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その他 (量的緩和政策、超低金利政策, 同意人事)

2013年03月04日 第183回 通常国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【708】 - 質問

議運聴聞会で日銀総裁候補・黒田氏に質問

 2013年3月4日、衆院議院運営委員会は、政府が日銀総裁候補として提示した黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁への所信聴取を行い、佐々木憲昭議員も質問しました。

 黒田氏は安倍内閣が求める2%の物価上昇目標について「2年くらいのタイムスパンを念頭において大胆な金融緩和をしていく」と表明。「物価目標を達成するまであらゆる緩和措置をとる」とのべ、安倍政権いいなりでこれまで効果のなかった金融緩和策をさらに拡大していく姿勢を示しました。
 佐々木議員は、働く人の所得の減少、社会保障制度改悪による12.7兆円もの負担増など「デフレの原因は国民の家計消費低下による需要の落ち込みだ」とのべ、黒田氏にデフレ不況に対する認識についてたずねました。
 しかし、黒田氏は「さまざまな要因、相互関連の中で物価が下落している」としか答えられませんでした。
 続いて佐々木議員は「日銀はずっと金融緩和をやってきた。銀行から先にお金が流れないのは資金需要がないからだ」とのべ、金融緩和策について誤りを指摘。
 黒田氏は「(資金供給)の増やし方が問題」とのべ、はぐらかしました。
 また佐々木議員は「企業に積みあがった内部留保が『生きた金』として社会に還元されなければ、経済活性化につながらない」とのべ、内部留保を労働者の賃金引き上げに還元させ、内需を活性化させることこそデフレ不況克服の最善策であるとのべました。
 黒田氏は「企業部門が資金強化に走っている」と認めつつも、金融緩和など従来の政策を繰り返すだけでした。
 佐々木議員は「金融緩和を続ければ通貨の価値を下落させ、インフレになりかねない」と厳しくし指摘しました。
 黒田氏は、日銀が行っている国債などの金融資産購入について、「規制と対象はまだ十分ではない」と指摘。「より長期のものを大量に買っていく」とのべ、現在は償還まで3年以内としている国債購入対象を拡大する意思を表明。国債の保有額を銀行券の発行残高以下に抑える「銀行券ルール」についても見直しの検討対象だと明言しました。

 日銀副総裁候補への聴聞会は、翌5日に行われました。

議事録

○佐田委員長 まず、議事の順序について申し上げます。
 最初に、黒田参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 それでは、黒田参考人、お願いいたします。
○黒田参考人(日本銀行総裁候補者(アジア開発銀行総裁)) 黒田でございます。本日こうした機会を与えられましたことに対しまして、深く感謝を申し上げたいと思います。
 私は、2005年の2月から、アジア開発銀行総裁として、アジア諸国の経済発展と貧困削減に取り組んでまいりました。この間、幸いに、アジア諸国は大変高い成長を遂げまして、世界経済をいわば牽引しているという形になっております。
 日本は、さまざまな形でこれら諸国に対して支援を行っておりまして、その成長に大きく貢献をしてきました。
 また、日本は、アジア諸国の重要な貿易・投資の相手国でありまして、そういった意味でも、重要な位置を占めておると思います。その意味で、日本がデフレを脱却して持続的な経済成長に復するということは、アジアにとっても、また、ひいては世界経済にとっても、重要であり、期待されていることだと思います。
 しかしながら、日本経済は、10年以上、15年近くデフレに苦しんでまいりました。これは、世界的に見ましても極めて異例なことです。物価が下落する中で企業の収益あるいは人々の賃金、給与が圧縮されて消費や投資がさらに減少するということで再び物価の下落につながるという、いわば悪循環に陥っているわけでございます。
 デフレからの早期脱却ということは、日本経済が抱えている最大の課題であると思います。
 物価安定は中央銀行の責務でありまして、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要だと思います。
 過去十数年間、日本銀行はさまざまな取り組みを行ってまいりましたけれども、残念ながらデフレ脱却には至っておりません。しかし、このところ、政府がデフレ脱却と経済再生を実現するという方針を明らかにして緊急経済対策などの対応をとったということが好感されて、いわば、景気の回復を先取りする形で株価も上昇しているという状況にあると思います。
