奮戦記
【04.06.23】与党の“後出しじゃんけん”も極まった感がありますね
小泉内閣・与党の「後出しじゃんけん」も極まった感がありますね。もう、うんざりです。
――後出しじゃんけんというのは、“相手の手のうちを見てから、それに勝てる手を出す”ということですから、じゃんけんの禁じ手です。
しかしこれが、政治の世界では堂々と横行しているのですから、ひどいものですね。
いちばん大き問題は、年金改悪法案を強行してから、隠していたデータを出すというやり方です。最近の多国籍軍への参加問題も、後出しじゃんけんでした。
その1――出生率「1.29」という数字を、年金改悪法案の強行成立のあとで出してきたこと。
改悪された年金法では、出生率が2003年で「1.32」、もっとも低くなる2007年でも「1.30」台という前提で「給付と負担」を試算していました。「1.29」ですと、いっそうの負担増と給付減になります。
では「1.29」という数字を、政府はいつ知っていたのでしょうか。
昨日、明らかになったのは、5月24日。この日に、厚生労働省内で中間報告をまとめていたというのです。
年金改悪法の成立が6月5日ですから、それよりも2週間以上も前に知っていながら、公表しなかったことになります。完全な情報隠しです。
「国民をバカにするのもいい加減にしろ!」と言いたくなりますね。
その2――負担増、給付減の「頭打ち」のウソを衆議院での強行採決の後に出してきたこと。
衆議院での政府の説明では、「将来の保険料の上限を2017年から固定し、給付水準の下限を明らかにした」と弁解してきました。
しかし、その説明はまったくの偽りだったことが、参議院の審議の段階で明らかになったのです。
保険料の上限については「固定される」どころか、国民年金では、賃金の上昇にともなって2017年を過ぎても上がり続け、今から30年後には3万円を超えるというのです。
また、給付の下限についても、政府がこれまで説明してきた「現役世代の収入の5割を保障する」のは、ごく限られた「厚生年金モデル世帯」だけであり、それも年金受給がはじまる時だけで、その後は5割を大幅に下回ることも明らかになりました。
真相を隠せるだけ隠しとおすという卑劣な態度をとり、法案が参議院に回って質問で詰められて、しぶしぶ出したのです。
これも、ほんとうに腹がたつ「後出し」ですね。
その3――衆議院の強行採決の後で、公明党や厚生労働委員長などの年金未納の実態を公表したこと。
これも許せない「後出し」です。
だいたい、あの与党だけの強行採決をやった衆議院の厚生労働委員長が未納だったなんて、腹がたちますね。
採決後に「実は未納でした」って、誰が納得できますか。
政党としては、日本共産党がいちはやく5月6日に合理的な基準に基づく調査の結果を発表し、他党もこれに見習いました。しかし自民党だけは、いまだに党としての未納議員の調査・公表をやっていません。
追及されると、「自由民主党だから自由だ」などといって逃げるのです。これは、「後出し」さえも拒否する姿勢ではありませんか。自民党が、いかに無責任な政党であるかを示すものです。
「未納もいろいろ、議員もいろいろ」という自民党の姿勢こそ、糾弾されなければなりません。
公明党はどうでしょう。
党首、幹事長、政審会長の三役が全員未納であったことを隠せるだけ隠していて、衆議院で法案を強行した後になってやっと明らかにしました。しかし、責任すらとらないという異常な党略ぶりです。
その4――挙げ句の果てに、改悪法の条文上の不備も明らかになったこと。
今日のニュースによると、年金改革関連法のうち、厚生年金保険法に改正すべき条文の直し漏れがあり、条文どおりに解釈すれば一部の上乗せ年金が支給できない可能性もあるというのです。
直し漏れが分かったのは、会社員などが加入する厚生年金保険法の第44条です。
年金受給者の配偶者が65歳未満や子どもが18歳未満の場合などに、通常の老齢年金に加えて「加給年金」を支給することを定めているのですが、これが不可能になるというのです。
これは、厚生労働省もミスを認めているそうです。
10月に法施行とされていますが、こんないいかげんな法案は、一度白紙にもどして根本的にやりなおさなければなりません。
その5――多国籍軍への自衛隊の参加をアメリカに約束したあとも国民に説明責任を果たしていないこと。
もうひとつは、アメリカに多国籍軍への参加を約束していながら、国会と国民には納得いく説明をしていないことです。
これまで政府は、自衛隊は連合軍の「一員ではない」と説明してきました。
しかし、小泉総理は多国籍軍に「参加」し、その「一員となる」と明言しました。180度の転換です。
多国籍軍の指揮権を握る米軍は、ファルージャなどで市民の無差別の虐殺をおこなってきました。パウエル国務長官は「7月以降も同じことをやる」といっています。<
無法な軍事行動をやっている多国籍軍に「参加」する、「一員になる」ということは、自衛隊がそうした残虐行為の共犯者になるということを意味します。
ところが政府は、米英両国と交わしたとされている「口頭了解」の内容を示して、自衛隊は多国籍軍の指揮下に入らないと説明したのです。
これは、これまでの政府の説明とまったく違うものです。
しかも、参議院のイラク有事特別委員会理事会では、これが日本語のもので英文の正文ではないことに批判が噴出し、委員会としては「文書」の受け取りを「保留」し、再度、正文の提出を要求することになったのです。
提出された文書は日本語で、「了解」を交わしたとされる米国務省・英外務省の高官、在米・在英の日本大使館の公使の名前は明らかにされていません。
いったい、いつまで「後出し」を続けるつもりなのでしょうか。