アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

その他 (独立行政法人)

2006年03月15日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【345】 - 質問

酒類総合研究所職員の非公務員化法案に反対

 2006年3月15日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は「独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案」について質問しました。この日、質疑の後、討論と採決が行われました。

 酒税の税率が酒類の品目ごとに異なるため、公正な賦課・徴収をおこなううえで、酒類の分析・鑑定は、きわめて重要な公的機能を果たしています。
 日本の酒類総合研究所は、これまで世界に誇るべき酵母の開発や清酒製造技術などで大きな成果を上げてきました。
 このような実績を持つ研究所の研究活動は、さらに発展させていかなければなりません。
 重要な機能を果たしているのに、5年前、当時の国税庁醸造研究所を独立行政法人化し、さらに今回の法案では、非公務員型の独立行政法人にしようとしています。そうなれば、研究者の身分がいっそう不安定になります。
 佐々木議員は、「税を公正に賦課し徴収する。そのための基礎となる研究を国でやったら、なぜ悪いのか」と質問。
 谷垣財務大臣は、「公務員が研究してはいけないということは毛頭ない。今までも、きちっとした研究をやってきていただいた」と答弁。
 佐々木議員は、「公務員がしてはいけないということではないというなら、公務員でいいのではないか」、「非公務員化では、身分が非常に不安定になり、研究基盤が弱体化をするのではないか」、「酒類の安全性など国民にとって必要な研究を発展させるための基盤が弱まる恐れがある」と指摘しました。
 また、独立行政法人化以降、受託研究や共同研究が増加していることも危惧する点です。
 財務省の平成16年度全体的評価によると、「新たに外部資金を獲得したことで増収を図っている。」と、受託研究等に対し重要な評価を与えています。
 佐々木議員は、「商業ベースの研究に比重が傾いて、本来あるべき研究活動から変質していく、そういう危険性もあるのではないか」と指摘。
 今大事なことは、職員数や運営交付金を削減するのでなく、むしろ充実することです。それでこそ、基礎的研究や独創的な研究が発展し、後継者育成を初めとする中小零細業者への支援も前進することになります。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 酒税の税率は、酒の品目ごとに異なっているわけであります。そのため、公正な賦課徴収を行う上で、酒類の分析、鑑定というのは極めて重要な公的な機能を果たしていると私は思いますが、まず、大臣の認識を伺いたいと思います。
○竹本 財務副大臣 酒税法では、先生おっしゃったように、酒類を原料それから製造方法などで区分いたしまして、さらに、アルコールの度数等に応じて異なる税率を適用しております。例えば、ビール、発泡酒、第三のビール等々ございますけれども、味、香り等が類似している場合でも麦芽の使用の割合が違うといったことで、今申し上げたような酒類の違いが出てくるわけでございます。
 酒類総合研究所では、このような税率を決定する重要な要素となります分析、鑑定業務のうち、国税局では対応できない高度な分析、鑑定を担っているところでございまして、重要な公的機能を技術的に果たしていると考えております。
○佐々木(憲)委員 日本の酒類総合研究所は、これまでも、世界に誇るべき酵母の開発あるいは清酒製造技術など大きな成果を上げてきたと思います。例えば、清酒酵母の世界最初の発見を初めとして、泡なし酵母の開発と実用化というのを聞いております。泡なし酵母というのは、清酒製造の省力化に非常に大きく貢献をしてきた。酒類研究所の研究内容は極めて高度で、世界に誇れるものだと私は思います。
 このような実績を持つ研究所の研究活動は、さらに発展させるということは必要だと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○谷垣 財務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、あそこの研究所へ参りまして、酵母、こうじ、ずっと開発を進め、研究成果を積み重ねられた、それを見ますと、なるほど、日本の酒造業というのも、こういう基礎的な努力、こういうものがあって維持されてきたのだなと大方の方がお感じになるんじゃないかなと私は思っております。
 そういう基礎的な研究から、さらに応用研究といいますか、技術移転ができるようなことまで幅広くやってこられましたし、特にこうじ菌に関して、これはほかの大学や研究機関と共同してやられたわけですが、ゲノムを全部解析して、これの特許出願を行ったというのも、私は酒の研究というものにとって非常に意義の大きいことであると思います。ですから、今後は、恐らくポストゲノムというようなことで、さらに研究を進めていただかなきゃいけないと思っております。
