2014年11月05日 第187回 臨時国会 内閣委員会 【805】 - 討論
セキュリティー基本法案に反対の討論
2014年11月5日、日本が独自にマネーロンダリング(資金洗浄)対策やテロ対策をとる犯罪収益移転防止改定案と、テロリストの国内取引や経済活動を規制するテロ資金凍結法案が衆院内閣委員会で全会一致で可決しました。
一方、自民、公明、民主など各党提案のサイバー(インターネットなど)セキュリティー基本法案が日本共産党以外の賛成で可決されました。佐々木憲昭議員は反対討論に立ち、「国民のためのサイバー空間の安心・安全から出発するのでなく、有事を想定した国家機能強化だ」と批判しました。
議事録
○井上委員長 次に、第186回国会、本院提出、参議院送付、サイバーセキュリティ基本法案を議題といたします。
本案は、前国会において本委員会提出の法律案とすることに決定し、本院で議決の上参議院に送付したものを、同院において継続審査に付し、今国会、原案のとおり議決の上本院に送付してまいったものであります。
したがいまして、その趣旨は既に十分御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありません。
これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、サイバーセキュリティ基本法案に対して反対の討論を行います。
本法案は、サイバーセキュリティーを軍事、安全保障に密接に結びつけるものであります。
法案は、目的として、「我が国の安全保障」を明記し、新設するサイバーセキュリティ戦略本部がサイバーセキュリティ戦略案を作成する際に、国家安全保障会議、NSCの意見を聞かなければならないとしております。
政府が昨年12月に決定した国家安全保障戦略は、アメリカとのサイバー防衛協力の推進を掲げ、先日公表された日米ガイドライン見直しの中間報告でもそのことが位置づけられております。
アメリカは、サイバー空間を陸、海、空、宇宙に次ぐ第五の戦場に位置づけ、攻撃と防御の両面から体制づくりを進めております。そして、サイバー空間での戦いに対して、軍事力の行使を含むあらゆる手段をとる可能性を留保すると明言しております。
アメリカは、この戦略の一環として、同盟国も含む各国の首脳指導者や全世界の市民を盗聴や監視の対象としていることが、米国国家安全保障局、NSA元職員の暴露によって明らかになりました。世界じゅうで外交問題にも発展したアメリカ政府によるサイバー空間を利用した無法の諜報活動に対して、安倍内閣は一言の抗議すらしなかったのであります。
法案の提案者は、本法案について、有事を想定した日ごろの対応というところに集中、特化して国家機能を強化していく、そうした国づくりのための法案の中核の一つと答弁しました。さらに、サイバー対策が真にできる国は、みずからサイバー攻撃を行うことができる能力を持った国であるとの認識を示し、そういったところとも緊密な連携をとっていくことが必要であると日米の連携を強調しました。
そのため、サイバーセキュリティ戦略は日米軍事同盟強化の一翼を担うことになるのであり、極めて重大です。
法案は、サイバーセキュリティ戦略本部が、安全保障に係る重要事項に関して、NSCと緊密な連携を図るとしています。提案者は、NSCとの連携について、外国政府等が関与したサイバー攻撃の場合が考えられると答弁しました。しかし、戦略本部にはそのような関与の分析や判断ができないことは審議を通じて明らかとなりました。一体どのような連携を図るのか、全く不明瞭なままであります。
現在、インターネットバンキングの機能を悪用し、他人の口座から不正に送金する犯罪など、サイバー空間を悪用した国民の被害が広がっております。
一部の銀行では、不正送金に対応するソフトを無料で配布するなどの対応がとられているようですが、安心、安全なネット空間をつくるためには、国民個人ではなく、事業者の側にどういう責任を持たせるかなど、大きな課題が山積しています。しかし、本法案からはそのような問題意識が全く感じられません。
本法案は、国民のためのサイバー空間の安心、安全から出発するのではなく、有事を想定した国家機能強化のための法案になっているのであります。
そもそも、国家安全保障や日米軍事同盟に密接にかかわる法案でありながら、自民、公明、民主、維新、みんな、生活の各党が起案した議員立法として提出されていることが問題です。
政府が責任を持たず、内閣官房、防衛、外務などの関係大臣からの責任ある答弁もないまま、成立させようとしていることは到底許されません。衆参合わせてわずか数時間の審議で採決するなど、言語道断であります。
以上で反対討論を終わります。
○井上委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○井上委員長 これより採決に入ります。
第186回国会、本院提出、参議院送付、サイバーセキュリティ基本法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。