奮戦記
【08.06.25】多喜二の『蟹工船』はなぜ若者の共感を呼んでいるのか
戦前のプロレタリア作家、小林多喜二の『蟹工船』が、若者のあいだで共感を広げています。私が学んだ小樽商科大学は、前身が小樽高商で多喜二が学んだ学校でした。
40年も前になりますが、私が在学していたときには、多喜二が学んだ古い木造校舎が、若草色のペンキに塗られて補修され、まだ授業に使われていました。
その校舎は、廊下を歩くとギシギシと音がしたものです。
最近、小樽商大が編集した『蟹工船』の読書感想文をまとめた本も売れているそうです。
私の学生時代、小樽商大の演劇部で、小林多喜二の『蟹工船』や武田泰淳の『ひかりごけ』などを上演しました。
私も、そのメンバーのひとりとして演じたことがあり、『蟹工船』では、「糞壺」に押し込められ働かされる労働者の一人として出演しました。
そのころ読んだ「蟹工船」「不在地主」「東倶知安行」などの作品は、心の底を揺さぶるような力があり、グイグイと引き込まれました。
いま、かつてない規模で非正規雇用が若者を中心に増加し、低賃金のもとで苦しめられています。
若い人々は、あの戦前の過酷な搾取が、現代の無権利な状態に共通するものがあると感じているようです。
その若者たちの鬱積したマグマのような怒りは、時代を超えて多喜二の精神と共鳴しあい変革のエネルギーへと着実に転化しつつあるように思います。
現在、非正規雇用は1〜3月の統計で34%と過去最大となっています。
政府側から”正規雇用がのぞましい”などと歯止め的な発言もいろいろなされていますが、それにもかかわらず、実際の企業行動では、正規雇用を減らし非正規雇用をふやすという基本路線はまったく変わっていません。
法律で規制しないとその実態は改善しないのです。
わが党は論戦とともに「労働者派遣法を派遣労働者保護法へと抜本改正します――日本共産党の立法提案」を発表し、その実現を呼びかけています。
改悪される前の職業安定法第44条は、強制労働や中間搾取から労働者の人権を守るため、職業の紹介・斡旋などの事業は原則として国だけが公的に行えることとされてきました。
戦前、小林多喜二が『蟹工船』などで描いたタコ部屋的な前近代的搾取、人を派遣してピンはね=中間搾取をするというやり方を、戦後は全面的に禁止してきたのです。
ところが労働者派遣法が、1985年に制定され、職安法によって禁止されてきた労働者供給という形態から労働者派遣という概念を別建てにして、一定の規制のもとに認めることとされました。
まず13業種で風穴があけられました。
その後、26業種にまで拡大され、1999年の法改悪で原則自由化されました。
さらに03年の改悪で04年から製造業にまで拡大されました。
禁止されてきた“口入れ稼業”が合法化され、無権利な労働を法律上容認するという体制がつくられてしまい、それがいまの深刻な事態をまねいています。
日本共産党は、その本質を明確に指摘し是正をせまりました。
とくに登録型派遣を例外として厳しく限定し、1999年改悪以前にもどせという主張を明確にかかげました。
そもそも99年の改悪のときには、日本共産党以外の政党は全部この改悪に賛成した経緯があります。
いま、各党の姿勢が根本的に問いなおされています。
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