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税制(庶民増税・徴税), 医療・介護・年金 (消費税, 社会保障・税一体改革)

2012年06月22日 第180回 通常国会 社会保障・税特別委員会 【687】 - 質問

大増税だけが残った 公約投げ捨てた民主・自民・公明3党合意

 2012年6月22日、佐々木憲昭議員は、社会保障・税特別委員会で、民自公3党「合意」を取り上げ、税制では消費税大増税だけが残り、社会保障では大改悪まで狙うものだと追及しました。
 新たな質疑の対象となる「社会保障制度改革推進法案」と「認定子ども園法改正案」については、20日の夜21時に提出されたばかりであり、とりわけ「社会保障制度改革推進法案」まったく新しく提案されたものです。
 また「一体改革関連法案」の修正案に至っては、前日提出され、この日午前中に提案理由の説明がおこなわれたばかりで、修正案の内容を十分に検討する余地さえありません。
 佐々木議員は、「これらの法案は、検討時間を含め十分に時間をとって充実した審議を行うべき。短時間の質疑で来週早々にも採決するなど、絶対におこなうべきではない」と主張しました。

 佐々木議員は、3党合意文書で、公的年金や後期高齢者医療制度の改革について「あらかじめ3党間で協議する」とされていることを示し、「最低保障年金や後期高齢者医療制度廃止の民主党の公約は自民、公明が了承しない限り、実行できない」と指摘。
 法案提出者の野田毅議員(自民)は「その通り」と答え、長妻昭議員(民主)は「政権交代のたびに制度が変わると迷惑がかかる」と公約投げ捨てを言い訳しました。
 さらに、佐々木議員は3党が新たに提出した社会保障制度改革推進法案は「自助」「自立」を社会保障制度の基本にすえるものになっていると追及。
 鴨下一郎議員(自民)は「自民党の哲学が貫かれている」と述べました。
 佐々木議員は、憲法25条の生存権を否定するものだと強調。
 また、社会保障について「消費税収を主要な財源とする」と明記していることをあげ、増税も社会保障の削減も実行する重大な仕組みをつくろうとするものだと批判しました。
 さらに佐々木議員は、わずかばかりの高額所得者への所得税や相続税の強化も3党合意で削除されていることに言及。
 政府は所得税は累進的になるといっていたとして「前提も崩れている」と追及すると、安住淳財務大臣は「来年、再来年にやる」と答えるのが精いっぱい。
 10%増税時の低所得者対策についても先送りされ、中小企業が消費税を転嫁できない問題についても実効性がある対策が何一つないと迫ると、古本伸一郎議員(民主)は「これまで以上に厳格に監視、取り締まる」としか答えられませんでした。
 佐々木議員は「所得再分配機能も否定され、消費税増税だけが残った」と批判し、こんな重大な3党修正・新法をろくな審議もせず採決することは到底、認められないと強調しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、三党合意、そしてそれに基づく修正案、新法、これを中心に質問させていただきたいと思います。
 今、各種の世論調査を見ますと、国民の5割、6割が、消費税増税は反対である、こう答えております。また、今国会で法案を成立させる必要はないという声は7割に上っております。私は、国会はこの声に耳を傾けるべきだというふうに思っております。三党が合意したらすぐ通せ、こういうやり方は認めるわけにはまいりません。
 社会保障制度改革推進法案と認定こども園改正案というのは、一昨日の夜9時に提出されたばかりであります。とりわけ社会保障制度改革推進法案は完全に新しく提案された新法であります。また、一体改革関連法案の修正案に至りましては、昨日提出をされて、きょう午前中に提案理由の説明が行われたばかりでございます。この修正案の内容を十分に検討する余地さえないという状況であります。
 これらの法案は、検討時間を含めて十分に時間をとって、充実した審議を行うというのは当然であります。短時間の質問で採決するというようなことは絶対にやってはならない、このことを初めに強調しておきたいと思います。
 そこで、まず初めに確かめておきたいことがございます。
 ここに、申し入れという文書がありまして、これは昨日、6月21日付で、民主党幹事長輿石さん、政調会長前原さんの名前で自民党幹事長石原さんと政調会長茂木さんに申し入れがなされた文書であります。
 これを見ますと、実務者合意の後の石原幹事長、茂木政調会長の御発言中において、実務者合意及び合意文書とは異なり、事実に反する点があります、撤回、訂正されたい、こういうふうに書かれているわけでございます。
 民主党の提案者にまずお聞きをしたいと思いますが、なぜこんな文書を出したのか、何を撤回し、何を訂正することを求めたんでしょうか。説明をしていただきたいと思います。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 この申し入れ書、私も拝見いたしましたけれども、輿石幹事長、前原政調会長の名前で自民党石原幹事長、茂木政調会長に申し入れたということでございまして、今概要を言っていただきましたけれども、そういうような趣旨で出されたものだということで、私もこれを後から見させていただいたということでございます。
○佐々木(憲)委員 こういうような趣旨というのはどういう内容なんでしょうか。
 この文書を見ますと、石原幹事長は6月19日の記者会見において、閣議決定の効力はなくなった、最低保障年金もなくなった、あるいは、国民会議で考えていきましょうと民主党の側から頼んできたと発言されたとされているわけです。
 こういうことに対して抗議をしたということじゃないんですか。