 ですから、酒類総合研究所というのは、先ほどからの御議論のように、国税庁が公正に酒税というものを賦課して徴収していく上でも不可欠でございますけれども、やはりそれだけではないので、先ほどから酒類業の健全な育成ということがございますけれども、やはりその基礎となるものを提供してきた機関だというふうに思っております。ですから、こういう非公務員化ということでありますけれども、そのメリットを十分に生かして今後も発展をしてもらいたいと思っているわけであります。
○佐々木(憲)委員 これだけ大変重要な機能を果たしているにもかかわらず、五年前に当時の国税庁醸造研究所を独立行政法人化し、さらに今度の法案では非公務員型の独立行政法人にしようとしているわけです。果たしてそれでいいのかというのが我々の疑問であります。
 先ほど、七条委員は、民営化には反対だ、しかし、非公務員化までは認めるというわけでありますが、しかし、私は非公務員化もよろしくないというふうに思うわけです。5年前に独法化されたときも、我々はこれに批判的でありましたが、独法化された後も、研究所は酒税の適正な賦課を行うための分析、鑑定等をしっかり行ってきたというふうに聞いております。税を公正に賦課し徴収する、そのための基礎となる研究を公務員がやったら何で悪いのか。
 大臣にお聞きしますけれども、これまで公務員が研究してきたことが理由で、公務員だからという理由で、何か不都合な事態が発生しましたでしょうか。
○谷垣 財務大臣 公務員が研究しちゃいかぬなんということは毛頭ないわけでございまして、今までもそういうことできちっとした研究をやってきていただいた。私どもが先ほどから申し上げていることは、しかし、より民間との、あるいは大学との研究交流等を進めていく場合に、やはり公務員の身分というのは、職務専念義務とかいろいろなものがございますのでなかなか弾力性がない、あるいは、研究費等々をどう使うかというようなことでもなかなか自主性がない、もう少しそのあたりを自由にしていくことによってより研究交流の実が上がるのではないか、そういう中でより成果も上げられるのではないか、こういう思いでございまして、公務員がやったらいかぬなんということは少しも思っておりません。
○佐々木(憲)委員 公務員がやったらいかぬということではないというなら、公務員でいいと思うんですね。公務員だから何かおかしなこと、不都合なことがあったかというと、何もないというわけでありまして、私は、公務員だからこそ安定した長期的な研究、基礎的な研究ができるんだというふうに思うんです。逆に、非公務員化ということになりますと、身分が非常に不安定になる、研究基盤がその意味で弱体化をするのではないかというふうに危惧するわけであります。
 法案は、非公務員化で民間との人事交流の促進を図ると。今も盛んにこう言われているわけですが、果たして公務員がやってきたこの研究がどうなるか。それから、公務員の身分で兼業が禁止されているということで、非公務員になるといろいろなことができる、雇用形態が弾力化されるというんですけれども、これは一体どういうことを可能にするということなんでしょうか。
○岡本政府参考人(国税庁長官官房審議官) お答えいたします。
 非公務員化によりまして、国家公務員法において規定されております職員の採用の制限や兼業禁止などが適用されなくなるということとともに、国家公務員の勤務条件等を考慮したものとすることとされております勤務時間等につきましても、独法の裁量により決めることが可能になります。
 その結果、例えば、緊急性を要する研究課題について、速やかに専門知識を有する研究者を採用して参加させたり、例えば酒類の安全性の問題とかで起こることですけれども、それからまた、逆に、大学等の要請に応じて、一定期間について研究所の研究者に出向させて研究課題に参加させる。従来以上に人事交流等を弾力的に行うことが可能になるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 緊急性に対応する方法なんというのも、今までもやろうと思ったらいろいろな形ができるわけです。
 この弾力化によって、例えば週3日間は研究所で勤務をする、2日間は民間で勤務するということも可能になるわけで、しかし、職員の給与はどうなるのか。週3回しか保障されないということにもなるのではないか。さらに、3年から5年に期間が限定された任期つき職員、こうなりますとその比重が高まる。効率化を追求するというのはいいかもしらぬが、追求すればするほど職員、研究員の身分が不安定になる、こういう側面を見落としてはならぬと思うんです。
 やはり、酒類の科学的研究、長期的な視野で取り組む、そういう基礎研究ですね、この安全性など、国民にとって必要な研究ですね、この発展にとって、非公務員化というのは私はマイナスに作用するのではないかというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。
○竹本 財務副大臣 酒類総研は、基礎的研究でその存在を示してきたところでありまして、しっかりとした仕事をやってきたと思います。
 ただ、時代の流れで、民にできることは民にという流れの中で、これの独立行政法人化を今回図るわけでございます。ですから、非公務員型の新しい形態のもとでしっかりした仕事ができないと本末転倒でありますから、その点はきっちり覚悟しなきゃいけないということでありまして、今回、非公務員化に合わせまして4月1日から開始になります第2期の中期目標期間の中では、研究すべき行政テーマ、調査テーマとして、安全性、環境保全に並びまして、技術基盤の強化ということをしっかりとうたっております。
