税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (消費税, 大企業減税, 災害支援)
2013年03月19日 第183回 通常国会 財務金融委員会 【712】 - 質問
大企業減税は内部留保を増やすだけ、消費税増税中止こそ必要/東日本大震災の被災者「二重ローン」への支援、金融機関への指導要求
2013年3月19日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、大企業減税と消費税の転嫁の問題、東日本大震災被災者の「二重ローン」について質問しました。
大企業には研究開発減税でさらなる優遇をする一方、中小企業が価格転嫁できず身銭を切らされる消費税増税を強行する経済政策では、デフレ不況打開に逆行すると追及しました。
佐々木議員の追及に、麻生太郎財務大臣は、研究開発減税総額580億円のうち資本き10億円以上の大企業が8割を占めると答弁。
佐々木議員は「減税指定も266兆円に積み上がった内部留保にたまるだけで(景気)効果はない」と批判しました。
麻生大臣は「内部留保に蓄積されるだけというご指摘は同じ感じをもっている」と述べ、「連合はなぜ『労働分配率が低い』と言わないのか。代わりに自民党が言ったりしている」などと主張。
佐々木議員は、「労働組合はたたかわなければならない」と述べ、政府も非正規労働者の正社員化など賃上げに結びつく政策に取り組むよう求めました。
その上で、佐々木議員は、中小企業が今でも身銭を切って納税している消費税が増税されたら「価格に転嫁できない企業がますます増える」と追及しました。
麻生大臣は「各省が一体となって、親会社などの転嫁拒否の行為に対応していく」と答弁。
しかし、下請法に基づく消費税の転嫁逃れの指導件数は公正取引委員会で昨年1件、中小企業庁では3件しかありません。公取の監督官は非常勤を含めて119人ということも、明らかになりました。
佐々木議員は、消費税が引き上げられた1997年度でも公取の指導件数は4件しかなかったことを挙げて、「消費税そのものに問題がある。増税自体を取りやめるべきだ」と求めました。
佐々木議員は、東日本大震災で「二重ローン」を抱えた被災事業者を救うために金融機関への指導を強めるよう求めました。
政府の産業復興機構による「二重ローン」債権放棄は相談件数1969件に対し95件。震災支援機構も相談1015件で決定は121件、銀行業界の「個人債務者の私的整理ガイドライン」も相談3906件に対し286件にすぎません。
佐々木議員は、債務放棄が進まない背景には、金融機関の消極的姿勢、債務免除申請手続きの煩雑さがあることを指摘。宮城県気仙沼市の事業者は、実質500万円の債務整理が進まず、7ヶ月間で112万円も返済している実態を紹介し、「申請をあきらめる業者もたくさん生まれている」と強調しました。
麻生太郎金融担当大臣は「時間がかかっているのは事実。なるべく早くやるように支援していく」と答えました。
また、佐々木議員は被災金融機関には公的資金が注入されていることを指摘。本来、返済に充てなくてもいい義援金まで返済原資とさせる金融機関まであることをあげ、「実態を調べ、金融機関に債権放棄させるよう指導すべきだ」と迫りました。
麻生大臣は「金融機関に要請して被災者が困窮しないように努力する」と述べました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
提案された国税法案からお聞きをしたいと思います。
この中に、研究開発減税の税額控除の上限を引き上げる、20%を30%にする、そういうことが入っております。
私は何回もここで質問をしてまいりましたが、これはなかなか、中小企業に回るよりも、かなり大手の方を中心に回るということでありまして、一方で庶民の方は消費税がこれから上がっていくというわけですので、大企業に減税、庶民に増税ということになるのではないかということは繰り返し指摘をしてまいりました。
そこで、この研究開発減税の総額は幾らで、これまでの実績で資本金10億円以上の大企業は減税総額の何%程度を占めているか、お答えいただきたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 平成25年度の税制改正におきまして、今御指摘がありましたように、研究開発税制の総額型の税額控除の上限額というものをいわゆる法人税額の20から30%に引き上げるということに伴いまして、平年度で580億円、初年度は少し下がりますので、初年度に関しましては450億円の減収を見込んでおります。
