憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【06.09.14】“病状”あって“処方せん”のない『労働経済白書』名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2006年9月14日
『労働経済白書』(平成18年版)を読んでみると、そこには、なかなかリアルな雇用実態が反映されています。
たとえば、「1990年代半ば以降、非正規の職員・従業員割合は上昇幅が大きくなり、パート・アルバイトの割合は、95年の17.3%(825万人)から2001年の23%(1152万人)へ上昇している。派遣社員の割合は、統計が継続している2000年の0.7%(33万人)から2006年1〜3月期の2.4%(121万人)まで上昇している」と書いて、非正規雇用の増え方の大きさを示しています。
とくに、青年のなかで非正規雇用が大きくなっていることも、明らかになっています。
そして「いったんこのような(不安定)就業についた場合、企業の厳しい採用姿勢から、正規の仕事につくことは困難である様子もうかがえる」。「若年時に不安定な就業についた場合、そこから抜け出すことは困難であり、また、不安定な就業を継続したとしても、年齢とともに年間収入が高まっていくことは見込めない」と述べています。
そのうえで、青年の非正規雇用化は「今後の労働市場、ひいては我が国の経済活動にも大きな支障をきたすことになろう」と指摘しています。なかなか、まっとうな指摘だと思いました。
企業が非正規雇用をもとめる最大の理由として、「『労務コストの削減のため』というのがもっとも多く、約8割をしめている」と紹介していることも注目されます。――そこまでいうなら、企業の身勝手な行動を規制し、きちんとしたルールを求めることが必要ではないでしょうか。
ところが、この『労働経済白書』は、そのような状況をつくってきた政府の雇用における規制緩和政策についても、企業の労務政策についても、まったくふれようとしていないのです。たとえば、労働者派遣法によって直接雇用の原則を否定したこと、1999年の改正で労働者派遣事業を原則自由化したことは、非正規雇用を大きく拡大する要因となりました。
さらに98年の労基法改正によって、高度の専門・技術労働者などへの3年有期雇用契約を認め、2003年の労基法改正では有期契約の原則的限度期間を1年から3年に延長し、専門・技術労働者などに関する限度期間を5年に延長しました。このため、企業は3年有期の労働契約が可能となり、正社員から有期雇用労働者への置き換えが加速されることとなったのです。
これらの非正規雇用の広がりは、社会的な格差を拡大する根本的な原因となっています。
そのことにまったくふれず「再チャレンジ」をいくら説いても、国民を欺くことにならざるをえないのです。――今年の「労働経済白書」は、“病状”は書いてあるが“処方箋”のまったくないものになっています。