憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【05.03.17】堤前コクド会長逮捕に思う 証券監視委の機能強化を名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2005年3月17日
西武グループに君臨してきた前コクド会長の堤義明容疑者が、証券取引法違反容疑で東京地検に逮捕された事件は大きな衝撃を与えました。
問題は、親会社であるコクドが非上場企業であるため、経営内容が不透明となっていることです。私は、上場企業と同じ水準まで開示させるべきだと思います。
伊藤金融担当大臣は、「金融審議会での専門家の議論を踏まえて対応したい」と答えていましたが、3月11日の閣議で、「証券取引法」改正案が決定されました。それによると、上場会社の議決権の過半数を直接又は間接に保有する会社(親会社)の情報公開を義務づけることとされています。
開示させる内容は、(1)株式の所有者別状況および大株主の状況、(2)役員の状況、(3)商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書、付属明細書等。……
この改正案によって、今回のような有価証券虚偽記載が発生しない保障はあるのでしょうか。それを防ぐ手だては、盛り込まれているのでしょうか。
たとえばコクドは、実際に西武鉄道の発行済み株式の64%余りを持っていましたが、西武鉄道社長らと共謀して一部を隠し、有価証券報告書に43%とウソの保有比率を記載していました。このような事態は、こんどの法改正によってどう阻止できるのか、見えてきません。結局、開示内容の報告を受けたら、それを信じるということではなのでしょうか。
私は、その報告内容が正しいかどうかについて、きちんとチェックできる権限が付与されなければ、虚偽記載を阻止できないのではないかと思います。
違反した場合、課徴金を課すことができるのでしょうか。昨年の金融庁における検討段階では、課徴金の案はあったのに、なぜ抜け落ちたのでしょうか。この点について、伊藤金融担当大臣は、他省庁との協議のなかで合意できなかったことを認め、「課徴金については断念したわけではない。検討したい」と答えました。
今回のような事件を引き起こさないようにするためには、証券取引等監視委員会の機能を強化しなければなりません。日本のが場合、「相場操縦、インサイダー取引などの犯則事件」についてのみ、「捜査、差押え等の強制捜査権」が認められています。しかし、それははっきりと「犯則事件」と断定できる場合だけです。
日本の人員は、440人。アメリカの証券取引委員会(SEC)の人員は、3592人です。――権限も陣容も、雲泥の差があります。
権限については、日本の場合、告発や行政処分などの勧告に止まるのに対して、アメリカのSECは、民事制裁金を課したり、不当利益の返還、違反行為の差し止め命令、排除命令をおこなったり、民事訴訟から刑事協力まで幅広い権限を与えられています。
日本の証券取引監視委員会の権限を、少なくともアメリカ並みに強化すべきではないでしょうか。