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その他 (選挙制度)

2013年05月21日 第183回 通常国会 倫理選挙特別委員会 【735】 - 質問

成年被後見人 選挙権回復へ 全有権者の投票機会の保障を

 2013年5月21日、成年後見人がついた人たちの選挙権を回復する公職選挙法改正案が衆院本会議で全会一致で可決し、参院に送られました。
 改正案は、成年被後見人は選挙権・被選挙権を失うとした規定を削除。「代理投票」をする補助者については、選挙管理委員会や市町村職員など「投票所の事務に従事する者」からあてるとしています。
 17日に日本共産党をはじめ衆院全会派が共同して提出したものです。

 本会議に先立つ政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で質疑にたった佐々木憲昭議員は、改正案について「選挙権・参政権は国民の基本的権利であり、すべての国民に等しく保障しなければならない。欠格条項の削除は当然だ」と主張。
 改正案の共同提出者で、答弁に立った塩川鉄也議員は、日本共産党が1999年の成年後見人制度導入の審議時から「財産保護のための成年後見人制度と、国民の基本的権利である選挙権は全く関係ない。国民に対して選挙権をはく奪する理由はない」と主張してきたことを示しました。
 さらに塩川氏は、「選挙権は国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、議会制民主主義の根幹をなす。夏の参院選から成年被後見人の選挙権回復を実現するためにも、早期成立が必要だ」と述べました。

 また、佐々木議員は、障害者も含めたすべての有権者の「投票機会の保障」が必要だと主張しました。
 このなかで佐々木議員は広島の男性の「代理投票」の例を紹介し、選挙権行使の重要性を強調。
 現行の「代理投票」では、知的障害者らが投票所内に付添人といっしょに入り雰囲気に慣れてもらう時間を十分にとっているなど各地の選挙管理委員会の工夫を示し、「(代理投票の)補助者はこれまでの工夫を生かし、本人の立場にたって意思疎通、意思をくみ取る努力をしなければならない」と指摘しました。
 総務省の米田耕一郎選挙部長は「さまざまな工夫をするのが重要だ。できるだけ多くの選挙人の意思をくみ取るのが重要で、現場の選管に伝えたい」と答弁しました。

