国会での活動
【政治経済キーワード】義務教育費国庫負担制度
2004年11月19日
小泉内閣がすすめている「三位一体」改革のなかで、よく登場する言葉ですが、簡単にいえば公立小中学校の教職員給与の半分を国が負担する制度のことです。
本来この制度は、地方財政によって教育に格差が出ることなく、全国どこにいても同じ水準の教育を保障することを目的に作られたものです。歴史をさかのぼれば、1900年(明治33年)、市町村立小学校教育費国庫補助法が制定され義務教育の無償制が取り入れられたことが始まりです。その後、国庫補助負担金をやめ地方交付金をつくるなどの内容を含んだシャウプ勧告(1950年)により、いったんこの制度は廃止されましたが、3年後の53年に復活し、今日にいたります。
復活した理由について政府みずから次のように説明します。「小学校の一学級あたりの教員数が減少するなど教育条件が全国的に低下し、地域間格差も拡大した。地方財政への圧迫も大きく、復活を求める声が教育界や地方からあがった」(11月11日、参院文教科学委員会で日本共産党小林みえこ議員の質問に対する文科省中等教育局長の答弁)。
この制度が教育水準の確保に大きな役割を果たしてきたこと、制度復活が地方の切実な要望だったことがわかります。
この間、国庫負担の「見直し」の名のもと、義務教育に関わる数々の手当が負担対象経費から削減されてきました。1985年には旅費や教材費が一般財源化され、本来必要とされる経費にまわらなくなっています(03年度の教材費の予算措置率は75・7%、旅費は84・1%)。一般財源化されると使途が特定されないので流用される恐れがあるとの指摘がありましたが、それが現実となっているのです。
その後、恩給費や共済費(年金積立金)、公務災害補償基金、退職手当などが次々と国庫負担対象経費から削減され、一般財源化されました。その結果、義務教育費国庫負担制度の負担対象は教職員の給与本体を残すのみとなったのです。小泉内閣は、今回、この給与をも国庫負担の対象からはずそうと同制度の廃止・削減を企てています。
約2・5兆円に及ぶ国庫補助負担金を削減し、すべてを個人住民税として地方に移すという提案もあります。しかし、これらの地方税だけでは教職員の給料をまかなえない県が40道府県にものぼっています(文科省試算)。たとえば現行の40人学級では生徒が41人になれば2クラスになりその分の教員が必要ですが、いままでは教員の数に応じて国の負担金が地方に配分されていたものがこの制度がなくなれば教員1人分の給与は地方の負担になります。離島やへき地をかかえる県は特に大変です。
このように義務教育費国庫負担制度の廃止・削減は、義務教育に対する国の責任を放棄するだけでなく、地方の財政状況によって教育の格差を生じさせ、戦後約半世紀にわたって日本の義務教育を支えてきた教育の機会均等や義務教育の無償制を破壊するものです。