○長妻議員 これは、先生もう既に今お持ちのペーパーだと思いますので中身を細かくは説明しませんでしたけれども、ここに、申し入れの文書でありますのは、おっしゃるように、石原幹事長の会見について、閣議決定の効力はなくなった、あるいは、最低保障年金もなくなった、あるいは、国民会議で考えていきましょうと民主党の側から頼んできた、こういう御発言について、これはそういうことではないというようなことについてここで文書として申し入れをされたものだというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 そうすると、これは事実ではないというふうな御説明でありました。
 自民党の提案者にお聞きしますけれども、この中で書かれている、閣議決定の効力はなくなった、最低保障年金もなくなった、国民会議で考えていきましょうと民主党の側から頼んできた、この発言というのは、これは事実ですか。
○鴨下議員 今、この申し入れというのを初めて拝見しましたけれども、この中に書いてある、石原幹事長、6月19日の会見において、閣議決定の効力はなくなった云々、こういうような話については、我々実務者の間ではそういうようなことを議論したことはございません。
 そして、三党合意に至ったわけでございますので、先ほど長妻さんからお話ありましたように、我々はあくまでも、現行法、特に、今回閣法で提出されているこういうような法案につきまして、極めて精力的に議論をして合意に至った、こういうようなことでございまして、それ以外のことについては一切実務者としては議論しておりませんので、お答えするすべもありません。
○佐々木(憲)委員 これは、幹事長、政調会長というのは、党を代表して、民主党から自民党へと申し入れたわけであります。そういう文書なんですね。
 今、長妻さんに確認したように、こういう内容について抗議をした。自民党は、こういう発言をしたというこの事実を踏まえて、一体どういう対応をされたんでしょうか。こんな抗議はけしからぬ、こういう対応をされたんでしょうか。そのことを確認したいと思います。
○鴨下議員 今拝見したことで、我々にとっては、このことについての詳細、把握しておりません。
 さらには、この申し入れというのは、何か答えを返せ、こういうようなことでもなさそうでありますので、多分、これをお受け取りして、これで終わり、こういうことになるんだろうというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 鴨下さん、文書を読んでいないでしょう。この中にはこう書いているんですよ。真摯な対応を要請します、こう書いているんですよ。
 自民党から真摯な対応はありましたか、長妻さん。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 これについて、文書を出したということは私も承知しておりますが、その後の経緯については、今の段階で私は承知をしておりません。
○佐々木(憲)委員 これは、解釈がこういうふうに大きく割れる内容の合意をしたということでありまして、合意にはなっていないんですよね、実際上は。それを玉虫色にして、何か合意があったかのようなやり方をしている。
 では、具体的に確かめていきましょう。
 社会保障制度改革推進法の第五条一項では、今後の年金制度については、「社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。」とされております。
 ここに書かれている「今後の公的年金制度」というのは、民主党がこれまで掲げてきた最低保障年金制度を含むというふうに理解してよろしいですか。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 これは、公的年金制度のみならず、医療保険制度等々、幅広い形で議論になりました。当然、メーンはここに提出をさせていただいている五法案、この修正でございます。
 この公的年金制度につきましては、これは各党それぞれ、いろいろな御主張がある。我々は、今おっしゃっていただいたような最低保障年金、これは国民年金も含む報酬比例の年金とセットでございます。自民党には自民党のお考えがある、公明党には公明党のお考えがあるというようなことで、それぞれについて、ここに書いてあるとおりでございまして、今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において議論し、結論を得る、この文字のままでございます。
○佐々木(憲)委員 最低保障年金制度を含む公的年金制度ということについて、今後検討するという話でありました。
 第六条四項には、「今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、」「社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。」となっております。
 ここに書かれている「今後の高齢者医療制度」というのは、民主党がマニフェストで言ってきた後期高齢者医療制度の廃止というものも含んでいるんでしょうか。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 これも先ほどと同様でございますけれども、我が党には我が党の考え方がございます。当然、自民党には自民党の考え方がございます。公明党には公明党の考え方がございますので、それらについて、今後の高齢者医療制度について、状況等を踏まえ、まさに文字どおり、必要に応じて、社会保障制度改革国民会議において議論し、結論を得る、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 後期高齢者医療制度の廃止、これは当然この中の検討の対象になるということですね。
○長妻議員 これは先ほども申し上げましたとおり、各党の御主張があります。