 そうした中で、特に、本年1月の共同声明というものは、政府と日銀が、それぞれの課題を明確に設定して、責任を持ってそれを実現することを宣言したという意味で、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大きな第一歩だと思います。
 特に、日本銀行が、2%の物価安定目標を設定して、これをできるだけ早期に実現するということをはっきり宣言したということは、極めて画期的なことだと評価をしております。
 もし私が総裁に選任されましたならば、この物価安定目標を1日も早く実現することが何よりも重要な使命となるというふうに考えております。
 もちろん、これまで日本銀行は、デフレ脱却に向けて、国債だけでなく、社債その他の資産を買い入れてまいりました。この点は評価されるわけですけれども、その規模あるいは具体的な買い入れ対象等については、できるだけ早期に2%の物価安定目標を達成するという強いコミットメントを実現するためにはまだ十分ではないというふうに思います。
 資産買い入れを初めとする具体的な金融緩和の手法については、市場への影響等も見きわめつつ、何が最も効果的かということを探っていく必要があると思います。
 また、金利引き下げの余地が乏しいという現状では、金融政策の運営に当たっては、市場の期待に働きかけるということが不可欠だと思います。
 もし私が総裁に選任されましたならば、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けて、やれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいというふうに思っております。
 さらに、政府との連携確保ということも非常に重要です。
 具体的な金融緩和の手法は日本銀行に任せるべきだと思いますけれども、金融政策は、政府の経済政策と整合性を持って運営することでより高い効果を発揮できるものですので、政府と日銀のより緊密な意思疎通が重要だというふうに思います。
 一方、共同声明では、政府は、機動的な財政政策、成長力、競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むということになっております。
 もとより、日本銀行は、みずからの責任において、物価安定目標の早期実現を目指して金融緩和を推進するものであります。
 ただ、金融緩和と並行して、政府が実需をつくり出し、消費、投資の拡大を通じて賃金、雇用を改善することができれば、そこからさらなる物価上昇につながる好循環も期待できます。
 また、財政運営への信認低下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。
 日本銀行として、金融、経済のグローバル化に対応するということも大変重要です。
 日本銀行は、物価の安定だけではなく、金融システムの安定という使命を負っているわけですけれども、近年、金融規制等についての中央銀行間の連携協力というのは重要性を増しているわけでございます。また、金融政策の意図や方向性について、諸外国に説明する機会もふえております。
 こうした各国中央銀行等との連携、調整に努めることは、極めて重要であるというふうに思っております。
 最後に。
 私は、これまで、政府機関、国際金融機関、大学等で勤務してまいりましたけれども、どのような職務にあるときも、与えられた職務を果たすために最善を尽くしてまいりました。
 日本経済が重要な局面にある中で、日本銀行総裁の果たすべき役割というものも重要性を増している、極めて重大であるというふうに存じております。
 したがいまして、もしその重責を果たすべき機会を与えていただければ、これまでの経歴で培ってきた経済、金融についての知見、内外の人的なネットワーク、そして組織のトップとしてのマネジメント経験も生かしまして、全身全霊を込めて、その職務に邁進していく所存でございます。
○佐田委員長 ありがとうございました。
 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。
 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。
 理事会の申し合わせに基づき、許可された記者以外の報道関係の方々は御退室をお願いいたします。
―――――――――――――
○佐田委員長 これより黒田参考人の所信に対する質疑を行います。
 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次20分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。
【中略】
○佐田委員長 理事の協議に基づき、質疑順序を変更いたします。
