憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【06.06.08】利益主義あおる小泉改革 学費出せない子どもどこへ名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2006年6月8日
「村上ファンド」によるニッポン放送株の不正売買で、東京地検特捜部は、代表の村上世彰容疑者を証券取引法違反=インサイダー取引容疑で逮捕しました。
小泉首相は、「取引というのは公正で信頼されるような体制をとっていただきたい」と人ごとのように語りました。しかし、ホリエモン事件も今回の事件も、マネーゲームをあおってきた小泉内閣の責任があらためて問われなければなりません。
問われるべきは、投資先企業の価値や事業の公益性をないがしろにし、自らの利益だけを追及する行為であり、遡れば、村上ファンドのような「私募ファンド」を可能にした1998年の投資信託の規制緩和です。
それを提言したのが規制緩和委員会の委員長・宮内義彦オリックス会長であり、村上ファンドはそのオリックスの出資を受けて設立されたことも忘れてはなりません。このような政財界による支援があったからこそ、村上氏のような自己の利益のみを追求するマネーゲームが可能となり違法な行為につながっていったのです。
利益至上主義と言えば、大手銀行6グループの3月期連結決算ですべて過去最高の最終黒字を計上したそうです。その結果、最終利益の合計は前年同期比で4・3倍の3兆1212億円に拡大、バブル期をも上回りました。
特に2006年3月期は、貸し倒れ引当金の「戻り益」が膨らんだことなどから、逆に3111億円の増益要因に転じました。引当金の「戻り益」とは、将来の損失を見込んで計上した引当金が多すぎたため戻したものです。内部留保として隠していた利益がいかに大きかったかを示しています。
銀行は、不良債権処理の名のもとで、中小企業に対する貸し渋り・貸しはがしをおこなってきました。そして、庶民には預金金利を雀の涙ほどしかつけず、各種の手数料をどんどんつり上げ、サラ金と提携して消費者金融でもボロもうけをはかってきました。
政府は、「収益力向上」の名でそれをあおり、銀行に税金を30兆円も投入し(そのうち10兆円が戻らないことが確定)、銀行の利益だけを膨らませてきました。
その一方で、国民の暮らしと営業は、いっこうに良くなりません。たとえば、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)が調べたところによりますと、212の私立高校で、経済的理由で学校を退学(除籍)になった生徒は、高校で285人もいました。――理由として、自営業不振や倒産、リストラ・解雇・失職などがあげられています。「学費の半分を自分で稼いでいたが弟を進学させるため働くことになった」などの例があります。
小泉首相は「コメ百俵」を唱えましたが、「構造改革」のもとで、子どもたちが経済的な理由で退学を余儀なくされているのです。首相は、この現実を知っているのでしょうか。
政治に求められるのは、カネ転がしを支援するのでなく、額に汗して働く庶民の暮らしを支援することではないでしょうか。