるをえなくなりました。93年9月2日に「企業献金に対する考え方」という文書を発表し、「今後は、政治資金を公的助成と個人献金で賄い、企業献金に過度に依存しない仕組みを確立していく必要があり、政府は、そのための環境整備を早急に行うべきである」とのべています。そして、「企業献金については、公的助成や個人献金の定着を促進しつつ、一定期間の後、廃止を含めて見直すべきである」という態度を明らかにしたのです。そのうえで旧経団連は、「各企業・団体が、独自の判断で献金を行うこととし、経団連は、来年以降、その斡旋は行わない」とし、94年から企業・団体献金の斡旋を中止したのです。
 1993年までおこなっていた斡旋というのは、旧経団連が、企業の規模に応じて各企業に献金額を割り振るというやり方でした。なぜ斡旋という形態をとったかというと、昭和電工疑獄事件、造船疑獄事件など戦後発生した一連の疑獄事件が、個別企業の献金から発生しているため、経団連が組織的に集めたカネを一本化して献金すれば「見返りを求めないクリーンな献金」になるという理屈からです。こうして、旧経団連の斡旋による企業・団体献金が、長いあいだ国民政治協会(国政協=自民党)に対して行われてきたのです。
[企業献金をどう考えるのか]
 そもそも、企業献金をどのように考えればいいのでしょうか。企業は、国民と同じように献金をおこなうことができる存在と言えるのかどうか。これがいちばんのポイントです。政治資金規正法をみると、その第2条で「政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない」とのべ、「政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない」と定めています。総務省の担当者も説明のときに利用している『逐条解説 政治資金規正法』は、これを、「憲法が政治活動の自由を保障していることからすれば、国民が自己の信念に基づきその支持する政党その他の政治団体あるいは公職の候補者に対して政治献金をすることは、本来自由であるべきものである。それは、国民の立場からすれば、国民の政治参加の一つの手段であり、国民の権利でもある」と解明しています。
 つまり政治資金とは、「国民の浄財」であるべきものだとし、「国民の政治参加の一つの手段」「国民の権利」としていることが重要です。これに対して、企業はここでいう国民とはまったく違う存在です。国民と同様の主権者ではありません。選挙権ももちろんありません。さらに言えば、企業は利益を追求する組織ですから、企業が献金をおこなう場合には、その「見返り」を要求することにならざるを得ません。もしも「見返り」を要求しないなら、企業に損害を与える「背任」行為となります。ですから、企業からの献金は、もともと「賄賂」という性格をもたざるをえないのです。企業・団体献金で「クリーンな金」というのはありえません。それは、一人ひとりの自由な意思をもった独立した個人の政治参加の手段としての政治献金=個人献金とは、明らかに異質なものです。阪口さんも指摘されていますが、企業が政党や政治家にカネをだし、政治に影響をあたえるということは、主権者である国民の基本的権利を侵すことにつながり、国民主権と相反する性格をもつものと言わなければなりません。

二、通信簿方式による「政策買収」
[03年に新しい方式で献金を促進]
 旧経団連と日経連が合併して日本経団連ができたのが2002年5月ですが、その1年後の2003年5月、日本経団連は「斡旋」とは違う“通信簿”方式による新しい促進策で献金を組織的に誘導することを決めました。斡旋中止からちょうど10年が経過していました。
 日本経団連は、そのとき「政策本位の政治に向けた企業・団体寄付の促進について」という声明を出し、「企業、企業人も、政策や政治のあり方について積極的に発言するとともに、政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱のーつとして位置付け、応分の支援を行うべきである」とのべています。これはまさに、政治に関与し、対応する政党に政治献金をおこなうという、政治資会規正法の精神に真っ向から反する“政策買収”宣言だったと言えます。
 では、日本経団連の“通信簿方式”による政治献金促進策とはどういうものなのでしょうか。これは、日本経団連が政党の通信簿をつけて献金のガイドラインをつくり、いい“成績”をとった政党への献金を企業に呼びかけるというものです。日本緑団連の「『優先政策事項』と『企業の政治寄付の意義』について」という文書があります(03年9月)。ここでは、「企業の政治寄付は、\策本位の政治の実現への貢献、議会制民主主義の健全な発展への貢献、政治資金の透明化向上への貢献の三点からきわめて重要である」と説明をしています。もともと、03年1月1日に発表された奥田ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」には、「私たちは政党が明確な『旗印』を示し、それをもとに政策を実施していくことを強く求め」ていると言ったうえで、「消費者ニーズに合わない商品が売れないように、政党の場合も公共政策のユーザーとしての個人や企業の意見を取り入れなければ、効果的な政策を打ち出すことはできない」と述べ、そのために「経団連は政治に対して、経済の現場の声を反映した明確で具体的な主張を展開し、積極的かつ組織的に働きかけることによって、必要な政策を実現していく」と言っています。−−経団連は、93年までの斡旋を「クリーンな献金」と位置づけてきました。03年からの献金促進策は、それを超え、「社会貢献」だと正当化しています。そして、自分たちが働きかけて経団連の政策を実現させていくことを露骨に表明しているのです。そのために企業献金をおこなうというのですから、まさに、カネの力で政策を買い取る“政策買収”宣言です。
 具体的な手法としては、日本経団連が、各政党の政策評価を行います。これが“通信簿”です。評価の対象は、企業献金を受けとりますとはっきりと意思表明をしている自民党と民主党だけです。通信簿は、ABCDEの五段階で評価し、定期的に政策評価を行っています。
 ここで垂要なことは、日本経団連が先駆けて“模範解答”−「優先政策事項」を毎年発表していることです。そのうえで、自民党と民主党が、それにそった政策を出しているか、どう実現に寄与しているのかを評価の基準にしているのです。それに、05年からは自民党、民主党と「党と政策を語る会」を開催し「口頭試問」まで行っています。
[あらゆる政策に財界が口出し]
 2007年版の「優先政策事項」には、「国際競争力強化を維持・強化」するために、「法人実効税率は30%を目標に引き下げ」、その一方で、「社会保障関係費の抑制」など「徹底的な歳出削減」を求めています。法人税の実効税率を40%から10ポイントも引き下げて30%にし、大企業の負担を軽くするというものです。
 これまで日本経団連は、経済財政諮問会議の民間議員を通して、その実現を追っています。政府税調は、昨年末に法人実効税率引き下げを打ち出しました。国民の批判もあって、結果的には法人税率本体の引き下げは見送られました。しかし当面、研究開発投資減税、あるいはIT投資減税という1兆2000億円規模の政策的な減税を実施させました。そのツケが庶民増税として、国民の側に大きくかぶさってきています。
 昨年は、所得税の定率減税を半分に減らし、国民には大増税となりました。今年は、これが全廃され、さらに住民税の大増税につながり、介護保険料や国民保険税に連動するというかたちで雪だるま式に庶民負担がふくらんでいます。
 社会保障・医療分野では「社会保障の伸びを『成長率以下にとどめる』」と明記し、「在院日数の削減、医療の標準化、診療報酬の包括化のさらなる推進等により医療費を抑制する」「高齢者に支え手に回ってもらう」としています。
 労働分野では、経団連は、04年の「政策優先事項」の改定から、ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入を掲げています。この間、企業のリストラが徹底しておこなわれ、非正規雇用が増え、サービス残業がまん延しています。そのうえで、今度は残業代を払わない制度まで財界主導で政府に飲ませようとしているわけです。これはあまりにも国民の反対が強く、頓挫しましたが、参議院選挙が終われば再び浮上してくる可能性があります。さらに重大なのは、「外国人材を積極的に受け入れる体制整備を総合的に進め」るとしていることです。
 このように、国民生活にかかわるあらゆる分野で政策買収が、いかに庶民の暮らしと営業を破壊する「優先政策事項」を掲げているか、明らかだと思います。
 その一方で、「国際競争力強化」のために、大企業が「国境を越えてより自由かつ円滑に活動できる環境を戦略的に整備する」とし、「重要な国・地域との間で経済連携協定(EPA)を締結」するとともにヽ「農業分野の構造改革」も必要だと書いています。
 経済分野だけではありません。憲法や教育にまで言及していることに注目しなければなりません。たとえば、憲法については、「2010年代初頭までに、憲法を改正」すると主張し、「安全保障体制や自衛隊などの国際貢献に関する基本方針や手続きを明らかに」することを求めています。教育については「多様性」「競争」「評価」を基本にした教育改革を求め、「新しい教育基本法の理念に基づき、国を愛する心や国旗・国歌を大切に思う気持ちを育む」「公徳心を涵養する」ことまで要請しています。
 日本経団連は、「政党本部への寄付は、個別の利益誘導とは無関係であり、現在、政治資金ソースの中で最も透明度が高い」と主張しています。「“個別の”利益誘導ではない」といいますが、これらをみれば、財界・大企業がグローバルに展開するための利益誘導策だと言わざるを得ません。また、企業献金の意義を「社会貢献」と説明していますが、国民に負担と犠牲を負わせ、平和を破壊する政策をすすめることが、決して「社会貢献」とは言えないことは明らかではないでしょうか。