 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、デフレとは何か、原因はどこにあるのかということでお聞きをしたいと思います。
 本会議で、私、質問をしたときに、政府の答弁は、デフレとは、持続的な物価下落と定義しておりますというものでした。
 問題は、なぜ物価が下落したかということですね。原因を正確に捉えることが大事だと思うんです。
 政府答弁では、長期にわたり、需要が弱い中で、成長期待の低下、デフレ予想の固定化もあってデフレが継続してきたというふうに答えました。
 やはり、基本にあるのは、長期にわたり需要が弱かったという事態だと思うんです。
 最大の要因は、私は、やはり、国民の可処分所得の低下による需要の落ち込み、とりわけ、GDPの6割を占める家計消費が落ち込んだことにあると思いますけれども、どのように認識されておられるでしょうか。
○黒田参考人 デフレの原因については、今委員が引用された政府の見解が基本的に正しいと思いますが、何度も申し上げますが、デフレの原因は、そのときそのときでさまざまな要因が重なっておりまして、1998年以来、消費者物価がほとんど下落を続けているわけです。2008年には世界的な一次産品の価格高騰でマイナスではなかったわけですけれども、それを除きますと、ほとんど毎年のように物価が下落しているという状況にあります。
 その時々の物価の下落が続いている要因はいろいろあると思いますけれども、やはり、中央銀行として、そういう要因に対して、それをカバーする、それを克服するような、その時々に適切な金融政策をとってくればこういうことにはならなかったのではないかというのが、恐らく、ほとんど全世界のエコノミストの通説だと思います。
 御指摘の、需要が弱かった、あるいは可処分所得が下落したということもございますが、デフレの中でそういうことが起こっていまして、やはり、デフレを長期に持続させてしまったということが、またいろいろな問題を呼び、デフレを悪化させてきたというように考えております。
○佐々木(憲)委員 さまざまな要因があったというふうにおっしゃいましたが、私は、長期的な需要の低迷というのがベースにあるというふうに思っております。
 一つは、雇用者所得がこの10年間で22兆円も減少していることです。労働者の所得、賃金が落ち込んだというのが一点ですね。
 その要因はいろいろありますが、例えば、労働法制の規制緩和で非正規雇用がふえた、それから、多国籍企業、巨大企業が外国に進出して産業の空洞化がもたらされた、そういうことから失業、雇用不安、低賃金が広がった。これが一点ですね。
 二つ目は、国民の負担がふえたというのがあります。
 それは、小泉、安倍内閣、以前の内閣が国民負担を12・7兆円ふやしまして、その結果、大変可処分所得が低下したというのがあります。
 それから、もう一点、これは日銀にも関連があるんですけれども、金利の低下というのが家計から利子所得を奪ったということがあります。
 7年ほど前に私が財務金融委員会で日銀の福井総裁に質問したときの答弁で、1991年における受取利子額がその後2004年まで同じ額で継続するというふうに仮定した場合と現実の金利所得との比較で逸失金額を計算すると、累計で304兆円であるという答弁がありました。これは家計にとってかなりの痛手だなというふうに思ったわけです。
 こういう要因が積み重なってきて、それがデフレを引き起こしていく需要の長期低迷につながってきたというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。
○黒田参考人 御指摘のような、雇用者所得の低迷、あるいは国民負担の増、あるいは金利の低下による金利収入の減ということはあったと思いますが、何度も申し上げますけれども、物価の持続的な下落というデフレの中で、特に雇用者所得の減少とか金利の低下ということも起こっているわけです。
 一方で、企業収益も低迷するとか、そういったことも同時にあったわけですが、あらゆる経済事象が、御指摘のようなことも含めて相互に関連していますので、これがあることの原因だというふうにピンポイントするのは非常に難しいとは思います。
 何度も申し上げますが、デフレ、持続的な物価の下落というのが起こった原因としては、いろいろなことが重なっているということは、私は、そのとおりだと思います。
 ただ、そういう事態に対応して金融政策がもっと機動的に、もっと大胆に行われていれば、15年もデフレが続くことはなかっただろう。現に、欧米を見ましても、リーマン・ショック後で大不況になったんですが、デフレには全くなっておりません。全世界で、先進国で、この15年間、デフレになったところはないと思います。
