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税制(庶民増税・徴税) (消費税, 社会保障・税一体改革)

2012年06月13日 第180回 通常国会 社会保障・税特別委員会≪公聴会≫ 【683】 - 質問

社会保障・特別委員会の中央公聴会 午後

 2012年6月13日、社会保障・税特別委員会では消費税増税法案に関する中央公聴会が、午前と午後に開かれ、佐々木憲昭議員が公述人に質問しました。
 午後の公述人は、井上裕之・日本商工会議所特別顧問・税制委員長、坪井明治・全国商店街振興組合連合会理事長、加藤淳子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、山家悠紀夫・暮らしと経済研究室主宰、高橋洋一・嘉悦大学ビジネス創造学部教授です。

 佐々木議員は「20兆円もの増税・負担増で今後の経済はどうなるか」と質問したのに対して、暮らしと経済研究室」の山家悠紀夫主宰は、「消費税の5%増税だけで経済のマイナス成長は必至だ。ここに社会保障の給付減、負担増が加わると大変な状況になる」と答えました。

 また、佐々木議員が「消費税増税に反対だ。財源は別に求めるべきだ」と指摘したのに対して、全国商店街振興組合連合会の坪井明治理事長は、「同じ意見です」と賛同し、「(増税阻止のために)よろしくお願いしたい」と応じていただきました。

 また、佐々木議員が「中小企業は消費税を転嫁することが難しいのではないか」と指摘したことに対して、日本商工会議所の井上裕之特別顧問は「ご指摘の通り。世の中の景気をよくすることが一番の対策だ」と述べました。

 小泉・安部内閣のときのブレーンの一人だった高橋洋一嘉悦大学教授は「世界を見ると消費税は国または地方の一般財源だ。消費税を社会保障に充てることは、税理論、社会保障理論からいっても理解できない」と批判しました。

議事録

○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 税制改革関連二法案について審査を行います。
 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 井上公述人、坪井公述人、加藤公述人、山家公述人、高橋公述人の順に、お一人15分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、公述人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。
 それでは、まず井上公述人にお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○井上公述人(日本商工会議所特別顧問・税制委員長) 日本商工会議所の特別顧問をいたしております。また、税制委員長をしております。会社は愛知産業という、百人足らずの物づくりの中小企業を経営しております井上でございます。
 本日は、このような機会をお与えいただきましたことを、心より御礼を申し上げます。
 社会保障と税の一体改革につきまして、社会保障制度改革、消費税、消費税以外の税制抜本改革について、商工会議所としての考え方を、お手元にございます配付資料に基づきまして申し述べさせていただきます。
 お手元の資料の一ページから六ページまでが発表用の資料、七ページ以降は参考資料として、我々が各地の商工会議所にアンケート調査をした結果を記載しております。
 資料の一ページから二ページ目をごらんいただきたいと思います。
 商工会議所は、社会保障制度改革のあり方としまして、自助と共助をベースとする社会保険方式を基本として、不足する部分を公費で賄うという考え方に立っております。
 そして、何よりも、社会保障制度は持続可能なものでなくてはなりません。社会保障は国民生活や社会の安定化の基盤であり、過去3年間、広く地方を回って会員企業の意見を聞き、真剣に議論をしてまいりました。将来世代に負担を先送りせず、持続可能な社会保障制度の確立のため、今回の10%までの消費税引き上げにつきましては、苦渋の決断として、やむを得ないものと考えております。
 今回の社会保障改革は、その引き上げの範囲内で、財政バランスを維持し、持続可能性を高められるものでなくてはなりません。そのためには、社会保障給付の重点化、効率化が不可欠であります。当然ながら、徹底的な身を切る行財政改革を断行していただく必要があるかと思います。
 そして、消費税引き上げと社会保障制度改革はあくまでパッケージであり、改革の断行なくして消費税の引き上げだけを容認するものではございません。
 こうした前提に立って一体改革を進めていただきたいと考えておりますが、特に社会保障分野の改革という点に関して申し上げますと、国民負担率を明確にし、重点化、効率化の徹底を図っていただくことが何より重要であると考えております。
 例えば、医療分野の70歳から74歳の窓口負担、介護分野の利用者負担の引き上げとサービス給付の適正化などの問題は、財政規律を維持する上でも重要な改革項目であり、実現していくべきものと考えております。
 また、事業主負担に過度に依存した社会保険料体系は、もはや限界に来ております。税、社会保険料、自己負担の三つのバランス、給付と負担のバランスというものを見直し、適正なものにしていく必要があると思います。
 特に、ますます高齢化が進展する中で、社会保険料負担というものは、赤字法人といえども免除されるものではありません。六重苦とも言われる先行きの見えない厳しい経済状況下にあって、社会保険料の増大は大変深刻な足かせになっていることを御認識いただきたいと思っております。
 そうした意味で、制度の持続可能性を高め、保険料の上昇に歯どめをかけるためにも、受益者負担、自己負担のあり方を見直す改革を行っていただきたいと考えております。
 社会保障制度改革について残された課題についてですが、商工会議所は、社会保障制度改革は自助と共助による社会保険方式を基本とすべきと主張をしております。最低保障年金を含む新年金制度などについては、詳細が不明なこともあって、今後、国民的な議論の中で、現行制度と比べてどのようなメリットとデメリットがあるのか、十分議論して結果を得るべきと考えております。
 続きまして、消費税の考え方について御説明をいたします。
 資料の三ページ目をごらんいただきたいと思います。
 消費税引き上げの際には、今から申し述べる三点について対応が不可欠でありますので、しっかりと対応していただきたいと思います。
 第一に、消費税引き上げの最大の懸念事項は、円滑な価格転嫁でございます。
 今回の消費税引き上げでは、デフレ経済下での引き上げの決定であること、また、1年半という短期間で二回の引き上げが行われることが、過去の引き上げ時と全く異なっておると言えます。中小企業の消費税の価格転嫁は、過去の引き上げ時に比べ、相当深刻な問題であることをしっかりと認識して、万全な価格転嫁対策をとっていただくことが不可欠であります。円滑な価格転嫁を実現するための対策につきましては、後ほど説明をさせていただきます。
 続きまして、二点目は、消費税引き上げ時には、過去の例を見ましても、景気の下振れが発生いたします。デフレ脱却や景気、経済成長、中小企業経営を最大限阻害しないような対策を打っていただく必要があると思います。
 デフレ脱却を確実に実現するとともに、消費税引き上げに伴う景気の下振れをカバーできる相当規模の景気経済対策を実現していただきたく思います。例えば、購入価格が高額であり、かつ経済への波及効果の高い住宅などへの配慮は不可欠であるというふうに考えております。
 三点目として、消費税引き上げの影響を大きく受ける中小企業の事務負担をこれ以上増加させないためにも、単一税率を堅持し、免税点制度や簡易課税制度についても堅持をしていただくことが絶対に必要であると思います。
 複数税率は、軽減税率の対象品目の選定や税額計算等で大きな混乱を招きます。複数税率を導入しているEU諸国などは、混乱の大きさから、見直しに向けた動きが出ているということを聞いております。
 我々は、逆進性対策につきましても、社会保障と税の共通番号制度を早期に導入し、真に救済すべき者を特定して、逆進性対策が必要な場合には、きめ細かな給付支援で対応すべきと考えております。納税番号制度の導入については、商工会議所は賛成でございます。マイナンバーは、可能な限り正確な所得捕捉ができる制度としていただく必要があると思います。
 また、免税点制度や簡易課税制度は、中小・小規模事業者の事務負担軽減のために導入されたものでありますので、これは堅持していただきたいと思います。
 四ページ目をごらんいただきたいと思います。
 価格転嫁の実態につきましては、昨年、中小企業関係団体が調査を行いました。その結果、小規模零細企業の5割以上の事業者が、前回の消費税引き上げ時、消費税を価格転嫁できなかったということを回答しております。そして、今後、消費税が引き上げられた場合には、6割を超える事業者が価格に転嫁できないと見込んでいる結果となりました。小規模零細事業者になればなるほど、価格転嫁はますます厳しい状態となっております。
 五ページ目をごらんいただきたいと思います。
 円滑な価格転嫁の実現のための対策について申し上げます。
 価格転嫁対策につきましては、まず政府が、消費税は価格に転嫁すべきものであるということを、国民や事業者、特に取引上強い立場にある者に対して、明確なメッセージとして発信する必要がございます。例えば、3%引き上げの際には、きちんと3%分の消費税が価格に転嫁されることを広く国民や事業者に理解していただけるよう、過去の引き上げ時を圧倒的に超える徹底した広報をしていただくことが極めて重要であると考えております。その取り組みなくして価格転嫁の問題は解決いたしません。
 政府の価格転嫁推進本部におきましても、消費税は価格に転嫁されるものであることを明確に位置づけ、その上で、どういう仕組みを講じればスムーズに価格転嫁できるのか、しっかりと考え、実行していただきたいと思います。当然ながら、過去に行った対策は全て行っていただく必要がございます。また、それ以外にも効果的な対策があれば、あらゆる手だてを講じ、万全を期していただきたいと思います。