 三、自・民はどう対応しているのか
[経団連好みの政策づくりを競い合い]
 では、このように露骨な日本経団連の要請に対して、自民党と民主党はどう対応しているでしょうか。
 自民党の場合は、小泉首相(当時)が、「民主政治を発展させたい、日本の経済社会をさらに健全化していきたい、そういう点において、個人も企業も団体も、それぞれの支持する政党に献金しようというのは、これは悪いことではなくて結構なことだと思っております。そういう点、献金してくれるところだったら、自由民主党は堂々とこれからの政治活動に生かすように使わせていただきたい」と、表明しています(04年3月5日、予算委員会)。さらに、奥田経団連会長(当時)との対談のなかでは、「日本経団連の献金は、一番透明ですよね」(『経済トレンド』06年1月号)とまでのべています。企業献金を大いにもらい、経団連の意向にそった活動をするという、これほどあからさまな宣言はありません。
 自民党は、経団連の政策評価にもとづく献金促進策を強めながら、自民党本部への献金の集中を図っています。派閥の集金力や業界団体からの献金は、相対的に比重を低下させている一方で、比重を高めているのが政党助成金です。国民政治協会(自民党) への献金は、1990年ごろは、約300億円でした。それが現在では100〜150億円に減少しています。それを穴埋めしているのが政党助成金で、年間150億円近くの収入となっています。国民1人当たり250円の強制的なカンパがこういう形で巨大政党に回っているのです。
 政党助成金は、政治資金収支報告書とは別に、政党交付金の使途報告書の提出が義務づけられ公開されています。それを見ると、いちばん多いのが党支部への寄付や交付金です。次に、宣伝事業費、人件費。とくに宣伝事業費は、04年は、政党助成金から31億4000万円使われています。大手広告代理店に1億円、ホームページ制作会社に5000万円を超える支出もある。広報戦略が重視され、政党助成金が投入されているわけです。テレビや新聞で、自民党や民主党の広告が目立つのは、国民から強制カンパをさせて、国民から集めた金を使って行っているのです。いずれにしても、党本部の裁量が大きくなっていることが一つの特徴です。
 民主党は、04年から、前年の献金実績の20倍の10億円という目標を設定して、各企業・団体に献金を陳情しています。小沢代表は、06年4月の代表就任直後から、経団連など財界団体にあいさつ回りをおこなうなど、代表自身が率先して財界詣でを行っている実態があります。
 献金額は、民主党とくらべ圧倒的に自民党が大きくなっています。最近は、民主党が御手洗日本経団連会長を非正規雇用の問題で参考人招致せよと主張をするなど、必ずしも財界に対して自民党と同じ対応をしているとはみえません。しかし民主党の2007年度活動計画(2007年1月16日)では、「経済団体とのコミュニケーションを活発化し、二大政党の一翼を担う民主党に対する一層の理解と関係の強化をはかります」、「個人献金の拡大に引き続き努力しつつ、企業・団体に対しては民主党の政策を訴えながら賛同者を拡大し、同時に寄付を幅広く要請していきます。また、参議院選挙前に必勝を期して資金パーティーを聞催します」と述べているように、基本方針は、財界の主張とほぼ一致し、企業献金を要望しています。
 自民党も民主党も、日本経団連と「政策を語る会」を開催し、政策交流、意見交換金を行っています。これは単なる意見交換ではなく、各党が、日本経団連の「優先政策事項」にしたがって、政策内容やその実現にむけたとりくみと実績についてアピールする「口頭試問」です。それは、経団連がしめした“模範解答”に沿って回答を競い合うという卑屈なものとなっています。2004年と2006年の“通信簿”を比較してみると、日本経団連の優先政策事項と自民・民主の政策との「合致度」で、自民党がA評価を2から7に増やし、民主党がB評価を五から八ヘと増やしています。
[外資系企業の献金自由化]
 最後に指摘しなければならないのは、自民党も民主党も、企業献金をさらに増加させるために行ったのが、外資系企業からの献金の自由化です。
 『変貌する財界−日本経団連の分析』(新日本出版社)で明らかにしたように、日本の大企業のなかで、外資系企業が急速に拡大していることは明らかです。これまでは、外国人持ち株比率が50%を超える企業は、従来の政治資金規正法では献金ができませんでした。ところが、昨年12月に、突然、この規制を撤廃する法案が政治倫理の確立及び公職選拳法改正に関する特別委員会に提出され、改悪が強行されました。
 これまでの政治資金規正法の第22条の5には、「何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から、政治活動に関する寄附を受けてはならない」との規定があり、3年以下の禁固、50万円以下の罰金が諜せられるとされていました。これは、外国から不当な影響を受けないようにするための当然の措置でした。
 外国法人とは、外国の法今に準拠されて設立された法人や、主たる構成員の過半数を外国人もしくは外国法人がしめているような団体を言い、株式会社の場合は、発行済み株式の過半数を外国人・外国法人が保有している会社とされています。
 これに対し自民党は、外資系企業も上場している企業だから、その献金も認めて良いのではないかと言いはじめました。また、民主党も、昨年5月22日の「民主党と政策を語る会」で、鳩山幹事長が「海外で活発に活動する日本企業に対して、外国の投資家が関心を寄せ、投資するのは当然だ。その結果として外国人持株比率が50%を超えたとしても、それを以って企業の政治寄付が制限されるのは、基本的におかしな話である」と発言しています。これは自民党と全く同じ立場でした。日本共産党は、企業・団体献金それ自体が許されないことであるうえ、さらに、外資系企業からの献金も認めるのは許せないと、まっこうから反対しました。しかし、自民、民主、公明の多数でこの規制撤廃を強行しました。その直後、日本経団連会長の出身企業、キヤノンが自民党に献金を行ったと報道されています。
 このように自民党も民主党も、企業・団体献金を公然と受け取りながら日本経団連を中心とする財界の意向を反映した政策をつくり実行に移しているのです。
 したがっていま、企業・団体献金を受けとっている政党か、それに反対し国民の浄財のみに頼って活動している日本共産党かの選択が、政党選択の大きなテーマになっているのです。