 さらに、佐々木議員は、全国の投票所が1996年に比べて4000カ所も減らされ、投票所が遠くなった事例があると述べ、「投票所へのアクセス」の改善を要求。
 また車いす用の投票記載台をはじめとする「投票所のバリアフリー」化も求めました。
 共同提出者の逢沢一郎議員(自民党)は「重要な指摘だ。選挙権の行使が物理的にできないことがあってはならない。予算にかえがたい大きな意味がある。議論を深めたい」と述べました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 選挙権、参政権というのは、国民の基本的権利であって、全ての国民にひとしく保障しなければならないものであります。その意味で、今回の公選法の成年被後見人に係る選挙権、被選挙権の欠格条項の削除、これは当然でありまして、もっと早くから実現すべきものであったと思います。
 日本共産党は、成年後見人制度の導入のときからこの問題点を指摘してまいりました。約13万6千人とも言われる方々の選挙権回復について、国会審議等で取り上げ、選挙権の回復をと主張してきたところでございます。
 そこで、提案者の塩川議員に、これまでの審議経緯も踏まえて、今回の改正についての思いを伺いたいと思います。
○塩川議員 佐々木委員にお答えいたします。
 我が党、日本共産党は、成年後見人制度の導入時からこの問題点を指摘し、選挙権回復について国会審議等で繰り返し取り上げ、早い選挙権の回復をと主張してまいりました。公選法の成年被後見人に係る選挙権、被選挙権の欠格条項の削除は当然であると考えます。
 成年後見人制度は、認知症や知的障害、精神障害者で判断能力が不十分な人を保護し、支援することが目的の制度であります。そして、選挙権は、憲法が保障した国民固有の権利であります。これは、国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、国民主権、議会制民主主義の根幹をなすものであると考えます。
 1999年、成年後見人制度導入の審議の中でも、我が党の木島日出夫議員は、財産保護のための成年後見人制度と国民の基本的権利である選挙権は全く関係ない、国民に対して選挙権を剥奪する理由はないと指摘をしておりました。
 本案は、ことし3月の東京地裁での違憲判決もあり、全党で共同提出することとなりました。
 本案がことし5月中に成立をすることで、ことし夏の参院選から回復することになります。この夏の参院選から成年被後見人の選挙権回復を実現するためにも、本案の早期成立が必要であると考えます。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 今答弁がありましたように、選挙権というのは国民固有の権利でございます。この憲法上の権利行使については、投票機会の保障というものが不可欠であります。これなしに選挙権の保障はないわけですね。
 今回、選挙権が回復する成年被後見人に限らず、障害者を含む有権者全体の投票機会の保障ということが必要だと思いますけれども、改めて、この点は提案者の逢沢議員に確認をしておきたいと思います。
○大口議員 今先生が御指摘されたとおりでございまして、やはり選挙権を有している方がその権利を具体的に行使できるよう、投票の機会を十分に保障することが重要であると考えております。今、公選法では、不在者投票あるいは郵便投票あるいは代理投票というのがございますが、しっかり実施していく。
 それと、あと、今回、補助者が投票所の従事者に限定されたわけでありますが、特に意思の疎通をしっかりしていかないといけないと思います。身体障害における投票の補助と、知的障害、精神障害、認知症、脳卒中後遺症の言語障害等は質的に異なりますので、事前に十分な意思の疎通をして、配慮していかなきゃいけないと思っています。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 分担をされて答弁をするということでありますので、大変失礼しました。
 今回の改正では、代理投票の適正化という内容が含まれております。代理投票の制度というのは現在でも行われている制度で、投票用紙に文字を記入できない選挙人のための制度でございます。投票管理者に申請しますと、補助者二名が定められ、その一人が選挙人の指示に従って投票用紙に記入し、もう一人が指示どおりかどうかを確認するというものです。
 そもそも、自書能力を有しないという理由で有権者を選挙に参加させないということは、憲法が保障する国民固有の権利、成年による普通選挙を保障していることの本旨に反することになるわけでありまして、これは確認でありますが、現在、どれくらいの方が代理投票を利用しているのか、全投票に占める比率はどの程度か、これは総務省にお答えいただきたいと思います。
○米田政府参考人(総務省自治行政局選挙部長) 直近の選挙で申し上げます。
 まず、平成21年の衆議院選挙におきましては、代理投票者の数は、小選挙区で15万83票、比例代表で15万1181票となっております。いずれも投票者数の0・2%ということであります。
 それから、平成22年の参議院選挙におきましては、選挙区で12万9232票、比例代表で13万1200票の代理投票者数がございました。これも、いずれも投票者数の0・2%というふうになっております。
○佐々木(憲)委員 今お答えをいただいたように、全投票者の0・2%というのが現状ですけれども、成年被後見人の方々の選挙権が回復することで、この投票はさらにふえるということになると思います。比率も高まると思います。