 このことについては、だからこそ、必要に応じて国民会議となったわけでございまして、我々が申し上げているのは、後期高齢者医療制度の廃止ということ、当然、廃止のみならず、その後の姿とセットの政策ではございますけれども、それは我が党の考え方であるということでございます。
○佐々木(憲)委員 三党の確認書にはこう書かれているんです。「今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する。」と書かれていたわけであります。
 これはそのとおりですね。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 今おっしゃっていただいているのは、法案ではなくて、確認書というのを三党で結ばせていただいたわけでございまして、ここに、おっしゃったように、「今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する。」ということで、これは法律ではございませんけれども、三党間の確認ということがなされたということであります。
○佐々木(憲)委員 では、三党協議と国民会議の関係についてお聞きしたいと思います。
 社会保障制度改革国民会議の20人のメンバーは、「総理大臣が任命する。」「委員は、国会議員を兼ねることを妨げない。」第十条でありますが、そうされていますね。
 したがって、確認書で「三党間で合意に向けて協議する。」と書かれていましたけれども、具体的には、社会保障制度改革推進法案の「国民会議において検討し、結論を得ること。」この規定に沿って行われるということになると思うんですが、そう理解してよろしいんでしょうか、それとも、これとは別個に三党協議というものがあるのか、この点を確認したいと思います。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、確認書というのは法律の外でございまして、法律は国民会議ということでありますので、そういう意味では、この確認書にあるとおり、今後の公的年金制度や今後の高齢者医療制度にかかる改革は、「あらかじめ」とありますので、これは三党間で協議をするというふうに理解をしております。
○佐々木(憲)委員 ということは、国民会議で決める前に三党間であらかじめ協議をして、合意を得た上で国民会議でそれを検討する、こういう形になるわけですか。
○長妻議員 これは、今おっしゃっていただいたように、まず初めにこれがあって、それがクリアしたらその次というような厳密な取り決めというかそういうことは話し合っておりませんで、それは、三党協議というのはもちろんあるわけでございますけれども、同時並行か、前後関係は別にして、国民会議というものでもいろいろな議論をするというふうに理解をしております。
○佐々木(憲)委員 これはどちらが決定権を持っているんでしょうか。鴨下さん、どうなっているんですか。
○鴨下議員 三党協議をしつつ、最終的に国民会議が設置されれば、これはどちらがというよりは、むしろ、三党協議の合意をあらかじめ得つつ、国民会議は国民会議として、これは有識者が中心でありますから、必ずしも政治的な部分だけではない、いわば有識者の見解というものを尊重しなければいけないわけでありますけれども、大枠についての制度設計等については、これはこれからやっていくわけでありますが、三党協議がしっかりと合意に至るという努力の後に、国民会議の中でさらに詳細なことを決めていく、こういうようなイメージを持っておりますが、これは、これから法案が成立して、その後に設置されてから具体的なプロセスは決まっていくんだろう、こういうふうに思います。
○佐々木(憲)委員 そうすると、三党間の協議があらかじめ行われて、それが前提となって、国民会議にそれがのせられて、専門的な検討が行われてという筋道をたどる、こういう答弁でありました。
 我々の立場から見ますと、民主党の最低保障年金制度というのは、財源が消費税だということでありますし、制度が40年先の遠い将来でしか実現しないという点でいうと、根本的な欠陥があるというふうに思っておりますし、後期高齢者医療制度の廃止も、実際には看板倒れであります。
 それにしても、今答弁ありましたように、三党間で合意しない限りは最低保障年金制度も実現しないし、後期高齢者医療制度の廃止も実現しない、そういうことになるということは明らかだと思うんです。
 つまり、民主党がこれまで言ってきた主張は、自民、公明が了解しない限りこれは実行できない、そういう合意内容であります。
 自民党にこのことを確認したいと思いますが、野田さん、うなずいていらっしゃいますけれども、こういう内容だということですね。
○野田(毅)委員 そのとおりです。
○佐々木(憲)委員 となりますと、結局、民主党のこれらの、今まで目玉政策とも言われてきた、我々から見ると問題があると思いますけれども、その二つの、後期高齢者医療制度の廃止とか最低保障年金の制度をつくるとか、こういう点は、自民党や公明党が了解しない限りはこれはもう実現をしない、これが三党合意の内容だということが確認をされました。
 そうなりますと、この申し入れで書かれていた、最低保障年金もなくなりましたという自民党の主張は、これは事実ではないんでしょうか。野田さん、いかがですか。
○野田(毅)委員 なくなったと言い切るのは気の毒かなと思います、これから協議するわけですから。そこは、それ以上攻撃しない方がいいんだろうと思いますね。
○佐々木(憲)委員 いや、別に、攻撃というか、事実を確認しているわけなんですよ。最低保障年金制度は、自民党や公明党がオーケーだと言わない限りは実現しない、これは合意内容からいうとそれしか考えられないんですね。公明党の西さん、どうですか。
○西議員 お答え申し上げます。
