奮戦記
【05.06.30】社会保障両院合同会議で「若者と年金」について発言
今日は、年金・社会保障両院合同会議がひらかれ「公的年金制度の必要性」をテーマに議論が行われました。
私は、年金不信が広がっている背景に、若者の生活・就労状態の悪化があることを、具体的なデータを示して、最低保障年金制度の創設など抜本的な制度改革を主張しました。
公的年金未加入の理由のトップに「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という理由があがっていることを示し、「多くの若者が公的年金を自分は払えないし、もらえない制度とあきらめているのが実態だ」と強調しました。
フリーターやニートの急増を、政府・与党が「若者の意識」の問題だと責任転嫁してきた姿勢を批判し、雇用・労働条件の抜本的な改善と同時に、膨大な無年金・低年金者を生み出す、年金制度の仕組みそのものを見直す必要があると提起しました。
討議では、民主党の岡田代表が「秋までに改革の骨格をつくることが国民への約束だ」と促進を要求し、民主党議員が社会保障の財源として「消費税の選択肢を排除することはあり得ない」と述べました。
これにたいして私は、こういいました。
――「保険料か税かという議論があるが、問題は財源を誰が負担するかだ。消費税でということが当たり前のように言われているが、反対だ。こんどの政府税調の報告でも、サラリーマン世帯を直撃する大増税案が出されている。なぜ、庶民にばかり増税を押しつけるのか」。
「これまで軽減されてきた大企業の法人税や高額所得者優遇の所得税最高税率などを見直し、応分の負担を求めるべきで、税制全体を見た議論が必要だ」。
私は、冒頭の発言で10分間、以下のことを述べました。かなり長めですがご紹介しておきます。
――「国民皆年金」がスタートして40年になるにもかかわらず、「公的年金の必要性」が若者に疑われ、それをテーマに国会で議論されている。……こんな国は、他のサミット諸国のどこにもないと思います。
なぜ、若者に、公的年金への不信が出てくるのか。それは、制度改定のたびに支給開始年齢が先延ばしになることへの不安、保険料流用への怒りなど、さまざまな理由があります。
しかし、最大の問題は、若者の生活・就労の実態といまの年金制度が、あまりにかけ離れていることにあるのではないでしょうか。
いま、若者がおかれている実態は、「年金なんて払えないし、もらえない」という深刻な状況にあります。
先ほど、公明党から「不信感を煽るべきではない」という発言がありましたが、現状を正確に認識することが議論の出発点になるのです。具体的実態から考えてみましょう。
パート・アルバイト・派遣労働者、それに働く意思のある失業者をあわせた、いわゆる「フリーター」(学生・主婦除く)は、15〜34歳の世代で417万人もいます。
その数は、団塊世代のサラリーマン約500万人に匹敵する規模です。これらの若者は厚生年金に加入できない状況にあります。
民間の研究機関のひとつであるUFJ総研は2004年、「フリーター」の賃金と年金について調査しています。それによると……
標準的な正社員の平均年収は387・4万円です。これに対し、同年齢のパートタイム労働者の平均年収は105・8万円にすぎません。じつに約4分の1にすぎません。
ここから年間16万円、2017年以後は20万円にもなる国民年金保険料を、25年間払い続けないと、年金を受けとることはできません。
受けとる年金額はどうでしょうか。「フリーター」は月66,000円の基礎年金のみです。それも、40年間、保険料を納付できた場合です。25年だと4万2000円にすぎず、納付期間が24年11カ月までなら年金の受け取りはゼロになるのです。
「フリーター」から正社員になれる人は少なく、「若年フリーター」が、大量の「中高年フリーター」になり、その人たちが保険料を払えず、「基礎年金すら受けとれない高齢者」になる危険性を、UFJ総研のレポートは指摘しています。
この背後には、政府・与党が、フリーターやニートの急増を、「若者の意識」の問題だとして責任転嫁してきた問題があります。その結果、ここまで深刻な事態となっているのです。
内閣府『国民生活白書』(2003年)も、フリーターの急増が、若者のライフスタイルや志向によるものではなく、主に「企業側の要因」であることを認めています。
最近では、財界も、「若年層の雇用問題が深刻化したもっとも大きな原因の一つは、若年層に対する求人の不足」「多くの企業が……雇用調整を行ったことが、若年層の雇用問題を深刻化させた可能性は否定できない」などと言わざるを得なくなっています。(日本経団連・2005年・「経営労働政策委員会報告」)。
内閣府の「若年無業者に関する調査」では、求職活動・学校教育・職業訓練を受けていない、いわゆる「ニート」について、求職活動をしていない理由でもっとも多いのは「病気とけが」だと指摘してます。
NPO法人「派遣労働ネットワーク」の調査によると、派遣労働者の契約期間は約7割が「3カ月未満」です。
今年2月に、フリーターの実態がNHKの番組でとりあげられましたが、それによると請負労働者の雇用期間は「半年」で、極めて短いのです。こんな雇用形態が横行するなかで、若者が、25年以上、保険料を払う展望がもてるでしょうか。
この合同会議に資料提出された「公的年金加入状況等調査」(2002年)で見ても、第1号未加入の理由のトップは、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」となっています。
また、この合同会議に提出された『年金に関する1万人基礎調査』等に関連する既存の資料」でも、国民年金保険料の「未納」理由は、「払えない」というのがダントツでトップで、回答者の64・5%を占めています。
多くの若者が、公的年金を「自分は払えないし、もらえない制度」とあきらめているのが実態ではないでしょうか。
こうした問題を解決するためにはどうすればいいのでしょうか。
大前提として、若者の雇用・労働条件を抜本的に改善・向上することが必要ですが、それと同時に、「25年間、保険料を払わないと年金ゼロ」「基礎年金だけでは生活ができない」という事態を克服すること、つまり、膨大な無年金・低年金者をうみだす、年金制度の仕組みそのものを見直す必要があります。
少なくとも、まず第1に、受給資格の取得期間を、アメリカ、イギリスなみの10年程度に短縮するべきです。さらに、抜本的な解決策として、他の先進諸国のように最低保障年金に足を踏み出すべきです。
そうすれば、現在、「フリーター」を余儀なくされている人も、無年金になる心配はなくなります。
また、保険料を払えば、最低保障分の上に給付が上乗せされるから、年金によって老後の生活を安定させる見通しが開け、保険料を払おうというインセンティブも働くようにもなります。
「ゆりかごから墓場まで」という社会保障の基本理念確立に大きな役割を果たしたイギリスの『ベヴァリッジ報告』(1942年)は、「社会保険による所得保障」について、加入者から保険料をとる以上、最低生活(ナショナル・ミニマム)以上の所得を保障すると主張しました。
そうでなければ、保険料を納め続けようという国民のインセンティブが働かず、結果的に制度が崩壊すると考えた。今まさに、日本が陥りつつあるのはこのような状況です。
これまで政府与党は、最低保障年金をつくることに背を向けてきました。また、民主党案は、無年金・低年金者をすべて救済するのではなく、40年後にようやく最低保障年金を完成させるというものです。
若者のなかの「公的年金の必要性」そのものを疑っている現実を重く受け止め、「すみやかに無年金・低年金者をなくす制度改革」を真剣に検討すべきです。