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国会での活動

国会での活動 − 国会質問医療・介護・年金・障害者

【14.04.09】「健康・医療戦略」法案、“司令塔”に業界関係者

   2014年4月9日、佐々木憲昭議員は、2日に引き続き、内閣委員会で「健康・医療戦略」関連法案に関し、「戦略」司令塔(日本版NIH)に製薬業界など利害関係者が入っている問題を取り上げました。

 安倍政権の「健康・医療戦略」は、先端医療分野に予算配分などを集中し、省庁の縦割りを排除した連携をすすめるもの。その推進体制の要である「健康医療戦略室」に日本製薬工業協会や日本医療機器産業連合会のメンバーが加わっています。

 佐々木議員は「利益を求める業界関係者を直接、国家戦略の作成にあたらせるもので、公平・公正な政策を推進できるのか疑問が出てくる」と指摘。幅広い基礎研究を支える予算配分に十分な配慮がなされているか研究者から疑問が提起され、現に科研費が減らされていることをあげ、政府の見解をただしました。
 菅義偉官房長官は「基礎研究は重要。十分に配慮していただいている」と答えました。

 佐々木議員は「特定分野に偏重する政策は基礎研究体制を弱め、結果としてすそ野の広い将来の研究開発に障害をもたらす」と主張。製薬業界がさらなる法人税減税や研究開発減税を要求し、一方で自民党に多額の政治献金をしている問題を指摘。「製薬業界と自民党の癒着を示すものだ」と批判しました。

佐々木議員の主張

 前回(4月2日)の質疑で、佐々木議員は「現場の研究者の声」を直接反映する仕掛けは法案のなかにあるかとききました。しかし、そのような仕掛けが、法案のなかにあることは確認できませんでした。
 情報開示については、戦略本部等の議事録や配布資料が恣意的に「非開示」とされる可能性が大きく、要となる「創薬支援ネットワーク協議会」の場合は「原則非開示」となっています。

●司令塔の要に業界の代表が入り込む
 この日は、さらに製薬業界との関係について質しました。
 先日の質疑のなかで、「創薬支援ネットワーク協議会」のなかに、日本製薬工業協会(製薬協)会長が入っていることを確認しました。
 製薬協の手代木功(てしろぎ・いさお)氏は、塩野義(シオノギ)製薬の社長で、内閣官房のなかの「健康・医療戦略室−健康・医療戦略参与」を努めています。

 健康医療戦略の推進体制の全体像と健康・医療戦略室の体制図を見てみると、「健康・医療戦略推進会議」にぶら下がっているのは、「創薬支援ネットワーク協議会」の他に、左から「次世代ヘルスケア産業協議会」「医療国際展開タスクフォース」「次世代医療ICTタスクフォース」「健康・医療戦略ファンド・タスクフォース」があり、下に事務局機能として「内閣官房、健康・医療戦略室」があります。
 これらの組織に、業界関係者が入っているのはどこでしょうか。また今後、入る可能性があるのはどこでしょう。

 この問いに対して、政府の答弁では「健康・医療戦略参与会合」「創薬支援ネットワーク」「次世代ヘルスケア産業協議会」「内閣官房、健康・医療戦略室」に、業界関係者が参加するというものでした。
 健康医療戦略を推進する司令塔の要(かなめ)の部分に、密接な利害関係を有する業界代表が入っているのです。これが、政府の健康医療戦略の大きな特徴です。

 民主党政権のもとでも、似たような組織がつくられたたことがあります。
 2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」のなかには、7つの戦略分野があり、そのひとつとして「ライフイノベーションによる健康大国戦略」が位置づけられていました。
 その年、2010年11月8日に「新成長戦略実現会議」が開かれ、「内閣官房長官を議長とする『医療イノベーション会議』を設置すること」が決められ、さらに2011年1月7日、内閣官房のもとに「医療イノベーション推進室」が設置されました。ここにも、医薬品業界、医療機器業界の代表が入っていたことが、今日の質疑で、確認できました。

 安倍内閣は、2013年2月22日に、民主党政権下でつくられた「医療イノベーション会議」「医療イノベーション推進室」を廃止して、「健康医療戦略室」を設置しました。新しくつくられた「健康医療戦略室」のトップは、菅官房長官です。
 この「健康医療戦略室」のなかに、企画官や参事官補佐として、日本製薬工業協会、日本医療機器産業連合会のメンバーが入っているのです。

 こう見てくると、はじめから大事な部分に、製薬業界・医療機器業界の関係者が入って、戦略の作成に関わっていたことが分かります。
 この体制の下で進めようとしている健康・医療戦略のポイントは、(1)先端医療の分野に資源配分を集中すること、(2)省庁の縦割りを排除し横断的な連携をすすめること、(3)基礎研究から実用化まで切れ目のない取り組みを行うことにあります。

 佐々木議員は「この戦略自体、業界側から出されたものではないのか」とききました。菅官房長官は「その指摘は当たらないと思う」と述べましたが、何の根拠も示しませんでした。

●「健康・医療戦略」も業界代表が作成
 この法案は、製薬業界・医療機器業界の関係者を、直接、国家戦略である「健康・医療戦略」の作成にあたらせるものであることは明白です。
 しかし、それで、公平・公正な政策が推進できるのか、という疑問が出てくるのは当然でしょう。