同時に、今御懸念が示されておりました、この適用実態がどうなっておるかということですけれども、平成23年度における研究開発税制の総額型の適用実績は、適用総額2548億円でありまして、そのうち資本金10億円超の企業の適用額は1972億円、パーセントで約8割に当たります。
他方、適用件数で見た場合は、これは、全適用件数7792件のうち、資本金10億円を超えております企業の適用件数は994件でして、資本金1億円以下の中小法人の適用件数が全体の72%、5585件に上がっておりますので、数からいきますと、適用されております対象は結構広がっておると思っております。
○佐々木(憲)委員 今御紹介がありましたように、金額では大企業の方に8割行っている、中小企業には2割、かなり薄くそれが行き渡っている。全体としていいますと、我々は、これは大企業中心の配分だというふうに思っております。
そこで、もっと基本的なことを言いますと、法人税率、この基本税率は、以前は43・3%、一番高いときは。15年ほど前は37・5%に下がって、その後34・5、それから30、昨年25・5、ずっと下がってきているわけですね。3年間、復興特別税が若干上乗せになりますが、それが3年で終わって減税が実行される。
こういうことを考えますと、大手企業の税負担率は、研究開発減税などの政策減税を合わせますと、実際の負担率というのはさらに低くなっていくわけで、平均して20%をはるかに下回っているというふうに思います。個別企業でいいますと10%前後というようなこともありますので。
私は、今、大手企業を中心に減税することが、どれほどの効果があるのかなというふうに思うんです。今、266兆円という内部留保が積み上がっております。減税しても、どうしても内部留保がふえるだけで、実際にそれが効果的に使われないのではないかというのが私どもの印象ですが、大臣はどうお考えでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 法人税の場合は、これはもう国際競争にさらされておりますので、その部分も考慮しておかなければならないところではあります。
ただし、今、法人減税を行っても内部留保が蓄積されるだけではないかと。事実、200兆を超える、200兆を超えておりますのは東証上場企業ということになりましょうけれども、この積み上がっている部分は、本来は、従来、常識的には、配当に回るか、給与に回るか、設備投資に回るかすべきものが、ただ内部留保でたまっているだけではないかという御指摘に関しましては、私らも同じような感じを持っております。
したがいまして、今回は、いわゆる給与などの支給を増加させた場合とか、設備投資を増加させた場合、あるいは研究投資を行う場合においては、政策によって企業に税制優遇しようということで今回の税制改正にのせておりますけれども、いずれにいたしましても、株価の上昇等、いろいろ明るい兆しが出てきておりますので、こういったものを通じて、企業が長期的に研究開発というものにきちんとした投資を行っていく、設備投資も給与等々もということを考えていく方向に行く雰囲気は少し醸成されつつあるかなとは思っております。
○佐々木(憲)委員 今、ほかの減税の項目もおっしゃいました。全体としていいますと、中小企業の場合、例えば資本金1億円以下の中小企業の73%が欠損法人、赤字会社です。したがって、いろいろな減税措置をとっても、これは当たり前ですが、黒字の企業しか使えないわけです。しかも、大手企業が中心ですから。全体として、私は、今回の税制のあり方というのは、そういうこともよく考えて、実際に中小企業が使えるようにするにはどうするのか、これはもっと研究をしていただきたいというふうに思います。
そこで、この内部留保はなぜたまったのかということなんですけれども、先ほど、賃金が抑えられた、それから配当にも余り回らないと。しかし、配当は一定の比率で伸びているんです。賃金が下がっているんです。それから、役員給与、賞与などは上がっているんです。したがって、もうけても、それが庶民の側に回らず、非常に狭いところに、場合によっては投機的な方に時々回っていくというような、そういう使われ方をしていて、現実の、実体経済の方にはなかなか流れない、そこが非常に大きな問題だというふうに思います。
物事の考え方として、政策の対象として、内部にたくさん利益がたまっている企業より、もっと大変な、深刻な事態にある企業に回した方が効果的な使われ方ができるのではないか。これは減税という税ではなくて、ほかの措置も含めて、例えば中小企業対策に抜本的に予算をふやす、そういう考え方はありませんか。