 自民党、公明党と民主党との協議を経て決まることですから、その順序というのはこれからの手続によるというふうに思います。今後の三党の協議の結果として、どうなるかということは最終的に決まるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 確認しますが、公明党は最低保障年金制度というのは容認するんでしょうか。後期高齢者医療制度の廃止は容認するんでしょうか。
○西議員 お答え申し上げます。
 そういう意味では、現行制度を中心とした改革というものを基本としております。
○佐々木(憲)委員 結局、最低保障年金制度というのは自民党も公明党もそれは認めないと今言っているわけなので、それを幾ら今後の検討課題だと言っても、合意しない限りは実行しないと書いているんですから、したがって、この二つの柱というのは、完全に自民党、公明党によって民主党の案が棚上げされた。もっとはっきり言えば、否定された、こういうことだということが確認できました。
 次は、新しい社会保障制度改革推進法案、突然提出されましたけれども……(発言する者あり)違うんですか。
○中野委員長 では、答弁してもらいましょうか。
○佐々木(憲)委員 では、答弁してください。
○長妻議員 佐々木先生にお答えを申し上げます。
 やはり、私はこれはかねがね申し上げていることなんですけれども、年金制度にしても医療制度にしても、これからの政治は政権交代が可能な政治体制になったと思っておりまして、しかも、ねじれ国会ということで、我が党だけが主張をして、それが100%無傷で、通そうと思っても通らない現実もありますし、あるいは、政権交代のたびに制度が変わっていては、やはりこれは国民の皆様が御迷惑をこうむるところでありますので、そういう意味では、本当に協議をしていかないと社会保障が前に進まない、こういう危機感もあるわけでございまして、そういう意味では、いろいろな各党の御意見を聞いて、それで、それを着地させていく、今回、そういう仕組み、仕掛けというのができているというふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 何かさっぱりわけのわからぬ話でね。
 民主党の主張がある、自民、公明はこれと全く違う主張をしている、合意をしない限り実現しない、そうすれば、民主党の主張は実現しない、そうなっちゃうんじゃないですか。そういうことがいよいよ明確になった。それを、何か、三党で合意して、さあこれから協議しましょうという話じゃないでしょう。そういう全く違う主張が棚上げされたまま、もっと言いますと、そういうことであります。
 次に……(発言する者あり)棚上げされたのは事実でしょう。では、今度実現するんですか、容認したんですか。
 だから、これは要するに棚上げされた。自民党の主張、公明党の主張と全く違うわけですから。そうじゃないんですか。自民党の答えをちょっとお聞きしたい。検討の余地があるのかどうか、お答えいただきたい。
○鴨下議員 今お話ありましたように、それぞれの主張は主張として持っているわけであります。
 ただ、今回の三党の合意というのは、これは協議をしていって、最終的に、それぞれの立場をお互いに尊重し合いながら、ある方向性を協議して努力していこう、こういうようなことでありますので、それぞれの主張がかなり異なっていても、矛盾することではありません。より国民にとってふさわしい持続可能な社会保障制度をつくっていく、こういうようなことで協議していこうということが合意されたわけでありますので、ここから先は、我々が努力をして国民のためにしっかりとしたものをつくっていく、こういうようなことでございますので、決して矛盾するものではございません。
○佐々木(憲)委員 わけのわからぬ拍手が出ておりますけれども。大体、全く違う内容の主張を、事実上、これは撤回されたわけであります。
 要するに、対立していることはこれは事実なんですね。矛盾しないと言っているけれども、矛盾しているわけですよ。矛盾しているから、これを自民、公明は否定しようとして、合意しない限りは実行しないんだよ、こういう文書になっているわけでしょう。そのことは、民主党の主張がそのまますっと通ることではないということなんであって、うなずいているから、全くそのとおりだと思うんです。
 新しく提案された社会保障制度改革推進法は、もともとこういうものはなかったんですけれども、これは自民党から提案されたと聞きますけれども、これは事実ですか。
○鴨下議員 この法律は、もともと基本法というような形で、社会保障制度改革基本法ということで、我々はかねてからずっと党内で議論してまいりました。これが骨格になっていることは間違いございませんけれども、それを、今回の三党合意、約1週間、10日、我々は、昼夜を分かたず、ずっと協議をしてまいりました。
 その結果として、三党で合意を得たのが社会保障制度改革推進法、こういうような形になって、内容についても、それぞれの立場をそれぞれ主張し合いながら合意に至った、こういうことでありますので、名実ともに三党が提案している、こういうようなことにほかなりません。
○佐々木(憲)委員 なぜ、こういう法案を自民党はつくれと言ったんでしょうか。その理由を説明していただきたい。
○鴨下議員 社会保障制度そのものが、我々にとってみると、これから日本の国のいわば一番重要な政策になります。そういう中で、国民の負担それから受益、こういうものをきちんとバランスをとって持続可能なものにしていこう、こういうようなことが自民党のかねてからのいわば考え方であります。
 こういうような考え方に沿って、この法案の一番の骨格部分は我々として起草したわけでありますけれども、その後は皆さんのそれぞれの御意見があって、最終的には推進法、こういうようなことに相なったわけであります。
 自由民主党が考える、いわば受益と負担、こういうもののバランスをとった持続可能なものに社会保障とはあるべきだ、こういうようなことの哲学は十分にこの中に貫かれている、こういうふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 その考え方なんですけれども、推進法案には、社会保障の基本理念、医療、年金、介護など各分野における改革の基本方向が規定されております。ここには極めて重大な内容が私は含まれていると思うんです。
