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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (消費税, 免税点引き下げ, 強権的徴税, 国有財産)

2006年04月12日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【347】 - 質問

「国民の財産を大企業に提供か」佐々木議員批判/免税点引き下げで「確定申告申込者の1割が未申告」財務省が答弁

 2006年4月12日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は国有の土地・建物の売却を促進する国有財産法「改正」案について質問しました。質疑後、採決され、日本共産党が反対するなか、自民党、公明党、民主党の賛成多数で可決されました。
 この法案は、政府の経済財政諮問会議の民間委員が、国有財産の高度利用・民間活用、売却促進を推進する提案をしたものがもとになっています。
 佐々木議員は、この法案は国民の財産を大手不動産会社や民間デベロッパーの利益拡大のために提供するものだと批判しました。
 また、佐々木議員は、国有財産の公立活用というなら、大きな部分を占めている防衛施設や米軍への提供地などを聖域化すべきでないと主張し、国民のためにどう有効に活用するかを中心に考えるべきだと主張。
 そして、「売却すれば、それを買った特定の私企業に占有され一般の国民がそこから排除されることになる」と批判しました。
 これにたいして、谷垣財務大臣は、国有財産は公用・公共用の用途が優先されるとのべながら、「厳しい財政状況下であり、債務の圧縮に役立てる」と答弁。
 佐々木議員は、国家公務員の宿舎でも、1兆円くらいの売却益であり、「財政的にはほとんどプラスにならない」「この財産を不動産会社やディベロッパーが“鵜の目鷹の目”で狙っている」「国民の財産を大企業の食い物にしてはならない」と述べました。



 引き続いて、佐々木憲昭議員は、消費税の免税点を年間売上げ3000万円から1000万円に引き下げられたことで被害を受ける中小企業・業者の問題について質問しました。
 新たな消費税納税者になる個人事業者は、122万件にのぼります。
 その消費税の確定申告は、先月末に締め切られました。
 竹本財務副大臣は、推定で2005年度の申告申込者のうち1割の約16万件が申告していないことを明らかにしました。
 佐々木議員は、直接、中小企業・業者から聞いた悲痛な声を紹介しました。
 ――「元請けから一方的に価格引き下げの要請を受け、競争も激化するなかで単価が下がっているのに、そこに消費税分を上乗せは出来ない」。
 ――「今年から消費税の課税業者になったが、売上が伸びないので消費税分を転嫁できない」。
 ――「元請けからFAX一本で値引きの通告があり、とても消費税を転嫁できない。単価7円の仕事に、2円の値引きを求められても交渉の余地はない」。
 そのため、赤字の零細業者は消費税を転嫁できず身銭を切って払わなければならず、申告したくても出来ないというのが実態です。
 谷垣財務大臣は、「課税業者も増えたので、これから実態を把握することが必要だが、消費税は転嫁するのが原則」とのべて、まともに答えませんでした。
 佐々木議員は、「分納できなければサラ金に借りるしかない」という業者の声を紹介しながら、分納や延納など「親切な対応」を求めました。
 谷垣財務大臣は「納税者と相談しながら、分割納付を含め、実情に即した対応をしていく」と答えました。
 佐々木議員は、最後に、「このような事態を招いた原因は、『改悪消費税』にある。それを放置して、消費税率を引き上げるなど、絶対にやってはならない」と厳しく指摘しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 国有財産とは何ぞや、一体幾らあるのかという議論が続いているわけであります。
 財務省は、売ることが可能な国有財産として、売却収入で見て11.5兆円、これに対して、自民党の財政改革研究会は112兆円、経済同友会は175兆円ということであります。10倍から15倍の開きがあるわけですね。同じ自民党でもいろいろでして、中川政調会長は、11兆円程度というのはスズメの涙だ、こう言っている。これに対して、党の税調の顧問をしている津島雄二さんは、国有財産を売れば借金がなくなると言わんばかりだが、国民はすぐだまされるが私はだまされない。片山虎之助参議院幹事長も、こんなにうまい話を信用していいのか、まゆつばというやつじゃないかと批判をしているわけです。何でこんなに違いが出てくるんですか。