■報告3

なくならない公共事業をめぐる「汚職・腐敗の構造」
山本豊彦


(1)いまだに続く、政治家と建設業界との関係
 「政治とカネ」をめぐる一連の事件、なかでも公共事業をめぐる談合・汚職事件を取材してきた記者の立場から、昨年、大きなニュースとなった福島、和歌山、宮崎の各県知事が次々と逮捕された事件を中心に、公共事業をめぐる汚職・腐敗の構造について報告したいと思います。
 なぜ、昨年の一連の事件を取り上げるのか。東京地検特捜部などの捜査機関が相次いで談合を摘発し、さらに前知事を次々に逮捕していきました。さすがにもう政治家も、ゼネコンや建設業界などから企業献金を受けたり、パーティー券を買ってもらったり、選挙で応援してもらうのはやめるだろうと思っていました。しかし、現実は違います。自民党の国会議員をはじめとする政治家のなかには、いまだに、ゼネコンや建設業界に選挙や政治資金集めなど「票とカネ」を頼っている人たちがいます。
 昨年10月、自民、公明両党の推す仲井真弘多・沖縄県知事候補(現知事)を励ます会が東京都内で聞かれました。この励ます会は、1枚2万円の券を買って参加する、いわゆる政治資金集めパーティーでした。中川秀直・自民党幹事長や太田昭宏・公明党代表も応援に駆けつけてきたそうです。
 調べてみると、この2万円のパーティー券の一部は、ゼネコンに購入してもらっていました。大手ゼネコンの幹部は「沖縄電力から九州支店に依頼があり、数十枚買った」と購入の事実を認めています。仲井真氏は候補者になる前、沖縄電力の会長でした。別のゼネコン幹部も「自民党国会議員から頼まれ十数枚買った。沖縄はこれから米軍再編がらみの工事もでるからね」とパーティー券を買った「理由」を話しています。ゼネコン側は、沖縄電力が発注をする発電所などの工事の受注や、知事になった後の米軍再編がらみの工事の受注を期待してパーティー券を買っているのです。
 昨年10月といえば、すでに福島県の事件をめぐり前知事周辺に捜査の手がのびていることはマスコミでも大きく取り上げられていました。そういう中でも、ゼネコンにパーティー券を買ってもらっているのですから驚きです。
 しかし沖縄県知事選だけが特殊なケースではありません。ゼネコンでパーティー券購入などの窓口となっている幹部のもとには、今でもほぼ毎日のように購入依頼がくるそうです。その幹部は「一連の談合事件で政治家は変わったかって? 変わらないよ。こちらでだいぶ減らしているが、それでもパーティー券の購入費は年間、5000万円前後にのぼる。パーティー券を買うのを断って、工事受注のじゃまをされたらたまんないからね」とあきれています。
 すでに夏の参院選に向けてある自民党候補者の陣営は、ゼネコンに名簿の提出などの選挙支援を依頼しています。パーティー券の購入もお願いしているそうです。しかも20万円を超えて購入してもらうと、政治資金収支報告書に購入企業の名前を出さなくてはならないため、政治家側は名前を出さなくてすむようゼネコン側に、関連会社や子会社などが20万円以下で分散して買ったようにしてもらっています。たしかに政治家とゼネコンをはじめとする建設業界との関係は、以前のように表立って堂々と、大規模におこなうことはないかもしれません。しかし、いまだに地下深く続いています。公共事業をめぐる腐敗・汚職の構造はなくなっていないのです。