 価格転嫁問題への対応は、引き上げ時の一過性の対応で終わっては意味がございません。継続的に取り組んでいただくことが不可欠であると思います。
 時間の関係もありますので、後ほど確認いただければと思いますが、参考資料において具体的な中小企業の声を紹介させていただいております。
 その中で、一点、よく御認識いただきたい意見がございます。下請の中小企業は、下請法で相手先を訴えるにも、法的に争うことを覚悟しない限り、なかなか第三者に相談しづらいといった声があることであります。下請企業が発注先を訴えた場合には、発注先の企業だけではなくて、その他の企業との取引まで全てがなくなる覚悟をしなくてはいけないことをよく御認識いただいた上で、対応を考えていただく必要があろうかと思います。
 こういった、なかなか表に出てこない水面下の事例をどうすくい上げて対処していくのかにつきましても、しっかりと検討をしていただきたいと思います。
 資料の六ページ目をごらんいただきたいと思います。
 消費税以外の税制抜本改革について意見を申し述べます。
 まず、日本再生のために、経済成長に軸足を置いた対策が必要である。そのためには、企業の活力強化が不可欠であります。そして、成長を確保するためには、超円高の是正、電力問題など、経済や社会基盤の再構築が必要であります。地域経済や雇用を支えている中小企業や中堅企業は、投資や消費などに大きな貢献をしております。地域の再生なくして日本経済の再生は不可能であります。こういった基本的な考えをもとに、それぞれの税目について意見を申し上げます。
 まず、法人課税につきましては、法人税は、国際競争力の観点から、競争相手国であるアジア諸国並み、つまり20%台に引き下げる必要があります。中小法人の軽減税率は、最大の競争相手国の一つである韓国では既に11%であり、適用金額も我が国の二倍程度になっております。軽減税率は速やかに11%以下に引き下げるとともに、適用所得金額800万円を大幅拡充または撤廃する必要があると思います。
 企業は雇用の源泉であり、企業の数をふやすためにも、創業後5年間は法人税、社会保険料を減免するなど、創業・ベンチャー支援税制を拡充すべきと考えております。
 また、地域経済や雇用を大きく支えている中堅企業が疲弊しておりますので、こうした企業の成長を税制面からも後押しすべきであります。留保金課税などは企業の成長を阻害しているので、中小企業と同様に適用除外としていただく必要があろうかと思います。
 続いて、資産課税について申し上げます。
 中小企業の事業承継は喫緊の課題であります。事業承継税制が導入されましたが、利用しにくいとの多くの声が寄せられております。3年でたったの300件しか使われておりません。せっかくの制度ですので、さらなる利用促進のために、平成27年度の資産課税の抜本的な改革を待たずに、納税猶予制度の適用要件を緩和するなど、不可欠であろうかと考えております。
 また、相続税の基礎控除の引き下げについては、事業承継や事業の継続に悪影響を及ぼすとの意見が寄せられておりますので、見直しをぜひともしていただきたいと思います。
 さらに、高齢者の資産を次世代に移転し、内需を喚起する観点からも、贈与税の非課税枠を大幅に、例えば五倍とか十倍に拡充すべきであろうと思います。
 個人所得課税につきましては、課税強化は対日投資や海外の人材確保の障害となるだけではなくて、我が国の人材、資産の海外流出や消費マインドの悪化につながるために、慎重な対応が必要であると考えます。
 消費税以外の消費課税は、消費税と二重課税の解消として、印紙税の廃止や、揮発油税、自動車税等、整理していただく必要があると思います。
 以上、商工会議所の考え方を申し上げましたが、社会保障と税の一体改革として、全体をパッケージとした改革を進めていただく必要があることを重ねて申し上げておきます。
 特に、持続可能な社会保障制度の確立には、先送りになっている社会保障給付の重点化、効率化などが不可欠と考えておりますので、我々の意見も踏まえて改革を進めていただきたいと思います。
 今回の一体改革は、中小企業などに極めて影響が大きい改革であります。今後も引き続き商工会議所の意見をお聞きいただき、政策に反映していただきますよう、ぜひお願いを申し上げまして、私の説明を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
 次に、坪井公述人にお願いいたします。
○坪井公述人(全国商店街振興組合連合会理事長) ただいま御紹介を賜りました全国商店街振興組合連合会の理事長の坪井明治でございます。
 先生方におかれましては、平素より商店街及び中小小売商業者に対しまして各種御支援を賜り、厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 また、このたびは、私ども商店街及び中小小売商業者の声を聞いていただけるこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございました。
 本日は、厳しい運営が続いております商店街及び中小小売商業者の立場より意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
 既に諸先生方御承知とは存じますが、現在の商店街の状況でございますが、三・一一東日本大震災以前からの長引くデフレによる不況に加えまして、急激な円高、震災に加えた福島原発事故、ギリシャを発端とする欧州財政不安など、国内外のさまざまな情勢の影響と、大規模企業の大量仕入れによる低価格販売、商店街及び中小小売店においても、後継者不足、多様に変化する消費者志向に対する対応のおくれなどもあり、シャッター通りとやゆされております。
 中小企業庁の平成21年度商店街実態調査によりますと、全国の商店街数は1万4467商店街となっておりますが、その中で、繁栄していると回答したのはわずか1%であります。逆に、衰退していると回答したのが44・2%になっております。約35年前の昭和50年に行われました商店街実態調査では、繁栄していると回答したのは32・2%、衰退していると回答したのは14・9%でありました。30%の商店街が繁栄しているから衰退しているへと移ったことになるわけでございます。これらの調査からも明らかなように、商店街はまさに存続の危機に面しているわけでございます。
 そのような中にあっても、私ども商店街は、公共的な役割、機能を担うべく日々懸命に努めてまいっておるわけでございますが、さきの東日本大震災においても、行政、ボランティア等の支援が届かない震災直後の3日か4日でございますが、頭に懐中電灯をくくりつけて営業し、我々商店街が地域住民の生活基盤を支え、心のよりどころとして精神的安定に少なからず寄与したことを多くの被災地住民からの声でおわかりいただけたと思うわけでございます。悲しむべき悲惨な震災ではありましたが、憎むべきことではございましたが、商店街は地域コミュニティーの担い手であるとの認識を改めて多くの国民の方々にいただいたと強く感じているわけでございます。
 また、我々商店街は、あすの日本を支えるために、歴史、伝統、文化を継承し、次代を担う人々に地域のきずなとしてつないでいくという役目も担っていると自負をいたしております。地域のお祭り、イベントなどの主催者としての実行部隊となっているのが、我々、まさしく商店街であるかと存じます。
 さて、全国商店街振興組合連合会といたしましては、そもそも、現在の我が国経済状況を考えれば、消費税率の安易な引き上げはいかがなものかと考えております。
 消費税率のアップということで、消費マインドを冷え込ませ、低所得者層のさらなる購買意欲を抑制するのではないかと、駆け込み需要の後の反動も大きいのではないかと大いに懸念をいたしております。
 また一方、中小小売商業者は、競争力の観点から、増税分を価格転嫁できない場合が非常に多く、自己負担せざるを得ない苦しい立場に立たされるケースが大いにあるわけでございます。
 例えば、私は商いが花屋でございまして、顔を見ただけでは花屋とは恐らく気がつかれない、何かごつい商売をというふうに思われると思いますが、もう本当に、売っておるものは美しいものでございますが、まあ私も心が大変美しい方でございまして、ありのままをきょうはお話をしなくちゃいけないなというふうに思うんです。
 私どもの店へ、店頭へお客様がお見えになりまして、大体、先生方もよく御存じと思いますが、ギフトで、おい、1万円の花を送っておいてくれ、こういうようなお話がよくあるわけでございますが、その折に、会計のところで、1万500円になりますが頂戴したいと存じます、1万円でやっておいてくれ、こういうようなお話でございまして、いや、この5%は要するに消費税のお預かり分でございますからひとつ御理解いただきたいといって御説明はさせていただくんですが、いやいや、いかぬ、1万円で、そんなことを言うんだったら、9500円でつくって持っていってくれ、これが大体常識みたいなものでございまして、それはちょっといかがなものか。
 もう少し、政府そのものも、消費税というものの広報をきちっとしていただければありがたいななんというふうに思うわけでございまして、9500円でつくって持っていけなんというような話ではないな、ちょっとおまえのところ助かるがや、こういうような話でございますけれども、それはないわけでございまして、そこらあたりもきちっと国民に理解をしていただけるように、もし上げるようなことでございましたら、きちっと理解をしていただけるようにしていただければ非常にありがたいななんというふうに思っております。
 また、大企業による、立場の弱い中小小売商業者に対しましては、コスト削減の名目に、値上げを拒む優越的地位の濫用に対する懸念も拭えません。
