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金融(銀行・保険・証券) (保険業法)

2012年03月23日 第180回 通常国会 財務金融委員会 【668】 - 質問

保険業法改定「契約者が保護されぬ」と批判

 2012年3月23日、財務金融委員会で、保険業法改定案が日本共産党以外の各党の賛成で可決しました。
 この日の委員会で、佐々木憲昭議員は質問と討論に立ちました

 保険会社の判断で契約者の保険を他社に移転しやすくする保険業法の規制緩和について、佐々木議員は「会社の利益と効率化だけが優先され、契約者に不利益を与えるものだ」と批判しました。
 佐々木議員は、「契約者はいつの間にか違う会社の保険に移ることになる。保険は信頼で成り立っており、会社都合で契約を変えるやり方は許されない」と追及しました。
 佐々木議員が、この「法改正は誰からの要請か」と聞きました。
 自見庄三郎金融担当大臣は「生命保険会社から移転規制を撤廃してほしいという話があった。業務効率化は契約者の利益になる」と述べました。
 佐々木議員は「これでは、契約者が保護されず、会社の利益だけが上がればいいというものだ」と批判しました。
 また、全国消費生活相談員協会の丹野美絵子理事長が保険契約の移転について「契約者のメリットは必ずしも明らかでない」とのべていることにふれ、「契約者が移転に反対した場合、契約の継続は認められるのか」とただしました。
 金融庁の森本学総務企画局長は、異議申し立て手続きの要件緩和などをあげるだけでした。
 佐々木議員は「同じ会社と継続した契約ができないということだ。切り捨て以外の何ものでもない」とのべました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 法案の内容についてお聞きしますけれども、今回提案された法案には、保険会社の業務についてさまざまな規制緩和が盛り込まれております。その中で、保険契約の移転に関する規制緩和が入っております。
 移転単位規制というのが撤回されて、包括移転というものがなくなる。こういう要請は、契約者の側から要請があったとは到底思えないんですけれども、これは、企業経営者側からの要望ということでこういう改正が行われるということなんでしょうか。
○森本政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 この保険契約の包括移転の規制の見直しにつきましては、近年、保険会社のグループ経営の進展を踏まえた規制の見直しということで、保険会社等から要望があったところでございます。
○佐々木(憲)委員 結局、会社側からの要望で、契約者からの要望ではないということなんですが、これまでも、保険契約の包括移転というのは許可されればできたわけです。
 包括移転が行われたケース、この10年間に何件あって、その理由、背景は何でしょうか。
○細溝政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 平成14年以降の10年間の保険契約の包括移転の事例は、11件ございます。この包括移転が行われた背景ごとに分類いたしますと、保険事業からの全面撤退によるものが九件、一部の保険種類からの撤退によるものが二件となっております。
○佐々木(憲)委員 これは圧倒的に、会社が破綻する、あるいは日本から外国資本が撤退して会社そのものがなくなるケースが非常に多いわけであります。それは、そうなったら包括移転というのはやむを得ない、そういう状況は。
 ところが、今回の改正案を見ますと、保険会社が自分の経営判断で保険商品をほかの保険会社に移転しやすくしよう、商品の切り売りとも言えるものであります。それを認めることで移転を容易にして、より利益の上がる、そういう体質に変えたいと。
 これは会社側の都合でありまして、経営者はそれで効率が上がると思うんでしょうけれども、契約者から見ますと、例えば、今までは損保Aという会社の自動車保険に加入していた、ところが、ある時点で、保険会社側の一方的な都合で、契約者の意思とは関係なく、自分はAだと思っていたら、いつの間にかBの会社の保険に加入していた、こういう話になるわけですね。
 これは、信頼していた契約者から見ますと、だまされたような感じになるんじゃありませんか。大臣、どうですか。
○森本政府参考人 保険契約の包括移転の見直しの趣旨でございますが、先生御指摘のように、保険会社にとりまして再編や特定の分野への経営資源の集中が容易になる、この結果、保険会社のより効率的な経営が可能になると考えられるわけですが、一方で、保険契約者にとりましても、保険事故時の相談、照会等々の対応が向上する等、メリットも期待されるところでございます。
○佐々木(憲)委員 到底、それはメリットとは思えないですね。
 金融審議会の保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループの議論の中で、全国消費生活相談員協会の丹野美絵子さんが保険契約の移転について問題点を指摘しておりますが、これはどんな内容か、紹介していただけますか。
○森本政府参考人 このワーキング・グループでの議論は現在全て公開になっておりますので、個別の先生の御意見も紹介させていただきます。