○麻生財務・金融担当大臣 基本的には、今回、その他いろいろ中小企業対策というのが、これを全部説明すると大変なことになりますから、中小企業対策ということでくくって見ていただく以外に方法はないと存じます。
いずれにしても、内部留保がなぜたまったかということに関しましては、これは株主の発言も弱かったと思いますね。何で配当しないんだともっとわんわん言ったっておかしくないのに、アメリカに比べてこれだけ配当性向が低いのはおかしいじゃないかと。また、労働組合も、労働分配率が低いんじゃないかと、何で連合なんか言わぬのですかね。言っているんですかね。こちらと違って私はつき合いがないものですからよくわからぬのですけれども。かわりに自民党が言ったりしているのはどう考えてもおかしいと思っていますけれども。
そういったようなことになって、この十数年間にわたって、企業経営の方は、やはり、景気が悪いからとか、また、今までデフレーションに対して我々は全く、我々に限らず世界じゅうやったことはないんですが、デフレーションに対する対策というものに関して、企業も極めて、今までのように、売り上げを伸ばしてもいわゆる資金繰りが追いつかないとか、会社でいえば、資産がみんな、不動産やら動産やらの資産価格が暴落しましたので、債務超過になっている分をどうしても抑えないかぬとか、いろいろなことがありましたものだから、じっとならざるを得なかったという雰囲気はあったんだとは思いますけれども、誰かが突破しないとどうにもならぬのだと思っておりますので、今回満額回答が出たりなんかしたのは、その一つの、傾向としてはいい傾向かなとは思っております。
○佐々木(憲)委員 株への配当は以前よりもかなりふえているんですよ。賃金が上がらない。これが一番問題なんですね。労働組合が闘わないからだと。全くおっしゃるとおりで、連合なんてまともに闘っていると私は思いませんよ。やはり徹底して闘わないと、これは賃上げにつながらない。
それと、問題は、政府がやるべきことは、非正規雇用をどんどんふやして低賃金労働者をふやしていった政策があった、これももう一度見直す。そういう制度的な改善をやらないと、これはなかなか全体としては底上げになっていかない。最低賃金の引き上げはもちろんですけれども。そういうふうに我々は考えております。
次に、中小企業の問題ですけれども、消費税の転嫁というのはなかなか難しい。実際には、転嫁できずに納税義務だけを負わされておりますから、この業者は自分の身銭を切って払わざるを得ない、そういう事態になっているわけです。
政府が調査した結果でも、大体、5割―7割の中小企業は転嫁できていないというふうに回答しております。これが、8%あるいは10%へと消費税率が上がりますと、転嫁できない中小業者がますますふえるのではないかと思いますが、大臣はどうお感じでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 御指摘がありましたように、今般の消費税の上げが二段階にわたっておりますので、消費税の価格の転嫁がなかなか難しいのではないかという御懸念に対しましては、我々も同様にその気持ちがあります。したがいまして、政府としては、与党との議論も踏まえまして、この通常国会で転嫁対策特別措置法案を提出すべく、今準備をいたしております。
政府の共通相談窓口の設置とか、また転嫁拒否などに関する相談体制を整備すべく、各省庁に対し、また各都道府県に対しまして、公正取引委員会及び中小企業庁において、転嫁拒否の監視並びに取り締まりのための特別調査について、消費税導入時期、平成元年の4月や前回税率を引き上げたときの平成9年4月を大幅に上回る規模でこれは実施させていただきたいと思っております。監視をするところ。転嫁がしやすいように、少なくとも、消費税還元売り上げ大会とか、そういったのはやったらだめというような、簡単に言えばそういうことです。
そういったようなことをきちんとやらないととか、また、外税、内税の話もございますので、外税の方がやりやすい、転嫁しやすいという御説もありますので、そういったところにつきましては、どちらでもいい、売りやすい方に、強制しませんといった形の方法とか、いろいろなことが考えられると思っております。
○佐々木(憲)委員 還元セールがどうかという問題はいろいろな評価があると思いますが、私は、転嫁の場合、二つに分けて考える必要があると思うんですよ。下請業者の場合、それから一般の小売商店、この二つに分けて転嫁という問題を考える必要があると思います。