(2) 一連の事件の概要
 東京地検特捜部をはじめとする捜査当局が昨年、相次いで談合事件を摘発し、わずか数カ月の間に知事や直近まで知事だった3人を逮捕したことは、国民に大きな衝撃を与えました。まずは、これらの事件の概要を簡単にみてみたいと思います。
 最初に逮捕されたのは、福島・佐藤栄佐久前知事でした。昨年10月23日、県発注の大型ダムエ事をめぐる収賄容疑です。前知事らは02年8月と9月、県発注の大型ダムエ事受注に便宜を図った謝礼として、実弟の会社が保有する土地を時価より約1億7000万円を超える額で準大手ゼネコン・前田建設工業側に購入させました。東京地検特捜部はこの時価との差額1億7000万円をワイロと認定したのです。県発注の公共事業をめぐる談合では、前知事の実弟や秘書を名乗っていた空調設備会社社長も逮捕され、前知事の威光を利用した“口利き”ビジネスをしていたことも明らかになっています。
 選挙でお世話になった空調設備会社社長や、佐藤前知事の実弟に、お礼として県発注の公共事業を仕切らせる。そのかわりに、選挙では、実弟などが前知事のために「票やカネ」を集める−−こんな構図がみえてきます。
 それから1カ月もたたない昨年11月15日には、和歌山県の木村良樹知事(当時)が競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕されました。和歌山県でも、知事が初当選(2000年)した際、選挙指南役として支援した元ゴルフ場経営者(贈賄容疑で逮捕)が、県発注公共工事の仕切り役、「談合のフィクサー」となっていました。この元ゴルフ経営者は、04年11月に実施されたトンネルなど三件の県発注工事でゼネコンのハザマJV(共同企業体)、東急建設JV、熊谷組JVが受注できるよう“口利き”する見返りに、三社から計1億7000万円を受け取っていました。その元ゴルフ場経営者から知事は、県庁内で現金1000万円を受け取った、として大阪地検特技部は収賄容疑でも逮捕したのです。
 さらにそれから1カ月もたたない昨年11月8日には、宮崎県の安藤忠恕前知事が競売入札妨害の疑いで逮捕されました。03年の初当選した際の知事選で、前知事は「政治指南役」として元国会議員秘書を頼り、東京のヤマト設計と結びつきました。当選直後、前知事は自宅で、入札での便宜をはかる見返りに、前ヤマト設計社長から2000万円を受け取りました。また前ヤマト設計社長に、「政治指南役」の元国会議員秘書にたいし計1000万円を送金させていました。前知事は、前ヤマト設計社長の依頼を受け、県の指名業者にいれたり、業務を受注させていました。宮崎県警は、県発注の業務の入札で便宜をはかる見返りに、計3000万円のワイロを受け取っていたとして前知事を事前収賄と第三者供賄の容疑でも逮捕しました。

