憲昭からの発信
書評 山家悠紀夫著『景気とは何だろうか』(『しんぶん赤旗』2005年3月27日)
景気をどう見るべきか。――本書は、九〇年代半ばからの日本経済の構造的変化を分析しながら、この国民の素朴な疑問に正面から答えるものとなっています。
山家氏は「回復が実感できない」のは、一九九七〜九八年頃から「景気の構造変化」が起こったからだと指摘します。消費税引き上げなどの九兆円負担増が景気後退を招いたことは明らかですが、この時期を境に「構造変化」が起こったと山家氏は指摘します。
これまでは、政府の景気浮揚政策などで「企業部門が良くなると、賃金の上昇、雇用の拡大などを通じてその良さは家計部門に伝わ」るメカニズムが働きましたが、この時期を境に「企業部門の回復が容易には家計部門には伝わらない」、景気が回復しても「暮らしが悪くなる」という事態が生まれました。統計上でも、生活が「苦しい」とする世帯が増え、賃金・就業者数も減り、自営業者が減少し、所得格差が拡大しています。
山家氏は、この事態をまねいた「小泉改革」を厳しく批判しています。
本書は、政府統計の特徴についても解説があり、主要な「景気循環」論の紹介など基礎的知識の習得もできますが、特にすぐれているのは、「暮らしの視点から景気を見る」という姿勢で貫かれていることです。
今後「暮らしが良くなるため」に必要なことは、所得が増えること(賃金の引き上げやサービス残業をなくす)、雇用が安定すること、年金・健保などで将来不安をなくすこと。――山家氏のこれらの提案は、私たちの政策方向とも基本的に合致するものです。
山家氏は、今年の衆議院予算委員会の公述人として意見陳述をおこない、各党の質問に的確に答えるなど注目されました。今後、いっそう幅広い活躍を期待するとともに、本書が多くの方に読まれることを心から願っています。