2011年05月13日 第177回 通常国会 倫理選挙特別委員会 【609】 - 質問
地方選挙延期特例法案について質問
2011年5月13日、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会は、東日本大震災で甚大な被害を受けた被災地について、統一地方選挙以降の地方選挙についても延期を可能とする臨時特例法改正案を、全会一致で可決しました。
採決に先立つ質疑で、佐々木憲昭議員は「被害の甚大さからいって必要な措置だ」と賛成を表明しました。
佐々木議員は、統一地方選挙の際、千葉県浦安市で被害の認識をめぐって市と県選管が対立し、県議選の立候補者がいるにもかかわらず投票できない事態が生まれたことをあげ「これは違法ではないか」と質問。片山善博総務大臣は「(選挙事務を)執行しなかったことは違法だった」と答えました。
佐々木議員は、被災地で選挙を実施するには、自治体に対する国の支援など特別の手立てが必要であり、様々な状況下におかれている被災者の投票権を保障しなければならないと強調しました。
片山総務大臣は、職員派遣などによる被災地支援、避難者の所在把握に全力を挙げると表明しました。
総務省は、選挙のための新聞広告や交通広告などの啓発事業を、明るい選挙推進協会へ委託してきました。
佐々木議員は、この委託費が、事業仕分けによって、今年の統一地方選挙ではゼロ(前回2.1億円)になり、啓発事業がほとんどできなかったと指摘し削るなら政党助成金の方だと主張しました。
大震災を受け、啓発事業の重要性は増していることから、必要な予算を確保するよう求めました。片山総務大臣は「検討したい」と述べました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
提案されております法案は、東日本大震災で甚大な被害を受けた被災地において、統一地方選挙以降の地方選挙についても期日を延期するというものであります。被害の甚大さからいいまして、これは当然の必要な措置であるというふうに思います。
私は、3月に成立した統一地方選挙の延期法案について賛成の態度をとりましたが、そのときに、統一地方選挙を延期している間に行われる被災地の地方選挙の問題についてどう扱うのかという質問をさせていただきました。今回の改正は、その対応策が盛り込まれているというふうに思っております。
そこで、浦安の問題も先ほどから話題になっておりますが、できるだけダブらない範囲でお聞きしたいと思います。
実際に、浦安選挙区だけ千葉県議選で選挙ができなかった、執行できなかった。この事態というのは非常に異例な事態でありまして、その経過については先ほども議論がありましたが、要するに、市長の側は、選挙事務を行う人員の確保、投開票所の開設を許可しなかった。そのために、立候補者はいたわけですね、立候補者はいたんだけれども、投票できない、こういう事態であります。しかし一方、市議選の方は、予定どおり4月17日告示、24日投票ということで行われたわけですね。
この状況というのは、法律の上からいうと、違法な状況というふうに判断できるのかどうか。まず、そこのところを伺いたいと思います。
○片山総務大臣 これは、先ほども議論がありましたように、既に通っております延期法の要件に該当するかどうか、本来指定すべきであったのではないかというような異論、反論があったことは事実でありますけれども、そういうプロセスを経た上で指定がなされませんでしたので、統一地方選挙の期日に選挙を行うということになりました。
これは、御不満があっても、そうなった以上はやはりきちっとやっていただかなきゃいけない。これは、法治国家でありますから、そうしていただかなければいけない。それを執行しなかったということは、やはり違法であるということだと思います。
○佐々木(憲)委員 きょう告示、22日投票で県議選が行われるということでありますが、結果として、浦安市の選挙区の定数二議席が欠員という事態となっていたわけです。
今回提案された法案の中に、こういう事態を受けまして、対応策というのを盛り込んだということで、先ほど御答弁ありましたように、現場の選管から意見を聞き、その意見を尊重する。これが、前になかったのが入ったということで、これは当然だと私は思いますが、しかし、仮に同じような状況が発生したときに、この違法状態をなくすということは、今回の法改正ではまだできないと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○片山総務大臣 それはそのとおりです。今回の法案で、浦安のようなことが起こらないようにするという担保を盛り込んでいるわけではありません。それは別途、もう少し時間をかけて検討させていただきたいと思います。
今回、いろいろなことが要素として出てまいりました。先ほど来出ておりますように、選挙を執行しなかったのは違法だという、これは一つの明白なことだと思うんですが、あと、いろいろなことがありまして、例えば、市長さんが、できない、できないと言って総務省にも来られたり、意見を表明されていたんですけれども、実は、市長は選挙の管理執行事務とは関係ないわけであります。これは、私なんか非常に違和感がありました。選挙の管理執行は、あえて中立性のある選挙管理委員会という独立行政委員会にゆだねられているわけでありまして、市長が判断するものではありません。
それから、公共施設を使わせないとか、職員を選挙事務に従事させないとかというのは、もしそれが本当であれば、これは幾ら何でも首長としてはあるまじき行為だと私は思います。使えないものなら、そもそも許可もへったくれもないわけで、使えないわけで、許可しないというのは、多分、使えるものに許可しないということだろうと思いますので、そういうことは決してあってはいけないことであります。
もう一つは、県の選挙管理委員会が職員の派遣も含めて全面的な支援をするということも、そんなものは要らないと言われたということが、これも報道にありまして、本当かどうかはわかりませんけれども、もし本当だとすれば、選挙の管理執行に県の選管が協力をすると言っているのに、市長がそんなものは要らないと言うのは、これもお門違い、筋違いの話であります。
それやこれや、法律上の問題とか、解釈の問題とか運用の問題でも、いろいろ今回、問題点が出てまいりまして、これらを立法上の問題、それから法律の解釈といいますか、認識の問題として改めるべきは改めなきゃいけないというのがあるものですから、この辺は少し落ちついて整理をしたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 わかりました。
次に、先ほどもちょっと出たんですが、この法案の作成過程で、最初、総務省は、統一地方選挙もその後の地方選挙も、最大限来年の5月末まで延期するという法案を準備しておりまして、我々にも説明がありました。
片山総務大臣は、この間、選挙は民主主義の根幹である、自治体の権力基盤をつくる選挙は優先して考えるべきだ、こういうふうに御答弁されておりました。その立場からいうと、最初、ややこの法案の内容は違っている感じがしたわけですが、大臣自身はどういうふうにお感じになっておられますか。
○片山総務大臣 選挙は民主主義の基盤として最も重要なものであるということを私は申し上げておりました。
その申し上げておりました背景といいますか、文脈は、当時、先ほども議論がありましたけれども、もうこの際、全国一律に延期すべきだという議論があったものですから、それは幾ら何でもおかしいんじゃないでしょうかと、やはり選挙というものは万難を排してやるべきもので、まして被災をしていないところはという文脈の中で申し上げておりました。
しかし、今議員がおっしゃったように、それとは別に、延期するにしても、やはりできるだけ早く、ルールに近い時期にやるのが筋ではないかというのはそのとおりであります。
今回、当初、来年の5月まで延期できるようにということを考えておりました。これは事実でありますが、それは、すべからく5月まで延期していいよという意味ではなくて、場合によっては一つあるいは二つぐらいの自治体が5月までいくかもしれないけれども、しかし、できるだけその範囲内で、早く早く指定していく、こういう基本的な考え方でありました。
もう一つは、何回も法律を改正していただかなくてもいいようにということであれば、ある程度、一番最長のものをにらんで、一回そこまでの授権をさせていただければ、その範囲内で総務大臣ができるだけ早く指定していくということが可能になりますので、というような考え方で最初は考えておりましたけれども、与野党の皆さん方に御相談する過程で合意が得られるというのはどの範囲かということをにらんで、今回、正式に提出させていただいた法案になった次第であります。
○佐々木(憲)委員 与野党の協議も、もう少しいろいろな角度から検討するということは私は必要だと思っております。
それから、国民の基本的な権利である選挙権というのは、民主主義の根幹でありますから、今おっしゃったように、大変重いものでありまして、4年間の任期ということで、住民の信託を受けて住民の意思を反映する、これは憲法上根本原則だと思うんですね。選挙の延期というのは、その国民の権利を制限するということですから、最小限にするということは私も同じ考えであります。
そこで、今回の大震災は、自治体の機能が非常に壊滅的な事態になった市町村もあります。選挙に限らず、自治体機能の回復というのは非常に早く行われる必要があるというふうに思います。
選挙について言いますと、総務省としては、自衛隊、警察、消防関係者、そういう方の不在者投票実施のための総務省職員の被災地への派遣、こういうことを行ったというふうに聞いております。
今後、自治体に対してできるだけ早く選挙を行うということを要請するとすると、総務省として、どのような自治体に対する支援を考えているのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
○片山総務大臣 統一地方選挙に際しまして、総務省の職員を、ある程度の人数を被災地の周辺のところに派遣しましたのは、これは自衛隊の皆さんを中心に相当大勢の方が被災地におられて、その間に統一地方選挙を迎えるということで、現地で不在者投票をするということになりますので、具体的には、例えば岩手県の遠野市などに不在者投票に行かれたわけであります。遠野市にしてみますと、思わぬ、どっといっときに自衛隊の皆さんが来られるわけで、とても自前の職員だけでは対応できないということも事前にわかりましたので、総務省の職員を派遣してその対応に当たった、こういうことであります。
今後、被災地で今度は選挙を行うということになりましたときには、その地元の市町村の職員の確保ということが必要になってまいります。そこで、これは選挙事務に限りませんけれども、現在、被災地において、特に大きなダメージを受けたところで、職員が実際に亡くなられたり、それから業務がふえて足らないということがありますので、今、同種の自治体からの専門的な知見を持った職員の派遣というものをやっております。
これは、総務省と全国市長会、町村会が相談をいたしまして、そういうスキームをつくりまして、今600人弱がもう既にこれから順次派遣されるということになっておりますので、そのスキームの中で、選挙について、何人、いつからいつまで必要だということを言っていただきますと、その派遣システムの中で応援を求めて必要な人数が現地に派遣される、こういうことになると思いますので、ぜひ該当の自治体は遠慮なく言っていただきたいということを今までも申し上げているところであります。
○佐々木(憲)委員 被災地の選挙の実施は、期間はできるだけ短い方がいいというふうに我々考えておりますが、同時に、被災者の投票権を最大限保障しなければなりませんので、被災者は、避難所で今避難されている方は把握しやすいと思いますが、全国に散り散りになっているわけです、特に原発の被災者の場合は。そうしますと、九州ですとか大阪ですとか東京ですとか、そういうところで暮らしておられるわけであります。また、住所も必ずしも一定していない。例えば、東京が提供する施設なんかも6月末とかというふうに切られる。そうなりますと、住所の把握もなかなか大変であります。
したがって、基本的な権利である選挙権を保障するという場合、そういう方々に対してどう対応するのか、これは大変大事なことだと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。
○片山総務大臣 被災をされて、特に問題になりますのが、区域外に避難をされている方だと思います。区域外に避難されている方には、きちっと選挙公報も含めて必要な資料をお送りするということになりますし、それから、不在者投票の便宜が得られることになっておりますので、それを活用していただくということでありますが、その際に、例えば、まとまってどこかに避難されている、市町村外にまとまって避難所とか仮設住宅などのあるところは、そこに仮の投票所を設ければということもありますし、それから、そうでない、かなり個人単位で、世帯単位で避難されている方には、所定の不在者投票をやっていただくことになります。
今一番私が問題だと思っておりますのは、どこにおられるかわからないという方がおられまして、その方々は連絡がつきませんから、資料の送りようもありませんし、選挙があること自体の連絡もできないわけでありまして、これが先決、急がれると思っております。全国避難者情報システムを先月の末から発動しておりまして、今、数万の方がそのシステムを通じて把握できております。でも、まだまだ把握できていない方はおられますので、まずはこの把握を急ぎたい。
一たん把握ができますと、あとは、それをフォローして、住民の皆さんの所在をきちっともともとの役場、市役所で把握をしていただくことになりますけれども、まずは、今、行方がわからない、所在がつかめない皆さん方の把握に全力を挙げて努めているところであります。
○佐々木(憲)委員 例えば、東電の仮払いが今始まっておりますけれども、対象は5万数千世帯と言われておりますが、申込用紙を配付して、そのうち4万以上が申し込みがされている、全国あちこちから申し込みが来ているということなんですね。それは、住所の把握が非常に進むという面もあるということなんですね。
したがって、国の被災者支援、この支援金の配分ということを行うことも、住民の方々がどのような地域に住んでおられるか把握する上で大変重要な契機になるというふうに私は感じておりますので、ぜひそういう面もあわせて進めていただきたいというふうに思います。
さてそこで、広報活動というのは非常に大事だと私は思うんです。つまり、その地域に現に住んでおられなくて、被災者がほかの地域に住んでいるという場合には、選挙期日が延期されましたということも、あるいは、不在者投票をこういうことをすればできますという周知徹底、こういうこともやはり広報だと思うので、前回の審議の中で、大臣は、周知するための広報が非常に重要である、国も総務省を中心にしましてできる限りの広報をしたい、こういうふうに答弁をされました。
これまでの統一地方選挙の際には、総務省が明るい選挙推進協会に委託して啓発活動、啓発事業というのを行ってきましたが、今回の統一地方選挙ではそれはどうだったのか、前回の実績はどうだったのか、これは、逢坂政務官、答えていただきたいと思います。
○逢坂総務大臣政務官 お答えいたします。
まず、前回の平成19年の統一地方選挙でございますが、財団法人明るい選挙推進協会への委託費、これは2億1千万で委託して広報してございます。広報の内容は、新聞広告、交通広告、文字放送、インターネットバナー広告、タウン誌広告、あるいは啓発情報誌などによる周知事業を実施しているところです。
それから、今回、平成23年の統一地方選挙においては、明るい選挙推進協会への委託はございません。その委託をしなかったかわりに、総務省において、ホームページそれから総務省の広報誌等を活用するとともに、政府広報において、ラジオ番組、インターネットサイト広告、音声広報CDを活用して周知を図ったところでございます。
○佐々木(憲)委員 今回できなくなったのは、新聞広告ですとか交通広告、インターネット広告、文字放送、ムービースポット広告、それからタウン誌の広告ですね。これは前回はやっていたんだけれども今回できなくなったわけです。委託費がゼロになった。
これは何でゼロになったのか。事業仕分けで、これは必要ない、こういう話で、私はおかしいと思うんですよ。今ますます震災後は必要なことでありまして、今後、この点はぜひしっかりと、予算も確保していただいて、やるべきだというふうに私は思います。カットする対象が間違っているんじゃないか、政党助成金をカットするならいいけれども、こんなところをカットしてはいけないと私は思います。
大臣、今後の展望についてお聞かせください。
○片山総務大臣 事業仕分けを通じまして問題点の指摘を受けたことをきっかけにして、先ほど来話がありますような経費はカットしたわけであります。これにつきましては、いろいろ総務省として必要性を感じているところももちろんありますし、一方では、見直すべき、反省すべき点も、それはそれで、ないわけではなかったと思います。
今後少し、指摘も踏まえ、また必要性も踏まえて、検討していきたいと思いますが、市町村といいますか自治体の選挙でありますから、自治体がそれぞれの選挙については広報するということも重要でありまして、そのための財源というのは、別途、地方交付税の算定を通じて確保されておりますので、国としての広報は広報としながら、自治体としての広報は、別途、独自に自主的にやっていただきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 自治体がやっているのはわかっているんです。問題は、総務省として独自にやっているのがカットされるというのはけしからぬということを私は言っているわけでありまして、ぜひこの点も今後復活して、さらに被災者のために広報活動を強めるように、よろしくお願いしたいと思います。
以上で終わります。