(3)事件からみえてくるもの
 一連の事件を整理してみると、いくつかの共通点がみえてきます。
 第一は、単なる建設会社の間の談合事件でなく、県政トップを巻き込む贈収賄事件、いわゆる汚職事件に発展していることです。
 まず、談合と汚職の関係をみてみましょう。
 談合とは、公共事業などの入札を前に、建設業者などが話し合って、落札予定業者、いわゆる本命業者を決めることです。これにより本命業者は価格競争をすることなく、予定価格ぎりぎりの高値で落札することができ、通常より不当に高い利益を得ることができるという仕組みです。公正取引委員会が過去の入札談合事件をもとに推定した不当利得の推定値は受注額の18.6%でした。公共事業はもともと国民の税金で賄われているのですから、ゼネコンが不当利得を得れば、その分だけ税金を払っている国民が被害を受けることになります。このため公共事業をめぐる談合は、被害者が目にみえないので分かりにくい犯罪ですが、国民の税金を“泥棒”する重大犯罪なのです。
 ではこの談合がなぜ、贈収賄事件に発展するのでしょうか。
 ゼネコンは、談合で落札予定業者、いわゆる本命業者となるために、あらゆる手段を使います。入札となる工事は自分の会社の近くだという「地の利」を主張するケースもあります。入札となる工事の設計を実は自分たちは協力していた、いわゆる設計協力で「汗をかいた」とアピールすることもあります。しかしこのようなさまざまなカードのなかで最強のカード、ジョーカーといわれるのが、“天の声”です。“天の声”とは、工事の発注者やそこに影響力のある有力政治家などが、「OO工事は××建設にやらせる」と声を出すことです。
 ゼネコンが本命業者となるうえで、“天の声”の獲得をいかに重視したかを示す文書があります。表題には「ダム営業マニュアル」と書かれています。大手ゼネコンが作成したもので、同社関係者がその内容をひそかに記録していました。日付は91年2月。マニュアルを持つ同社の関係者は「ゼネコン汚職事件前につくられたものだけに、露骨に書かれている。事件後、まずいということでお蔵入りとなった。しかしほとぼりが冷めると営業の打ち合わせなどで、マニュアル通りの議論をしていた」と明かします。大型公共工事の代表ともいうべきダムを受注するための極秘のマニュアルです。
 マニュアルには、B、C、Hなどのアルファベットが記されています。Bはバッジ(政治家)、Cはコンサルタント会社、Hは発注者を示す略号。B(バッジ)には「国会議員、県会議員…」、H(発注者)には「知事、副知事…」、U(有力者)には「893」(ヤクザ)まで含めています。
 受注工作では、発注者などから本命企業のお墨付き、いわゆる“天の声”を出してもらうことを重視しています。「最終的な理想とする状況」として。臓淵丱奪検砲謀社のしかるべき人(社長、副社長あるいは役員)が会ってお願いしている。そして良い返事が得られている知事、副知事が当社を“本命”として認めていることでB(バッジ)と連携がとれていること−−と記しています。
 ゼネコンがダムなどの大型公共工事を受注する上で、”天の声”を得るための政官界工作をいかに重視していたかがよく分かります。文書には書かれていませんが、政官界工作には、ワイロを持っていくことも含まれていたことは容易に想像ができます。
 たとえば、福島県で前知事が逮捕された贈収賄事件の舞台となった木戸ダムの受注額は206億円でした。受注したゼネコンの不当利得額は計算上、38億円にのぼります。この工事受注をめぐる前知事側へのワイロ額は1億7000万円ですから、受注ゼネコンはワイロを出しても十分に儲けることができる計算になります。一連の事件が談合事件から県政トップの汚職事件に発展していったのは、偶然ではなく必然だったのです。
 第二の問題は、政治家サイドが、公共事業をめぐりゼネコンや建設業者との関係を絶つ方向ではなく、「仲介者」を使うなど捜査当局の摘発を受けにくいように、やり方をより巧妙にしていることです。
 93年のゼネコン汚職事件の際も茨城や宮城の知事が逮捕されました。この際は、逮捕された知事は、贈賄側のゼネコンなどから直接、ワイロを受け取っていました。しかし今回は、知事と贈賄側との間に、福島の事件では実弟、和歌山の事件では元ゴルフ場経営者などの「仲介者」を置いています。知事が直接、業者からワイロを受け取らないことで、捜査機関からの追及から逃れようとしたものと思われます。
 このように、公共事業をめぐりゼネコンや建設業者との関係を絶つ方向ではなく、あの手この手をつかって抜け穴をさがそうというのが政治家の姿です。
 たとえば国会議員などがよく使う手の一つに、元請けゼネコンに、自らの後援全企業などを下請けとして使うよう要請することがあります。
 国土交通省が02年3月に発注した森吉山ダム(秋田県)では、五人の国会議員(当時)の秘書らが元請けゼネコンにたいし、工事のさまざまな下請けから給食まで広い範囲で特定業者を使うよう“口利き”していました。ゼネコン関係者らによると、本体工事入札直後ごろから、東京の議員会館や地元事務所につめる秘書などが、元請けゼネコンの役員や秋田営業所などにたいし、特定企業名をあげ、「推薦」してきたといいます。このやり方について自民党有力議員の秘書はこう解説します。
 「発注者にこの会社に仕事をとらせろなどというと、すぐに手が後ろにまわっちやう。しかし、公共事業をとった元請けゼネコンに後援全企業を下請けにいれるよう頼んでも、民間と民間の話なので問題にならない。下請けに入れることができたら、選挙の際に応援を頼めるし、多少の献金もお願いできる。この方がわれわれにとっても安全だ」
 たしかに、すぐに汚職事件にはならないかもしれませんが、公共事業を利用して、自らの「票やカネ」を増やす、いわゆる公共事業を食い物にしている点では何らかわりません。
 第三は、政治家同様、ゼネコンの体質も変わっていないことです。一連の事件では、福島で、前田建設工業が前知事側にワイロを提供し、和歌山ではハザマ、東急建設、熊谷組などが談合の「仕切り役」に謝礼金を出していました。
 93年のゼネコン汚職事件の際もゼネコンは「談合からの決別」をいっていました。しかし、それ以後もゼネコンがかかわる談合や贈収賄事件は後を絶ちません。00年の中尾栄一元建設相の受託収賄事件では、若築建設側が計6000万円のワイロを提供しています。02年の「業際都市開発研究所」による一巡の汚職事件では、戸田建設側が茨城県下妻市長に735万円のワイロを贈りました。06年の防衛施設庁の官製談合事件でも、大手ゼネコンの鹿島、大成建設、大林組、清水建設などの担当者が談合罪で略式起訴されています。入札談合にたいする罰則を強化した改正独占禁止法の施行を前に大手ゼネコンの鹿島、大成建設、大林組、清水建設などは05年12月末、「談合決別」宣言をあらためてしました。しかし直後の06年2月と6月におこなわれた名古屋市発注の地下鉄工事の入札で、「談合決別」宣言をしたはずの鹿島、清水建設、大林組などが談合をしていたとして、名古屋地検特技部は今年2月、大手ゼネコンの担当者を逮捕しています。中堅ゼネコンの幹部も「いまのところ談合はやっていないが、これがいつまで続くかは自分たちでも分からない…」と語っています。

(4)注目される緑資源関連の献金
 「ナントカ還元水」で一躍、時の人になっているのが松岡利勝農水相です。実は、松岡氏をめぐり疑惑が浮上しているのは、光熱水費タダの議員会館に唯一の事務所をおきながら、年間500万円以上の光熱水費を計上しているだけではありません。
 東京地検特技部は5月、農水省所管の独立行政法人の緑資源機構をめぐる官製談合事件で、同機構の担当理事らを独占禁止法違反容疑で逮捕しました。これにかかわり、日本共産党の紙智子議員の参院農林水産委員会の質問(5月8日)が注目されています。紙議員は、官製談合疑惑が浮上している同機構から工事を受注する業者らでつくる任意団体の政治団体などから松岡氏が一昨年までの10年間に、総額1億3000万円の献金を受けていることを明らかにしました。松岡氏に献金をしていたのは、全国の森林土木業者などが加入する農水省所管の公益法人等と一体の9つの政治団体です。
 実は松岡氏は林野業界と深い関係を持つ政治家です。69年に林野庁に入庁。北海道の天塩営林署長や林野庁広報官を務めたあと衆院選出馬。当選後は、農水副大臣、自民党林政基本問題小委員長を務めるなど林野業界の有力議員です。林野業界からの松岡氏への巨額献金は何を意味するのか。自民党閣僚経験者の秘書は「松岡先生は、林業に強いことは間違いない。いま談合問題が浮上しているだけに非常に心配している」と話しています。