○谷垣財務大臣 この議論をやりますとき、何を議論しているのかということを考えずに議論をするともうごちゃごちゃになっちゃうんですね。
 それで、私どもが、今後資産、債務の問題で国有財産等々を売却して11.5兆ということを申しましたのは、歳出歳入一体改革の関係で、要するに現在のこれだけの財務体質を改善するに役立つもの、財源としてそうなるものを、どれだけあるかと言われたら11.5兆でございます、こういうふうに申し上げているわけです。
 他方、党の方の100兆を超える議論は何をやっておられるかといいますと、必ずしも財政の赤字を穴埋めする財源の話をしておられるわけじゃなくて、大きなバランスシートになって、資産のところも大きいけれども負債のところも大きい、それをそのままに置いておくとリスクがいろいろあるじゃないかと。例えば、金利変動リスクみたいなのも金融資産を持っているとあるじゃないかというようなことから、それを圧縮するにはどうしたらいいかという議論をしておられまして、直接財政再建に役立てようという議論ではないわけでございます。
 それから、さらに同友会の方はそれに輪をかけた規模になっておりますのはなぜかといいますと、いろいろな違いはあると思いますが、大きなところは、例えば、今NTT株でも、国家が持っていなければならないというものがあるわけですね。そういうものも、政策を改めて全部売却したときにはもうちょっと出てくるぞということを言っておられますので、それはまた政策論として、そういうものを売却したらどうかという議論はあると思いますけれども、私どもは、今の法を前提として考えますと、そこまでは今議論の限りではない、こう思っているわけであります。
○佐々木(憲)委員 要するに、一番の違いは金融資産、これを入れるか入れないかというのが中心だと思うんですね。金融資産というのは大半が自治体や特殊法人への貸付金でありまして、そのため、証券化しても財投債の償還に使われるというだけでして、負債も減るけれども資産も減るというものですね。だから、国債の減少にはつながらないわけでございます。むしろ、証券化した商品を魅力ある利回りにするためには、その分政府が貸付債権を安く手放すという必要も出てきたり、これは財政再建にとってプラスには決してならないと私は思うんです。また、そのためのさまざまなコストが必要になる、かえって負担はふえるというふうに思われる面もあるわけです。
 この点で、財務大臣はこの証券化についてどのようにお考えでしょうか。
○谷垣財務大臣 佐々木さんと意見が違って論争することが多いわけでございますが、今の点に関しましては私は極めて近い見解を持っておりまして、国の信用を背景に資金調達をしている財政融資、これをそういう形と切り離して民間に売るとなると、やはり金利の差、プレミアムの差というものもあろうかと思いますし、コストもかかります。
 それから、財政融資というのは一定の政策目的があって貸しているわけでございますので、政策目的と違うところに使われていってしまっては困るわけですけれども、それを一体どうコントロールしていくのかといったような観点が十分克服できるのかどうかというのは、よくよく議論をする必要があるのではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 金融資産を除きますと、一番核になるのは土地建物であります。しかし、ここで考えなければならないのは、国有財産とは何だ、何だろうかと。つまり、国民の財産であるということだと思うんですね。
 財務省が出しているいろいろな国有財産のパンフレットなどを見ますと、「くらしに役立つ国有財産」というような見出しが躍っているわけであります。国有財産の効率的利用ということであるならば、私は、国民のためにどう有効に活用するかというのが発想の中心にならなければならない、何でも売ればよいというものではないと思うんです。
 先ほどの議論もありましたが、売却で一時的な収入があったとしても、やはり、例えば、財産を買った私企業、これが独占的に占有して利用する、一般の国民がそこから排除される、こういう結果に売却をするとなってしまうわけでありますが、そういう認識というのはおありですか。
○谷垣財務大臣 御指摘のように、国有財産は国民共通の貴重な財産、資産であるということは、おっしゃるとおりだと思います。ですから、これまでも、例えば公園であるとかあるいは緑地であるとか、そういった公用ないしは公共用、国の財産を処分する場合にはそういったことを優先的に考えるべきだという考え方でやってまいりました。
 今回でも、1月、財政制度審議会の答申もございまして、地方公共団体などで公用、公共用として使いたい、欲しいという要望があるものにつきましては、要望の受付期間やあるいは契約期限を設定はするが、引き続き優先的な取得を可能にする、こういう考えで臨んでおります。