 例えば、社会保障の基本的考え方として、自助自立、公助、共助、こういう言葉があります。法案の中にこのような用語が入ったのは、これは初めてでしょうか。
○鴨下議員 自助、共助、公助という言葉が法案に入ったということについて、初めてかどうかというのは私は承知しておりませんけれども、少なくとも、この法案については、自助、共助、公助、こういうようなものが、先ほど申し上げました、例えば受益と負担、こういうようなことのバランスにおいては、お互いに、まずみずからを助け、ともに助け合い、なおかつ足らざる部分は公、公助、こういうような形でしっかりとバランスをとっていこうというようなことが法律として書かれた、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 この内容は、いわゆる共助あるいは公助、これを後退させて、自立自助を基本に据える、そういう方向を意味するんじゃないんでしょうか。
○鴨下議員 それは佐々木先生と私どもの根本的なところで多分差があるんだろうというふうに思っておりまして、確かに、我々は、自助、共助、公助、このバランスをとってやっていこう、こういうようなことでありますから、公助だけでやれて、そして負担がきちんとできるんだったら、そういうような考えも一方にはあるんでしょうけれども、今、大変なこういう負担の多いときに、それぞれ自助、共助、こういうバランスの上で持続可能な社会保障をつくっていく、こういうようなことが最も重要だと思っておりまして、これについて、今までになく、三党がこうして、こういうような方向で協議をして、そして合意に至ったということは、ある意味で、憲政史上で歴史的なことなんだろうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 歴史的な大後退だと私は思いますけれどもね。
 公助だけでやれと言っているんじゃないんです。公助をふやせと言っているんです、我々は。
 税法の第一条、趣旨規定を見ますと、「支え合う社会を回復すること」というのがありましたね、最初。これが削除されたんですが、何で削除されたんですか。
○古本委員 佐々木委員にお答えします。
 その前に、この間、三党で協議をさせていただいておりまして、大変国会の方も御協力いただきましたことに、冒頭、感謝申し上げます。
 支え合う社会の回復という、この言葉につきましては、三党協議の中で種々御議論がございました。最終的には削除と相至ったわけでございますけれども、御案内のとおり、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築していくということが我が国の直面する重要な課題であるということに改めたわけであります。今回の社会保障・税一体改革の重要な考え方は、ただいま読み上げましたこの条文の中にしっかりと残っているものだと承知してございます。
 さらに、三党で提出させていただいております今回の社会保障制度改革推進法案、先ほど委員御指摘の部分でありますけれども、その中に、自助、共助、公助の最適バランスに留意をして、自立を家族相互さらには国民相互の助け合いの仕組みを通じて支援していくということを明記いたしましたので、これは各党それぞれ哲学、理念がある中で、私は、ぎりぎりの合意に至ったし、何より社会保障の安定財源を確保していくということの大きな目的は、その範囲の中であるというふうに承知してございます。
○佐々木(憲)委員 社会全体で支え合うという部分を削除しなさいと言ったのは、どの党でしょうか。
○古本委員 お答えいたします。
 三党の協議の中で至った結論でございます。
○佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、どの党かと聞いたんです。
 つまり、政府の提案は、これは基本的には民主党は合意して出されているはずでありますから、自民党か公明党の方が「支え合う社会を回復すること」を削除しなさいという主張をして、削除されたんだろうと思うんですが、西さん、公明党はそういう主張をされましたか。
○西議員 私は存じ上げておりません。
○佐々木(憲)委員 結局、自民党ということですよね。それでよろしいですね。
○野田(毅)委員 社会のあり方として、やはり自分の人生についてまず第一義的に自分が責任を持つ、これは当然のことだと思います。だけれども、自分ではそれだけのリスクをしょい切れない、それが実は、みんなでやろうというのが共助の世界であります。そういう意味で、支え合うというのはむしろ共助的な精神を言っていることだと思います。
 そういう意味で、我々は、自助、共助、公助という、この順番も言ってきているわけですから、両々相まって社会をみんなで支えるわけです。そういう意味で、みんなで支える。国家を支えるし、社会保障も支えるし、そういうことですから、格別、支え合うという表現というのは、私は、ここでそれを前面に出すということは必ずしも適切かどうかということはございます。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 自民党の提案によって、社会全体で支え合うという部分が削除をされた。それは、自立自助という考え方が基本であるから、こういう文言は必要がない、こういう趣旨の答弁でございました。
 私は、これは極めて重大だと思うんですね。国の責任で社会保障の増進を図ることを義務づけているのは憲法25条であります。それを真っ向から否定するものでありまして、また、社会保障への公費の投入を減らそうという意図が見え見えであります。
