奮戦記
【11.08.24】日本共産党がこども手当特措法案に反対する理由
今年10月から半年間の「子ども手当」の支給を定めた特別措置法案が、25日(木)の参院厚生労働委員会で、民主、自民、公明など与野党の賛成多数で可決され、26日(金)の参院本会議で可決、成立する見通しとなっています。
――日本共産党は、この法案に反対です。その理由は、23日の衆院本会議でおこなった高橋千鶴子議員の反対討論で明らかにしておりますので、以下ご紹介します。
子ども手当特別措置法案 高橋議員の反対討論
最初に指摘しなければならないのは、子ども手当が政争の具として扱われたということです。本法案は、特例公債法の成立を人質に、子ども手当という民主党マニフェストの中心的政策を頓挫させ、政権に打撃を与えようとする自民、公明両党に対し、民主党が妥協に妥協を重ねた結果の3党合意に基づいたものです。
わが国においては、子どもの貧困が深刻化し、先進国でも遅れた分野である子育て支援を拡充することに国民は期待してきました。それを、バラマキと称して骨抜きにしてしまいました。削減すべきは、大企業・大資産家への2兆円もの減税や政党助成金などのムダ遣いであります。子ども手当を4Kと称して高速道路などと同列に論じるべきではありません。
そもそも、昨年の子ども手当法が1年限りの法案でスタートしたために、子ども手当と総合的対策をどう設計していくのかを明確にしないまま、その後半年間の「つなぎ法」がからくも成立と、綱渡りをしながら問題を先送りにし、ついに子ども手当という国民との約束を投げ捨てた政権与党・民主党の責任はきわめて大きいといえます。
また子育て支援という重要な課題を政局に絡めて標的にした自民・公明の姿勢も問題であり、この3党合意による本法案は断じて認めることはできません。
次に問題なのは、本法案によって、大多数の世帯の手当支給額が削減され、増税と併せて実質手取り額が減る世帯も多いことです。
2000円の増額である3歳未満の子どもが300万人であるのに対し、3000円削減となる子どもは1420万人にのぼります。しかも、児童手当とくらべても負担増になる世帯があります。すでに子ども手当の支給にあわせて年少扶養控除が本年1月から廃止され、3歳未満で逆転現象が起きることは前回のつなぎ法案の時点でわかっていました。住民税についても来年6月から廃止されるもとで逆転現象は拡大するのであり、児童手当の時より手当の額が増額されているからという口実はまったく通用しません。
来年度以降については、年収500万円の世帯でも手当の額よりも増税分が上回る世帯が生じます。3党合意によれば、住民税の扶養控除が廃止される来年6月以降、年収960万円以上の世帯に所得制限が設けられ、所得制限世帯には何らかの税制上の措置や、9000円を支給する案などが検討されていますが、所得制限以下でも実質増税になる世帯に対する検討規定は設けられていません。これでは格差がますます広がることになります。
第三に、わが党は子育て支援について、現物給付と現金給付のバランスをとりながら総合的に進めるべきだと主張してきました。すでに現行の子ども手当創設にともない地方単独の子育て支援事業を廃止・縮小した自治体も出ています。本法案は、総合的な子育て支援の拡充の議論を行わないまま、現金給付の削減だけを行うもので、明らかに子育て支援施策を後退させるものです。その上、保育の市場化をねらう子ども・子育て新システムは認められません。
第四に、保育料の直接徴収の規定は、もともと大部分は手当額より保育料が上回っている現実があること、保育料を払えない世帯などの事情を行政が配慮する機会を失わせ、手当の意味もなくすもので反対です。
本法案は、改めて受給者が申請しなければならず、地方自治体にも事務の負担を課すもので、多くの混乱も予想されます。被災地・被災者においてはなおさらです。このような負担を受給者や自治体に負わせるべきではありません。
最後に、東日本大震災で両親を失った子どもは200人を超えています。学用品をすべて失った子どもや、福島では震災と原発事故の影響で転校を余儀なくされる小中学生が1万4千人にも及んでいます。
そもそもリストラや被災による廃業、雇用保険も9月で切れる人が大量に発生することが予想される中で、たとえ1万3千円の手当でも、本当に助かっているという声も聞かれます。また被災地ではない子どもをめぐっては何ら環境が好転してもいないのに、震災だから我慢せよというのは許せません。
日本共産党は、日本の将来に直接かかわる子どもと子育て世代への支援をどうするかの議論よりも、党利党略を優先させるやり方は絶対に認められないことを表明し、子どもの貧困の解消など安心して子どもたちが成長できる施策の充実のために全力をあげる決意を申し上げて、本法案の反対討論とします。
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