 それで他方、先ほど、みんなで使っていたものが買った者に独占、独占というか、ほかの方が排除されるようじゃつまらぬじゃないかという御趣旨のことですが、今の厳しい財政状況をかんがみれば、売却可能な国有財産、使っていないようなものは特に積極的に売っていって、その代金は結局、借金といっても私財務大臣一人でしょっているわけではございませんで、国民共通の負債でございますから、それを少しでも圧縮していくのに役立てていく、こういう方針で臨んでいるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 国有財産はこれまで、公用、公共用の用途を優先する、こういう原則で管理、処分がなされてきたと思います。とりわけ、庁舎等の行政財産については、専ら国が直接使用するということを念頭に、貸し付けなどの私権の設定は原則として禁止する、こういうことでやってきたわけですね。そのために、民間の利用については、国の事務事業に支障を及ぼさないという範囲で、行政処分である使用許可により民間利用を認めてきたにすぎない。
 それで、民間利用を促進するための今度のこういう新しい規制緩和というのは、この今までの考え方、今までの原則というものを変えるものでありまして、かなり大きな転換だというふうに思うんですが、いかがですか。
○牧野政府参考人(財務省理財局長) お答えをさせていただきます。
 先生御指摘のように、従来、行政財産については、その使用について、民間なりの使用については厳しくやってまいりました。それは基本的には、国の資産について、適正性と申しますか、そういう観点を重視して国有財産行政をやってきたわけでございます。
 ただ、最近は、やはり国有財産を少しでも有効に活用しろという声が非常に強くなっておりますし、それから規制緩和という声も非常に強くなっておりまして、そういう中で、我々として、行政財産の使用目的に反しない範囲で、より有効な活用の道があればそれは実現したいということで法改正をお願いしているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 国民の財産をそのように扱っていいかどうか、これについては私は根本的に疑問を持っております。
 しかも、金額から見て財政的にはほとんどプラスにならない。例えば国家公務員宿舎の売却で、1兆円と言いますけれども、しかし、この売却がすべて可能と言えるかどうか、これもまた問題でありますし、10年間かけて売るわけでありますから、年間にすれば、先ほど焼け石に水という話がありましたが、本当にそうだと私は思います。600兆円の債務に比べますと本当に微々たるもので、今やっているのは重箱の隅をつつくような話ですよ、簡単に言うと。それで、この財産をむしろウの目タカの目でねらっている不動産関連企業あるいは民間ディベロッパー、こういう企業もあるわけです。
 そこで、お聞きをしたいんですけれども、自民党の政調会長などは、第三者機関の設置によってその処分を考えたいというようなことをおっしゃっている。しかし、問題はそういう機関の構成メンバーであります。
 その財産を利用して利益を上げようとする企業の代表が専門家の顔をしてそこに入ってくる、こういうことになりますと、国民の財産を切り売りする計画に自分自身が入ってきて、その計画を作成して、それを自分が利用する。まさに新しい利権が発生しかねない。こういうやり方はやはり認めてはならぬと思うんです。やはり利害関係者をそこから排除するということをやらないと、これは新しい癒着が生まれるというふうに思いますが、どのように対処されますか。
○谷垣財務大臣 第三者機関を使って進めていくべきだという御提案の一番とるべき点といいますか一番ポイントは、今まで役所の持っていた手法だけではなくて、民間でいろいろ高度に利用したりしている方法があるから、それをできるだけ取り入れたらどうだ、取り入れるべきものは取り入れろということなんだろうと思うんですね。
 それで、私どもも、経済財政諮問会議のもとで資産・債務改革を含む検討を行う専門調査会を設置しよう、これは既にそういうふうに決まっております。
 それから、財務省で現在、宿舎のあり方について御検討いただいている有識者会議というのがございますが、これは伊藤滋教授に座長をしていただいておりますが、これは総理の御了解を得て、6月目途の取りまとめ以降改組をいたしまして、庁舎等も含めた国有財産全般について検討していこう、フォローアップしていこう、こういうことで、外部の知恵も入れていこうということになっております。