(5)どうしたら汚職・腐敗構造をなくせるか
 公共工事をめぐる談合や汚職事件はどうしたらなくすことができるのでしょうか。
 談合や汚職事件がおこるたびにまず防止策としてあげられるのは、入札制度です。国などでは現在、一般競争入札や入札価格とともに技術力を評価する総合評価落札方式の導入を進めています。しかし、一般競争入札や総合評価落札方式を導入したからといってそれだけで談合や汚職を防げるものではありません。事実、福島で汚職事件の舞台となった木戸ダムは一般競争入札でした。国土交通省などが発注した水門工事の談合事件では、総合評価落札方式での入札でも談合がおこなわれていました。
 この総合評価落札方式では、技術力の評価のウエートを高くした結果、入札価格で最も低い価格を入れたところではなく、入札価格では二番目、三番目に安いが技術力で高い評価を得たところが落札する、いわゆる「逆転」現象が発生しています。問題はこの技術力の評価が不透明なところです。大手ゼネコンの技術関係幹部も疑問を持っています。
 「入札価格の評価は一目瞭然だが、技術力の評価はきわめて不透明だ、いくらいい技術を提案しても、それが役所が考えている答えとあわないと評価は低くなる。高い評価を得るためには、発注者がどのような答えをもっているか探る必要がある。結局、また天下りをとろうという話にもなりかねない」
 談合や汚職事件をなくしていくためには、その土壌となっている汚職・腐敗の構造にメスを入れることが必要です。
 汚職事件の温床になっている業者間の談合をなくす手段の一つは、独占禁止法の罰則をさらに強化することです。昨年1月施行となった改正独禁法では、違反した業者への課徴金の算定率を受注額の6%から10%に引き上げるなど罰則を強化しました。公正取引委員会が過去の入札談合事件をもとに推定した談合による不当利得の平均値は、受注額の18.6%ですから、現状の課徴金では、談合が見つかって課徴金を払っても、まだ“得”する計算になります。これにたいしアメリカでは対象商品の売上高の15〜80%の罰金です。少なくても談合をすれば損をするぐらいの課徴金の引き上げが求められます。しかし、自民党や財界は課徴金のさらなる引き上げに消極的といわれており、政府の姿勢が注目されます。
 汚職事件をなくす重要なポイントの一つは、政治家とゼネコンなどのカネのつながりを法律的に絶つことです。先にもふれたように、繰り返し公共事業をめぐる汚職事件がおきているにもかかわらず、政治家側もゼネコン側も、汚職・腐敗構造を断ち切る姿勢がみられません。それならば、法律にもとづき、政治家とゼネコンのカネの関係を断ち切ることが必要です。営利が目的である企業にとって、政治家への献金はもともとワイロ性を持つものです。それに加え、公共事業受注企業からの政治家への献金は、公共事業という税金が政治家側に還流するという側面を侍っています。このような公共事業を食い物にするもととなっている公共事業受注企業からの献金はただちにやめることが求められます。
 公共事業をめぐる汚職・腐敗構造をなくしていくためには、議会のきちんとした監視も必要です。一連の事件で共通していることの一つに、日本共産党をのぞく「オール与党」の県議会が知事をチェックできなかったことがあります。マスコミも「モノ言わぬ議会」(「日経」06年12月12日付)「知事選には多くの議員がかかわり、『オール与党体制』を構成していることから、議会のチェックが甘くなり、知事の暴走を許してしまったのではないか」(「長崎新聞」06年12月5日付)などとオール与党議会の問題点を指摘しています。
 以上のように独禁法の罰則強化で談合をなくし、ワイロのもととなる公共事業受注企業からの献金をやめさせ、きちんと議会が汚職・腐敗を監視すれば、長期にわたる公共事業をめぐる「政治とカネ」の問題に決着をつけることができるのではないでしょうか。

■第2発言

◆「疑惑」をもたれた政治家は説明する義務がある−−佐々木さん
 阪口さんが報告された政治資金の「出」の問題ですが、日本共産党は、資金管理団体の事務所費問題について積極的に国会でとりあげました。法律上の「隙間」を悪用して、報告しなくてもいいとされている事務所費のなかに、表に出しにくい支出を入れているのではないかと疑われている問題です。
 端的な例は、資金管理団体が国会の議員全館に置かれているにもかかわらず、経常経費である光熱水費が、年に500万円以上も計上されているという松岡農水相の疑惑です。議員会館にあるのなら事務所費はタダであるにもかかわらず、巨大な金額を計上していたのです。その内容を公表すべきだというのが国民世論の圧倒的多数です。ところが、松岡大臣はいまだに開き直り、安倍首相もそれを容認するという姿勢を続けています。
 最近、政治資金規正法の「改正」が、与党で合意されたということですが、その内容は、政治資金管理団体一つだけに限定するとか、上限5万円までは公表しなくてもよいなど、完全にザル法です。自民党と公明党は、格好だけつけて選挙を乗り切ろうと言うわけです。
 真相が解明されていない例として、佐田玄一郎前行革担当大臣の事務所費問題があります。佐田氏は、やってはならない「つけかえ」があったことを本人が認めて辞任したわけです。安倍首相もその辞任を了解した。それならば、間違いのあった政治資金報告書を当然訂正すべきです。しかし、私が国会で、訂正があったかと質問すると、「訂正の届出はございません」というのが答弁でした。疑惑は隠されたまま、辞めただけで真相は何も明らかになっていないのが真相です。
 民主党の側はどうか。小沢代表と中井洽議員は不十分なものですが、内容を一応公表しました。しかし、参議院副議長を辞任した角田参議院議員は、説明を求められているにもかかわらず、中身を明らかにしていません。疑惑をもたれた当事者と政党は、当然、その問題について事実を解明し国民に説明する義務があります。

◆政党助成金・政務調査費…−−山本さん
 政党助成金の問題について若干の問題意識をのべたいと思います。
 政党助成金は1995年に導入されて今年で13年になります。昨年末までに支給された政党助成金は総額3760億円。2005年でみると自民党で収入の約60%、民主党で84%を政党助成金に頼っているのが現状です。汗を流して国民から献金を集めるという努力を放棄して、税金にどっぶりつかっています。このような姿勢が、ナントカ還元水問題にみられるような「政治とカネ」をめぐる国民意識とのかい離につながっているのではないでしょうか。
 このような「政治とカネ」をめぐる国民意識とのかい離は国政だけの問題ではありません。地方政治にまで広がっています。先のいっせい地方選挙でも、議員の調査・報告活動にあてる政務調査費のあきれた使い方が各地で問題となっています。自民党や公明党の地方議員のなかには、日常生活費であるクリーニング代や町内会費、さらにはディズニーシーで買ったお菓子代まで政調費で支出していました。このような不適切な支出だけでなく、領収書を偽造するというケースまで出ています。埼玉県越谷市の公明党市議団は、地元ラーメン屋の白紙領収書に勝手に全額を書き込み、不正請求していました。この領収書の日付が、公明党市議団が長崎県内を行政調査旅行をしていた日付だったために不正がばれてしまったものです。住民が政調費の使い方を監視していくためにも、領収書の添付・公開が求められています。