 じっさい製薬協の手代木(てしろぎ)会長は、2011年の「製薬協ガイド」のなかで、こう述べているのです。「各省庁の枠を超えてのライフサイエンス関連予算の一本化、ならびにイノベーション施策の司令塔機能の強化を強く訴えてまいります」。「関係省庁への政策提言活動」をおこないます、と。
 法案に、その意向が反映されているのは明らかではないでしょうか。

 たとえば、今年度は、科学技術振興費の4%相当分を内閣府に計上したため、ボトムアップの基礎研究部分に提供されている科研費の比重が、相対的に低下する結果を招いています。
 4日に開かれた参考人質疑で、参考人の大隅典子氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、「基礎研究に十分な配慮がなされているか」「我が国の生命科学研究のパイの大きさ全体が全然足りない」「我が国が健康・医療の研究開発を推進していくという上で、本当に予算がこれで十分なのか」と、問題提起されました。
 官房長官の答弁は「基礎研究は重要だ」と述べるにとどまり、この指摘にどう答えていくか、まったく具体的な話はありませんでした。

 しかも、最新版の「製薬協ガイド2012-2013」をみるとこう書いています。「製薬協としては、各省庁の枠を超えてのライフサイエンス関連予算の一本化、イノベーション施策の司令塔機能の強化、ならびに法人税の低減・研究開発に関する優遇税制の充実など、イノベーションの推進に重要な施策の実現をこれまで以上に強く訴えてまいります」と。

●法人税減税も研究開発減税も要求
 法人税を下げろ、研究開発減税を充実しろとまで言っているのですから、まことに厚かましいと言わなければなりません。
 製薬大企業は、これまで、研究開発減税の恩恵をいちばん多く受けてきた業界ではないでしょうか。
 業種別法人税の税負担率(繰越欠損金控除前の所得に対する割合)のなかで、医薬品のばあいは、何%になっているでしょうか。財務省の答弁は「19.9%」(法人税率25.5%)というものです。

 研究開発減税の恩恵は、莫大なものです。答弁してもらった数字は、国税分にすぎません。
 各社の有価証券報告をみると、たとえば、医療用医薬品国内売上トップの武田薬品工業のばあいは、研究開発費が3243億円、売上高に占める割合は20.8%とたいへん高いのです。そのため、国税・地方税を含む「法人税の実効税率」は38.0%なのに、「試験研究費などの税額控除」により25.8ポイントも税率が軽減されます。

 第2位のアステラス製薬は、研究開発費が1820億円、売上高に占める割合は18.1%を占めています。国税・地方税を含む「法人税の実効税率」は37.7%だが、「研究費税額控除」により2.3ポイントも税率が軽減されるのです。

 第3位の第一三共は、研究開発費が1830億円、売上高に占める割合は、18.3%。「法人税の実効税率」は37.8%だが、「試験研究費の法人税額特別控除」などにより、税効果会計適用後は、26.0%しか法人税を負担していません。
 さらに、「大塚製薬」や「大鵬薬品工業」の持ち株会社である大塚ホールディングスの場合は、売上高に占める研究開発費の割合は15.8%を占めており、国税・地方税を含む「法人税の実効税率」は38.0%なのに、「研究開発費特別控除」によって10.1ポイントも税率が軽減されています。
 他の企業も同様です。それなのに、研究開発に関する優遇税制のさらなる充実を求めているのです。

 4日の参考人質疑のさい、前アステラス製薬株式会社・代表取締役会長の竹中登一氏は「司令塔機能の充実・強化、ならびに健康・医療予算の拡充・重点化」をもとめ、製薬産業の貢献サイクルで「収益」(Return)を強調しています。

 国民には消費税を増税しながら、製薬業界にさらに減税せよなどというのは、あまりにも厚かましいと言わなければならない。

 減税しても、内部留保が積み上がるだけです。
 たとえば、武田薬品の場合、内部留保は2兆4295億円もあります。大塚ホールディングスの内部留保は1兆3407億円、アステラス製薬は1兆1171億円です。この有効活用こそ必要ではないでしょうか。

●自民党に莫大な政治献金
 それだけではありません。税制面、政策面で優遇措置を受け、史上最大の内部留保を抱えながら、これらの大企業は、自民党への政治献金を増やしているのです。
 製薬協に加盟している企業は72社(2013年10月現在)ありますが、自民党の政治資金団体である国民政治協会に献金した製薬協会員会社からの献金総額は、2011年に5074万円だったが、2012年には6800万円に増加しています。政権に復帰した2013年の数字はまだ出ていませんが、さらに増加しているかもしれないのです
 「これは、製薬業界と自民党の癒着を示すものではないか。官房長官は、どう思うか」とききました。
 官房長官の答弁ぶりは「ご指摘は当たらない。自民党では適切に法律に基づいて対応している」と、木で鼻をくくったようなものでした。

 この法案は、日本の医療分野における成長戦略をトップダウンで進める体制をつくることにありますが、これは、予算配分の重点化により日本のボトムアップ型の基礎科学研究体制を弱めることになり、結果として、裾野の広い将来の研究開発に障害をもたらすことになると思います。
 また、情報が開示されないことや、国民全体が製品を安価に入手できないなど、さまざまな看過できない問題があります。
 そのため、日本共産党は反対の態度表明をしました。


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