○佐々木(憲)委員 私は、金融政策が間違っていたから、全てそこに原因があるというふうには思っておりません。やはり、最終的な需要の低迷というものが、いろいろな要因がある中で、一番ベースにあるというふうに私は思っております。
 そういう意味では、三党合意で、昨年、消費税の増税とか、年金、医療、介護、こういう面で、これから2015年までに約20兆円という負担増、こういうふうになっていきますと、デフレを加速させるのではないかという心配を持っているわけでございます。
 さて、そこで、次に、インフレの問題についてお聞きしたいと思います。
 物価上昇には二種類あると私は思うんですね。
 一つは、需要が伸びることによって物価が上昇の方向に行くというのが一点。もう一つは、通貨が流通必要量を超えて供給されることによって通貨価値が下落をする、そのことによって名目的な物価上昇が起こる。
 この二つがあると思うんですけれども、こういう区別というのは、黒田さん、どう認識されていますでしょうか。
○黒田参考人 物価上昇の原因につきましては、先ほど申し上げたように、いろいろなファクターが絡まっているということは、そのとおりだと思います。ただ、持続的な物価の上昇であるとか持続的な物価の下落というのが防止できなかったということは、金融政策に責任があるというふうに思っております。
 したがいまして、それぞれの時点で、例えば石油価格が上がったとか、あるいは需要が過剰になったとか、あるいは為替が下落したとか、いろいろな要素が物価上昇に影響してくることは事実ですけれども、今おっしゃったような、二つに分割して物価上昇の原因を探るというか決めるということは、恐らくエコノミストの多くの人たちは合意しないのではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 エコノミストはどうか知りませんが、私は、この二種類が非常に、区別して見ないと、政策的には違う問題を引き起こすというふうに思っております。
 次に、先ほどから議論がありますけれども、このインフレターゲットで2%の物価上昇目標を早期に達成する、それで、これまで日銀の金融政策は不十分であった、そういうふうにおっしゃいました。
 私は、従来の金融政策で金融緩和を相当やったと思います。マネタリーベースの増加はかなりありました。結果として、当座預金残高がふえるという結果がありました。
 ところが、実は、これから先に、銀行から先にお金が流れなかったんです。マネーストックはふえなかった。つまり、そのマネーストックの増加によって物価上昇をもたらすという効果が発揮されなかったんですね。
 そういう意味では、単に、日銀が金融緩和を大規模にやればやるほど物価が上がるんだ、そういうふうな単純なものではない。やはり、資金需要がなければ、幾らじゃぶじゃぶ日銀が資金を供給したって、先に行かないわけですね。
 問題は、どうやって先に資金が流れるようにするか、資金需要がどうふえるようにしていくか。そういう点では、需要の方が大事だと私は思うわけです。
 そういう発想でいかないと、日銀だけに責任を押しつけて、何か日銀が悪者で、日銀がやらなかったから物価が上がらない、景気が悪い、こんな話になるわけで、それは全く違うと思うんですね。どう思いますか。
○黒田参考人 マネタリーベースといいますか、ハイパワードマネーといいますか、日銀券と銀行の日銀預け金の合計ですけれども、それが相当大きくふえたということは、そのとおりでありまして、欧米でも同じようにふえているわけです。
 最近の日本銀行の政策にしても、FRBやECB等の政策にいたしましても、確かに、この中央銀行の、負債側のマネタリーベースあるいはハイパワードマネーをふやすということだけで効果があるというふうには必ずしも考えていなくて、いわば資産側ですね、どういう資産を買い入れるかということによって世界的な金融危機、リーマン・ショック後の金融危機に対応して、米国の場合などは、アセットバックト・セキュリティーを買い入れたり、あるいはその後長期国債を買い入れたり、また再びそういったアセットバックト・セキュリティーを買い入れるというようなことで、同じ量的緩和でも、その時々の金融市場の動向に応じてできるだけ金融緩和が効果的になるように努力しているわけでして、当然日本銀行もそういう努力をしてきたわけですけれども、それがやはりまだ不十分だったということだと思います。
 おっしゃるように、マネタリーベースを拡充すれば自動的に銀行への貸し出しがふえる、まあ、銀行への貸し出しもふえるかもしれませんし、いろいろなチャネルはあると思いますけれども、金融緩和については、一番効果的になるような手法を活用していくということに尽きると思いますし、私は、それによってデフレから脱却できると思うし、デフレ脱却の責務はやはり中央銀行たる日本銀行にあるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 インフレターゲットはどの国でもやっているというようなことをおっしゃいましたが、ほかの国の場合は、非常に激しいインフレになって、それを抑えるために物価安定目標を設けるというのが大体一般的で、デフレ脱却のためにインフレターゲットを掲げた国というのは今までないんじゃありませんか。