 丹野先生からは、審議の過程で、破綻、撤退以外の平時の場合において、契約者が保険契約の移転を希望することは通常なく、平時の契約移転の契約者にとってのメリットが必ずしも明らかでないとか、契約移転を行いやすくすることで保険会社の経営の効率化につながるかが不明であり、移転単位規制を見直す必然性があるのか不明であるといった御意見をいただいたところでございます。
 この審議の過程では、そうした御意見も踏まえまして、保険契約者の保護のルールをかなり強化いたしました。この結果、先生からは、議論の取りまとめに当たりまして、今までの議論を踏まえて書き込んでいただいたものだと評価させていただきたいと思いますといった御理解をいただいたところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは本質的な解決にはなっていないと私は思います。
 例えば、保険に加入する理由を、生命保険文化センターが行った調査があります。それを見ますと、商品がいいということで加入した場合、51・8%、これは理解できますね。健全な経営をしている会社だと加入会社を信頼したというのが22%、営業職員や代理店の人が親身になって説明してくれた、営業職員要因といいますか、これが47・9%ですね。
 したがって、保険会社を信頼している、あるいは営業の職員が非常に親切であった、こういうことで保険に入るわけです。だから、契約した保険会社が、いつの間にか違う保険会社に自分は移転させられている、そうすると、今までつながりのあった代理店とか営業の担当者が突然別の人にかわるわけです。これは非常に、契約した本人にとっては想定外の事態なんです、自分が望んでいないわけですから。Aという保険会社と私は契約したんだと。その保険会社は厳然としてあるわけですね。
 したがって、例えば、切り売りされる保険の加入者個人が、保険契約の移転に反対をして、前の会社と契約を継続したいんだ、こういう場合は認められるんですか。
○森本政府参考人 お答えいたします。
 保険契約を移転する場合に、先生御指摘のように、反対であると異議を申し立てられた保険契約者の方の取り扱いにつきましては、今回、この異議の申し立て手続を相当充実しております。
 まず、異議の成立要件を五分の一から十分の一に引き下げますとともに、また、なぜ異議を申し立てたのかといった理由を監督官庁に保険会社が通知することになっておりまして、監督官庁におきます認可の際に十分参考にさせていただく。さらに、そうした異議を申し立てられた方が契約の解除をなさりたいという場合は、解約控除なしの解約を行えるようにするといった措置をとっておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、今までと同じ会社と継続した契約ができないということなんですね。本人が異議申し立てをするという仕掛けはつくった、参考にはいたします、しかし継続はできませんよと。今の話だと、解除することをやりやすくしますよ、もう保険からは出ていってくださいと。こんな話は、これはもう到底認められない。
 保険というのは信頼によって成り立っているわけですからね。ですから、会社の都合で、一旦合意した契約が全く違う形で変えられてしまう、あるいは、継続しようとしても、もうあなたはこの会社とは縁がありませんからどうぞ出ていってください、こんなやり方をするというのは、これは余りにひどいじゃないですか、大臣。こういう改悪は私はやめた方がいいと思いますけれども、どうですか。
○海江田委員長 きょうは特に時間が限られておりますので、手短に。
○自見金融担当大臣 佐々木先生の御質問を聞かせていただきまして、今局長から、保険会社の方から移転単位規制を撤廃してほしいという話がございましたが、同時に、保険会社が国内できちっと経営基盤が安定するということは、当然保険契約者に対しても利益になるわけでございまして、会社がきちっとそういった意味で保険会社の業務の効率化を図れるということは、基本的には、我々は保険契約者の利益になると思っております。
 特に、保険会社の変更の場合は、保険契約の重要な事項の変更であり、保険契約者の保護に十分な配慮が必要でございますから、そういった意味で、今局長が言いましたように、個別、あるいは個別の通知、異議の成立要件の引き下げ、あるいは保険契約者の保護を確保するための措置を講じた上で、保険契約の移転に当たっての移転単位規制を撤廃することとしました。
 今先生から御質問のございました、そういった意味で、基本的に、保険会社が、きちっと経営が安定する、あるいは世界の今の金融のグローバル化の中できちっとやっていけるということがまず何よりも契約者に対する貢献だというふうに私は思っております。
 ただし、大企業が非常にもうけてけしからぬという御意見は、先生のお立場もわかりますけれども、やはりそうではなくて、そういった面も、きちっと保険契約者の利益ということも目に入れておかないと当然いけませんけれども、そういったことを……
○海江田委員長 手短にお願いをいたします。
○自見金融担当大臣 きちっとバランスをとって判断をしたというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 要するに、契約者については何の保護もないんですよ、このやり方だと。切り捨て以外の何物でもない。会社の利益が上がればいい、そういう仕掛けになっているということを指摘して、質問を終わります。

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