奮戦記
【08.02.19】衆院本会議で代表質問――所得税法等の一部改正案
今日、衆議院本会議で予算関連税制法案の提案理由説明があり、各党の代表質問が行われました。私は、日本共産党を代表して、以下の質問をおこないました。
なお、引き続いて財務金融委員会が開かれましたが、民主党の質問で大臣の答弁をめぐって委員会が中断し、今日予定されていた民主党のひとりと私の2人の質疑は、明日以降に持ち越しとなりました。
日本共産党を代表し、所得税法等の一部を改正する法律案等にたいして、福田総理に質問します。
本題に入る前に、本日午前4時7分、千葉県・野島崎(のじまざき)沖合において海上自衛隊のイージス艦が漁船「清徳丸」(せいとくまる)と衝突し、漁船乗組員2人が行方不明になる事故が発生しました。
軍艦が民間漁船と衝突し、大破・沈没させるなどということは、絶対にあってはならないことであります。厳しく抗議するとともに、何よりも、行方不明者の捜索・救助を最優先することを求めます。また、なぜこのような事故が発生したのか、イージス艦の前方確認はどうだったのか等、原因の徹底究明をもとめるものであります。
本題に入ります。――いまほど、税のあり方が根本的に問われているときはありません。
法案の提案理由は、「持続的な経済社会の活性化を実現する」ためというものです。
しかし「活性化」というなら、肝心なのは「国民生活の活性化」であります。それに逆行する政策をすすめてきたのは、政府自身だったのではないでしょうか。
小泉内閣以来、政府が実施した10兆円をこえる大増税と負担増が国民生活を直撃し、今日の消費の低迷を生み出してきたのであります。総理にその認識があるのかどうか、お答えいただきたい。
とりわけ、一昨年から昨年にかけて実施された「所得税・住民税の定率減税の全廃」は、国民に大きな衝撃を与えました。
もともとこの減税措置は、法人税率の引き下げや所得税最高税率の引き下げと一体のものとして実施されたものであります。つまり、不況対策として実施された「恒久的減税」でありました。
大田経済財政特命大臣は、「企業の体質は格段に強化されたが、賃金上昇に結びつかず、家計への波及が遅れている」との認識を示しました。そうであるなら、いま必要なことは、企業部門から家計部門に政策の軸足を移すことではないでしょうか。
ところが家計にたいしては、定率減税の廃止で大増税を押しつけながら、史上空前の利益を上げている大企業には、法人税の減税を継続しているのであります。やり方がまったく逆ではありませんか。答弁を求めます。
提案された法案では、大企業の「体質強化」と称して、研究開発減税のいっそうの拡充が盛り込まれております。
従来の減税とは別枠で、さらに当期法人税額の10%を上限に税額控除を受ける制度を新設するものであります。法人税額の最大30%まで税額控除を受けることができ、売上高と比べて試験研究費の割合が高ければ、それだけで減税を受けることができるのであります。
新たに研究開発投資を増やさなくても、多額の研究開発費があるというだけで恩恵を受ける。これでは、「投資のインセンティブをより高める」といった当初の趣旨もどこかにいってしまい、単に研究開発費の額が多ければ減税される仕組みではありませんか。
この研究開発税制の拡充は、大企業のみならず中小企業にも適用されると言われます。しかし、現行制度でも減税額の約9割が大企業に集中しているのです。本法案の制度拡充による減税効果も、430億円のうち420億円98%が大企業むけ減税であります。これでは、巨大企業のための「税金ばらまき」ではありませんか。
大企業向けに減税を継続する一方、政府は国民にさらに増税を押しつけようとしています。福田総理は、1月21日の本会議の答弁で、消費税の増税について「平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるとされていることを踏まえて、早期実現を図る必要がある」と述べました。
しかし、基礎年金の国庫負担を引き上げるためと言って、実行したのが所得税・住民税の定率減税廃止や年金課税増税だったのではなかったでしょうか。
2003年12月、自民党と公明党は「2004年度税制改正大綱」で基礎年金国庫負担引き上げ分の財源として、「年金課税」と「定率減税廃止」を充てることで合意したのであります。しかもそれを、工程表まで決めて実行してきたのであります。
ところが、国庫に入った2兆8000億円のうち、基礎年金に充当されたのは7000億円、4分の1にすぎなかったのであります。「全額、基礎年金の国庫負担引きあげのために使う」という説明は、いったいどうなったのでしょうか。国民を欺くものではありませんか。
そのことを不問に付したままで、基礎年金の財源が足りないから、こんどは消費税増税だという。これでは2重に国民を欺くものではありませんか。
経済力のある大企業に応分の負担を求め、生計費に課税せず、累進制とする。――この方向に、税のあり方に根本的に転換することを求めます。
次は、道路特定財源についてです。
この制度はきわめて特異な存在であります。戦後、1949年に一般税として導入されたガソリン税が「臨時措置」として道路目的税とされたのが、1954年でした。
それ以来、道路整備計画が5年と言わず3年ごとに倍増するテンポで、12次にわたって繰り返されてきたのであります。また、地方道路税、石油ガス税、自動車重量税、軽油引取税、自動車取得税など、新たな税目の創設と税率の引き上げが繰り返され、74年5月からは「暫定税率」というかたちで税率が、ほぼ2倍に引き上げられたのであります。
こうして、当初「臨時措置」や「暫定」と言われたものが常態化し、莫大な規模で大衆収奪がおこなわれたのであります。その財源で、12次にわたる道路整備計画は、必ず前の計画を上まわる金額が投入され、一度たりとも減らされたことはありませんでした。社会保障関係費の自然増分さえカットしてきたことと比べ、あまりにも異常な「聖域」扱いではありませんか。
1971年に自動車重量税を導入したとき、総理の父上にあたる福田赳夫大蔵大臣は、こう答えました。71年からの「5カ年計画ができれば、国道はほとんど整備されるという状態になる」(大蔵委員会等連合審査、71年5月14日)と。それにもかかわらず、これで一段落とはなりませんでした。なぜでしょうか。その後も、道路にしか使えないありあまる財源が入ってきたからではありませんか。答弁を求めます。
政府は、2008年度から始まる10年間の「道路中期計画」に、59兆円も注ぎ込むとしています。しかも、バブル期の1987年に策定した第四次全国総合開発計画(四全総)で決めた1万4000キロの高速道路建設にしがみつくだけでなく、さらに、7000キロに及ぶ地域高規格道路、伊勢湾口道路など6本の長大橋道路まで進めようとしているのであります。必要性や採算性が疑問視されてきた計画を、そのまま進めようとするのは、とうてい認められるものではありません。答弁を求めます。
アメリカの圧力のもとでつくられた630兆円の「公共投資基本計画」は、2002年1月に廃止されました。また、2003年につくられた「社会資本整備重点計画法」で、国土交通省関連の「長期計画」が一本化され、あらかじめ計画の総額を決める「総額方式」は“原則として”なくなったのであります。しかし、ひとつだけ残ったのが、「道路整備計画」であります。
このさい、道路特定財源という仕組みを根本的に見直し、道路にしか使えない目的税方式を改め、「暫定税率」は撤廃すべきです。ごまかしの「一般財源化」ではなく、全額を道路にも社会保障にも使えるようにする真の一般財源化に踏み出すべきではありませんか。このことをもとめ、質問を終わります。
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