 そこで、そこにどういうメンバーが入るかということでございますが、経済財政諮問会議の専門調査会のメンバーにつきましては、これは内閣府が所管でございますから、内閣府において適切にお選びいただくものと思っておりますが、私どもの方の有識者会議をどう改組していくか、これは、伊藤座長とも相談の上、国有財産の有効活用を図るという観点から、適切で公正な方、中立的な方々、こういった方にお願いしたいと考えているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 といいますと、先ほども少し議論がありましたが、現に今有識者会議の中に入っている不動産、ディベロッパー関係の企業の利害関係者、これは入れないということが原則だとはっきりここで認めていただけますか。
○谷垣財務大臣 これは座長の伊藤先生とも御相談をしなければなりませんので、私独断で申し上げるわけにはいきませんけれども、やはり中立公正という観点は大事だと思っております。
○佐々木(憲)委員 これが新たな利権を生むようなそういう温床にならないようにということを申し述べたいと思います。
 さて、そこで、国有財産というふうに財務省が出してきた資料を見ますと、ここに資料を配付しましたが、42兆円となっておりますが、その7割に当たる32兆ですね、この下の部分ですけれども、これはバツがあって、最初から聖域化しているわけです。
 それで、この資料1で、一般庁舎・宿舎が9.6兆円、未利用国有地が0.4兆円、合わせて10兆円、これが対象になると。ところが、防衛施設等とされている部分は32兆円ある。その内訳は次の2枚目にあります。大きな数字の方から言いますと、防衛施設9.3兆円、国有林野8.6兆円、在日米軍施設としての提供財産4.6兆円等々となっているわけです。
 なぜこの部分を最初から聖域化しているのか、この部分に無駄が一切ないということがなぜ言えるのか、そういう検討は最初からなぜしないのか、これを聞きたいと思います。
○牧野政府参考人(財務省理財局長) お答えをさせていただきます。
 防衛施設、あるいは刑務所ですとか石油備蓄基地、そういったものは削減が非常に難しいものとして分類しております。
 ただ、これらについても決して一切手をつけないということではなくて、その中で、先ほどもちょっと話題に出ておりましたが、自衛隊関係でも、都心で緩やかに使っているような施設があれば、そういったものは見直していく必要があると思いますし、そういうのを個々にちゃんと検討していきたいと思っております。
 ただ、まとまってある程度の一定の金額が出るのは、ここへ出しておりますこの9.6兆円と未利用国有地であるということでございます。
○佐々木(憲)委員 まとまってといっても、ほかのところの方が数字が多いんですから、これはきちっと検討するというのは当たり前のことであります。
 例えば、米軍基地を見ましても、例えば横浜だけを取り上げましても、根岸住宅地、横浜ノースドック、富岡倉庫地区、池子住宅地区及び海軍補助施設、上瀬谷通信施設、深谷通信所、鶴見貯油施設。今現実に市と当局が交渉をして、そして返還の一部合意をし、また交渉中、こういう状況であります。しかも、利用の方法は公園ですとかあるいは福祉の増進のため、こういうことでやっているわけですね。
 全国で見れば、こういうのは幾らでもあるわけです。国民の財産を検討するというのですから、やはり公共的にどう利用するかという観点から、すべての分野を聖域化せずに対象にするというのは、これは当然じゃないんでしょうか。
○牧野政府参考人(財務省理財局長) お答えをいたします。
 今回整理いたしましたのは、財源になり得るものというものを中心に検討したわけでございまして、今先生が列挙されました横浜の米軍関係の跡地、まだ最終的に使途が決まっているわけではございませんが、一般論でございますけれども、ああいう米軍に提供していた財産のようなものについては、大体地元の自治体が、例えば公園で使いたいとか、そういう用途で希望をされることが多くて、そういった場合には、我々はそれを尊重してきております。
 そうしますと、売り上げといいますか売却代金というのは極めて限られたものになるものですから、そういう意味で、今回は売却収入に上がるものについて整理をしたということで御理解をいただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 この2枚目を見ていただきますと、厚生年金施設・会館等1.5兆円、あるいは裁判所・矯正施設等1.9兆円、これは米軍とは関係ないわけでありまして、こういうのはなぜ入らないのか、根本的にこれは疑問です。
 大体、ここに挙がっているのは財務省関係だけなんですよ。ほかの省庁に関係のあるところは検討の対象にしていないんですよ。こういう非常に偏ったやり方をしている。すぐ売れると。これは財務省として売れるかどうかしか考えていない。
