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奮戦記

【11.07.09】原発事故賠償法案は東電・大銀行救済の枠組み

   東京電力福島第1原発事故による損害賠償に関する原子力損害賠償支援機構法案が8日、衆院本会議で審議入りしました。

 日本共産党の吉井英勝議員は、「(法案は)東電と大株主であるメガバンク救済のスキームだ。『原発利益共同体』の関係者に社会的責任を果たせと求めるべきだ」と主張しました。
 質問要旨は以下の通りです。
 ……………………………………………………………

   今回の事故は、「想定外」ではありません。私は2005年以降、国会質問などを通じ、政府と東電に警告し、全電源喪失が起き、炉心溶融に至ることも指摘し続けてきました。
 東電も政府も、多重防護による安全対策によって、そうした事態は起こりえないとしてきましたが、「あってはならない」とした事故は現実に起きました。
 菅首相は、私の質問に「これまでの政府の対応は間違いだった」と答弁しました。原発事故は、「安全神話」にどっぷりつかり警告を無視し、安全対策を怠ってきた東京電力と原発推進の国策を推し進めてきた歴代政府によってもたらされた人災であることをはっきり認めるべきです。
 この認識に立てば、東京電力は全面的な賠償に第一義的責任を果たさなければなりません。東電に迅速で全面的な賠償を実施させることが国の責任の基本です。原発事故がなかった場合に得られたであろう収入と、現実の収入との差額のすべてを賠償する。事故に起因するすべての被害を対象にする。全面賠償の原則を国として明確にすべきです。
 20キロ、30キロという機械的な線引きで切り捨てない。放射能汚染と内部被ばくを含む健康被害、農林水産業・加工業、中小商工業と観光業の損害、風評被害なども含め対象にすること。自主避難を含め避難によって被ったあらゆる被害、物的精神的被害も当然、対象とすべきです。

   政府の紛争審査会で賠償基準の指針づくりが行われていますが、対象を20キロ、30キロ圏内に限定するなど、まったく被害の実態にそぐわない不十分なものです。審査会委員は、9人中3人が電力会社がつくった日本エネルギー法研究所に所属し関係する法律家です。被害者側の委員は1人もいません。被害者を入れて、被害者が納得できる基準づくりができるよう、審査会のあり方を見直すべきです。
 原賠法は目的から「原子力事業の健全な発達」の文言を外し、被害者救済に徹する制度に改めるべきです。
 東電に第一義的な賠償責任を果たさせるためには、全資産を可能な限り賠償にあてさせ切ることです。賠償は少なくとも数兆円から10兆円単位と見込まれます。東電の資産は1兆6千億円であり、債務超過、実質破たんとみるべきです。破たん企業なら通常、法的整理で資産のほか株主、金融債権者などステークホルダー、利害関係者に最大限の負担を求めるのが筋です。
 ところが法案は、政府と支援機構が「何度でも資金援助し」、「債務超過にさせない」(閣議決定6月14日)仕組みで、東電の存続を絶対の前提にした異様な救済策、東電救済スキームです。法案は「特別事業計画」で「関係者への協力の要請」を規定していますが、なぜ株主責任やメガバンクに債権放棄を求めないのでしょうか。

   法案は、賠償資金として交付国債などの公的資金と税金投入も予定していますが、地域独占体制と総括原価方式のもとでは結局、返済原資は、電力会社の事業収入コストすなわち電気代となります。
 結局、三井住友銀行など3メガバンクと経産省・財務省がつくったシナリオに基づく、国民負担によって株式上場を維持し、大株主で巨額の金融債権を持つメガバンク救済のスキームではありませんか。これでは到底、国民の理解を得ることはできません。

 国民に安易に賠償負担を求めることは許されません。賠償財源として、東電と電力業界のいわゆる埋蔵金、内部留保を活用すべきです。すでに積み立てている使用済燃料再処理等引当金2兆9千億円を取り崩すことをはじめ、原発推進のための核燃料再処理費用で、今後も電気代から積み立てられる約16兆円を活用すべきです。
 原子炉メーカーなどに責任をとらせることも大事です。福島第1原発は米国GE社製のマークIを原型としています。今回、欠陥品であったことが証明されたわけであり、納入メーカーなど関係事業者に賠償責任を問うべきではありませんか。
 そもそもわが国の実用原発は戦後、日米原子力協定のもと日米の原子力産業によって導入、推進されてきました。東芝、日立、三菱重工、GEなど原子炉メーカーと鉄鋼、セメント、ゼネコン、大商社、メガバンクで形成されてきた「原発利益共同体」とも言うべき財界中枢の利害関係者に社会的責任を果たすよう求めることを強く主張します。

 エネルギー政策の抜本的転換は不可避です。ところが政府は、昨年決定した原発を14基新増設するエネルギー基本計画を見直すといいながら、いまだにその方向すら示していません。
 わが党は、原発からの撤退、再生可能エネルギーの爆発的普及を提言しています。この方向こそ求められていることを強調して質問を終わります。  

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