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奮戦記

【02.10.08】公的資金投入に反対する理由は?

■預金者とまじめな貸出先を守るのは当然

 公的資金投入に反対する理由をわかりやすく説明してほしいというご質問がありました。ぜひ、ごいっしょに考えてみましょう。

 1997〜98年の金融不安の時期は、確かに深刻でした。
 たとえば、破たんした拓銀の場合を考えてみましょう。
 拓銀の破たんのさい、私も現地に行って当時の経営陣の方々と懇談したり、北洋銀行の頭取とも話し合い、預金者やまじめな中小企業を守るよう努めてきました。

 私の所属していた大蔵委員会(当時)でも、破たんの引き金となった不良債権とはいったいどのようなものなのか、責任は誰にあるのか、徹底追及してきました。拓銀を含む当時の大蔵検査の資料も委員会に提出させるなどして真相の究明に当たりました。

■バブル期の野放図な貸し出しが拓銀破たんの原因

 その結果、明らかになったことは、拓銀経営陣の乱脈融資でした。――拓銀がバブル期に北海道のリゾート開発などに莫大な資金を、無責任につぎ込んだことが、大量の不良債権を生み出す原因だったのです。
 許せないのは、このような野放図な過剰貸し出しの決済は、ごく一部の経営陣によって行われ、まともな審査がおこなわれていなかったことです。

■銀行となれあった大蔵検査のデタラメぶり

 しかも、このような病巣を指摘してメスを入れ是正すべき大蔵省の金融検査が、驚くべき馴れ合いのもとで行われていました。
 当時は、大蔵省の検査官に対して、銀行側が接待で懐柔したり(後に接待スキャンダルとして暴露される)、大蔵省の検査官もそれを当然であるかのように受け入れていたのです。この大蔵省の姿勢についても、私たちは厳しく追及してきたところです。
 大蔵省の高級官僚が拓銀に天下り、検査される側に検査する側の先輩がいるという状況もありました。こうした異常な状況は、多かれ少なかれ他の金融機関にもありました。

 拓銀破は、単に「不況だから破たんした」というものではありません。預金者やまじめな貸出先に背を向けた乱脈経営によって、破たんさせられたのです。

 この責任を明らかにせず、やみくもに「公的資金投入」をすれば、「なにをやっても、最後は国が税金で面倒をみてくれる」という甘えとモラルハザード(倫理欠如)をもたらすだけです。――「経営陣や大蔵省のまともな責任追及もないまま、なぜ、私たちの税金を投入するのか」「デタラメな経営の尻ぬぐいを国民に押しつけるのは許せない」という声が多くの国民のなかに広がったのも、当然のことだったと思います。

■金融業界の自己責任・自己負担こそ

 私たちは、経営陣や大蔵省の責任を徹底的に追及すると同時に、どうしても、(1)まじめな貸出先をまもること、(2)預金者をしっかりと守ること――この2点を追及しなければならないと考えました。
 「受け皿銀行の用意、資金支援、預金全額保護」などがなかったら、「北海道経済を襲った激震は、もっともっとひどかったろう」というのは、もっともです。

 私たちは、それを税金投入によってではなく、金融業界の共同責任・自己負担でおこなうべきだと主張したのです。その理由は以下の通りです。

■乱脈経営に責任のない国民に負担させるのは筋違い

 第一は、先に述べたように、税金投入は銀行の乱脈融資と破たんにいっさい責任のない国民に、ゆえなき負担を強いることになり、道理に合わないからです。
 もともと金融システムの安定という事業は、金融機関・金融業界におわされた共同の責任に属することです。銀行が、預金業務、決済業務、融資業務をしっかりはたし、日本経済と国民に貢献すること。――これは、金融機関・金融業界全体が共同で負っている責任です。

 ですから、個別の金融機関が破たんしたとき、預金者とまじめな貸出先を守るというのは金融業界の共同の責任(自己責任)なのです。
 そのため、銀行業界には預金保険機構というものがあり、金融業界全体としてその手当にあたるというシステムができているのです。――もしも資金が足りないなら、大手銀行を中心に預金保険料を引き上げる。それでも一時的に不足するときは、金融市場からの調達や日銀からの借り入れをおこなう。その返済は銀行業界が責任を持っておこなう。――これがまっとうなやり方です。

■預金保険料の適切な引き上げが必要

 第二に、国際的に見ても、これが当たり前になっているからです。
 アメリカでは、商業銀行の破たん処理を銀行業界の負担でまかなうために、預金保険料を3倍に引き上げたことがあります。アメリカの銀行が、身を削るような努力をしてきたのに、日本の銀行は一円の負担増もなく一方的に国民に負担を押しつけるというのは、道理がありません。
 たとえば、日本のばあい、業務純益にたいする保険料負担率は大手銀行で5%弱です。これはアメリカの最高時の8%と比べても低いものです。また、預金保険料率はアメリカのピーク時の3分の1にすぎません。

■企業をつぶすために、なぜ税金を投入するのか

 第三に、投入された公的資金が、何に使われるかも大きな問題です。
 最近の議論を見ていますと、竹中金融担当大臣は、不良債権処理を加速するために使うといっています。
 しかし、不良債権を処理するとはどういうことでしょうか。それはご承知のように、融資先の企業の経営が思わしくない場合、これ以上の融資をしないとか、すでに貸し付けている資金を引きはがす(回収する)ということです。――要するに、まじめな企業でも倒産させるということです。

 中小企業を救うために公的資金を使うのではなく、企業をつぶすために使う、銀行が企業をつぶしやすくするために使うというのですから、使い道としても絶対に納得できるものではありません。

 しかも、銀行が危機に陥らなくても「予防的に税金を投入する」などと言うにいたっては、言語道断です。

■地域金融をまもるために

 この間、金融庁の画一的な検査で、破綻に追いこまれた信金・信組は50を超えています。このような強引で画一的な検査自体をやめさせ、地域金融機関を無理矢理破たんさせるようなやり方を改めなければなりません。
 この点については、日本共産党が提案を行っていますので、ぜひご参照下さい。
 






えっ そうなの?

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