 したがって、私は、今回のこのやり方というのは、まことにゆがんだ、非常に狭い対象にだけ、しかもそれも財務省の手のつけられるところだけ、しかも公務員宿舎、こうなってきますと、財政に寄与するということは建前だけれども、実態的にはほとんど役に立たない、むしろ私は有害であるというふうに思いますので、この法案には私は賛成できません。
 何でこういうことをやるのかというのが問題でありまして、何か国は、一生懸命コストを削減しているんだ、あるいはここまで切り縮めているんだ、こういう姿勢を見せるということに専ら重きが置かれているのではないか。そして、それは何のためか。それは、次に庶民に対して消費税を増税しなきゃならぬ、消費税を増税するための前提づくりをやっているというような感じが私はするわけです。そういう点で、今回のやり方はまことに問題が多いということを指摘しておきたい。
 さてそこで、次に改正消費税の問題についてお聞きをしたいと思います。
 消費税の免税点を売上高3000万円から1000万円に引き下げるということに伴いまして、新たに消費税の課税対象となる個人事業者、これは何万件生まれたのか。そのうち、ことし3月に申告、納付したのは何割いるのか。ここに西日本新聞のコピーがありまして、これは3月15日付なんですけれども、9州7県の自営業者が消費税の申告をしたのは2割にとどまっている、こういう報道もあります。全国的にはどの程度なのか、示していただきたい。
○竹本財務副大臣 佐々木先生おっしゃったとおり、3000万から1000万に免税点が引き下げられたわけでございますが、それによりまして、個人事業者は122万件程度と見込んでおります。個人の事業者でありまして、法人の方は53万件ぐらいと見ております。
 それから、もう一点お聞きの、では、これに従って何割ぐらいの人が申告をしているかということでございますが、国税庁において現在集計中でございますので確たることは言えないんですけれども、新規課税事業者を含む平成17年分の申告見込み者数164万件のうち、おおむね9割以上の方々から申告書が提出されているのではないかとの感触を得ているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは120万といっても大変な数なんですよ、一言で言いますけれども。納付する方も大変な新しい負担を負わされる。それも大変だけれども、税務署の方もこれは本当に大変な状況でありまして、労働強化。
 私が聞いているところによりますと、新規課税者のうち半数程度しか申告していないのではないか、これはそういうふうに感じているわけですが、先ほど九割と言いましたね。それは3月の末時点でそういうことが言えているのかどうか、私は根本的にちょっと疑問に思っております。
 申告をしない業者が相当あるということも事実で、申告がなされない理由というのは一体どこにあるとお考えですか。
○谷垣財務大臣 消費税の新規課税事業者は、これは今さら言うまでもございませんが、基準期間である平成15年の課税売上高が1000万を超える方が対象なわけですね。
 それで、3月31日に個人事業者の消費税の申告期限を迎えたところでありますので、率直に申し上げて、今、無申告者の実態等を十分把握できている状況では必ずしもないんですが、想像するに、申告していない方はなぜ申告しないかということになりますと、一つは、平成17年分の課税売上高が1000万円以下であれば申告の必要がないというふうに思い違いをしておられる方もあると思いますし、それから、申告義務があるということは知りながら故意に申告しないという方もいらっしゃるんだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 私が直接中小業者のお話を聞いている限りでは、納税するだけのお金がない、こういう話が随分多いんです。政府の調査でも、消費税をまともに転嫁できない、そういう業者が半数いると。それから、中小業者になればなるほど経営が赤字のところが多い。
 具体的に、例えばこんな話があるんです。ある業者は、元請から一方的に価格引き下げの要請を受けて、競争も激化する中で単価が下がっている、そこに消費税の上乗せ分というのは、なかなかこれはできないんだ。あるいは別の業者は、ことしから消費税の課税業者になったが、売り上げが伸びないので消費税分を転嫁できていない。もう一人は、元請からファクス一本で、値引きをしてくれ、こういう通告があった、とても消費税を転嫁できない、単価7円、その仕事に、2円値引きしなさい、こういうことを通告されて、もう全然交渉の余地はないという業者がいるわけです。
