憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【06.03.16】日銀の低金利政策で家計がどれだけ損をしたか名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2006年3月16日
先日の財務金融委員会で、私は日銀総裁に質問しました。
日銀は、金融政策決定会合で、2001年3月から5年にわたって続けてきた量的緩和政策の解除を決定しました。当面は、ゼロ金利を継続するといいますが、この時点で、これまでの超低金利政策がどのような影響を与えたかについて、検討すべきではないでしょうか。
国民経済計算にもとづいて、三菱総合研究所が91年の金利水準をもとに試算したところ、これまでに家計が失った利益(逸失利益)は累計で283兆円にのぼります。
その反面、企業負担は260兆円軽減され、金融機関は利子所得を95兆円増やしています。要するに、低金利を通じて家計から大企業・金融機関に巨額の所得移転がすすんだのです。この傾向については、福井総裁も認めました。
次に財政赤字と資金の流れの関連についてききました。すでに国の長期債務残高は605兆円にのぼっており、地方が204兆円、重複を除いても国・地方あわせて775兆円の債務残高になります。その規模は、GDPの150%にあたる莫大な額です。仮に、金利が1%上がれば、それだけで7〜8兆円もの財政負担になります。
政府の予測によれば、今後、普通国債の発行残高は、いまの542兆円程度から、2012年の753兆円、2017年度の892兆円に増加します。地方債もあわせると2012年に948兆円、2017年に1120兆円となると予測されています。
いったい、これだけの膨大な公債をどのようにして消化するのか。また、その際の金利はどうなるのかが問われます。
経済財政諮問会議に出された資料をもとに、2003年度と2017年度を比較すると、「民」から「官」に流れる資金は、650兆円から950兆円に増えます。そうでなければ財政が支えられないからです。はたして、それが可能なのでしょうか。
問題は、郵政事業が民営化されることによって、新たな問題が出てくるのです。これまで、郵政公社の資金運用は、基本的には国債またはそれに準ずるものに限定されてきました。つまり、信用リスクを取るような運用をしなかったのです。だからこそ、国債発行の受け皿になれました。
じっさい、日銀の「資金循環統計から見た国債保有者別内訳の変化」という統計を見ても、1994年度末と2004年度末をくらべると、郵便貯金の比率が5.4%から14.7%へ、簡保は2.5%から7.7%へと上昇しています。
しかし、郵政部門が民営化されたら、リスクを取る運用に変わります。そうなると、国債を安定的に引き受ける公的な部門がなくなるわけです。
そこで問題になるのは、これだけ膨大な公債を、もっぱら日銀が引き受けることになるのではないかという懸念です。これにたいして、福井総裁は、「日銀の直接引き受けは、ありえない」と明言しました。