 逆進性対策といたしましては、軽減税率の導入が検討項目に上がっているようでございますが、現況においても、経営規模より、私ども、専属の経理専門の従業員を配置しているわけではございません。中小小売店はほとんどそういう方がおみえにならないということでございます。仕入れ税額控除の計算や請求書の保存など、納税事務に係る事務的作業はかなりの負担になってきておるわけでございます。軽減税率の導入に伴いまして、インボイス方式の採用等になれば、さらなる事務負担となるわけでございます。
 また、軽減対象品目の線引きにつきましては、複雑化することは必須であるわけでございます。対象品目の線引きが複雑化するということは、当然、それに比して事務的作業も複雑化することになり、同時に事務的作業も増大するということになると考えられるわけでございまして、賛成いたしかねます。よろしくお願いを申し上げたいと存じます。
 消費税導入時に中小零細企業の事務的負担を軽減するために設けられました免税点制度も、適用上限が3千万から1千万に下げられてしまったということでございます。また、簡易課税制度も5億円から5千万円以下に下げられておりまして、これ以上の事務的作業の負担が増大することにより本来の販売活動に支障が出ないように、適用範囲の引き上げを望みたいと思います。
 しかしながら、急速な少子高齢化が進んでいる現状におきまして、充実した社会保障制度を持続するためには、制度自体の効率化と制度を支える財源の問題について、我々商店街といたしましても当然認識をいたしているわけでございます。
 地域の子供たちの成長を見守る機会が多い我々商店街は、未来ある我々の子供たち、そしてその子孫のためにも、いつかは財政を健全化し、積み残しのない社会へと進展させなければならないと真剣に考えているところでございます。
 仮に、国民の総意といたしまして消費税率の引き上げがなされるに至った場合、地域コミュニティーの担い手であり、地域の雇用、防犯を初め、地域社会として、地域基盤を底支えしている商店街に対する支援が必要であるとお考えいただけるのであれば、先般の消費税導入時に、商店街活性化を図るべく、支援策といたしまして設置をいただきました商店街振興基金と同様な、国民に対する消費税の認知、転嫁についての普及及び商店街の活性化にも寄与する新たな基金の創設を検討いただきたいと考えているわけでございます。
 平成21年、行政刷新会議における事業仕分けにより、全額国庫返納とされてしまいました。これほど残念なことはございませんでした。
 また、人口の減少、少子高齢化、行政の財政負担の増加に鑑み、コンパクトなまちづくりが推進される中で、6月7日に行われました各省版仕分けにより、約29億円の中心市街地活性化事業が廃止との決定が出されたわけでございます。加えて、大規模小売店舗に対する立地規制の緩和が内閣府及び国土交通省にて検討されていることは大変遺憾であります。
 地域コミュニティーを担う商店街にとって、中心市街地の活性化、コンパクトシティーの実現を目指すためには、いずれも必要不可欠でありまして、ぜひとも存続を強くお願いを申し上げる次第でございます。
 商店街というのは小さな店舗の集合でありまして、小さな規模であるがゆえに短期での効果が出がたいものであることを、諸先生方にぜひとも御理解いただきたくお願いを申し上げる次第でございます。地域を徐々に醸成させていくような、長い期間における商店街及び地域活性化支援ができるような御支援のほどをお願い申し上げる次第でございます。
 最後になりましたが、何とぞ、私どもの、土俵際で何とか踏ん張っている商店街及び中小小売商業者に一層の御理解をいただきたくお願いを申し上げまして、本日の説明にかえさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤公述人にお願いいたします。
○加藤公述人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 御紹介ありがとうございました。東京大学の加藤淳子です。
 私は、税をめぐる、租税政策をめぐる政治の研究者です。今回の法案に関しまして幾つか大きな問題がありますので、それに関しまして、私の専門の立場から、東京大学出版会から出版されております日本の税制改革の過程を追った研究、そして諸外国の租税制度と福祉国家の関係を分析した研究、これらを中心に意見を述べさせていただきたいと思います。こちらが中心なんですが、ほかの研究については、資料の最後のページにまとめてあります。
 今回の改革におきましても、例えば、増税の前に歳出削減を優先すべきであるとか、消費税には逆進性があるとか、さまざまな問題がありますが、これらの問題というのは、実は、かなり古い問題でもあります。
 資料の三ページ目に、表1、2ということで、消費税が導入される前の二回の同じような大型間接税、反対されて失敗した大平政権下の一般消費税提案と中曽根政権下の売上税提案をこのようにまとめてあります。
 今回の、歳出削減が先ではないか、そういう考え方というのは、1978年から79年の大平内閣のもとでの一般消費税の提案を反対でブロックした、そういった理由であります。そのときには、やはり歳出削減が先ということで、これが1980年代前半のいわゆる行財政改革に結びつくわけですが、このときにも、歳出削減のみでは赤字国債の発行がとめられないということで、この後、売上税提案、そして最後に消費税の導入というふうに結びつくわけです。
 このように消費税が導入されたわけなんですが、消費税の導入の際にも、やはり、安易に増税をしてしまうと放漫な財政を招くという考え方は非常に強く、当初、5%で税率が提案されたんですが、これが3%に圧縮されます。この経緯を知りませんと、1997年に消費税率上げということで3%から5%になったというふうに考えられるわけですが、この経緯を考えれば、97年の消費税率上げというのは、当初の提案に戻したということになります。
 この過程を見てみますと、増税幅を縮めるというような考え方というのは、日本の税制改革では非常に強かった。それにもかかわらず、増税も行われないまま、歳出削減が効果的に行われないまま、皆様御存じのように、国債を発行し続け、今日のような赤字財政になってしまったわけです。
 その理由を政治的に考えてみますと、増税が回避されると同時に歳出削減も回避されてしまったのではないか。増税への反対というのは、この間、世論では一貫して強かったので、まず増税を回避する、そうすると、世論の歳出削減要求というのも弱まるわけで、歳出削減も先延ばしにされる。この繰り返しで、現在、税収が落ち込んでしまいましたので、多少の歳出削減では財政を安定させられない、こういう状況になってしまいました。
 政治過程を見てみますと、やはり、歳出削減にしましても増税にしましても、利害の調整を伴う政治的な問題ですから、どちらかというのではなくて、片方ができなければもう片方もできない、そういうことになっているのではないかと思います。
 今回の改革で、しかしながら、増税が必要だと思っても、逆進性を持つ消費税で増税を行うことに対しては、やはり所得分配の平等の立場から批判があります。これは大変もっともです。
 消費税というのは、皆さんも御存じのように、ほかの国でも付加価値税という類型で多く使われておりますので、それらの国と比較することで、この問題を少し考えていただきたいと思います。
 まず、資料の一ページ目、二ページ目を見てください。経済協力開発機構、OECD18カ国の税収構造と総課税負担をまとめてあります。総課税負担の高い順に並べてあります。税収には少しばらつきがありますので、近年、2006年のと2009年のを、一ページ目、二ページ目ということでお入れしてあります。国の横の括弧の中に書かれているのが、付加価値税の導入年です。
 総課税負担の高い北欧諸国が上位に位置して、そして、所得課税に加えて早くから付加価値税を導入し、それが主力になっている、消費課税で多くの税収を上げているということがおわかりになると思います。
 一方、下の方を見てください。下位に位置する北米諸国あるいはオーストラリアは、累進的所得課税に依存する度合いが非常に高くなっており、付加価値税の導入年も遅くなっています。米国に至っては、いまだに導入していない。OECDのメンバーでは珍しい国ということになっています。
 こちらは歳入面なんですが、歳出面に関して考えますと、北欧諸国というのは、定率的な給付と弱者への手厚い給付をする成熟した福祉国家の典型です。ところが、下の方に位置するアメリカ合衆国、カナダなどは、貧困層に限定した給付で公共支出を抑制している福祉国家の典型というふうに知られています。
 これらの諸国の傾向を見る限り、なぜか累進的所得課税が所得分配の平等につながらず、成熟した福祉国家が逆進的と言われる消費課税にかなり税収を依存している傾向が明らかに見受けられます。
 政治学でも、長らく、福祉国家というと累進的所得課税というふうに税制でも結びつける考え方が強かったのですが、近年になりまして、意外にこういった成熟した福祉国家ほど逆進性を持つ課税に税収を依存していることが知られるようになりました。これらの国では、実は所得課税も、広い課税ベースでなるべく定率的に課す傾向を持っていることも知られています。
 私のこちらの研究は、まず、OECD18カ国の27年間のパネルデータによる数量分析を行い、そして、ここにリストされている八カ国を訪問して行った事例研究に基づいています。そして、これらの傾向を見つけるとともに、それを生み出した政治の論理を明らかにしています。
 これはどういうことかといいますと、富裕層に重く貧困層に軽い累進的課税と限定的給付、これは非常に効率的な所得再分配ですが、これには大多数の平均レベルの有権者というのはかかわりを持たない。そうすると、積極的な支持を与えない。結果として、政策として支持されないので、所得分配の平等も低下してしまう。
 一方で、市民の権利として普遍主義的な給付を行い、そして、平均的な所得層を含む、多数の有権者を含むように福祉制度をつくりますと、これは多数の有権者の関心事になりますから、積極的な支持を得られます。そうした給付を行うには、どうしても高いレベルの公共支出が必要になりまして、その税収を上げるために付加価値税が重要な役割を担ってきた、そういうような傾向が見られます。