 こういう業者にとっては、消費税というのは身銭を切って払わなきゃならぬわけです、消費税を預かっていないわけですから。こうなりますと、事実上、間接税ではなくてこれは直接税的性格となってしまっているわけです。
 谷垣大臣はこういう実態を御存じですか。
○谷垣財務大臣 年来、佐々木委員の御持論でございますので、佐々木委員の御主張はよく理解しております。
 それから、実態はまだ、3月31日までが期限ですから、これから私どもも実情がどうなのかというのはよく把握しなければいけないわけですが、いずれにせよ、今の御議論の前提は、転嫁できていないということですよね。ただ、この税制は、もう言うまでもございませんが、転嫁していただくということが原則でございますから、そのために私どもも、今までいろいろな広報活動やいろいろなことをやってまいりました。転嫁をして、そして一人でも多くの方にきちっと申告をしていただくということであろうと思います。
○佐々木(憲)委員 転嫁が原則ではあるが、できていないというのが実態なんです。その実態で、どんな状況が生まれているかというのをやはり正確に把握していただきたい。
 年間売上高1000万から3000万という業者というのはどういう業者か。大体、従業員でいいますと1人から4人ぐらいなんです。白色申告者も多く、帳簿もつけるゆとりがないという方々が多いわけです。税務署にこういう人たちがたくさん来るわけですね。税務署員に相談しながら申告書を書いている。1件当たりの消費税額というのは、大体、せいぜい10万から30万、こういう方々が多いわけです。
 課税業者になるかどうか判断する売上高というのは、確かに、今言われたように平成15年の売上高であります。その次の年の売り上げ、これが1000円以下になっても消費税は納めなきゃならぬ。これ、大変な負担になるわけです。
 こういう声があります。前の年に1000万を超えていたが、次の年は300万しかない、売り上げですね。それなのに、消費税は11万円だ。どうやって払うのかという声。あるいは、2500万円の売り上げとなったが、経費の多くは給料だと。所得税は5万円余りなのに、消費税を計算すると95万円になるというのでびっくりしたと。あるいは、所得税5万円だけれども、消費税が63万とか、所得税が、実質赤字なのでゼロだけれども、消費税は12万円払わなけりゃならぬという業者がたくさんいるわけですよ。
 こういう中で、負担できないので、もう、ことし様子を見て廃業するという業者が出てくるわけです。今回のこういう改正消費税で、廃業するという人たちが相当生まれるんじゃないか。これはどうでしょうか。
○谷垣財務大臣 先ほど申しましたように、私どもは、これからよく実態も把握する調査をするということをしなきゃいけないと思っておりますが、ただ、先ほどから申し上げましたように、やはり、私どもがやらなければならないことは、これは転嫁をするというのが前提でございますから、そのための広報や指導とか、そういうものはよくよく念を入れてやらなきゃいけないと思っております。
 そこができますと、あとは預かり金的な性格でございますから、それは納めていただかなければいけないということではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 大臣は、転嫁できる転嫁できる、転嫁するのが原則だ、そればかり言うんですけれども、実際の経営者の取引、その実態というのを余り御存じないんじゃないか。下請業者は、先ほど言ったように単価が一方的に下げられる。親会社と交渉できないんですよ、力関係からいって。全部自分がかぶるわけです。それが実態なんですよ。経済産業省の実態調査を見ましても、転嫁できていないという業者が大体全体の半分ぐらいいるわけです。そういう実態で負担がふえるわけですから。
 例えば、こんな話もあるんですね。
 年商2250万、こういう業者で消費税は21万円。365日開店しているが、年々売上高がダウンしている。年に一度は夫婦で温泉旅行ぐらいしたいが、それもできない。消費税を払う金などない。店の賃料すら停滞している。ことしやってだめならもう店を畳むしかないと。こういう業者が切実に訴えているのは、一括して税金を納められないので、何とか分納ができないだろうか。分割した納税ができなければ、これはサラ金に頼るしかない、こういう話がある。
 谷垣大臣にお聞きしますが、こういう声にこたえて、やはり、それぞれの業者の実態を踏まえて、分納あるいは延納も含めて、親切に対応するということが私は求められていると思いますが、いかがでしょう。
