憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【05.02.03】NHK番組改編 特定の立場から『公平に』は政治介入名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2005年2月3日
NHK番組への「政治介入」問題について、「公正中立にやれと言って何が悪いのか」という意見があります。しかし外部の者が、ある番組の編集者に対して特定の立場から「公平に」と圧力をかけること自体が問題なのです。
放送法第3条には、どう書いているでしょう。――「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定められています。これは、日本国憲法第21条の「言論、出版、表現の自由を保障する」という規定を放送分野で具体化したものです。
放送は「周波数の割り当て」を受け、「無線局の認可」を受けなければなりませんから、もともと国家の介入を受けやすいのです。とりわけ、NHKの場合は人事と予算について、国会の承認を得なければなりません。介入を受けやすいからこそ、放送法をしっかりと守り、番組編成の自律性・自主性を確立することが大切なのです。
第3条の2に「政治的に公平であること」とあるのは、放送事業者が放送番組の編集に当たって、みずから自主的に守るべき内容です。この規定があるからといって、外部のものが事前に放送内容をチェックし、「公平に」と言って圧力をかけることを正当化できるものではありません。
中川昭一議員は、2001年1月30日に放送されたNHKの特集番組(「ETV2001〜問われる戦時性暴力」)の内容について、「同じような問題意識を持っている我々の仲間が知らせてくれた」と答えています。それは、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の議員のことです。
今年1月19日に、この「議員の会」が出した「見解」では、「当会議員数名は(2001年)2月9日におこなわれた党総務部会において、出席した海老沢NHK会長にこの番組の内容につき強い抗議の意思表明を行った」。これは、「議員の会」が、当時から「この番組が公正ではない」という意識を持っていたことを告白したものです。
重大なのは、中川議員が「(若手議員の会の)議員達も、事前に(NHKに)会っていろんなことを言っている」とのべていることです。つまり、メンバーが、事前にその内容を把握し「公平でない」という見解をNHKに伝達していたということです。
NHK側は、それを聞いていたからこそ必死になって、安倍氏や中川氏などに説明にまわったのです。1月19日の記者会見で、NHK側は説明に行った理由について、「若手議員の会の幹部だから」と話しています。
安倍氏は、ホームページでこう書いています。――「明確に偏った内容であることがわかり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」。
「議員の会」の事務局長で、かつ官房副長官という政府の中枢にいた安倍氏が、番組が「明確に偏った内容」だと判断し、その立場から「公正中立に」と言えば、番組内容への政治介入になることはハッキリしているのではないでしょうか。
じっさい安倍氏に会った直後に、NHKに戻った総局長の指示によって番組の内容が2度にわたって大幅に修正・改ざんされ、44分の番組が40分にカットされました。これは、どうみても「政治介入」があったとしか考えられないではありませんか。