 したがいまして、この研究所では、直ちに企業利益に結びつかないリスクの高い分野において、民間にゆだねた場合には実施されないおそれが高い基盤的、基礎的研究を中心として業務を遂行していきたい、そのように考えておるわけであります。
○佐々木(憲)委員 時代の流れだからそれでしようがないんだというんじゃ、原理原則は一体どこに行くのかという話になるわけです。しっかりとした基礎的な研究ができるようにというのが大事であります。
 今、中期計画とおっしゃいました。2001年の独立行政法人移行後、財務大臣が3年以上5年以下の期間において達成すべき中間目標を定めて、研究所に対してその実現を指示したということであります。研究所は、この目標達成のための中期計画の実現を迫られたわけで、具体的には、数値目標を掲げて研究の成果が求められたということであります。
 酒類研究所の「酒類総合研究所のあゆみ」というものがありまして、それを見ますと、現場の職員からも、研究開発における成果が未知数であることから両者をいかに両立させるかに苦労した、大変苦労したというふうに吐露されているわけです。
 大臣、この腰を落ちつけた研究というのがやはり必要だと思うんですね。余りしりをたたくようなことはすべきじゃないと思うんですが、いかがですか。
○谷垣 財務大臣 独立行政法人化の目的の一つが、それぞれの研究機関が自主的に研究をして進めていただくということを意味しておりますので、やたらにその自主性を排除するような形でしりをたたくのはよくないと思います。
 ただ、同時に、5年ごとに中期計画を立てますので、その中でやはり成果を上げていただくような督励をするのは、私は必要なことだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 研究の成果というのは、今までの実績を見ましても、やはり10年とか15年とか、非常に長期にわたって研究されたものが成果として上がってきているわけです。そういう観点でぜひ見ていただきたいというふうに思います。
 それから、この独法化されて以後、企業との共同研究、受託研究というのが増加していると聞きますけれども、この5年間の企業との共同・受託研究、どうなっていますでしょうか。平成12年度と16年度、この2つの件数を述べていただきたいと思います。
○岡本政府参考人(国税庁長官官房審議官) お答えいたします。
 酒類総合研究所における共同研究及び受託研究の件数でございますけれども、独法化以前の平成12年度におきましては、共同研究が10件、受託研究が3件となっておりました。それから、法人化後になりました16年度におきましては、共同研究が24件、受託研究が6件となっております。
○佐々木(憲)委員 こういう形でやっていきますと、外部資金の獲得を目的にするという傾向も強まるわけであります。評価委員会によりますと、外部資金の獲得を評価の対象にしているということなんですね。これが一層強まりますから、商業ベースの研究に比重が傾いて、本来あるべき研究活動から変質していく、そういう危険性もあるのではないか。
 前身の醸造研究所では、民間ベースで対応できない高リスク、高コストの基礎研究を行って、日本の清酒の生産性を向上させる上で大きな役割を果たした。また、従来海洋投棄していたしょうちゅう蒸留廃液の適正処理に役立つ酵母を開発した。そして陸上処理を可能にした。こういうわけであります。ですから、これからもこういうことをさらに発展させていく支えというものが必要なわけであります。
 特に、最初、大臣がお述べになった中小業者、これは圧倒的に多いわけです。清酒製造業というのは従業員10人未満が全体の72%、そういう零細が多いわけでありまして、また杜氏者の数も、73年、2960人だったのが、2003年では983人、激減しているわけです。
 ですから、そういう状況のもとでこの研究所の果たす役割は非常に大きい。日本の伝統的文化である清酒あるいはしょうちゅう乙類の中小零細企業の製造業者を守る、そういう方向での具体策を最後に大臣にお聞きしたいと思います。
○竹本 財務副大臣 佐々木先生おっしゃったように、杜氏の数も千人切っておるし、この企業形態も10人以下が7割というお話でございますが、そんな人数ではなかなか基礎的研究なんてできるわけがありません。ですから、そういった人たちを助けるために当研究所では基礎的な研究をやるわけですが、それを中小企業に返していくためにはどういうことをやっているかと申し上げますと、まず、酒については全国新酒鑑評会、それからしょうちゅうについては本格焼酎鑑評会、こういう催しをやっておりまして、その審査結果、そこから得られたデータをこれらの中小企業にフィードバックいたしております。
 また、そういう業界ですから新しい人がなかなか入ってくることは少ないわけでございますが、いわゆる新米に対しては、新人の研修もまたこの研究所でやっておる、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 しっかりとこの基礎研究を発展させることと、中小零細業者を支援する、この観点を守っていただきたい。したがって、今回のこのやり方については私どもは反対だということを申し上げたいと思います。
 以上で終わります。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる