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税制(庶民増税・徴税) (証券優遇税制)

2011年06月15日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【614】 - 質問

証券優遇税制は廃止すべきだと主張

 2011年6月15日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、所得税法「改正」案に盛り込まれた金持ち優遇の証券優遇税制はただちに廃止するよう求めました。
 証券優遇税制は、株式譲渡益や配当の税金に対する税率を本則の20%から10%に下げる特別措置。2011年12月末の期限をさらに2年延長します。

 佐々木議員は自見庄三郎金融担当大臣が「3世帯に1世帯が株式を保有している」と多くの国民が株式を保有しているかのように主張していることを批判。証券保管振替機構の統計を示し、「人数を世帯数にすりかえており、根拠に乏しい」と指摘しました。自見大臣は反論できませんでした。
 また申告納税者の所得税負担率(国税庁の資料)を示し、「所得1億円以上になると所得が多くなるほど税負担率が低くなっており、その主な要因は証券優遇税制にある」と指摘すると、野田佳彦財務大臣も「一定の所得水準から累進性を失っている。委員のおっしゃる理由によるものだ」と認めました。
 佐々木議員は「問題は富が偏在していることだ」として、2.6%の人が譲渡所得の72.5%を占めている事実を示し、そこに減税するから金持ち優遇となると批判。さらに日本の税率は主要国の2〜3分の1で国際的にも異常だと指摘し、「こういう不公正な税制はただちに改めて被災地の復興財源に回すべきだ」と述べました。

 この日、所得税法「改正」案が、民主、自民、公明など各党の賛成多数で可決されました。採決に先立ち、佐々木議員は反対討論を行いました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 提案された法案の中には、賛成できるものも含まれておりますし、賛成できないものも含まれております。
 例えば、賛成できるものとしては、中小企業の法人税引き下げ、漁業、農業で利用するA重油の石油石炭税の免税措置、雇用促進税制、NPO税制、こういうものは賛成できると思っておりますが、しかし、どうしても賛成できないのが含まれておりまして、詳しくは後で討論で触れますけれども、その一つに、証券優遇税制の再延長、これが入っていることであります。
 株式の譲渡益、配当益に対して20%の税率で課税すべきところを、特別措置として10%に下げているわけであります。本来なら、この優遇措置というのはことしの12月で期限切れになるものでありますが、それをさらに2年間延長する、こういうことでありまして、これは我々から見ると賛成できない大変大きな問題であります。
 もともと政府税調では、12月末で10%の軽減税率を本則の20%に戻すという方向で議論が行われていたのではないかと思いますが、野田大臣、いかがでしょうか。
○野田財務大臣 佐々木委員御指摘の上場株式の配当、譲渡益等に係る軽減税率については、金融庁からの延長要望を踏まえて、昨年の税制調査会においてさまざまな議論が行われました。
 御指摘のとおり、公平性、金融商品間の中立性の観点から、20%、本則税率に戻すべきとの議論も行われたところでありますけれども、最終的には、自見大臣とも協議をさせていただく中で、景気回復に万全を期すため2年延長することとしたということでございます。
 なお、この本則税率化については、23年度税制改正大綱において、「経済金融情勢が急変しない限り、確実に実施すること」となっております。
○佐々木(憲)委員 金融庁の要請だということで、自見大臣に聞きますけれども、大震災の被災者は依然として深刻な事態にあります。そういう中で、なぜこういう減税を続けるのか。これは金持ち優遇税制ではないのか。いかがですか。
○自見金融担当大臣 今、財務大臣からも、最終的には財務大臣と私の間で話をさせていただいたわけでございますけれども、景気の維持、回復ということが大事だということを言われました。
 今、被災地との関係いかにという話でございますが、災害の復旧復興、被災者の再生支援は重要な課題でありますが、他方、現下の内外の厳しい経済金融情勢や今般の震災を受けての日本経済の状況、あるいはまた株式市場の動き等を踏まえると、景気の維持、回復、あるいは株式市場の活性化も私は極めて大事な政策課題だと思っております。
 以上を総合的に勘案すると、今般の震災による景気の腰折れを招かないためにも、証券の軽減税率については、期限切れを迎える平成23年末以降も継続をすることが、今の現下の状況を考えたら適当であるというふうに考えています。
