憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【05.05.12】JR西日本の“見せしめ再教育”こそ見直すべき名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2005年5月12日
JR福知山線の脱線事故について、技術的・物理的原因の究明がすすんでいます。
しかし、背後にある大きな要因として、高速・超過密のダイヤ編成と、ミスをした運転士に対する見せしめ的「再教育」こそ、問題にしなければならないと思います。
JR西日本のダイヤは、並走する阪急電鉄宝塚線より速い快速などを、ラッシュ時に安全対策も不十分なまま、3〜5分間隔で走らせる内容になっていました。ここには、国鉄の分割・民営化後の私鉄との激しい競争のもとでの利益優先の姿勢があったと言わなければなりません。
脱線事故を起こした宝塚発午前9時3分の列車は、事故現場の約1キロ手前の塚口駅(通過駅)と、次の尼崎駅(停車駅)の間を3分で走るよう定められていました。
関係者の話として伝えられるところによると、以前は塚口―尼崎間は95キロで走れば間に合う比較的余裕のある区間でしたが、ダイヤ改正で余裕がなくなり110キロを超えるスピードを出さないと間に合わなくなったそうです。
事故列車はその区間で遅延を取り戻そうとしたため、スピードを出しすぎブレーキをかけるタイミングが遅くなったのではないかと指摘されています。
ミスをした運転士には処分を受けたうえ、「日勤教育」という名の見せしめ的な「再教育」が待っています。これも重大な問題です。
マスコミには、この「再教育」についての生々しい報道がありました。たとえばある運転士のばあい、ミスをしたため「戒告処分」を受け、就業規則の筆記4日間、花壇などの草取り5日間……など、計14日間の日勤教育も課されたそうです。
それだけではありません。ホームにずっと立たせたまま、入ってくる電車すべてに「私はこういうミスをしました」と言わせるものまであると言います(内容や期間は職場長まかせ)。
今回事故を起こした高見運転士は、車掌時代に2回、運転士になってからも昨年6月にオーバーランで処分されていました。そのさい、13日間の日勤教育を受けていました。「暗い表情で反省文を書かされている姿が目撃されている」(「毎日」5月1日付)そうです。
この運転手は、「再教育」の恐怖感から遅れを取り戻そうと高速で走り、ブレーキをかけるタイミングをギリギリまで我慢して時間を短縮したのではないでしょうか。
このように、事故を引き起こした直接の責任が運転士にあるとしても、その背後にある真因――「過密ダイヤ」と「恐怖の再教育」、その根本にあるJRの利益至上主義にメスを入れなければ、問題の本質にせまることはできないのではないでしょうか。