 この推進法案では、こう書かれているんです。「国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。」こうされております。
 国というのは、この中のどこに入るんでしょうか。
○鴨下議員 「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。」この全てに国はかかわるわけでございますから、行間に、全てに国はかかわっていく、こういうようなことの理解だろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 国の責務というのはありますけれども、この一番基本のところで国が出てこないというのは、公助とか共助というその考え方を否定するということがここににじみ出ているわけであります。
 しかも、社会保障の公的負担の財源を、消費税収を主な財源とすると明記しているわけであります。これは、わざわざ社会保障を消費税とリンクさせて、消費税の増税も社会保障の削減も実行する、こういう仕組みになっていると言わざるを得ない。
 国、地方の社会保障四経費は、2015年で34・8兆円ですね。その時点で、消費税は24・3兆円であります。社会保障を全額消費税で見るとすれば、社会保障を削らなきゃならぬ。社会保障を充実したいとなれば、さらに消費税を引き上げる、こういうことになる。そうなるんじゃありませんか。
○野田(毅)委員 今御指摘のとおり、今現在の社会保障に要するお金とそれから調達される財源との間に非常に大きな開きがありますね。今日でさえそれだけの開きがある。今後、将来を展望すれば、なおさら高齢化が進んでいく。これはみんな常識だと思います。
 その中で、どういうところにその財源を求めていくのかということを考えれば、主な所要財源というのはやはり、保険料の値上げももう限界に来ているんじゃないんでしょうか。ほかの予算を削って持ってくることもかなり限界に来ているんじゃないんでしょうか。そしてさらに、借金をどんどんふやしてその穴を埋めてきたというのが今日の偽らざる姿じゃないでしょうか。
 そういったことを考えると、いよいよこれからますます団塊世代が成熟していく、そういったことを頭に置くと、きれいごとじゃなくて、やはり給付をその分だけ減らすわけにいかないわけでしょう。現状を維持するだけでも容易なことではない。みんなわかっているじゃないですか。
 それを前にして、やはり基本的な原則を持っておかないと、給付が先にあって、後から何でもいいから財源は勝手にやれというわけにいかない。そういう意味では、ある程度、財源の調達の仕方を、基本的に社会保障は社会保険を原則として賄っていこうということであるならば、その社会保険とは一体何ぞやということを考えてもらわなきゃいけない。その社会保険の中での公費の背景は、やはり消費税以外には、もちろんあるとは思いますよ、だけれども、主要なものはそこに求めるということをあの中に書いてある、こういうことです。
○佐々木(憲)委員 大体、社会保障を消費税だけにリンクさせるということが間違っているんですよ。
 社会保障はその時点で消費税の税収より多いわけであります、今でも多いけれども。全部社会保障に充てようとしたら、消費税をもっと上げなきゃいかぬ。社会保障に足りないからといって、今度は社会保障の方を削る。どっちかの選択しかないじゃないですか。
 そうではなくて、消費税に頼らない別な方法を考えなさいと我々は言っているわけですよ。無駄の削減、一体どのぐらいやったのか。それから、法人税の減税、今必要なのか。大金持ちの減税、必要なのか。そういうことを検討もしないで、ただリンクさせて、両方とも国民負担だけが残るというのはやめた方がいい。
 法案には一体改革という言葉がないんですけれども、これはどこに行ったんでしょうか。
○長妻議員 お答えを申し上げます。
 今の御質問でございますけれども、社会保障と消費税、この委員会も一体改革という名前だと思いますけれども、これについては、それぞれ法案が一緒に提出をされております。その中で推進法というような法律があるということで、そういう意味で、消費税収を一つの当てにした社会保障の五法案ということでありますので、これは言わずもがなのところでありますので、法律上それが書いていないんだというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 この経緯の中で、各法案がかなり本質的な修正が加えられている。新しい法案も出てきた。したがって、当初の一体改革というのはばらばらになってしまって、一体という言葉さえ使わなくなった、こういうことであります。
 まず、税制改正案の中身でそれを確認したいんですけれども、法案名を変えましたね。法案の名前、何が変わったんですか。
○古本委員 お答えいたします。
 このたび、法案の名前の、消費税法等の一部を改正する等の法律案から、消費税法の一部を改正する等の法律案ということで、消費税法等の等が落ちました。これにつきましては、所得税、資産課税の見直しにつきまして、25年度改正における検討事項ということで、関連する箇所を削除した、これに伴うものだと承知しております。
○佐々木(憲)委員 要するに、修正案では所得税、相続税の規定が削除されて、残った主な柱は消費税の増税だけが残った、こういうことであります。三党協議の結果、消費税大増税を押しつけることだけが残ったんだ、こういうことであります。
 社会保障制度改革推進法の総則には、「所得税法等の一部を改正する法律附則第104条の規定の趣旨を踏まえて安定した財源を確保しつつ」と書かれておりますが、この附則104条にはこう書かれているんです。「格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、」「最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに」となっているんですね。これはどうなったんでしょうか、結果として。