まず、下請の場合ですけれども、これは、親会社が消費税を形の上では負担するかのような形をとって、実際上は下請の単価を下げていく、そういうやり方で転嫁逃れをするという例があるんです。これはなかなか発見が難しいと思うんですが、どういうふうにこの手口を見分けるんでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 消費税の転嫁拒否などの行為について、先ほどもちょっと申し上げましたように、公正取引委員会や中小企業庁、また、関係省庁のみならず、地方自治体とか、また商工会議所などと緊密に連携をして、大規模な書面調査を行わせていただきます。
ただ、そういう話が来るまで受け身で待っているのではなくて、積極的な情報の収集をやっていく必要が重要であろうと考えております。
また、先ほど申し述べましたように、今国会で提出を予定しております転嫁対策特別措置法案におきまして、中小企業に対する、今ちょっと言われた、普通の用語ではいわゆる買いたたき、こういったようなもののほか、手伝いの社員の派遣要請とか、そういったようなものの強制という実質的な転嫁拒否についても禁止する予定と聞いております。
いずれにしても、公正取引委員会、中小企業庁、また各省庁等々が一体となって、そういったような転嫁拒否の行為等々というようなものに対応していきたいと思っております。
他方、中小小売店の場合、こちらの場合は、消費税を転嫁すべき相手は一般の消費者ということになりますので、消費者の方々に対しては、今回は、社会保障と税一体改革の意義というものに加えて、消費税は価格への転嫁を通じて最終的に消費者に負担をいただく税であることなどをしっかり広報していかないかぬところだと思っております。
小売事業者の方々に対しましては、先ほどちょっと申しました、外税の方が転嫁しやすいと言われた業者の方もおられれば、絶対内税の方がいいと、これはいろいろ違いますので、それらの声を踏まえて、税込み表示であると誤認されないための措置をきちんと講じてもらえさえすればどっちでもいいですという方法で対応していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 これはなかなか、今大臣がおっしゃったようなことを聞いていても、転嫁がうまくいくのかなと。疑問は解消されません。
今までも、転嫁がなかなかできない、政府が調査したって5割―7割は転嫁できないと言っているんですからね。それの是正が本当にできるのかということなんです。
そこで、実績ですけれども、今、公正取引委員会、それから経産省のことをおっしゃいました。そこで具体的な数字をお聞きしたいんですけれども、公取と経産省、それぞれ、消費税転嫁に係る問題で是正を指導した件数、これは昨年何件あったか、紹介してください。
○原政府参考人(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 公正取引委員会におきまして、平成23年度におきまして、買いたたきですとか減額など下請法に違反する行為につきましては、勧告を18件、指導を4326件行っているところでございますが、このうち、消費税の転嫁拒否というふうな明示的なものにつきましては、一件の指導でございます。
○鍜治政府参考人(中小企業庁事業環境部長) お答え申し上げます。
経産省中小企業庁におきまして、平成23年度において、1319社に立入検査等を実施し、そのうち1194社に対して改善指導を行っております。この中で、消費税の価格転嫁に係る減額行為に対する指導は、三社に対して行いました。
○佐々木(憲)委員 公取が調査して直そうとした、是正勧告を行った、これは一件ですよ。経産省がやったのは三件ですよ。
日本に会社は何軒あるんですか。258万社あるじゃないですか。下請は、そのうち相当な部分ありますよ。それが実際に、5割―7割、転嫁できないと言っているわけだから。是正したのは一件とか三件、合わせて四件ですよ。こんなことでは、とてもとても、何か決意表明したって、それを実行できないんじゃないですか、大臣。
○麻生財務・金融担当大臣 今のは昨年の数字だと思います。基本的には、消費税を上げた直後、三から五に上げた直後とか、ゼロから三に上がった直後とかいうときと今とは全く情勢が違うのであって、違うというか、ずっと続いている間で、去年は一件だった、四件だった。今回は、五が八に上がるということに仮になれば、そのときの数字とはおのずと違って当然だと存じます。