 本案では、代理投票の補助者を、投票所の事務に従事する者のうちから定めるとなっております。その際、意思疎通が困難な方の意思をどう確認するかということが課題になるわけです。現行制度でも、投票所に行ったけれども、意思が伝えられない、伝わらないということで投票ができなかったという例も聞いております。
 一方で、自閉症の方とか知的障害のある方に対して、付き添いの方が投票所内に入ってもらって、投票所の雰囲気とか選管職員になれてもらうということで、十分時間をとっているところもあるようです。
 ほかにも、代理投票の場所で落ちつきをなくしたような場合、一度その場を離れて、落ちついてからまた入るというようなことも、いろいろ各選管で工夫して知恵を出しているようであります。本人の意思を確認し、代理投票を実行するということが大変大事なことでありますので、大切なことだと思うんです。
 障害の度合いなどは、一人一人状況が違います。これは、マニュアルで一律に決めて実行するというのは大変難しいと思うんですね。先ほど提案者からも答弁がありましたが、投票機会が奪われるということはあってはならないわけで、大事なことは主権者がきちんと選挙権を行使できるようにすることでございます。
 代理投票の補助者は、これまでの経験や工夫を生かし、本人の立場に立って、意思疎通、意思を酌み取る努力をしなければならないというふうに思いますけれども、総務省はどのようにお考えでしょうか。
○米田政府参考人 今御質問にあったとおり、投票につきましては、何回も申し上げておりますけれども、選挙人本人の意思に基づいて行うということと、それをいかに酌み取るかということに代理投票の成否がかかっているというふうに考えております。
 選挙人それぞれ、障害の程度、状況は異なっております。意思疎通の方法もかなり異なっておりますので、各現場におきましてこれまでもさまざまな工夫が行われてまいりました。
 私どもからも、代理投票は本人投票の原則の例外をなす場合であるから、その補助者は、いやしくも選挙人や投票立会人から疑惑を持たれないよう十分注意しなければならないとか、補助者が選挙人に候補者の名前を聞くときは特に慎重を要するとか、補助者が選挙人本人の意思を確認できないときは最終的には投票できないこともあるといったような一般的な留意点というのはお示しをしておりますけれども、原則としては、それぞれの現場でさまざまな工夫をできるだけするということが重要であるというふうに考えております。
 何よりも、今回の改正におきましては、できるだけ多くの選挙人の方の意思を酌み取るということが重要なことだと存じますので、新しく、その点、各現場の選挙管理委員会に改正内容や留意事項等という形でお伝えをしてまいりたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 私は、広島県に住んでおられる23歳の男性のお母さんから話を聞きました。この男性は、手足が不自由で、話すこともできないという状態にあります。お母さんや親しい方は、男性の目の動きあるいは微妙な表情の変化などでコミュニケーションをとれるということらしいんですね。
 この男性は、一回の地方選挙と昨年の総選挙を代理投票で行ったそうです。お母さんが投票所に行く前に、これから選挙に行くよと声をかけますと、そして、あなたも国民の一人だからその権利があるんだよ、こういうふうに言いますと、その男性は大変生き生きと目を輝かせているそうです。投票所に行って、投票所の係員が投票用紙に記載し、本人の手に投票用紙を握らせて、車椅子に座ったまま係員が傾けた投票箱に本人の手で投票用紙を入れる。投票が終わると、この男性は大変誇らしげな顔をしているということです。
 今回の改正で約13万6千人の成年被後見人の方々の選挙権が新たに回復をして、これから代理投票の利用も多くなると思うんです。引き続き、国民の選挙権行使ができるように、現場の選管や総務省も最大の努力をしていただきたいと思います。
 代理投票は投票所に行って投票するということになりますけれども、投票所になかなか行けないというアクセスの問題があるわけです。この委員会で私も触れたことがありますが、投票所が、だんだん数が減ってくる、あるいは住んでいるところから遠いところに行かなければならない、そうなりますと、障害者の方には大変大きな負担になるわけですね。
 この間、投票所の数が激減しているというふうに思いますけれども、1996年の総選挙の投票所の数と昨年の総選挙の場合の投票所の数、この数だけ確認したいと思います。
○米田政府参考人 お答えいたします。
 1996年では5万3214カ所ございました。昨年、平成24年では、これが4万9214カ所になっております。
○佐々木(憲)委員 4千カ所も投票所が減っているわけですね。これほど投票所が減りますと、投票所まで遠くなる人もふえるわけであります。
 3月にも質問しましたけれども、国政選挙執行経費基準法が改正されて、投票所経費を大幅に減らしているという状況のもとで、投票所の減少傾向にさらに拍車をかけているというふうに思うんです。こういうことはあってはならないと思うんですね。
 投票所自体のバリアフリーも問題でありまして、例えば投票所が一階にない、二階にあるというようなこともあるわけです。あるいは、入り口に段差がある。こういうことで障害者の方の投票行動を制約させてはいけないと思うんですね。