◆企業献金禁止は世界の常識−阪口さん
[企業献金は「政治とカネ」の最大のポイント]
 先ほど、佐々木さんから報告がありましたが、私も、政治献金の議論では、経団連が政党を評価するやり方がいちばん問題だと思います。自分たちの要求にあうところには、高い点数をつけて、そうでない政党には低い評価をつけることで、カネで政策を誘導する政治献金です。これは自民党に要求書を出して、これを実現してくれたらこれだけお金を渡しますということにほかならず、この献金の趣旨はあきらかに「賄賂」です。経団連は、いままでは、裏でやっていたようなことを、政治献金を再開する際に表に出したのです。昔の経団連の斡旋より、悪質性が高いと思いますが、総じてマスコミの批判が弱い。これこそが、いまの「政治とカネ」の問題では、最大のポイントだと言えます。
 この点は、熊谷組の裁判でも、政治献金の賄賂性を主張したのですが、一審では認められたものの、二審では否定されました。裁判官は、社会の常識より、自民党、財界の常識を取り入れたのです。普通にみれば、政策を評価するなどと言って、自分たちに有利なようにカネで誘導していく点ではより悪質です。
 しかも、経団連が誘導しようとしている内容は、憲法「改正」であったり、武器輸出原則見直しであったり、消費税の増税であったりするわけです。政党は政党で、政治献金がほしければ、そういう政策をかかげることになることは世間の常識です。しかしマスコミの大半はそれを批判していない。ほんとうに異常です。
 だいいち外国では、企業献金の禁止は常識です。アメリカでは「ソフトマネー」と「ハードマネー」という献金の集め方があります。ハードマネーとは、直接選挙活動に使うための資金への献金で、ソフトマネーとはその他の政党の活動への献金です。いずれにしても、企業が直接献金することは禁止されています。フランスも1995年に企業献金は禁止されています。長く無規制だったイギリスも、企業が献金をすれば、その情報を開示する義務付けを行うなどの規制がはじまっています。日本の企業が、表に出さないのとは対照的です。
[政治家の金の土壌にあるもの]
 天下の経団連が公然と、ワイロ的な方法で、企業献金を政策評価して献金をするのですから、山本さんの報告であった、地方の企業が、地方の役に立つ政治家に金を配ってなぜ悪いという風土が生まれます。
 山本さんの知事の汚職とワイロについての報告の根本は、中央政界で、企業献金などがまかりとおることにも大きな原因があると思います。政治家の金という風土、土壌を生み出しているのです。
 同時に、山本さんの指摘にあったように、ゼネコンの政治家のパーティー券の購入問題も政治とカネの視点から見ると、抜け穴です。企業献金は政党、政党支部以外の政治団体への献金を禁止しています。資金管理団体などへは献金が禁止されているのですが、現金では違法だが、パーティー券ならOKという法律もひどいものです。これなどもぜひ、国会で、金にまみれていない政治家の手で問題にして欲しいですね。
 談合には悪い談合(談合金を配る談合)と、良い談合(業者間で順番に仕事を回す談合)があるといわれてきました。検察も悪い談合は取り締まるが良い談合は「形式犯」と見ていた。だから、捜査にあまり熱心でなかったという批判がなされていた。しかし、2006年の橋梁談合の摘発以降、急旋回して、良い談合も取り締まるようになりました。
 橋梁談合から、旧道路公団談合、汚泥談合、水門談合へと捜査が伸びました。おそらく、橋梁談合をしていた企業の証拠を押収したり、談合担当者を逮捕したら、それ以外の談合資料が発見されたり、関係者が自白したからでしょう。これが東京地検の談合捜査を勢いづけました。今まで談合がこれほど行われながら、談合が放置されてきたのは、政治家がこれをかばい、検察も「形式犯」とみて、捜査に熱心でなかった。しかし山本さんの指摘のとおり、談合は悪であり、これは断固摘発すべきという世論になった点が、この1年から2年の間の特徴ですね。
 政治家のカネに関する政治資金規正法違反を、検察はいまなお「形式犯」と見ているようでは、国民の常識、世論とは大きくかけ離れている。松岡の虚偽記載告発問題を適当な捜査でお茶を濁すようではあってはなりません。談合事件のように本腰をいれて、捜査すべきです。そのためには、政治とカネ問題を追及する世論を起こすことが必要だと思います。