○佐々木(憲)委員 大臣、数字を調べてそれを言っているんですか。
今まで、例えば公取が指導した件数を見ますと、平成9年以降、23年まで、四件が最高ですよ。ある年はゼロ、ある年は一、ある年は2、3、こんな状況です。ですから、前はうまくやっていたんだという話にはならない。
そこで、お聞きしますけれども、これだけ大量の下請があり、そして、取引も無数にある。それに対して、カバーできる体制というのは一体どの程度あるんですか。何人がかかれるのか。これはどうなっているんでしょうか。
○原政府参考人 消費税転嫁対策につきまして、非常勤を含めて、公正取引委員会で119名の手当てを本予算でさせていただいております。
○佐々木(憲)委員 その程度では、何百万もある企業、そのうちで、下請もかなりの数ですし、取引件数なんというのは無数にあるわけですよ。まず第一、全部チェックできるはずがない。
したがって、私は、やはり消費税の増税自体が根本的に問題があると思っておりまして、結局は、下請そして小売店の中小業者が大変な目に遭う、消費者も負担がふえる、こういう状況だと思うんです。これはやはり取りやめるべきだというふうに思います。
次に、二重ローンの問題。麻生大臣は金融担当大臣でもありますので、お聞きしたいと思うんですが、震災から2年がたちました。復興のおくれというのはいろいろ指摘されておりますけれども、とりわけ、この二重ローンの問題は深刻であります。
震災直後の一昨年、2011年6月17日に、当時の政府は、二重債務問題への対応方針というものを関係閣僚会議で了承し、基本方針を決めております。その後、仕組みが整備されているわけです。
この対応方針の中には、こう書かれております。「二重債務問題に適切に対応し、金融機関・被災者のみならず、国・自治体を含め関係者がそれぞれ痛みを適切に分かち合い、一体となって問題の対応に当たることが必要である。」と。
この基本的な認識、基本方針、これは政権がかわっても変わりはないかどうか、確認をしたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 今読み上げられたのは、平成23年6月17日に民主党政権で出された関係閣僚会議の取りまとめだと存じますが、基本的な考え方は現政権においても変わるものではございません。それは、はっきりしております。
震災からの着実な復興のために、いろいろ二重債務は今から忙しくなってくる、私らはそう思います。実際問題、高台に移転する等々は、現実的なものが出てくるのは2年目ぐらいからだとよく言われておりましたので、その意味で、二重債務問題の解消というのは一番大事だろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 では、それに対応するどういう仕組みがあるのか、教えていただきたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 いわゆる二重債務問題につきましては、東日本大震災事業者再生支援機構、よく言われる震災支援機構及び産業復興機構等によります被災事業者の支援、また、個人版私的整理ガイドライン等々によります被災者の住宅ローンなどの債務整理支援を始めたところでありまして、こういった施策を推進してまいりたいと思っております。
利用状況について申し上げさせていただければ、震災支援機構につきましては、2月末時点で、相談受け付け件数は1015件、支援決定は121件であります。また、産業復興機構につきましては、3月の8日時点で、相談受け付け件数が1969件、買い取り決定が95件。もう一つ、個人版私的整理ガイドラインにつきましては、3月15日の時点で、個別の相談があった3906件のうち、債務整理に向けて準備中の案件が937件、債務整理の成立案件が286件となっております。
以上です。
○佐々木(憲)委員 今御紹介がありましたように、制度が三つありまして、震災支援機構、産業復興機構、それから私的整理ガイドライン、この三つあるわけです。
今、実績もあわせて述べられましたが、全体で約7千件の相談があるんですが、実際にこれが解決をしたというのは非常に少ないですね。今、95件、121件、286件、こういう状況ですから、500件程度ですか。そういう状況というのは、非常に全体としておくれていると言わざるを得ないと思うんです。
