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奮戦記

【01.06.26】塩爺さんの「忘却」発言について

「癒し系の人柄」などと言われている“塩爺”こと塩川正十郎・財務大臣。───はたして、どんな人なのでしょうか。

“勇気ある発言”だった
 塩川さんさんは、大臣に就任する以前、2つのたいへん重大なことをテレビで言っていました。ひとつは、外務省から内閣官房に機密費の上納があったことを認めた発言です(財政法違反)。ふたつ目は、内閣機密費を野党対策に使った、という証言をしたことです。こんな風に……。
───「総理が、外遊で海外出張でいくから、……外務省のある枠内からもってこいよと」(テレビ朝日「サンデープロジェクト」2001年1月28日放映)。「総理が外遊に行きますね、……外務省に負担しろと、こうなるわけですね」(日本テレビ「ザ・ワイド」2001年1月29日放映)。
───「野党対策に使っていることは事実です。現ナマでやるのと、それから、まあ要するに一席設けて、一席の代をこちらが負担するとか」(テレビ朝日、同上)。
 これは、きわめて重大な発言であり、ある意味で“正直な勇気ある発言”だったと言ってもよいでしょう。

肝心なことを「忘れてしまった」
 ところが大臣に就任すると、「忘れてしまいました」と、まったくとぼけた答弁をするようになったのです。5月15日の衆議院予算委員会での穀田恵二議員(日本共産党国対委員長)とのやりとりはこうでした。
穀田 ……発言は事実ですね。
塩川財務大臣 発言したことを忘れてしまいました。
穀田 それはないでしょう。……
塩川財務大臣 昨年のことですし、新聞、雑誌の方でどのようにアレンジしたのか、もう私は知りませんし忘れてしまいました。
穀田 野党対策に使ったことも忘れたのか。
塩川財務大臣 ……どういう質問で答えたのかということについては、忘れてしまいました。
 私は、予算委員会の現場で質疑を聞いていて、思わず唖然としてしまいました。こんな答弁が出るとは思っていませんでした。しかし、その後の塩爺さんの発言を聞いていると、どうもこれは「忘れたふりをしている」としか思えなくなりました。

忘却を誓う、心の「やましさ」
 私が幼いころ、「君の名は」という映画が大ヒットしました。そして、映画の主題歌も使われた台詞(せりふ)も、たいへん有名になりました。───「忘却とは、忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の哀しさよ」。
 最近、このせりふをもじって、塩爺さんは「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心のやましさよ」といわれています。
 ところが、6月18日には参議院決算委員会で「30年たったらちゃんと申し上げますから」と答えているのです。私は、これにもあきれました。
 30年後というと塩爺さんは110歳。“長生きの決意”はともかく、この答弁は「知っているが、いまは言わない」ということではありませんか。

大臣になったら「言わんことにしとんねん」
 もっと」ハッキリ言っているインタビューがあります。
 それは、大臣に就任した後、5月28日に放映されたニュース・ステーションのインタビューです。
───「そういった中身のことについては、忘れてしまったということでございまして」。「ぼくは、あれは政府の一員になったんで、もういっさい言えません。役職についたらそういうものに対する責任感が、別の責任がある、発言にはね。そういうことと交じっていっさい言わんことにしとんねん」。
 私は、衆議院の財務金融委員会で、塩川財務大臣にききました。
佐々木憲昭 大臣になる前には真実を述べるけれども、大臣になったら本当のことを言わなくてもいいということじゃありませんか。
塩川財務大臣 ……ここのところは、私も覚えがございません。
佐々木憲昭 これは、一週間前に放映されたものですけれども、三ヶ月前も忘れたけれども、一週間前も忘れたのですか。
塩川財務大臣 私は、インタビューを受けておりませんで……。
佐々木憲昭 これは記憶ないですか。
塩川財務大臣 私は記憶ありませんね。
 まあ、驚きました。ここまで、とぼけるとは───

はぐらかしと、おとぼけで逃げ切れるか
 大臣になったらほんとのことを「言わんことにしとんねん」と答えていながら、私がこれを取り上げたら、今度は「インタビューは受けていない」と答えるので、ついに質疑が膠着状態になりました。そのため、財務金融委員長がこうのべました。
山口委員長 このビデオにつきましては、今一度大臣の方でビデオを手に入れていただいて見ていただく。……きちっとごらんいただいて、また再度ご答弁をいただくことでお願いしたい。
 その次の日(6月6日)。私は、もう一度、質問に立つことになりました。ところが、大臣はこう答えたのです。
───「インタビューではございません。私の書斎でした。したがって、着物を着ておりました。そこへ、お客さんが立て込んでおりまして、お客さんが帰りましたあと、二人、女の方とカメラの方と、どこどこどこと入ってまいりまして、『撮らせてくれ』ということで、それでございますから、インタビューとかなんとかではございません」。
 ここまでくると、あきれ果ててしまいます。
    「ほんとのこと、話してくれませんかね」
 その日のニュースステーションでは、久米宏さんがさっそくこれを取り上げて、反論しました。
───「後ろに流れている映像は、インタビューをおこなった当日のものなんですが、非常にリラックスされている様子です。……担当した女性ディレクターによりますと、きちんと取材依頼を出して、オーケーをもらって、1日取材をした。インタビューも2回に分けて30分ほどおこなったということです」。
 久米さんがテレビという社会の公器をつかってウソを言うことは、まず考えられません。となると、塩川財務大臣がウソをついているとしか言えないではありませんか。
 久米さんは、最後にこう言いました。───「ほんとのことを、話していただけませんかね」
▼塩川発言については、国会レポートにも記事があります。そちらもご覧下さい。

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