○古本委員 今委員御指摘いただきました附則の104条、こちらの中に、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直していく。とりわけ、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに云々と書いてございます。
 今回、恐らく抜本改革という名に値しないんじゃないかということを御指摘いただいているというふうに思うんですが、この附則104条による、税法も含めた一体改革のその要諦は、社会保障の安定財源、とりわけ年金の国庫負担二分の一引き上げに伴う財源確保等々、これは国民の皆様にも大変御理解いただく中で何とかやっていこうじゃないかという、今、野田毅先生からもありました、後代にツケ送りできないじゃないか、借金で社会保障を支えるというのはおかしいじゃないか、こういう議論から出発点はあろうかと承知しています。
 その意味では、今回の見直し、修正に伴いまして、25年度改正に先送るわけでありますけれども、逆に、24年度中に成案を得るということで、今回の改正の20条、21条、とりわけ20条に、所得税の最高税率の引き上げ関係につきましては、時期のピンどめと改革の方向感をあわせて提起いたしましたので、これは言うならば、附則104条によって今日の改革が始まっていることを鑑みれば、このたび改めて20条にそのことを規定したというのは大変重たい事実だと承知しております。
○佐々木(憲)委員 いろいろな説明をしましたけれども、所得税法の改正も相続税の改正も、これは削除しちゃったわけです。したがって、104条でささやかに規定されていた高額所得者への税負担の引き上げというのは、これはなくなっちゃったんですよ。結局、所得再分配機能を高めるという内容がなくなってしまった。
 年金国庫負担二分の一という話が出ましたけれども、大体、数年前に行われた所得税、住民税の増税、これは国民が大変怒って、政権交代の一つの背景になったわけですけれども、あれは何のためにやったんですか。あれをやったのは、年金の国庫負担二分の一引き上げのためだと。それで所得税、住民税の引き上げとやったわけですよ。国民が怒った。
 だけれども、その財源は一体どこに行ったんですか。それがすっかりどこかに行っちゃって、いや、今度は消費税の増税でそれを埋めるんだ。とんでもない話だ。一枚の証文で二回も三回も増税するようなもので、本当に私は許せないと思うんですよ。
 財務大臣、あなたは繰り返し、所得税は累進的だ、今回は最高税率を引き上げることになったんですからと。これは前提が崩れたんじゃないですか。
○安住財務大臣 所得税と資産課税の見直しの方向性については三党とも合意に至っていた。しかし、具体的な案についてはさらに議論を尽くす必要があることも踏まえて、原案からは削除するものの、今提案者からありましたように、年度改正でしっかりやっていきましょうということになっていますから、旗をおろしたわけでも改革をしないというわけでも全くございません。
 そういう点では、今後、来年度の税制改正、再来年度の税制改正の中で、実質ここはどういうふうな累進性を持っていくかということをしっかりやってまいりますので、そうした懸念には及ばないというふうに申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 大体、高額所得者の税率を引き上げるということを盛り込んでいたのを削除したんですよ。(発言する者あり)
○中野委員長 傍聴席、静粛にお願いします。
○佐々木(憲)委員 つまり、それを棚上げして、結局先送りしちゃった、今の話はそういうことなんですね。
 低所得者のための給付つき税額控除あるいは複数税率の導入、これは何か具体化されましたでしょうか。
○古本委員 お答えします。
 今回、三党での協議に伴いまして成案を見たところによりまして、いわゆる低所得者対策として、2014年の4月に、8%引き上げ段階において、いわゆる簡素な給付をよりしっかりとやっていこうということで合意に至っております。
 とりわけ、合意文書の中では、8%への引き上げに際しての、簡素な給付措置をやっていくということがその条件であるというところまで三党で確認し合ってございますので、ぜひ、この簡素な給付の実現に向けて、御党におかれましても御理解をいただければありがたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 簡素な給付を聞いているんじゃなくて、給付つき税額控除、複数税率の導入、これは具体化するに至らなかったということでしょう。
 結局、所得税の最高税率の引き上げをやめました、相続税の問題もやめました。年末の議論に先送りする。
 では、年金法案では、低所得高齢者、障害者等への年金加算の規定、これはどうなったんでしょうか。
○長妻委員 佐々木委員にお答えをいたします。
 年金につきましては、原案では、低年金、低所得の方に一定額を上乗せする、こういうような原案を提示しておりました。これについて三党で協議をいたしまして、これはいろいろ考え方がそれぞれ異なるものがございまして非常に議論をしたところでございますけれども、結果としては、低年金、低所得の方に納付月数に応じて額を上乗せしていく、年金の法の中ではない形で着地をしたということでございます。
○佐々木(憲)委員 低所得者対策については、税制の面でも年金の面でも、これは今回は入らなかった、入っていたものが削除された。その反面、高額所得者のわずかな負担も、これも削除した。
 こうなりますと、低所得者対策は、8%にした段階で現金給付を行うという方針を出しただけでありまして、結局、所得の再分配機能、これを何とか回復しようとしていたのかどうかわかりませんけれども、そのわずかな方向さえ、これが全部なくなってしまった。私は、これはもう本当に血も涙もない修正案だと言わざるを得ない。