 なお、参考までに申し上げますと、総務省の家計調査によれば、軽減税率導入後、株式、株式投資信託の保有額の伸び率が高いのは、高所得者ではなく中低所得者層となっていることなどから、今回の延長について、金持ち優遇という御指摘は当たらないのではないかなというふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 軽減税率導入後、株式と株式投資信託の保有額の伸びが高いのは中低所得者だ、そういう答弁が今ありました。
 しかし、中低所得者の保有額がふえたのは軽減税率があったからと言えるのか。例えば投資信託がふえたのは、銀行あるいはゆうちょ銀行の窓口販売が解禁された、こういう問題もある。インターネット取引がふえた、あるいはゼロ金利のもとで投資信託が選択される、いろいろな要因があるわけです。それを何か軽減税率のおかげだというのは、これは我田引水も甚だしいと言わざるを得ない。
 今回は、減税の対象から外す大口投資家の範囲を少し広げております。これも非常に微々たるものでありまして、これまで上場企業の発行済み株式の5%以上の大株主、それを3%以上というふうに広げて減税の対象外にしているわけですが、どれほどの効果があるかということです。
 具体的にお聞きしますけれども、上場企業の発行済み株式の5%以上を保有している大口株主は何人いるか、3%以上に変えると何人にふえるか、お答えいただきたい。
○古谷政府参考人(財務省主税局長) お答えをいたします。
 直接、株式保有割合ごとの株主数というのをとらえるデータはございませんで、昨年の政府税調での議論の際に、私ども財務省の方から、会社四季報をベースに、配当のある会社分のサンプル調査に基づきまして推計を行いました数字をお出ししてございます。
 それによりますと、保有割合5%以上の人数は1498人、保有割合3%以上になりますと2835人ということでございまして、5%から3%に引き下げることによりまして1337人増加するという試算を提示してございます。
○佐々木(憲)委員 それでどれだけ効果があるかという点ですけれども、ここに、皆さんにお配りしてありますが、国税庁の資料で、申告納税者の所得税負担率の図があります。
 所得金額が1億円のところでピークになっておりまして26・5%、それより所得がふえると急速に税負担率が低下しているわけです。10億円の所得の場合は21・6%、100億円では14・2%。その主な要因は証券優遇税制にあるわけです。
 今回、5%から3%のように変えましたが、今度の措置でこのカーブはどれほど変わるんでしょうか。
○野田財務大臣 佐々木委員御指摘の申告所得税の負担率を示すカーブは、申告納税者について所得階級に応じた所得税負担率をあらわしたものでございますけれども、一定の所得水準から所得税が累進性を失っている、確かにこのグラフのとおりだと思いますが、その原因の一つとしては、分離課税としている金融所得に対して低い税率が適用されていることが考えられるというふうに思います。
 今回の措置によって、所得税の負担率を示すカーブがどのように影響を受けるかについては、個々の納税者が有する配当所得の分布であるとか、あるいは配当以外の所得をどの程度持っているかなどが明らかではないために、正確なところは不明ではありますけれども、一定の所得水準から所得税が累進性を失っているという状況の改善に資するものと考えています。
○佐々木(憲)委員 改善に資するといっても極めて微々たるものでありまして、基本的傾向はほとんど変わらないんですよ。
 自見大臣は、株式を三世帯に一世帯、つまり1600万世帯の方が持っている、こういう説明を国会でされましたね。いかにも多くの人が株式を保有しているかのように言いますけれども、1600万世帯、これはどこから出てきた数字ですか。
○自見金融担当大臣 3世帯に1世帯、1600万世帯の方が株式を持っているという数字は、これは総務省あるいは証券保管振替機構、一般に保振と申しますけれども、それから東京証券取引所が公表するデータをもとにしまして、一定の仮定のもとに金融庁が算出したものでございます。また、ちょっと先に飛びますけれども、平均年収500万未満の方が7割という数字も、これは日本証券業協会が全国の個人投資家を対象にして行った調査結果に基づくものでございます。
 いずれにいたしましても、既存のデータを可能な限り活用してできる限り実態を把握しようということでございまして、引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 1600万世帯と言われますけれども、証券保管振替機構の統計情報によりますと、株主等通知用データ、これは件数なんですよ。そうじゃありませんか。
○自見金融担当大臣 これはもう御存じのように、総務省のデータといえば、税金で成り立っている役所のデータでございますけれども、ほかのデータは、やはり民間のデータもいろいろありまして、これはいろいろな考え方、ですから、私は一定の仮定のもとにという話をさせていただいたわけでございまして、そういった意味で、正確に、何千何百何世帯という数字を見て、大体こんなところから、先生御存じのように、何分の一なのか、そういう大づかみの数字もまた、一般国民に対する御理解のためには私は政治家として必要だというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 それが余りにも乱暴過ぎて、でたらめな数字になっているわけです。