 投票所において、入り口に段差があって簡易スロープを設置しているというのは一体どのぐらいあるのか、全体の何%か、これも数字を答えていただきたいと思います。
○米田政府参考人 これは平成21年の衆議院議員の総選挙の数字でございますけれども、入り口に段差のある投票所というのが2万8278カ所、全体の55・5%ございました。このうち、簡易スロープが設置されました投票所数は1万2489カ所、入り口に段差のある投票所の44・2%になります。それから、人的介助等の措置がなされた投票所が1万5394カ所で、入り口に段差のある投票所の54・4%でございました。
○佐々木(憲)委員 障害者の方の話を聞きますと、人的介助というのは、ありがたいんだけれども、どうしても遠慮してしまうというわけです。そういうことがあるので、結局投票には行けないと思ってしまうとか、やはり当事者の立場に立って、何が必要かということをぜひいろいろな角度から検討していただきたいと思うんです。
 それから、車椅子用の投票記載台ですね。健常者の場合、一定の高さで書くわけですけれども、車椅子の場合は少し低くなければ書けないわけです。それから車椅子用のトイレの整備とか、いろいろな意見があります。
 投票所のバリアフリー、投票所へのアクセス、こういう問題も全体として解決していく必要があると思うんですけれども、提案者の方に、この点についての今後の対応についてお聞きしたいと思います。
○逢沢議員 佐々木先生から大変重要な点について御指摘をいただいたと思います。
 選挙権の行使、被選挙権の行使、まさに国民固有の権利でございますし、民主主義、議会制民主主義の土台、根幹をつくるのが選挙。そう考えますと、選挙権を、権利を持っておられる方が一人残らず行使をしていただける、そういう状況、また環境を整備するということは、まさに立法府、政治の大きな役割と言わなきゃならぬというふうに思います。
 私も国会議員をしておりながら、投票所の数がこれほど多く減っているという事実、実は、恥ずかしながら承知をいたしておりませんでした。もちろん、経費の面その他、自治体におけるさまざまな事由がその背景にあろうかというふうに思いますが、適切に投票所を確保するということ。確かに障害やさまざまな状況にある方が投票所が身近にないということは、選挙権を行使したいという意欲、意思はあっても物理的になかなかできにくい。そうであってはならないわけでありますので、適正化を図っていかなくてはならぬというふうに思います。
 もちろんバリアフリー化の問題、これも投票所の物理的な状況等も背景にはあろうかというふうに思いますが、しっかりとバリアフリー化を確保して、選挙権を行使していただくということの重要性、ある意味では、予算にかえがたい大きな意味があるわけでありまして、そのことをしっかりと体した議論を深めてまいりたい、そのように存じます。
 ありがとうございました。
○佐々木(憲)委員 現在、選挙権を持っている障害者も、代理投票の制度ですとか、あるいは病院等での不在者投票、それから郵便投票、郵便代理投票、点字投票、こういう方法があるということを知らない方が結構いるわけです。
 先ほど紹介した広島県の男性のお母さん、最初、こういう制度を知らなかったということで、男性が成人しても投票できないものだというふうに思っていて、大変忍びないと思っていたそうであります。ところが、思い切って選管に相談すると、代理投票というものがあるんだよということを知らされた。後で、この方は、成人して数回あった選挙を棄権させてしまったというのは親として非常に悔やまれるというふうにおっしゃっています。
 ですから、全てのこういう成年被後見人の方々、それから障害者の方々にさまざまな投票の手段があるんだということを周知徹底するというのは非常に大事だと思うんですね。その点で、最後に、総務省の見解をお聞きしたいと思います。
 それから、ネット選挙運動の解禁ということもありますので、例えばウエブ上で選挙運動なども自由に今度はできますから、そういう点も障害者の方々が参加していく非常にいいきっかけにもなると思います。この点について、総務省とそれから提案者それぞれに、一人ずつ、もう時間ですので簡潔にお答えいただきたいと思います。
○米田政府参考人 障害等をお持ちの方々が実際に投票ができる手段として、不在者投票、郵便投票等があるということを実際に知っていただくということが非常に重要なことだと思います。
 そういう意味で、いろいろな手段、例えば、実際の文字の文書だけではなくて、ウエブそれから点字のパンフレット、音声CD等のいろいろな媒体を使いまして、これらについて周知をこれからも深めていきたいというふうに存じます。
○逢沢議員 大変重要な点について、重ねて先生から御指摘をいただきました。
 不在者投票、郵便投票また代理投票等の状況が確保されているということの周知徹底、一義的には総務省、各都道府県選管の仕事であろうかと思いますが、よい意味で、我々、政党、政治家も、先生御指摘の、ネット選挙も解禁ということでございます、そういうツールもよい意味で大いに活用しながら、周知徹底を図っていく。
 また、障害者団体初め、いろいろなNPOの皆様方にもお願いをして、そういった立場からもこういった状況の徹底を図っていただく、そういうよい意味での協力が進むことを期待いたしたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

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