■まとめの発言 政治腐敗の一掃へ何が必要か

◆日本共産党と「赤旗」の役割を自覚して−−山本さん
 昨年は知事の相次ぐ逮捕、そして今年は、国会議員の事務所費疑惑から、「ナントカ還元水」の松岡利勝農水相の光熱水費疑惑と、「政治とカネ」をめぐる問題は途切れることなく続いています。この「政治とカネ」の問題を少しでも、国民の願う方向で変えていく上で、日本共産党と「赤旗」が果たす役割が大きいことを実感しています。
 その一つが、強面で有名な石原慎太郎・東京都知事をめぐる問題です。石原氏については、税金を使って豪華な海外出張をしているだとか、交際費を使って仲間内で飲み食いしているなど、さまざまな話かささやかれていました。しかし、あの強面にくわえ、「オール与党」の都議会のなかで日本共産党以外が石原知事に正面きって批判や追及をしないなかで、“石原タブー”ともいえる状況がつくられていました。
 その“石原タブー”を崩す先陣を切ったのは日本共産党都議団でした。情報公開などで入手した資料をもとに石原氏が総額2億4000万円超にのぼる超豪華海外出張をしていることや、都の事業に四男を重用しているなど都政私物化の実態を明らかにしました。四男重用の指摘に石原氏が「余人をもって代えがたい」と居直ったことで、国民からの怒りをかいました。
 これに追い討ちをかけだのが「赤旗」日曜版12月10日号のスクープでした。石原知事と「政商」といわれている水谷功・水谷建設元会長との料亭会合とヤミ献金疑惑を指摘した記事は、大きな反響を呼びました。一般紙や週刊誌がこの問題を次々にとりあげ、ある週刊誌は「赤旗・石原戦争」の見出しまでつけました。“石原タブー”が崩れはしめたのです。
 さすがの石原氏にも変化がでました。石原氏に何度もインタビューしたことのあるジャーナリストは、これまで気に食わない質問には決まって「くだらねーな」「想像力の無い奴だな」といっていた石原氏が、微笑みながらきちんと質問に答えていた、と雑誌に書いています。インタビューでは謝罪を口にし、その後の知事選では「反省」まで売りにしていました。国民の強い批判のなかで、東京都のホームページには、知事の海外出張や交際費支出についての報告を載せはじめました。
 知事選で票を減らしたものの3選を決めた石原知事は、傲慢さが早くも復活したともいわれています。最後に東京都元幹部が語ってくれた言葉を紹介します。
 「石原さんが都知事選で『反省』をいっているのを聞いてびっくりした。私も石原さんはよく知っているが、謝ったり、反省を口にする人ではない。『赤旗』と共産党がそこまで追い詰めた。『政治とカネ』では、議会やマスコミがきちんと監視をすることが大事だ。共産党や『赤旗』とは意見を異にすることも多いが、石原さんの監視役としては最大限の信頼を置いている」

◆規制の強化と情報の公開を−−阪口さん
 「政治とカネ」について、どう規制していくかですが、支出の点でいえば、まず政治資金規正法の21条2の第2項を削除して、政治家個人への政党からの寄付を全面的に禁止する。自民党の数十億円の巨額の政策活動費・組織活動費というような不明朗な支出をなくす。次に5万円未満の支出についても領収書の添付の義務化をすすめ、開示をさせる。そして、政治団体全体の事務所費、経常経費についても明細、領双書を全面開示させる。支出の面で。この三つを規制すれば大きく透明性は確保できるようになると思います。
 私は、ぜひここで主張したいのが、そうした規制とともに、インターネットを活用することで、政治家の政治資金の流れをすぐに検索できるようにすることが効果的ではないかと考えています。つまり、3月末に、電子データで報告を出させて、それをインターネット上にすぐに公表する。これは可能ではないでしょうか。
 今は、政治家の政治資金を調べようと思えば、総務省と地方選管の両方にいちいち見に行かなければいけません。たとえば伊吹大臣の資金管理団体について総務省で調べても、政党支部の事務所などもありますから、それの費用については、京都の道管にいかなければいけない。少なくとも国会議員が主催する政党支部、資金管理団体、後援会などはインターネットで公表し、随時に閲覧謄写ができる、ダウンロードできるようにすべきです。それをしてくれれば、透明性がものすごく高まります。
 こうすれば誰でも見られるようになります。すると何かあれば、誰かがおかしいと気がつくようになるのです。プロが監視しているだけではしょせん限界があります。いちばんは国民の監視です。政治団体は何千という数があります。どの団体がだれのものであるかもわからない。そこに透明性を確保する上でも、ぜひこの点は、当面の課題として、検討すべきことではないかと思っています。共産党もこの点で、是非頑張って欲しいですね。

◆清潔な政治求める声代弁する党の前進を−佐々木さん
 「政治とカネ」の問題では、日本共産党は、企業・団体献金の禁止を主張し、みずからも企業・団体献金をうけとらない姿勢を貫いてきました。また、国民の血税を山分けする政党助成金の廃止を求め、1円も受け取らないできました。私たちは、国民一人ひとりの浄財、個人の寄付によって支えられる政治活動こそが政党のあり方の基本であると考え、それを実践しているのです。だからこそ、清潔な政治を求める国民の圧倒的な声を代弁できる資格のある政党だと思っています。
 こうした日本共産党だからこそ、すべての政治腐敗の追及に立つことができたのです。日本共産党国会議員団では、私を責任者とする政治腐敗追及委員会をつくり、不正を徹底追及をする姿勢を貫いてきました。「政治とカネ」の問題を、徹底追及できる姿勢と能力をもっているのは日本共産党だけです。
 阪口さんの発言にもあった政治資金の公開という点は、日本共産党も主張してきています。前にも触れたように、政治資金規正法は公開によって不当な資金の授受を未然に防止するとしています。この本来の主旨にのっとり、政治資金は、技術的な進歩にもあわせて、全面的な公開をするべきです。
 日本経団連は「政策買収」と同時に、「改革」をいっそう確実・スピーディーにすすめるため「政治支配」を強めています。行政への介入の足場として、経済財政諮問会議を最大限、利用しています。この諮問会議は、他の審議会とは違って重要政策の決定権を持っています。ここで決められたものが、閣議決定となる、のです。この諮問会議は「構造改革の司令塔」と位置づけられ、日本経団連や経済同友会など財界代表が直接乗り込み、民間四議員と言われる財界中心のメンバーが、毎回、合議をリードしています。
 日本共産党第四回中央委員会総会にたいする志位委員長の幹部会報告では、「貧困・格差問題、憲法改定問題という、選挙戦の二つの焦点」を明らかにしました。
 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キャノン会長)は、「格差は当然」、「格差は経済活力の源」と言いきり、福祉・社会保障は国民の「甘え」であり、格差は当然だと述べています。この無慈悲な姿勢が貫かれているのが、日本経団連の「改革」です。この「改革」が、国民を“勝ち組”と“負け組”に分断し、「自己責任」「結果の平等を求めてはならない」と“負け組み”に責任転嫁し、格差を広げ、殺伐とした社会を生み出しています。
 参議院選挙で政党を選ぶとき、「政治とカネ」の問題が大きな柱となります。それは、「国民が主人公」の政治を真に行えるかどうかの選択です。日本共産党こそ、国民の期待に応えうる党だと、大いに訴えていきたいと思っています。
(5月25日)

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