 どの国の政治においても、財政が不安定になると、まず支出が高いところから削りましょうということになる。真っ先に標的になるのが社会保障支出ということになります。そして、財政が安定していればその圧力は弱まりますから、結果として、所得分配の平等が進むということになります。
 このやり方は、スウェーデンのように社会民主主義政権が長く続いた国ほど意図的に行っている。逆進性を持つ課税でなるべく税収を上げ、歳出面で所得の再分配を図る、そういうような傾向が見られることが知られています。
 実は、この研究をしたときも、私も、なぜ、税制も累進的にして、そして歳出でも所得再分配を図れないのか、非常に疑問に思いました。そして、わかったことというのは、民主主義において、ある程度まで支出レベルを上げないと福祉国家に対して支持を得られないのであれば、やはり、税収を上げる課税でなければいけないわけです。ところが、累進性を持つ課税で税収を上げることができる課税というのは存在しない。正確に言いますと、理論的には存在しますけれども、現実に用いられるには至っていないということになります。
 そして、もちろん、こういった社会民主主義政権が長く続いた西ヨーロッパ諸国と日本は、全く違う条件も持っておりますが、租税政策にかかわる制約というのは同じですから、北ヨーロッパ諸国のようになるかというと、そういうわけでもなくて、何らかの形で再分配を図ろうというときには、そういった政策の制約がかかっているということで、これらの国の経験に学べるということになると思います。
 この原則から考えますと、付加価値税制度においても、一定の税率で税収を上げて歳出面で再分配をした方がいいということになる。ところが、皆さんきっと疑問に思われるのは、では、西ヨーロッパ諸国ではなぜ今議論されているような軽減税率が用いられているかということです。
 先に簡単に答えを言ってしまいますと、これらの国では、一旦導入した軽減税率などの例外が、政治の論理により、排除したくてもできなくなってしまったからです。これもまた説明していきたいと思います。
 軽減税率などの例外的措置というのは、かなりの税収を失うということはございます。ところが、これは大変な徴税コストも伴います。事業者が大変なだけではなく、税務当局がこの徴税をするのにコストが増大します。そして、当然のことながら、軽減税率などで失われた税収、そして徴税コストも全て税収で賄われますから、これをどこかで課税して得なければなりません。
 スウェーデン、デンマーク、イギリス、フランスなど西ヨーロッパ諸国で、付加価値税の導入後10年で標準税率がほぼ1・5倍、そして20年で、ほぼ二倍前後、二倍を超えてしまった、2・5倍ぐらいになったスウェーデンのような国もあります。これは、急速に現在の高い水準まで達したわけです。ですから、日本で反対があるときにも、このように消費税率を上げたら、どんどん上げていってしまうのではないか、そういうような話も出てくるわけです。
 この急速な税率の引き上げは、当時、多くの租税の専門家の関心を引きました。私は政治過程に注目するので、これは、軽減税率や例外による税収の減少や徴税コストの増大で失われた税収を補うために標準税率の方が押し上げられていって、それが政治的に耐え切れなくなったところで、ある水準に落ちついたのではないか、そういう可能性も考えていました。
 これは、そのときには西ヨーロッパ諸国の例しかなかったわけなんですが、最近のニュージーランドの事例を見ますと、この可能性はやはりあるのではないかというふうに私は考えております。
 ニュージーランドというのは、皆さん、またこちらのグラフを見ていただければわかるんですが、1986年に、ヨーロッパの経験に既に学べるタイミングになっていたので、世界で最も広い課税ベースで、軽減税率も持たない、そういったGSTと呼ばれる付加価値税を10%で導入しました。その3年後に12・5%に税率を引き上げたんですが、その後、2010年に15%に引き上げるまで、この12・5%の税率を維持しました。
 西ヨーロッパ諸国と非常に単純な比較をしてしまいますと、西ヨーロッパ諸国の方は、大体10%から始めて15%の水準に達するのにほぼ10年ぐらい。ところが、ニュージーランドは24年です。やはり、いろいろな条件を考えなければいけないと思います。西ヨーロッパの方が成熟した福祉国家で、歳出のレベルも高い。そういうことを加味しましても、やはりこういった課税ベースの広い付加価値税の方が標準税率を抑制できる、そういう可能性はあると私は考えております。
 ヨーロッパにおいて軽減税率が低所得者への配慮というふうにされているので皆さん軽減税率に注目するわけですが、それは、現時点での高い標準税率を前提にして、そのもとで全ての商品に標準税率を掛けた場合と軽減税率がある場合を比較した場合、その場合には、それを比較すれば、確かに逆進性を緩和している可能性があると思います。そういうデータも出ています。ところが、これは当然のことながら、軽減税率を適用しなくて標準税率を抑制した場合、さらには、軽減税率やその徴税コストによって失われた税収でできた歳出面での再分配は考慮できないから、これは考慮されておりません。
 こういうような形で西ヨーロッパ諸国がもとに戻せなくなってしまったということを学んで、ニュージーランドに倣ってなるべく税率を抑制していくという道を日本はまずたどっていくのがよいのではないかというふうに考えます。それが低所得者にとっても、再分配が実現すれば最も利益となります。
 最後に、増税のタイミングについていろいろ議論がありますが、これは売上税、1980年代の半ばにありました提案でも、プラザ合意後の円高が理由にされて回避されるなど、過去にも例があります。
 しかしながら、こうして景気を考えながら今日まで来て、今日の状況は、過去のどの時点と比較しても厳しいものとなっています。そして、日本の財政状況というのは非常に厳しい状況で、これは所得分配も景気への配慮も日本という器があってのお話なので、これが壊れてしまいますと全く話にならない。ですから、器が壊れるお話というのは、経済的な、社会的な影響、そして長期的な影響、どれをとっても格段にレベルが違うものになってしまうわけです。
 そして、日本の慢性的な財政赤字というのは40年の歴史を持つので、私たちもなれつつありますが、今ほど日本の財政赤字に海外から厳しい目を向けられていることはありません。これは、実は、日本が直面する初めての深刻な状況であるというふうに言えると思います。そして、こういうような懸案が起こっているということは、どういうふうに日本、日本政府が見られるかということで市場での評判というのは決まってしまいますので、国際政治経済的な観点からいいますと非常に危険な状態と言えると思います。
 そして、今まで、歳出削減が先、景気の回復が先、そして所得分配が先というようないろいろな対立があったわけなんですが、今回のような危機的な状況ですと全てをやらなければならないということで、こういった対立自体が意味をなさなくなっているということは、やはり改革の非常にいい機会ではないかと思います。今回の改革は一回目ということで、これから、次から次へ行っていただきたいというふうに思っています。
 このように危機的な状況ということで、国会では危機感を持って審議を進めていただきたい。政治の立場からいきますと、増税に対して、世論が、賛成が反対を上回るということは非常に考えにくい。ですから、民意の尊重は大切なんですが、やはり国会の側からも政治の側からも民意に働きかける、世論に働きかける、そして世論の側も、取られたらおしまいというかなり受け身の論理が強かったんですが、それを変えていく、そして長い目で政治を監視し、その世論の監視のもとで政治の方も応えていくというような、今までの日本のやり方と異なるような違うサイクルが今回の改革をきっかけに生まれていくことで問題の解決が初めて可能になるのではないかというふうに考えております。
 ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
 次に、山家公述人にお願いいたします。
○山家公述人(暮らしと経済研究室主宰) ただいま御紹介いただきました山家です。
 私からは、消費税に絞ってお話しいたします。
 お手元に縦の三枚の資料があるかと思います。それをごらんになりながら聞いていただきたいと思います。
 私は、消費税の引き上げは行うべきではないというふうに考えています。
 大きな理由が二つありまして、一つは、ただでさえ厳しい生活を強いられている人々の暮らしを一層厳しいものにするということであります。被災地の人々については申すまでもありません。これは、皆さん方の方がその厳しい生活の状況をよく御存じかと思います。
 それから、二つ目に、収入のない人々あるいは低所得の人々がたくさんこの日本にいらっしゃるということです。
 例えば、数字を挙げましたが、今、失業者はおよそ300万人です。あるいは、生活保護を受けている世帯は140万世帯。さらには、1年間働いても年収200万の収入に達しないという人が千万人を超えております。政府のアンケート調査によりましても、生活が苦しいと訴える世帯の比率はおよそ60%、母子世帯だけに限って言いますと85%が苦しいというふうに答えていらっしゃいます。
 今の5%の消費税のもとでもそういう生活で、何とか支出をやりくりして生活している、そういう人々に対してさらに5%の負担が加わる、4%近く物価が上がるということですから、どうやって生活していったらいいんだろうかと、本当に大変なことになると思います。収入の方がそれに応じて上がる保証は全くありません。むしろ、これからのことを考えると下がるかもしれない。非常に厳しい状況になると思います。
 それから、三つ目。苦しい人々の中に、中小零細企業、その経営者があるかと思います。
 消費税と言いますが、これはヨーロッパ諸国と同じように、日本の場合も付加価値税です。消費税は、消費者に転嫁して、消費者からお金を預かって税金を納めるというふうに説明されておりますけれども、先ほどからのお話にもありましたように、転嫁ができるという保証はありません。あるいは転嫁してもしなくても必ずかかる。付加価値にかかるわけです。
