国会での活動
【政治経済キーワード】「A級戦犯」
2005年6月3日
A級戦犯とは、第2次大戦後の極東国際軍事裁判(=東京裁判、1946年5月公判開始、48年11月判決)で、「a 平和に対する罪」「b 通例の戦争犯罪」「c 人道に対する罪」を犯したとして訴追され、有罪判決を言い渡された主要戦争犯罪人のことをいいます。具体的には、太平洋戦争開戦時の首相・東条英機や関東軍(中国侵略部隊)司令官など25人を指しています。
これら25人のA級戦犯のうち、絞首刑の判決を受けたのは、東条英機(元首相)ほか広田弘毅(元首相)、土肥原賢二(元陸軍大将)、板垣征四郎(元陸軍大将)、木村兵太郎(元陸軍大将)、松井石根(元陸軍大将)、武藤章(元陸軍中将)の7人です。彼らはいずれも、日本の侵略戦争遂行のため「指導者、組織者、教唆者または共犯者として共同謀議を行った」ことが罪に問われています。他に、終身禁固刑が16人、禁固20年が2人となっていますが、東京裁判の訴因として共通しているのが、侵略戦争です。
A級戦犯に関する犯罪として極東国際軍事裁判所条例は、次のように定めています。
「a 平和に対する罪、すなわち、宣戦を布告し、もしくは布告しない侵略戦争もしくは国際法、条約、協定もしくは誓約に違反する戦争の計画、準備、開始、もしくは遂行…これらの各行為のいずれかを達成するための共通の計画もしくは共同謀議への参加」(同条例第5条第2項)
これらは、「b 通例の戦争犯罪」(従来の戦争法規違反)、「c 人道に対する罪」(一般人に対する殺人や捕虜虐待など)とは異なり、侵略戦争に対する責任を問うているものです。
最近、このようなA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社への小泉首相の参拝をはじめ、「A級戦犯は罪人ではない」と公言してはばからない厚生労働政務官など、日本の過去の侵略戦争を正当化する言動が、政府・自民党内から目立ち始めています。しかし、日本が戦後、国際社会に復帰したのは、A級戦犯ら戦争犯罪人を裁いた東京裁判を受け入れて講和条約を結んだからです。東京裁判は、当時最高の戦争責任者であった昭和天皇の責任を追及しなかったという不十分さを残しましたが、同時に1928年の不戦条約で禁止された「国際紛争解決の為」の戦争を、国際犯罪と位置づけ、侵略戦争の指導者を裁いたものとしてその後の世界平和の探求に大きな意義をもつものとなりました。
A級戦犯とは、こうした戦後の国際秩序の土台を築いた東京裁判で裁かれた明確な戦争犯罪人なのです。
なお、1978年5月、国会も国民も知らないうちに靖国神社に合祀されたA級戦犯は、絞首刑になった前出の7人以外、梅津美治郎(陸軍大将)、小磯国昭(元首相・陸軍大将)、永野修身(元帥海軍大将)、平沼騏一郎(元首相)、松岡洋右(元外相)、東郷茂徳(元外相)、白鳥敏夫(元駐イタリア大使)の7人、合計14人です。そしてこの14人のA級戦犯を祀った靖国神社の立場が、「一方的に“戦争犯罪人”というぬれぎぬを着せられ、むざんにも生命をたたれた」方々を「昭和殉難者とお呼びして…すべて神さまとしてお祀り」するというものです。このような靖国神社へ首相が参拝することは、一般的な「戦没者への追悼」を意味するのでなく、侵略戦争の行為そのものをほめたたえることにつながるのです。