 証券保管振替機構の統計によると、ことし2月のデータで1642万6299件なんです。東証の調査で、その97%が個人投資家であると言われておりまして、そうしますと、約1600万人ということになるわけです。
 世帯だったら、1600万世帯だったら3世帯に1世帯という比率になりますけれども、1600万人なんですから、人口は1億2800万人ですね、有権者の数だけでも1億人です。1600万人だと、全体の中で16%ということになるんじゃありませんか。
○自見金融担当大臣 いろいろな御意見はしっかり、佐々木先生、拝聴させていただきますけれども、私も自然科学系の研究者をいたしておりました。そのときは、まさに数字といいますか、自然現象あるいは生物現象を統計上出すのは、これは極めて正確で、地球上で再現性がなければ、科学者として葬り去られることもしばしばあるわけでございますので、そういったときはしっかり、やはり出てきた数字の根拠あるいはそれが出てきたベースというのは非常に大事でございますが、私は政治家にならせていただいて26年、やはりこういったところ、一世帯で奥さんも御主人も株を買うという、それはそういう家庭もあるかもしれませんけれども、そこら辺は、大変いろいろなデータを組み合わせて、今先生言われましたように、1600万世帯だというふうに表現をさせていただいたわけでございます。
 それが3千万だとか4千万だというんじゃなくて、大体3人に1人は株式を持っていますよ、思ったよりずっと、株式を持っている世帯というのは、やはり日本は1億総中産階級国家をつくろうと目指してきたわけでございますから、そういった意味で、そこら辺は御理解をいただければありがたいなというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 科学の世界では正確でなきゃならぬ、そうでなければその世界からほうり出される、政治の世界はいいかげんでいい、そういうことになるんですか。
 3世帯に1世帯というのは大体、30%を超えているわけですね。しかし、正確な数字からいうと16%なんですよ、人口の中では。いかにも、数字が大きいものがいいことだということで適当にすりかえて、件数を世帯数にすりかえて、それで、株をたくさん持っているんだ、庶民が持っているんだということを言おうとする、これはもうでたらめだと言わざるを得ない。
 それから、平均年収500万世帯の方が7割を占めていると。一体どこからとった統計ですか。
○自見金融担当大臣 私の手元の資料だと、年収500万未満の個人投資家、約7割ということでございますが、これの出典は、日本証券業協会、個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書の結果だというふうに理解をいたしております。
○佐々木(憲)委員 その調査が、回答者は992名、極めて分母が少ないんです。統計の質に私は問題があると思う。
 回答者の約半数、46・5%なのですが、60歳以上の高齢者、年金者になるということなんですが、そうじゃありませんか。
○自見金融担当大臣 今初めて聞かせていただいたんですが、先生、サンプル数が1000ということだったと思いますけれども、世の中の世論調査でも実は大体1000ぐらいの抽出でございまして、私は生物統計をやっておりましたので、あそこは、ランダムネスといいまして、無作為性を確保することが非常に大事でございまして、非常に無作為であれば、1億人の中でランダムにとった千のサンプルでも、ある程度のことはわかるのでございます。
 私は、具体的に日本証券業協会がどういう調査をされたか、詳しいことは知りませんけれども、少なくとも千サンプルあれば、非常にランダムネスをきちっと確保すれば、ある程度のことは統計上、推計学上出てくるというふうに理解いたしております。
○佐々木(憲)委員 まあ、でたらめな答弁と言わざるを得ない。大体回答する人は、時間のある人が回答する傾向があるわけでありまして、こういうことを何か根拠にして低所得者が株を持っているかのように言うのは、本当に私は問題のすりかえだと言わざるを得ない。
 一番問題なのは、富が偏在しているということなんですよ。株式の譲渡所得の表、これを見ていただきたいと思うんですが、次のページです。
 所得の低い66・1%の方々は、手にしている譲渡所得は全体の6・1%なんですよ。ところが、わずか2・6%の人々が譲渡所得の72・5%を占めているんです。100億円を超える譲渡所得を手にしている人は10人おります。1人平均145億円、10人で全体の14・8%を独占している。
 もちろん、このすべてが上場企業の株式とは限りませんし、対象外の大口の方も含まれているとは思います。しかし、富の偏在というのは非常にはっきりしているわけです。