○谷垣財務大臣 免税点の引き下げに伴って新たに課税事業者となる方々について、国税当局は、やはり申告や期限内納付等の相談にきめ細かく今まで対応するということでやってきたと思いますが、仮にこうした事業者について国税が滞納になったような場合には、その実情というものをよく聞いてみなきゃいかぬ。それで、法令の規定に基づいて適正な処理に努めていく必要があると思うんですが、今後、滞納者から消費税等の納付について御相談があった場合にも、滞納者と十分意見を交換して相談をしながら、分割納付の計画等々を含めて、その実情に即した対応をとることとしておりまして、引き続き法令の規定に基づいて適正に処理をしていきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 次に取り上げたいのは、税務職員の長時間超過密労働ですよ。これは大問題でありまして、百万以上対象がふえますと、職員はもう大変なんです。
 私が聞いているところでは、確定申告の受け付けの際、毎日一週間ずっと立ちっ放し、そういう職員がいる。あるいは、会場の喧騒の中、申告納税に対応するために中腰の業務が一日続き、思わずしゃがみ込んでしまうという姿があちこちで見られる。職員によって言うことが違うじゃないかという、そういう抗議の声もある。あんたの説明はまどろっこしいから早くしろと、こういうことで、職員は、ストレスと過労と、こういう状況の中で本当にへとへとになっている。
 こういう状況もあるんですよ。確定申告のちょうど真っただ中ですね。東京の江戸川南署、ここでは、2月下旬から連日2時間、3時間の超勤が続いて、ある職員は倒れてしまった。入院して、そして亡くなった。3月15日に亡くなられたんです。そういうことも起こっております。あるいは、新潟、長岡署では、2月に、目まいで倒れ頭を打ち、助けを求め、意識をなくし、そのまま入院するという状況がある。千葉西署では、救急車で運ばれる。八王子では、収受事務に従事していた職員が脳梗塞で入院する。こういうふうに、非常に多くの方々がこういう中で倒れて、あるいは過労死、そういう状況になっているわけです。したがって、これは大変な事態になっていると私は感じました。
 ところが、国税庁、財務省の方は、納税者がふえる、今までのやり方では対応できない。自分で書く自書、これを徹底しろ。代筆のような相談はするな。職員は親切丁寧などという、そういう発想を切りかえろ。もう、ともかく数をこなせ。こういう指導をしているというふうに聞きましたが、こんなことをやっているんですか。
○谷垣財務大臣 確定申告期は、税務署の職員にとっても非常に心身に負担がかかる時期であることはおっしゃるとおりだと思います。
 他方、先ほどの御議論のように、消費税についても、改正がありましたから、やはり相談に見える方には親切丁寧に対応しなければならないという面がございまして、私どもとしても、特にそういうような方々には適切に親切に対応しなきゃならないという指導をしているところでございます。
 この二つを両立するというのは、それは相当大変なことでございます。ですから、一つは、今委員のおっしゃったことでもあるんですが、IT化とかアウトソーシングとかいうようなこともやらなきゃなりません。また、e―Taxというようなことで、できれば、そういうようなところで簡便に納税を申告していただくという道もできるだけ普及をさせなきゃならないということもありますが、あわせて、やはり定員の確保というのは私どもも努めなきゃいけないと思っております。
 それから、先ほど、確定申告期は非常にストレスもかかる、中には、倒れられて病気になった、あるいは命を落とされる方もあるというお話がございました。私どもとしてもそれに対しては十分対応しなきゃいけないと思っておりまして、確定申告期はその前後に健康診断等を行うようなこと、それからまた、体調がすぐれない場合には速やかに診察が受けられるような配慮、こういうようなことも現に行っているわけでありますが、今後ともしなければいけないと思っております。
○佐々木(憲)委員 これは、定員の確保というのは当然だと思いますけれども、実務の量に対応できていないわけですよ、実際に。抜本的に、やはり増員ということを考えなければならない。アウトソーシングと言いましたけれども、この問題は大変、守秘義務の関係で問題が起こる分野なんです。そういう意味で、単純にアルバイトにどんどん出していっていいというものでもない。また、専門家もそんなにいるわけではない。そういう点をよく考えて対応すべきだと思います。
 それから、根本的に言いますと、こんな、消費税の中小業者負担、免税点の引き下げというような、こういう法改正をやったことが間違いなんですよ、根本的にはですよ。しかも、この状況のままで、谷垣財務大臣は消費税上げろ上げろと。こんなことをやっていたらますますひどいことになるということを最後に指摘して、もう時間が参りましたので、終わります。

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