 付加価値というのは、簡単な解説、要点だけ書きましたけれども、売り上げから仕入れその他の経費を差し引いたものであります。付加価値がどう分配されているかを見ますと、大部分は、人件費、雇っている人の人件費に消えていきます。それから、お金を借りていれば金利の支払い、家とか土地を借りていればその地代とか家賃の支払い、そして残ったものが、その営業をやっている人の利益になるわけです。
 日本の企業の8割近く、70%以上は赤字企業です。付加価値は当然あります。そこから人件費を払い、金利を払い、家賃等を払うと何も残らない。利益がゼロないしマイナスという企業が大半を占めているわけです。利益ゼロないしマイナスですと、法人税はかかりません。負担能力がないからかからないわけです。しかし、付加価値税である消費税は必ずかかってくる。どこから払うか。払うお金はどこにもないわけです。その結果、一番延滞の多い税というふうになっています。
 また、繰り返しますが、5%のもとでもこれですから、10%になりますとますます払えない企業が多くなってくる。大変なことになると思います。こういう苦しい立場の人々の立場に立って、今消費税を上げることがそういう人々の生活にどういう影響を及ぼすか、そのことをまず第一に考えて、この税の問題を考えていただきたいと思います。
 それから、上げるべきではないという二つ目の理由は、非常に景気を悪くしてしまうという税であることです。
 97年の経験で見ますと、消費税が上がりますと、その7割近くが物価に転嫁されています。今回5%、合わせて5%の引き上げですから、3・5%ぐらいは消費者物価あるいは消費支出のデフレーターが上がることになります。そうすると、その分、ほかの条件を一定としますと、実質消費が3・5%マイナス、そういうことになります。これは単純な、計算上の問題です。消費支出が3・5%下がりますと、これも単純な、GDPのウエート、6割が消費支出ですから、GDPが2・1%マイナスになる。何もしない状態に比べて2・1%GDPが下がるということになります。
 21世紀に入ってからの日本の経済成長率を振り返ってみますと、2001年から11年までの平均成長率は0・6%です。あるいは小泉内閣の中ごろから終わりにかけて、2003年から7年ですか、史上最長の景気の回復という時期がありました。そのときの5年間の平均成長率を見ますと1・8%です。ですから、21世紀において一番景気がよかった時期の成長率と比べても、今回の消費税引き上げによるマイナス幅の方が大きい。ということは、マイナス成長に陥る可能性が極めて大ということになります。
 そうしますと、先ほど申しました、生活の苦しい人々の生活は一段と厳しくなる。商売は物が売れなくなり、あるいは、所得はさらに減り、失業者もさらにふえるということが予想されるわけです。そういう状況のときに消費税を引き上げていいものかどうか、じっくりとお考えいただきたいと思います。
 それから、二つ目に申し上げたいことは、消費税の引き上げを行わなきゃいけないという必然性はどこにもないということです。
 よく、消費税の引き上げに関して、財政がこういう状態だから引き上げなきゃいけないということが言われます。あるいは、社会保障にお金がかかる、この制度を維持する、あるいはもうちょっといいものにするためには消費税を引き上げなきゃいけないということが言われています。ところが、この二つの理由というのは、そのために財源が必要であるということの説明にはなります。あるいは、増税が必要であるということの説明にもなるかと思います。ただし、その増税あるいは財源が消費税でなければならないという説明には少しもなっていないということです。
 財源とか増税が必要なときに、先ほど言いましたように、いろいろ問題の多い税である消費税の引き上げをなぜ考えなきゃいけないのか、全く理解に苦しむところです。
 財源といいますと、幾つか財源があります。
 例えば、景気が本格的によくなれば10兆円ぐらいの税収が上がります。リーマン・ショック前、2007年でしたか、一般会計の税収は51兆円ありました。今年度予算は42兆円。要するに、景気が悪くなったために9兆円前後税収が減っているわけです。本格的に景気をよくすればその程度の税収増は見込める。要するに、消費税を4%上げたに等しい、それだけの税収増があるわけであります。
 消費税を引き上げて景気を悪くして税収を落とすか、あるいは、引き上げないで景気をよくする政策をいろいろと打つことによって税収をふやすか、どっちの選択かということだと、選ぶべきは決まってくると思います。
 それから、財源としては、もう一つ、今支出している政府の支出の中で不急不要のものを削って生み出すという方法があります。
 全く議論されていないので私は不思議なんですが、例えば、5兆円近くの軍事費が今の日本に果たして要るのか、あるいは憲法上そういう軍事費を使っていいのかという問題があります。あるいは、もうちょっと譲歩しましても、今、最高級の戦闘機をたくさん買う必要があるのかという問題があります。
 少なくとも、そういう問題の比較で、社会保障に必要なお金、あるいは財政赤字を削減させるために必要なお金、それとどちらが大事かという検討ぐらいは行われてもいいんじゃないかと思います。そういう財源調達の方法。
 それから、もう一つ、税金という意味では、いろいろな増税の余地があります。
 代表的なものは、不公平税制をまず是正すること。証券投資優遇税制という税制があります。本来は去年の夏に期限が来るはずでした。配当とか株式売買の所得には所得税、住民税合わせて10%でよろしいという大変な不公平税制。このために、年収が1億を超えるとどんどん税負担率が下がってくる。100億稼ぐ人は年収2千万ぐらいの人と同じ税負担でよろしいという不公平税制になっています。これを去年の6月でしたか、震災後、お金が必要なときに延長しました。全く不可解なことで、すぐにでも廃止して税収を生み出すべきだと思います。
 それから二番目に、法人税の増税という道もあります。今回法人税も減税が決まりましたが、これは全く不必要な減税ではないかと思うわけです。
 二ページに表をつけましたけれども、まず、法人税を減税する理由がありません。日本の法人企業の税負担は高いということが理由とされておりますが、二ページの上に表をつけましたとおり、社会保険料の負担と税の負担を合わせてみますと、日本は、ドイツ、フランスといったヨーロッパ諸国に比べて法人の負担は極めて軽いという実績が出ています。これは財務省の委託調査です。そういう結果があるわけです。それを下げる必要はないだろう。
 それから、下げていいことがあるか。国際競争力が強くなるというふうに言われます。しかし、それはほとんど期待できない。
 三ページに表をつけましたけれども、これは財務省の統計からつくった表です。
 1997年度、これまで賃金が上がり続けた最後の年でありますが、97年度と2010年度、最近の年を比べてみますと、大企業の売上高はほとんど変わっていません。国内の景気はずっと悪い状態なので、売り上げはふえない。ところが、企業は、人件費を54兆から42兆に、12兆円この間に減らしています。その分が経常利益の増加につながっています。97年度15兆であったのが、2010年度、26兆近くになっています。それにもかかわらず、法人税は、下から二つ目ですが、全く変わっていない。要するに、負担が極めて軽くなっている、まだまだ負担能力はあると見られるわけです。
 それから、こういう格好で利益がふえ負担が減りましたので、配当をふやしても企業の内部留保はふえた。その結果がどういうことになっているかというと、下の表、付表二の一番下であります。利益剰余金、毎年の利益の剰余金を積み立てて合計しますと、119兆円から230兆円に、この13年間で110兆円もふえています。これだけふえた利益剰余金がどこへ向かっているかといいますと、上の段の一番下、証券等への投資が145兆円ふえています。それだけ企業はゆとりができて、もう設備投資もやった、研究開発もやった、それでもお金が余ったらどうするか。株を買ったり外国に投資したりしているわけです。
 こういう状況の企業に対して減税しましても、答えは明らかです。どこに向かうか。それが設備投資になって競争力強化に役立つとか、研究開発投資に向けられて競争力強化に役立つということはほとんど期待できないと見るべきかと思います。ひたすら証券等への投資をふやすだけ。要するに、経済的にプラスのない減税ですから、こういう減税は即刻やめるべきだし、あるいは増税しても大丈夫だろうと私は思います。
 それから、もう一つ、最初のページですが、所得税を増税するという手段があります。
 消費税と所得税、なぜ消費税を選ぶのか、私にはさっぱりわかりません。世代間の不公平、サラリーマンばかりに負担をかけるのは気の毒だという説明が間々なされます。
 二ページ下段に、政府の全面広告、去年の12月、全国各紙に載った広告から野田首相の発言を引きましたけれども、なぜ消費税なのですか、ほかに税があるじゃないですかという質問に対して、野田首相の答えは、特定の誰かではなく、世代の全て、世代を超えての負担が必要ですということを言っています。所得税ではなくて消費税だとおっしゃっているんだと思いますが、これは明らかに所得税に対する誤解があります。
 所得税は、サラリーマンだけが負担する税金ではありません。年金世代でも、年金がたくさんあれば所得税は負担する。所得のある人全てが負担しなきゃいけないのが所得税。別に、若い世代、勤労世代だけが負担しなきゃいけないという税ではないわけです。
 所得税と消費税の大きな違いを二ページの下にまとめました。
 一つは、所得税は、所得のある人が負担する税。消費税は何かというと、所得のある人に比べて所得のない人も負担する税。それが一つの違いです。
 それから、二つ目の違いは、所得の多い人ほど負担が重い、高率で負担するのが所得税。所得の多い人ほど負担率が軽い、所得に対する負担が軽いというのが消費税です。
 こういう二つの税制を比べた場合、増税がどうしても必要だ、所得税か消費税かという選択を迫られたときに、では消費税だという答えがどこから出てくるのか全くわからない。所得税を選ぶべきではないかというふうに私は思います。