 そこに減税してやるんですから、これは金持ち優遇税制と言われて当然じゃありませんか。
○自見金融担当大臣 今、佐々木先生も御質問の中で説明しておられましたけれども、証券税制は、御存じのように、今さっき言いましたように、大口投資家は5%から3%に制限をさせていただきましたし、それから非上場株式による益は軽減税率を受けることはできませんから、そういった意味で、軽減税率が金持ち優遇税制には必ずしも当たらない、私は株式の面を通じてそういうふうに思っております。
 しかし同時に、私、政治家として申し上げれば、やはり世の中には自由と平等ということがあると思います。確かに、現実の世界には貧富の差というのがあるわけでございますが、私はやはり、自由と平等をどのようにバランスしていくかということが政治家の大変大事な仕事だなと思って、26年生きてきました。
 そういった中で、やはり自由にやりますと、能力のある人やチャンスのある人は非常に、確かに富を得ることができる傾向が強いんです。しかし、私が27年前に国会議員になったとき、超累進課税日本でございまして、9千万円以上所得のある人は、所得税が70%、地方税が18%で、88%、租税を取っておりまして、1億円ぐらい所得のある人は大体1200万円しか手元に残らなかった、そういう時代もあったわけでございます。やはり、そういった意味で、累進課税というのをどうしていくのか。
 しかし、富の偏在が起こるから、全部強制的に平等にしなさいと私が言うと、今度はすさまじい権力の施行によって、言うなれば、ソビエト社会みたいにならざるを得ないことにもなるわけでございますから、そこら辺を、私は政治家として、やはり自由と平等をどこできちっとバランスをとっていくのかということをしっかり見ていくこと。
 それから、全体として、個人も社会も富をどうしてつくるかということ、分配も大事でございますけれども、分配と同時に、やはり国富をどうしてつくっていくかということも政治家としては大事だというふうに私は思っております。
○佐々木(憲)委員 全くでたらめな答弁で、大体、平等じゃないと言っておるわけですよ、私は。富が偏在しているじゃないか、これは統計によってちゃんと証明されているわけだから。そういう大金持ちのところに減税がいくんですよ、集中して。それが証券優遇税制の延長なんですよ。何も、富を全部取り上げてどうこうなんということを一言も言っていない。そんな極端な議論をしているようでは、大臣として失格ですよ。
 大体、総合課税に戻すというのが一番必要なことだと思いますけれども、少なくとも、軽減税率の10%から、本則が20%なんですから、本則に戻せば、高額所得者のところで所得税負担率が20%以上に収れんしていくわけですね。本則20%の回復は、高額所得者の負担率が少しだけ上がる改正なんだけれども、今財政が厳しい中、この程度の財源調達機能の回復もできないようではどうにもならぬと私は思うわけです。
 そもそも、高額所得者も含めた軽減税率10%の優遇税制というのは、国際的に見ても異例なんです。海外での証券優遇税制について確認したいんですけれども、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、これと日本ですね。例えば上場株式の譲渡所得が1億円あった場合の税率は何%になるか、それを示していただきたい。
○古谷政府参考人 お答えをいたします。
 委員が提示しておられる3枚目のデータ、2010年5月時点と書いてございますが、足元では、イギリスが18の上に28という税率ができております。それから、フランスが18%から19%に引き上げられておりまして、ドイツは、この25%のほかに連帯付加税というのが乗っております。それから、フランスはさらに、個人所得課税で社会保障関連の税制がございますので、それも加味した上で、今の1億円についての試算をお話ししたいと思います。
 1年超保有した上場株式の売却によって譲渡益1億円を得た単身世帯で、他の所得がないという仮定で計算をさせていただいておりますけれども、税額と平均的な税負担率は、アメリカ、ニューヨーク州の場合は約2644万円、26・44%。イギリスでは2712万円、27・1%。フランスは3130万円、31・3%。ドイツは2635万円、26・4%。日本は1千万円、10%でございます。
 もちろん、前提の置き方によって変わりますけれども、先生から御提示いただいた仮定で計算いたしますと、以上でございます。
○佐々木(憲)委員 ですから、日本の場合は余りにも低過ぎるわけです。アメリカは26・44、イギリスは27・1、ドイツ26・4、フランス31・3、日本は10。こんな状況で、何で被災者の財源ができるんですか。
 私は、こういう証券優遇税制のような金持ち優遇税制はすぐ改めて、そういう財源は被災地に回す、こういうことをすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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