例えば、私的整理ガイドラインを見ますと、利用者を最初は1万人と見ていたんです。弁護士の手続に関する費用として、そのために国としては予算を組んだ。17億円、そういう予算を組みました。だけれども、なかなかこれは進んでいないんです。
東北大学が2012年7月に被災三県の企業3万社に行った調査というのがあるんです。それによりますと、二重債務状態にある企業、これは、有効回答が得られた3654社のうち1191社、つまり、全体の三分の一が二重債務状態にあるというふうに回答しております。
潜在的な事業者はまだ相当いると思いますけれども、資金繰り状況は1年前に比べると多少改善している。しかし、震災後、既に10%、約1割の被災企業が本社や主要事業所を移転させている、被災地からもう出ていっているということです。例えば、岩手の沿岸部においては、本社を移転した企業は21%。これは大変な状況でありまして、現地の空洞化ということが懸念されております。
地元企業の再生支援を急ぐ必要があると思うんですが、2年たってこういう状況というのは、これはおくれていると私は思います。そういう意味で、要望に対応できていないわけですから、なぜそうなっているのか、この理由を大臣はどのようにお考えですか。
○麻生財務・金融担当大臣 理由は、これはなかなか一概に、これがというような理由が一つだけあるわけではないと存じます。実に場所によって違うと思いますし、私も現場に行って二重ローンの話を伺いましたけれども、うちにはありませんと言うんですよ。いや、二重ローンがないわけないでしょうと言ったら、うちの市には一件もありませんと。本当ですかと聞いたら、高齢者ばかりでローンは既に払い終わったうちだけ、途中のものはありませんというところもあって、へえと思って、正直あのときはびっくりしました。
場所によってすごく違いますので、今言われましたように、どれが答えというのはなかなかないんだと思いますが、やはり、市役所ごとなくなっちゃっていたりなんかしているところはもう資料もとれない。また、いろいろな意味で確認しようにも、そこの方々の確認も、きちんとできる対象者が今まだ行方不明とかいうことになりますと、これはなかなか、神戸のときと比べて行方不明者の数のオーダーが全然違いますので、その意味では極めて復興としては難しいだろうなという、情況証拠としてはわかりますけれども、その他いろいろ、もう少しきちんとやっていかねばならぬところがあるのではないかな、私自身はそう思っております。
○佐々木(憲)委員 私がいろいろ調べたところによると、一番ネックになっているのは銀行との関係なんです。
この東北大学の調査によりますと、二重債務状態にある1191社のうち、負担軽減措置を受けた企業の回答では、債務額の減額はたった八件しかありません。この調査を行った先生のお話によりますと、金融機関が債務の元本を手放さない状態が続いているということで、金融機関の姿勢が問題だという指摘をしております。
この間、金融機関も被災していますから、被災金融機関あるいはその被災地の金融機関に対して、国の側が公的資金を入れたんですよ。つまり、金融機関の体力を強化して、融資の面でしっかり対応ができるように、それから債権放棄もきちっとやる、そういうことをしたと思うんですね。
公的資金を注入したんですけれども、これはどういうことになっているんでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 各金融機関は、経営強化計画というのを掲げておられまして、被災者向けの新規融資、貸し付け条件の変更などの柔軟な対応、先ほど申し上げました産業復興機構、東日本大震災事業者再生支援機構及び個人版私的整理ガイドラインの活用などの各種施策を着実に実施し、被災者の事業、生活の再建や、被災地域の復興に向けた支援に積極的、継続的に取り組んでいっておられることだと承知をしております。
いずれにいたしましても、まだそれは完全なわけではありませんので、我々金融庁としても、今後とも、経営強化計画というものに基づいて履行状況というものをフォローアップしていかなきゃならぬところだと思いますので、各金融機関が被災者の再生支援などに継続的に貢献して、助けてあげられるように、そういったものをしっかりと促してまいりたい、基本的にそう思っております。
○佐々木(憲)委員 これは、具体的に聞いてみますと、非常に煩雑で、手続に時間がかかるという問題があります。例えば、債務免除の申請手続を行おうとすると、これが長引いて、手続に時間がとられてなかなか再開ができない。