 以上で終わります。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
 次に、高橋公述人にお願いいたします。
○高橋(洋)公述人(嘉悦大学ビジネス創造学部教授) 今御紹介いただきました嘉悦大学教授の高橋でございます。
 本日、このような公聴会で公述人として意見を言う機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 社会保障と税の一体改革ということなんですが、一言で言えば、薄皮の社会保障と、中身は消費税、あんこたっぷりの薄皮まんじゅうでございます。それなので、消費税の増税について焦点を絞って、反対の立場で述べたいと思います。
 これほど反対理由をつけやすいものは本当にないんじゃないかなと思いますが、まず、資料の二ページ目に全て理由を列記しております。
 まず、経済対策として、デフレの解消が先、財政再建の必要性が乏しいこと、欧州危機時にやることではない。第二に、税理論として、不公平税制の是正が先、歳入庁の創設が先、消費税の社会保障目的税化の誤り、それとあと、消費税というのは地方税とすべき。三番目には、政治姿勢として、無駄の削減、行革が先、資産売却、埋蔵金が先、マニフェスト違反。
 以上、十個の理由を述べたいと思いますので、それぞれに沿ってお話ししてみたいと思います。
 資料の三ページであります。
 デフレ解消が先ということなんですけれども、現在のようなデフレでは財政再建はうまくいきません。1960年代からのOECD加盟国の中で、財政再建に成功した事例と失敗した事例を調べますと、名目成長率が高くなった方が成功する確率ははるかに高いです。私は小泉政権と安倍政権のときにいましたけれども、経済成長によって、プライマリー収支というのが28兆円から6兆円の赤字までに大幅に改善しております。
 三ページの資料というのは、実は、これまで日本のデフレというのがマネー不足で起こっていることを示しております。一番左側の方に日本がありますけれども、世界で一番デフレ、一番マネーが少ないというので、きれいな相関が出ております。
 次の四ページですけれども、これは、左の軸に翌年のプライマリー収支の実額、右の軸に当年の名目成長率をそれぞれとって関係を示したものなんですけれども、名目成長率は翌年のプライマリー収支に強い相関があります。これを使いましてちょっと名目成長率を高めると、ほとんど財政再建は簡単にできちゃうということでございます。先ほどちょっと述べました小泉、安倍政権のときの改善というのも、ここであらわれていると思います。
 こうした過去の教訓から、増税の前に、デフレから脱却して名目成長率を高くすることが極めて重要です。具体的には、プライマリー収支を改善するためには、名目成長率を、これは先進国並みですけれども、4%から5%にすれば、ほとんど、ほっといても回復します。
 ちなみに、1997年に消費税を3%から5%に引き上げたんですけれども、それ以来デフレが続き、税収はずっと97年度の水準を下回っております。
 ここで、増税とは、はっきり言葉を言っておきたいと思いますけれども、税率を引き上げることです。これは増収じゃありません。ですから、その意味で、財政再建のために増税が必要であると言う人はほとんど間違いだというふうに思います。要するに、売上単価を上げて売り上げが伸びるかという話と全く一緒です。
 私は、財政再建は非常に熱心にやる立場なんですけれども、ややもすると、財政再建のために増税ということを聞くたびにちょっとおかしいなというふうに思います。はっきり言うと、経済成長なくして財政再建なしです。
 次の、資料の五ページに入ります。
 財政再建の必要性について、日本は、財政状況は財政当局が言うほど実は悪くありません。10年ぐらいで財政再建すべきということについては全くそのとおりでありますけれども、急に行えば、かえって財政再建自体が危うくなると思います。
 先進各国の財政状況がどのように深刻なのかというのは、五ページのクレジット・デフォルト・スワップの数字が参考になると思います。これは、各国政府が破綻したときに国債の損失をカバーするための保険料ですから、その国の国債の危険度に応じた数字になっております。
 英語で書いてありますけれども、アメリカは入っていないんですが、アメリカは0・4です。イギリス0・7、ドイツ1・1、日本1・0、フランス2・2、イタリア5・5という形になっています。ポルトガルは11で、ギリシャというのは、ほとんど100ですね、事実上デフォルトです。
 これらの数字を単純化してイメージを与えるとすると、米国というのは200年間、英国は120年間、ドイツ、日本は100年間、フランスは40年間、イタリアは20年間、ポルトガルは9年間でそれぞれ一回程度のデフォルトという意味です。
 これらの数字を見る限り、日本の財政状況は、日本の潜在成長力とか政府資産の大きさなどから、欧州ほどは深刻になっておりません。欧州で緊縮財政が否定されている中で、日本が増税政策をとるべきでないことは言うまでもありません。
 次に、資料の六ページに入ります。
 欧州危機との関係ですけれども、欧州で危機が迫っているのがわかっていながら日本で増税を行うというのは、とても理解できないところであります。
 2008年のリーマン・ショック以降、震源地でもない日本が世界最悪のGDPギャップになってしまった。それは、実は2006年に、デフレ脱却していないにもかかわらず量的緩和を解除してしまったのが大きな問題で、その半年後ぐらいから景気が下降局面に入っているときにリーマン・ショックという外的ショックを受けたからなのです。
 今回は復興需要が多少あるんですが、まだ東日本大震災の傷も完全に癒えていません。それにもかかわらず消費税増税というのは、経済政策としてはほとんど理解しがたいと思います。
 次は、資料七ページの不公平税制です。
 税率を上げる前に、税、保険料を含む税ですけれども、これの不公平を直しておくというのがセオリーです。税の不公平は穴のあいたバケツのようなもので、それで幾ら水をすくっても効率が悪いです。しかも、税の不公平の是正というのは、税率を上げるときに国民の納得感にも大きく影響します。
 今の不公平のうち私が大きいと思うのは、社会保険料の徴収漏れです。国税庁が把握している法人数と年金機構が把握している法人の数には随分差がありまして、80万件から100万件くらいあるんですけれども、これは、労働者から天引きされた社会保険料が年金機構に渡っていない可能性があります。大体、ざっくり推計しますと10兆円前後というふうに思います。
 このほか、クロヨンと言われる所得税の捕捉や、インボイスを採用していない消費税の徴収漏れがあって、税徴収の観点から見ても今は穴のあいたバケツでありまして、税率を上げる前に穴を塞ぐのは常識であると思います。
 次は、歳入庁の話です。資料の八ページ。
 不公平の是正のためには、マイナンバーとともに、民主党が政権交代前に公約していた歳入庁や、消費税に、インボイスという先進国で当たり前のことをやるべきです。これをやると、かなり税収なんかが上がってきます。
 税と保険料の徴収インフラとは、国税庁と年金機構が一体化する歳入庁でありまして、これは、国民にとっても、一カ所で納税と保険料納付が済むし、行革の観点からも、行政の効率化になります。
 海外では、アメリカ、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが、歳入庁という形で税と社会保険料の徴収の一元化を行っています。東ヨーロッパの国でも傾向は同じでありまして、歳入庁による徴収一元化というのは世界の潮流であると言っていいと思います。
 しかし、歳入庁の創設というのは、どうも財政当局にとって都合が悪いらしくて、事実上、国税庁というのが財務省の植民地になっていまして、国税権力というのを財務省が手放さない。私が安倍政権にいたときにも、旧社会保険庁を解体して歳入庁を創設しようと思ったときにも、激しく抵抗を受けた経験があります。今の政権で果たしてこのように歳入庁が創設されるだろうかというのは、多少心配な点があります。
 次に、資料の九ページをごらんいただきたいと思います。
 社会保障の目的税化と当たり前のように言われるんですけれども、今回の増税案ではそういうことになっていますが、そうしている国というのは、私は寡聞にして知りません。
 社会保障は助け合いの精神による所得の再分配なので国民の理解と納得が必要というわけで、日本を含めて、給付と負担の関係が明確な社会保険料方式で運営されているところが多いと思っております。もっとも、保険料を払えない低所得者に対しては税が投入されているというのも事実です。ただし、日本のように、社会保険料方式といいながら税が半分近く投入されている国というのも、余り聞いたことがありません。
 消費税の社会保障目的税化というのは、このような、社会保障を保険方式で運営するという世界の流れというのとちょっと逆行するんじゃないかなと思います。ちなみに、ドイツのように、一時的に消費税引き上げの増収を特定用途に限ったことはありますけれども、普通は、そういうのはないです。
 消費税の社会保障目的税化が間違いというのは、1990年代までは、実は私は大蔵省にいましたけれども、そのときの主張でもありました。しかし、99年に、これは自自公連立のときに、消費税を社会保障に使うと予算総則に書いたという経緯があります。ただ、そのときに、平成12年度の政府税調の税制改正に関する答申の中でも、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」という記述がございます。
 次は、消費税を地方税とするということですけれども、それは資料の九ページにあります。
 消費税というのは一般財源なんですが、国がとるか地方がとるかという問題に実はなろうかと思います。地方分権が進んだ国では、国ではなく地方の財源とみなされるところが多いというのが私の認識であります。これは、国と地方の税金については、国は応能税、これは各人の能力に応じて支払う税でありますけれども、地方は応益税、これは各人の便益に応じて支払う税でありますけれども、というふうな税理論にも合致するところであります。
