国会での活動
【政治経済キーワード】アメリカのBSE検査体制
2005年7月1日
6月24日、アメリカで2例目のBSE(牛海綿状脳症)感染牛が確認されました。これは、米農務省が昨年11月の第一次検査で「シロ」と判定していたものを、日本や欧州で採用されている高精度の検査方法であるウエスタンブロット法による再検査の結果、「クロ」とくつがえったものです。米国で初めて感染牛が発見されたのは、2003年12月ですが、この牛はカナダ生まれの輸入牛でした。今回の牛は輸入された形跡がなく、初の米国生まれの感染牛です。いったんは陰性と判断されながら再検査により陽性にくつがえるという異例の事態に、同国の飼料規制の不備や検査態勢のずさんさが浮き彫りになりました。
アメリカは、日本やヨーロッパで行っているウエスタンブロット法の採用をずっと拒んできました。この方法は、BSEの病原体である異常プリオンに含まれているタンパク質そのものを直接検出するもので、高精度の検査方法として現在世界で広く使われています。日本では免疫組織化学的検査(IHC)とウエスタンブロット法の両方の検査を実施し、そのいずれかで「陽性」となった場合に、BSE感染と診断しています。今回の米国のケースは、日本などの基準では本来初期の段階で感染牛と診断されるものでした。
年間3500万頭以上の牛のと畜・解体を行っている米国では、そのうち20万〜27万頭(検査率約0.7%)のサーベイランス検査(抜き取り)を行うだけで、多くの牛は無検査で、と畜場に回されます。さらに、生後30カ月以上の牛の危険部位(脳、脊髄、眼球、脊柱、扁桃など)を完全に除去すべきとの米国内の規則さえ順守されていない実態が報告されています。しかも、30カ月齢以上の牛を判断する月齢判別は、牛の歯の生え方によるといったものです。
また、米国には日本や欧州のような牛の個体識別システムがありません。ですから、今回の感染牛のように、出生地も正確な月齢も、さらには同じ餌を食べて育った牛の所在さえ判明せず、どこまでBSEが広がっているのかさえわからないのが実態です。
日本の場合は、と畜の前に全頭検査を実施します。すでに、これまで450万頭以上を検査し、そのうち20頭の感染牛が確認されています。米国では、昨年6月からの検査強化で約38万頭を調査、疑陽性が3頭、感染牛がわずか1頭しか見つかっていません。「日本に比べ、米国内の感染牛の割合がこんなに低いのは不思議」といわれるのも、先に見た米国のずさんな検査体制が要因のひとつとなっているのです。
これまで「米国産牛肉は安全」と主張し、日本に輸入再開を迫ってきた米政府と、「生後20カ月齢以下」という曖昧な基準で輸入再開への諮問をした日本政府の無責任ぶりがあらためて問われています。