憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【04.06.03】6・30イラク『完全な政権移譲』のまやかし名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2004年6月3日
6月30日をもってイラクに暫定政府をつくるとされ、イラクをめぐる新たな国連決議案についての議論がおこなわれています。
ブッシュ米大統領は、暫定政府の成立によって「完全な主権を確立する」と言っています。「完全な主権」というのは、内政外交に渡るすべての決定権をイラク暫定政府が持つということです。
ほんとうにそうなるのでしょうか。
報道によると、アメリカの決議案によると6月30日以降も多国籍軍を駐留させるといいます。しかし、外国の軍隊である多国籍軍をこれからも駐留させるかどうかの決定権は、ほんらい、これからつくられるイラク暫定政権にあるのではないでしょうか。
多国籍軍が駐留するとして、多国籍軍と暫定政府の方針が違った場合、どちらに決定権があるのでしょうか。たとえば、暫定政権は米軍の作戦を拒否できるのでしょうか。
米軍がおこなおうとしている軍事行動について、たとえば特定の作戦、掃討作戦などを拒否できるのでしょうか。
実際には、そんなことになりそうにありません。
パウエル米国務長官は、25日つぎのように述べているからです。
「結局のところ、ある時点において、イラク暫定政権が望むようなことと完全に合致しないかもしれないかたちで、米軍がみずからを守ったり、任務を果たすという場合、米軍は米国の指揮にとどまり、みずからを守るために必要なことを実行する」と。
これは、指揮権が米国にあるということです。そうなれば、暫定政権はきわめて限られたものになるのです。
だからフランスやドイツなどは、国連の新決議案について「イラク暫定政府の完全な権限が保証されていない」と批判しているのだと思います。
アメリカは、暫定政府の省庁に約200人の顧問(アドバイザー)を派遣するといいます。しかし、アドバイザーを認めるかどうか、また認める場合、誰をアドバイザーとして任命するのか、――その決定権は暫定政府にあるのではないでしょうか。
アメリカが言うように、アドバイザーの9割を米国人で占めるというようなことは、イラクに「主権を移譲する」という考え方と、根本的に矛盾しているのではないでしょうか。
川口大臣は、私の質問にたいして「暫定政権」だから限界があると言いました。
それなら、ブッシュ大統領のいう「完全な政権移譲」というのは“まやかし”とうことになるでしょう。
いまなすべきことは、米国主導による軍事占領状態を終わらせ、すみやかにイラク国民に主権の返還をおこない、国際社会がそれを応援することではないでしょうか。国連は、その方向に真に役立つ仕組みをつくるべきです。