 ヨーロッパの国というのは、一国の規模が小さくて、GDPで見ますと、日本というのは欧州の国が7、8個ぐらい集まった規模であるというふうに思います。欧州の国がサイズが小さく、日本から見れば地方単位であるので、EUというのを一つの単位とすれば、その中に地方があり、それぞれで消費税を導入しているという見方も可能ではないかなと思います。
 また、地方分権の進んだ国、例えばオーストラリアなんかでの、国のみが消費税を課税し、地方に税収を分与する方式、ドイツ、オーストリアなどのように、国と地方が消費税を共同税として課税し、税収を国と地方で配分する方式、カナダのように、国が消費税を課税し、その上に地方が課税する方式、アメリカのように、国は消費税を課税せず、地方が消費税を課税する方式というのがあります。これらを見ますと、世界を見ても、分権度が高いほど国としての消費税のウエートが低いということが言えると思います。
 次に、無駄の話に入ります。資料の十ページに行きます。
 行革の話なんですけれども、これは無駄の削減というのが不徹底であるというふうに正直思います。
 野田総理が、政権交代の前に、ほんの2年前の話ですが、シロアリ退治の街頭演説をしております。
 そのシロアリとは、実は国家をむしばむ天下り役人でありまして、シロアリの巣が独立行政法人や特殊法人です。シロアリへのミルクもありまして、このミルクは特別会計の埋蔵金です。
 民主党政権になって、シロアリ退治どころか、天下りが水面下でなされるのを放置しながら、その上にさらに現役出向という裏わざを正面から容認するという形になっておりまして、民間企業にまで現役天下りを拡大してしまったというのが実態だと思います。独立行政法人というシロアリの巣も手をつけず、さらに特別会計というシロアリへのミルクも温存されていると思います。
 1981年から土光臨調というのが始まって、それをまねて行革をやるというんですけれども、土光臨調は増税なき財政再建でしたけれども、今回の話は、実は、まず増税ありきで、増税のためのアリバイづくりと言われても仕方がないのではないかなというふうに思います。
 次に、資料の11ページをごらんいただきたいと思います。
 この資産売却と埋蔵金の話など、やっていないと思います。かつて、特別会計のいわゆる埋蔵金を発掘しまして、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律を立案し、特別会計改革の道筋をつけたと自負しております私から見れば、全くやっておりません。
 行革推進法は、これは小泉政権のときの話なんですけれども、政策金融改革、独立行政法人改革、総人件費改革、国資産負債改革などをやっておりまして、それぞれその中に、今後5年間を目途にいろいろな数値目標というのが書かれてあります。改革の肝というのは、実は、2006年度から2010年度までの五カ年間に財政の健全化に総額20兆円程度の寄与をすることを目標とすると定めていることであります。要するに、このように数値目標をきちっと出してやっていくわけですね。
 小泉政権のときに、実は、増税の前にやるべきことがあって、埋蔵金を掘り出し、私はその指示を受けてやりましたけれども、それで、結果的には、増税はやりませんでした。増税はやらないけれども財政再建を頼みますというふうな指示を受けていますけれども、今はそういう指示がないから、ほとんどこのような、財政再建というか、無駄とか埋蔵金の話とか資産売却の話はやらないというふうに思います。それに比べて、野田政権の特別会計改革そのほかには金額が一切ないので、ほとんどやる気がないのではないかなというふうに思わざるを得ません。
 この資料に書いてあるように、日本の資産というのはOECDの中でも極めて突出してたくさん持っています。債務はたくさん持っているのはそのとおりなんですけれども、資産もたくさん持っている。世界一でございます。負債だけが世界一、世界一と言うのは、すごくミスリーディングであると思います。
 最後に、12ページ、公約違反の話です。
 最近、消費税については賛成より反対が多いというふうに言われておりますけれども、そもそも民主党というのは、消費税を増税しないと言って政権交代した。ちなみに、2009年の三党連立合意では、現行の消費税5%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間内において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わないと明言された。にもかかわらず、今回、消費税増税法案というのは、14年4月に8%、15年10月に10%という形で引き上げられて、これで政権担当期間内の引き上げに当たらないという、はっきり言えば、詭弁を使っていると思います。小泉政権のときのように、上げないと言って、最後まで上げることも決めなかったという潔さは全くないです。
 民主党内では、代表選で増税を掲げたので増税は正当化されるという意見があるかもしれませんけれども、それはあくまでも民主党の組織内の身内の論理でありまして、マニフェストに書かず、増税しないと言ったのに増税するというのは、国民に対する背信行為であるというふうに言わざるを得ません。
 出てくる数字は、実は、民主党政権になって、自公政権から膨らんだ数字を書いてあります。大体これで、構造的に11、2兆円程度膨らんでいます。これは予算の組み方が全く下手だったということになるんですけれども。それで、今回の消費税増税が社会保障に行くというんですけれども、ここに消えちゃっているという説明もできると思います。金に色はついておりません。
 最後に、最近出ている軽減税率の話をちょっと述べさせていただきたいと思います。
 軽減税率というのは物品ごとにやるんですけれども、それは、物品の線引きが非常に難しくて、官僚の裁量権を極めて大きくします。はっきり言えば、軽減税率というのは、世の中の物の数だけ租税特別措置法があるようなもので、天下りをふやしたい官僚とか特定業界への影響を持ちたい政治家にとっては極めて好都合な制度です。
 欧州では確かに歴史的にあります。ありますけれども、こうした問題があるので、低所得者対策というのは給付つき税額控除に移行するという流れになっております。
 歳入庁というのは、税と社会保険料を一体として、さらに、低所得者対策には簡素な給付を行う上で非常に役に立つと思います。しかし、その簡素な給付のかわりに軽減税率を導入すると、簡素な給付は不要になってしまって、さらに、歳入庁をつくるに及ばないという議論になるということを非常に恐れております。
 以上で意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
 これにて公述人の方々からの意見の開陳は終わりました。
【佐々木議員質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 大変お忙しい中、きょうは私どもの公聴会に御出席いただきまして、また、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
 私も順番を、高橋先生の方から質問させていただきたいと思います。
 目的税化の誤りということが指摘をされておりますが、私も、目的税というのは、消費税は目的税ではないと思っておりますから、それなのに、政府は目的税化という言い方をしたり、あるいは福祉目的化というようなわけのわからぬ言い方をしております。
 この目的税というのは、税と、それを何に使うかというのはリンクしているものであって、パッケージになっているものでありますが、そうではないですよね。消費税は、社会保障に全て、四経費に使いますと、13%程度にしないとつり合いがとれないわけであって、そういう意味では違うと思うんですが、先生はどういう意味で誤りとおっしゃっているんでしょうか。
○高橋(洋)公述人 財政には一般原則というのがありまして、ゼネラルファンドというんですが、一般財源が当たり前です。何かの特別な目的のとき以外に、特殊な用途以外は実は一般財源です。ですから、消費税は、世界で見ると、国または地方の一般財源ということになっていると思います。
 ですから、その意味で、社会保障にリンクさせるというのは私にはちょっと理解できないです。社会保障にリンクさせる最も、本当に、目的税をあえて言えといったら、実は社会保険料です。社会保険料は完全にリンクしていて、実はこれは、保険数理で、リンクさせることによって給付と負担が非常にクリアになる、そういう側面があります。
 ですから、保険料という立派な目的税があるにもかかわらず、さらに社会保障に消費税を充てるというのは、私はちょっと理解できないです。これは、税理論及び社会保障理論からも理解できないことであります。
○佐々木(憲)委員 山家先生にお伺いします。
 先ほどのお話で、逆進性の問題や転嫁できない実態、あるいは消費を冷やして景気を悪くする、こういう点があるとおっしゃいました。私も全くそのとおりだと思いますし、財源としてなぜ消費税なのかということも大変大きな疑問であります。
 その点でもう一つお聞きしたいのは、景気の問題で、今回の消費税増税だけではなくて、このほかに別の枠として、例えば年金の支給開始年齢を繰り延べて70歳にするとかそういうことが検討されている、それから負担がふえる、それから給付の減額の計画が実行されていく、こういう点での実質的な負担ですね。それから、窓口負担がふえるという医療の問題もありますし、介護の利用料がふえる、子ども手当が減額になる。つまり、これの負担増というものを我々が計算しますと、大体20兆になるんですね。
 以前は、97年のときは9兆円負担増ということで、これは大問題だということでありました。あのときも、その結果、大変な景気の冷え込みがあったんですが、私は、今回これを実行しますと倍以上のマイナス効果になるというふうに考えておりまして、景気に対する今回の社会保障・税一体改革の全体としての影響をどのようにお考えかという点が一つです。