 次に、三党合意では、「転嫁対策については、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法・下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を追加する。」こういうことで入りましたね。
 これは、何か新しいことはあるんでしょうか。今までと変わらないんじゃないですか。
○古本委員 これは、委員も御案内のとおり、平成元年、それから平成9年と、それぞれ、3%の消費税の創設、それから5%への税率の引き上げということを過去行ってきたわけです。その際に、中小事業者を中心に、消費税の転嫁の問題について、実態として転嫁し切れていないという問題が創設当初から惹起され、そして、5%引き上げ段階でさらに大きな問題となり、言うならば、平成9年以来の今回の改革になるわけであります。
 これに際し、三党での協議以前の話として、当然に我が党の中でもこの転嫁の問題を大変議論してきたプロセスがございました。
 その中で、改めてこのたび三党で相調った中身は、優越的地位の濫用による親会社から子会社に対する、いわゆる消費税分をかぶれというようなことがないようにやっていこうということを、独禁法の改正等々も視野に入れた、法改正も含めた対応をしていこうということを具体的に盛り込んだことが大きな前進だと承知しております。
○佐々木(憲)委員 そういうことは今までも言ってきたんですよ。ところが、それが実際には転嫁ができない事態がますます広がっていて、しかも、5%から10%に税率を引き上げるとなると、その部分がさらに広がるということになるわけです。
 中央公聴会でも、例えば日本商工会議所特別顧問が意見陳述をいたしました。その際に配付した資料には、「実質的に消費税を転嫁を認めない事例」としてこういう例を挙げております。「見積もり段階で税抜き金額で提出したが、最終的な支払い時点で見積もり金額を税込み金額とされた。請求書等の表面上は消費税額の価格転嫁が出来たように見えるが、実質的には価格転嫁できていない。」あるいは、こういう指摘もあります。「消費税引上げ時に、消費税額分の原価低減を求められた。」つまり、単価を下げなさいと言われた。これらが実際の姿なんです。「円滑かつ適正な転嫁を確保する」と条文上に書いても、これは全然改善されるようなものではありません。
 下請は大変弱い立場にありますので、事実を指摘すると、親会社、元請との関係が悪くなって、法的に争うことを、そういう関係が悪くなるということを覚悟しない限り、なかなか相談しづらいんだ、こういうふうに言っているわけです。幾らこのGメンをふやしても対応できないんじゃないかと私は思うんですよ。
 日本に下請企業は何社あって、Gメンは何人つくるんですか。
○古本委員 今回の税率の引き上げが二段階にわたっているということがございます。中小事業者や、当然、農林水産事業者等々、消費税の価格転嫁について懸念が大変示されております。これはもう委員御指摘のとおりでございます。
 その際に、例えば、消費税の導入時には実施されてまいりましたけれども、9年の引き上げ時には実施できなかった表示カルテルあるいは転嫁カルテルなど、独禁法の適用除外とするために法的措置を行うということまで踏み込んで整理してまいりたいというふうに思っています。
 また、優越的地位の濫用、先ほど申し上げましたが、これまで以上に厳格に監視、取り締まりを行うということが肝要かと思います。
 例えばですが、事業者が優越的な立場を利用して、消費税の引き上げ分を、今先生がおっしゃった、値引きを一方的に要求するような話があった場合に、原価低減とおっしゃいましたが、原価改善と称してそんなような話があったならば、これはもう言語道断でありまして、さらには、対価なしに店頭店員に、メーカー側から派遣を強要されて、9年の当時は、シールの張りかえ、紳士物のソックスのシールを張りかえたという話も聞いております。例えばそういうようなことが、当然に違反となる行為であって、具体的に、これまでのガイドラインでの対応に加えて、法律による規定ができないかということをこれまで議論してまいりました。
 最後、結論でありますが、これは当然、課徴金も含めまして、違反者に対するペナルティーを強化することで抑止効果を高めたい等々を考えてございます。
 いずれにしろ、政府におかれても検討されていると思いますし、三党においても、このことはやっていこうということで合意に至っておりますので、また今後とも御党にも御指導賜りたい、このように思っております。
○佐々木(憲)委員 今の説明では、全く、この転嫁問題の解決がそれで始まるなどとは到底思えない。大体、日本に莫大な数の下請業者がいるわけです。その下請に対して、一体、Gメンを何人つくるつもりですか。その数字も答えられない。これで何か転嫁ができるかのようなことを言っても、これはもう話にならないと私は思います。
 消費税を増税しないということがやはり一番の対策ですよ。そして、今やるべきことは、消費税に頼らない、そういう財源をしっかり確保することでございます。これは先ほども指摘いたしました。
 今回の修正の内容を見ますと、結局、今まで民主党がマニフェストで掲げてきた、本当にささやかな所得再分配の機能そのものも完全に否定された、そういうようなもので、消費税増税だけが残ってしまった。こういう法案を、何かすぐ採決しなさいというような話が聞こえてきますけれども、とんでもない。これは、修正案がまだ出たばかりでありますから、したがって、この法案については、今まで政府が出してきた法案に対する質疑の時間、約100時間だといたしますと、当然、その倍ぐらいの質問をしなきゃおさまらない、そういう大改悪だと言わざるを得ない。このことを指摘して、終わります。

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