○黒田参考人 御指摘のように、この20年ぐらいだと思いますが、多くの国が物価安定目標、インフレーションターゲットを決めた契機は、インフレを抑えるという観点、あるいは安定的な物価を持続させるという観点から行われたことは事実だと思います。
 ただ、この物価安定目標というのは、インフレも抑止するしデフレも抑止するという効果がありまして、仄聞するところでは、たしか戦前にスウェーデンがデフレのもとで物価安定目標を決めたというようなことを聞いたことがございますが、いずれにせよ、物価安定目標というのは、インフレになることもデフレになることも抑止しようというものだと思います。
○佐々木(憲)委員 次に、国債の引き受け問題についてですが、安倍総理は、昨年11月17日に、熊本市でこういう講演をされているんですね。建設国債をいずれは日銀に全部買ってもらうことで新しいマネーが強制的に市場に出ていく、景気にはいい影響がある、こういう発言をされています。
 この日銀の国債直接引き受けについて、どのようにお考えでしょうか。
○黒田参考人 日銀の国債の直接引き受けにつきましては、戦前戦中の経験に鑑みて財政法で原則的に禁止されているというふうに理解しておりまして、仮に私が総裁に任命されましても、国債を直接引き受けるということは全く考えておりません。
○佐々木(憲)委員 以前、私、財務金融委員会で白川総裁に質問をしたときに、大手企業の内部留保が非常に大きいということについてお聞きしたことがあるんです。
 そのときに、こういうふうに答弁をされました。「特に大企業については、手元資金は今は非常に潤沢でございます。これは各種の統計でももちろん確認できますし、私どもが企業の経営者と会いますと、手元に資金は潤沢にあります、問題はこの資金を使う場所がなかなかないんですということを、金融機関の経営者からも企業経営者からも、これはしょっちゅうお聞きします」、こういう答弁でありました。
 今、需要が非常に低迷して賃金も抑えられている、こういう中で負担が非常にふえてきている。その中で、企業としては、投資をするにしても、需要が伸びる見込みがないわけですから、どうしても投資を控える、または海外に出ていく、そういう状況がつくられていると思うんですね。したがって、もうけが上がっても、あるいは減税しても、これはもう内部留保にどんどん積み上がっていって、生きた金として社会に還流しないという問題があるわけです。
 これはやはり非常に大きな問題で、私どもは、これは還元しないと全体としての経済の活性化につながらないというふうに思いますけれども、どのようにお感じでしょうか。
○黒田参考人 実は、似たような状況が、日本だけでなくて、米国でもヨーロッパでも起こっておりまして、企業部門が資金超過になっているというような状況でございます。
 それぞれに、景気の見通しとか成長見通しとか、そういうことが影響していることは間違いございませんが、特に日本の場合は、デフレがずっと続いてきたものですから、その中で企業収益も圧迫される、あるいは賃金も低迷する、雇用も伸びないというような形で悪循環がずっと続いてきておりますので、そういったことを克服できれば、より見通しは明るくなるとは思います。
 確かに、中長期的な成長というのは、やはり中長期的な成長戦略というものの実行ということが非常に重要ですし、当面のデフレギャップの縮小のために財政の機動的な運営が必要であるということは、そのとおりだと思います。
○佐々木(憲)委員 物価上昇を、何かそれ自体を非常に大きな目標にしてと言いますけれども、バブル期で最も過熱した時期でも、80年代後半に平均で1・3%程度なんですね。86年、87年、88年には1%以下、ゼロ台の物価上昇率だったわけでありまして、これを何か魔法の手法でもあるかのように、物価がぱあっと上がるというふうにならないと私は思うんですね。
 そうすると、結果として、金融緩和をばんばん続けていく、そのためには資産を買わなきゃならぬ、あるいは国債を、直接買うかどうかは別として、間接的に大量に買う形になっていく、そういう危険性が非常に大きいのではないかと思っておりまして、これは、それこそ通貨の価値を下落させてインフレにつながっていくような危険な事態になりかねないなというふうに思っております。
 これは私の個人的見解でございます。今後、注視していきたいと思います。
 ありがとうございました。

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