 それから、内部留保のお話がありましたが、266兆円ぐらい我々の計算では、つまり、我々の計算といいますか政府の統計で、資本剰余金、利益剰余金それから引当金等、合わせてそうなるんですけれども、大体、この30年ぐらいの間にかなりふえております。80兆円台が三倍以上になっているということであります。
 この原因と、それから、これをやはり社会に還元するということが私は必要だと思いますが、先ほども少しお触れになりましたが、還元する方法というのが大事かと思います。
 政府は、いやいや、これは設備になったり、いろいろな品物になっているので、現金ではないんだとおっしゃいましたけれども、私は、現金がその中に46兆あるというふうに統計上なっていますから、結構還元できるんじゃないかと思っていますが、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○山家公述人 今の御質問、私は先ほど消費税の影響だけ申しましたけれども、おっしゃるとおり、社会保障関係でいろいろな負担増あるいは給付の減があります。
 それから、佐々木先生おっしゃらなかったけれども、地方自治体が結構負担増政策をとっている。地方税制は国税制以上に自由度がないものですから、財政赤字になりそうだと人々に負担を押しつける。ごみの有料化であるとか国民保険料の引き上げとか、あるいは駐輪場料金の値上げとか、いろいろな格好で各自治体で起こっています。そういうものを全部入れると大変な負担増がこれから起こってくるということになるかと思います。
 ちょっと計算しておりませんので、具体的にどれだけの影響というのは申し上げられませんが、さっき計算しました消費税の負担増がおよそ10兆円ですね、5%引き上げて。地方も合わせると12・5兆円になります。それで、さっき言いましたように、マイナス成長必至という状況ですから、そこにさらにいろいろな負担増が入ってくるともう大変な状況になってしまうというふうにだけお答えしておきます。
 それから、二番目の内部留保の問題ですけれども、おっしゃるとおり、これは統計の何と何を足すかによって金額は多少違うんですけれども、先ほどお示ししましたように、私がはじいた数字でも、この十数年の間に100兆円以上の内部留保がふえている。
 そして、それがどこに向かっていくか。資産の方を見ますと、設備投資はほとんどふえていないんですね。何せ国内経済が成長しない、需要が伸びない経済ですから、設備投資は減価償却分でもう十分である、新たに設備投資をしても仕方がないという状況に企業は置かれている。だから、余ったお金はみんな証券等に、商売以外のことに向かっている、向かわざるを得ない状況にあるということです。ですから、これは、もちろん子会社の株とかそういうものも入っていますから、すぐ現金化できるものではないんですけれども、かなり流動的な状態で企業が持っている。必要とあらばいつでも現金化はできるというふうに捉えるべきだと思います。
 ただ、残念ながら、政府の方でこれを現金化させる方法はほとんどないだろう。要するに、資本主義で、私有財産、企業の財産ですから、一旦そこにため込まれると、これは富裕税とかそういう格好の、資産に課税する以外にない。その方法は法人に対しては今のところないかなと思いますので、私がとりあえずの今の法制上で考えますのは、とにかく、内部留保を生み出す前の段階、利益が上がった段階でそれにきちんと法人税をかけるということが必要だと思います。
 それ以外に政策的に、それによって内部留保がふえる、無用な内部留保と言ったら怒られますけれども、万一のときに必要なお金ではあるんですけれども、経済活動にほとんど働かないお金をできるだけ、一つは働く人に賃金という格好で還元する。これはさっきの方にお答えしましたように、いろいろな賃上げをせざるを得ないような状況を政策としてつくり出すことは必要かと思います。あと、取引先の中小企業に対してきちんとした対価を払う。もちろん消費税分なんかも含めて払うというふうに取引を改善させる。それから、さらに残ったものについては、きちんと税金でいただいて、それを社会保障なりほかのことに使うという方法があるかと思います。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 加藤公述人にお伺いしますけれども、先ほどお配りいただいた資料で、大変おもしろいなと思いましたのは、表三の一と表三の三ですね。自国の税金に対する、収入が少ない人々の認識という点でいうと、高過ぎる、どちらかといえば高過ぎるという比率が日本の場合は非常に大きい。逆進性があるというだけなのか、それとも、もっといろいろな意味でそうなのか。この読み方をどういうふうに考えたらいいか。
 それから次の、収入の高い人々の認識は、税の負担が低過ぎる。これは、もっとかけてほしいということかどうかはわかりませんけれども、ゆとりがあるということだと思うんですね。
 だから、私は、消費税でやるよりも、先生の御意見とはちょっと違うかもしれませんけれども、こういう高い収入の方々には適切な応分の負担をしていただく方がいいのではないかというふうに思うんです。還元される分というのはまた別にありますから、それはそれとして別の話なんですけれども、税の問題に限って言うと、公平な税ということを考えますと、そういうことではないかなと思いますが、どうですか。
○加藤公述人 この資料はちょっと説明する時間がなかったので、本当にどうもありがとうございます。
 まず、収入の多い人々の認識なんですが、実は、今回これを改めて見まして、1996年も2006年も、日本はまだ意外ともう少し払う余裕があるということ。私も、先ほどの方は、逆進的な課税であると所得再分配ができないという考え方は必ずしも正しくない、そういう意味で申し上げただけであって、所得税もこれからよく考えて増税していかなければならないと思います。
 ただ、過去、所得税で税収を上げていくのが難しかった、累進性を保つのが難しかったのは、上の方の税率を上げると順番に、皆さんも御存じのように、真ん中の方も上げていかなければならない、そういうような問題であるとか、経済活動、特にインフレが起こった1970年代に所得税制度の限界がわかったということがありますので、そういった点も踏まえて制度をどうつくるかということで、所得税も増税する方がいいのではないかというふうに考えています。ですから、もう少し富裕な層の負担ということは、慎重に、どういう形でやるかを考えながら、行ってもいいというふうに私も思います。
 次に、収入が少ない人々の認識なんですが、ここで、もちろん日本も高いんですが、私、皆さんにやはり注目していただきたかったのは、スウェーデンも高いんです。私はスウェーデンに行って非常に驚いたのは、私も最初は貧しい人にはそんなに税金をかけていないと思っていたんですが、周りの認識が、所得の低い人は本当に税金を払うのは大変だと思っている、大変である。でも、返ってくると思うから払っている。だから、そういうような形に日本も持っていけたらいいのではないか。こちらは、日本の方は、多分、返ってくるものはないけれども高いと思っているのではないかと思います。
 ですから、本当にこの点もまた気をつけなきゃいけないのは、先ほどもお話が出ましたけれども、個人個人の本当の経済状態を知った上で、本当に困窮している人にきちんと再分配をするということなので、そういう制度を含めて、きちんと再分配の制度を考えていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 坪井参考人、井上参考人、ちょっと時間がなくなってまいりまして、坪井参考人にお伺いします。
 消費税というのは、負担は最終的には消費者がするという仕組みで、しかし納税義務は事業者にある、これが分離されているところに、間接税ですからそうなんですけれども、しかし、転嫁できない場合は事業者がみずから負担するわけで、そういう意味では、名前は間接税だけれども、実態は直接税でありまして、そういうことで、増税ということになりますと非常に深刻な事態になるということだと思うんですね。
 そういう転嫁ができないという状況のもとで引き上げるということについては、私はこれはやるべきではない、消費税増税そのものに我々は反対でありまして、財源は別のところに求めるべきだ、こういう主張をしておりますが、いかがでしょうか。
○坪井公述人 先生の言われるとおりでございまして、全く同じ意見でございます。
 よろしくお願いします。
○佐々木(憲)委員 最後に、井上公述人に。
 この資料の中で注目をしましたのは、請求書の表面上は消費税の価格転嫁ができたように見えるが、実質的には価格転嫁できていないという製造業の方の声ですね。これが実態だと私は思います。
 ですから、転嫁できていないといっても、それは形の上で転嫁できているということなので、なかなか公取が入ってもそう簡単に摘発できないし、声を上げると仕事がなくなる、こういう関係があると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○井上公述人 御指摘のとおりだというふうに思いますけれども、非常に転嫁するということは難しい現状である。
 ただ、考えてみますと、やはり世の中の景気をいかによくするか、それが一番大事な施策ではないのか。そうでないと、結局は、安く安く、デフレということで転嫁ができなくなってしまうわけですから。
 今、日本はもう戦後60年を超えておるわけでして、高度成長期に建てたいろいろな設備投資されたものがもう寿命に来ているわけですね。そういったものを新しくさせるだとか、いろいろな新しい政策をとっていただくというのがやはり大事だ。そして、景気を刺激していただくということが大事であって、そういう点でもっともっと先生たちに御努力をいただきたい、御尽力をいただきたいというふうに思います。
 よろしくお願いします。
○佐々木(憲)委員 どうもありがとうございました。

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