つまり、事業者は、以前のローンで工場なり自宅を建てた。ローンの返済も今やっているわけですよ。次、また借りなきゃならぬ。だから二重ローンになるんですね。新しくローンを借りる前に、以前のローンについて、これは少し減額してください、あるいは免除してください、当然こういう話になるわけです。そうしないと二重ローンの解消になりませんから。ところが、これは本当に時間がかかります。
気仙沼のある業者の話ですと、工場兼自宅が津波で流されてしまった、グループ補助を受けて、工場の再建に向けた再生計画のめどがほぼ立っているんだけれども、自己負担分の四分の一を金融機関から借り入れて賄うつもりだったけれども、旧債務の問題があり、新規融資の審査が進まない。昨年の9月に支援機構に相談したものの、担当弁護士から連絡が来たのが二カ月たってから。その後、提出資料の準備のために何度も仙台に出向いて、ようやく申請のめどが立ったのが先月。それでもまだ承認されない。
その事業者は、ローンの残債が約2千万あるわけです。工場跡地が水産加工団地となる予定で、土地の買収価格が約1500万円。つまり、債務整理の対象になるのは実質約500万円なんですね。その間、毎月16万円の返済を行っていて、相談を始めた昨年9月から3月までの七カ月で112万円返済している。つまり、500万円の住宅ローンの債務免除をしてもらうのにえらい時間がかかり、大変な負担もして、ローンもその間に払っている。
これは、時間がたてばたつほど天引きでローンの返済が進んでいきますから、こういうふうになっていきますと、これは一体何をやっているんだろうという話になるわけです。このようにして、実際には諦める業者が非常にふえている。先ほどの東北大学の調査でも、諦める方々がかなりふえているんです。これはやはり抜本的に改める必要があると思います。
大臣としてどういうふうに取り組まれるか、お聞かせいただきたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 基本的に、まず最初に、政府として約2300億円ぐらいの公的資金というのをこういったところに投入しておるのは事実なんですが、いずれにいたしましても、今御指摘のありました点、知らないわけじゃありませんけれども、この元本の解消とかそういったものは普通の状態でもかなり時間のかかる話であるのは御存じのとおりな上に、被災地においては人手も足りない、情報も足りない、何とかも足りないということになっていて、かなり普通の状態とは違う、ただでさえ難しいところにもってきてそれが加わっておりますので、時間がかかっているというのは事実だと思いますが、こういったものはなるべく早く、速やかにやるように、我々としても引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 義援金というのがあるわけですよね。本来なら、その義援金は手元に置いて、生活のために使わなければならぬわけです。ところが、銀行によっては、ローンを義援金で返済しろというようなところも出てきていて、これは非常に問題だというふうに指摘されております。本来、私的整理ガイドラインでは、義援金はローンの返済に充てなくてもよろしいとなっているんです。それを使ってローンを返すというのはおかしいわけです。だから、そういうのは正していただきたい。
それから、金融機関自身がやはり一定の負担をするという覚悟がないといけない。これは、貸したのは二重であろうが全部取り上げるというんじゃ、何のために国は公的資金を注入したんですか。
ですから、実態を調べていただいて、銀行の姿勢をしっかり正すというのが金融担当大臣の役目だというふうに私は思いますので、最後にその決意をお聞かせいただきたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 こういうとき、いわゆる困ったときはという話、お互いさまで、向こうも被災者でありますし、こちらも、こちらというのは被災者、両方とも被災者なんですけれども、いずれにしても、東日本大震災でなかったにしても、いわゆる災害救助法の対象となる災害を受けた人たちであれば、被災者の実情を踏まえた返済猶予をやる、金融上の措置等々を適切に講ずるように金融機関に対して今後ともきちんと要請をして、被災者が困窮に瀕するようなことのないように我々としても努力をしていかねばならぬ、そう思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。
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