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奮戦記

【15.01.12】上川龍之進著『日本銀行と政治―金融政策決定の奇跡』(中公新書、2014年10月)を読んで

   上川龍之進著『日本銀行と政治―金融政策決定の奇跡』(中公新書、2014年10月)を読みました。この本は、日本銀行の金融政策が、政治(政権与党)によってどのように影響を受け変容してきたかを、豊富な資料に基づいて解明しています。

 対象としている時期は、1998年の金融危機の時代から第2次安倍内閣までです。私が、衆院大蔵委員会から財務金融委員会に所属していた時期とちょうど重なりますので、その意味でもたいへん興味深く読みました。

 筆者と私たちとは、政策の立脚点が異なってはいますが、20年にわたる日銀と政府与党の関係をじつに丹念に調べ、多面的な事実できちんと跡づけていることに感心させられました。新しい発見もありました。

 アベノミクスに対する厳しい批判も随所に見られます。2009年に政権についた「民主党が変節」し、日銀にデフレの責任を負わせ金融緩和を迫ることを常態化させたと分析し、それが「アベノミクスの道を舗装した」と指摘しています。これは、じつに的を射た見方だと思います。

 また、安倍内閣が「株価が政権の支持率に直結している」と見ていること、そのため「海外のファンド幹部と会談し、彼らの日本市場への関心を探っている」といいます。政権の視点がどこに置かれているか、これで明らかです。

 そのうえで「ただ、海外の投資家の大半は短期的な利益を目的としており、日本経済の長期的な行く末に関心はない」「国民の多数にとっては望ましくなくても、海外投資家から支持される政策が実施され」ると指摘しています。その結果、バブルが崩壊した後の尻ぬぐいは、いつも国民の税金でさせられるとしています。これは、アベノミクスに突き刺さる厳しい批判となっています。

 さらに、「日本政治のウェストミンスター化」の指摘も重要です。1990年代以降の「政治制度改革」すなわち1994年の小選挙区制導入、2001年の中央省庁再編による内閣機能の強化が、「首相への権力集中」をもたらし、それにより日銀政策への介入が正当化されるようになったと指摘されています。

 この官邸機能の強化は、経済政策だけでなく軍事・外交面でも危険な方向への歯止めなき暴走へのテコとなっていることに、私たちは警戒を強めなければなりません。

 新書というコンパクトなスタイルをとっていますが、中身の詰まった重厚な本といえるでしょう。

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