憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【03.08.21】大増税へ着々 世論づくり先行させる与党名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2003年8月21日
年金財源としての「消費税増税」――これが、着々と準備されている。いまは、選挙を目前にしているから、小泉首相は「私の内閣では上げない」などといっている。しかし、増税の世論づくりだけは、今年のはじめからどんどん先行させている。
たとえば、日本経団連は、今年1月「新ビジョン 活力と魅力溢れる日本を」のなかで、来年から消費税を毎年1%ずつあげ、最終的に16%にすべきだというとんでもない方針を出した。その後、5月になると、2004年から25年までに18%に引き上げる必要があるという提言をおこなった。
また6月には、政府税調が「中間答申」で、はじめて「2桁の税率に引き上げる必要」を明記した。
こうして、消費税の大増税は、今後の経済政策の重大な焦点になろうとしている。
彼らは、消費税増税の口実として「将来の少子高齢化を支える財源」だと繰り返している。しかし私は、税制を問題にするとき、なぜ消費税だけかを問題にするのか。根本的に疑問だ。
国の税収は、基本的には消費税と法人税、所得税が大きな柱になっている。消費税は、1989年の導入以来一貫して税収が増え、全体の税収にしめる比率は、89年には5.95%だったのが、90年に7.69%、2002年度は21.66%と急増している。
一方、法人税は、89年に34.58%だったのが、2002年は22.56%に下がっている。この消費税の比率は、5%のうち国に入る4%分だけで計算した数字だから、地方に配分する分も入れると、法人税と消費税の比率は完全に逆転する。
法人税の税収はなぜ下がったのか。不況の影響もあるが、法人税の税率を引き下げてきたことが大きな要因だ。所得税の税収は全体として横ばいとなっている。
庶民が払う消費税には大増税が押しつけられ、その一方で大企業が負担する法人税や高額所得者には減税が繰り返されてきたのだ。
もう一点、指摘しなければならないのは、消費税の基本的性格として「逆進性」があることだ。つまり年収の低い階層ほど、消費税の負担率は高くなるのだ。この税制が持っている弱者いじめの性格が、税率の引き上げによってよりいっそう拡大する。
たとえば、現行の消費税率5%で負担率の平均は2.11%だが、年収が200万円未満の場合、4.09%の負担率。年収が1500万円以上の階層は、1.26%の負担率だ。今でもこれだけの逆進性があるのだ。
消費税が、仮に16%に上がるとどうなるか。所得の一番低い層は13.08%の負担率に急増する。年間収入1500万円以上の階層は4.03%だ。だから、消費税の税率アップが逆進性を拡大し、いかに低所得者層の暮らしを破壊するか明らかだ。
ある新聞の世論調査では、消費税率を引きあげることに「反対」が64%で、「賛成」の28%を大きく上回った。たとえば20代の反対が82%など、とくに若い世代と女性の反対が強いのが特徴だ。この間、ワインやタバコ、発泡酒などの増税が行われてきた。また所得税については、配偶者特別控除が来年4月から廃止され、さらに特定扶養控除の縮小・廃止も提案されている。
将来の社会保障の財源として、税制についていえば、消費税にたよるのではなく別の道を考えるべきだ。これまで一方的に減税の恩恵を受けてきた大企業や高額所得者など負担能力のあるところに、応分の負担をしてもらわなければならない。
もう一つは、財政の歳出構造を改革することだ。大型公共事業のムダをチェックして内容を生活密着型に変えながら、全体として総枠を縮小すること、ODA予算や軍事費を縮減する方向に転換することなどが必要ではないか。