税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), その他 (災害支援)
2011年04月22日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【604】 - 質問
被災者向けの税制上の支援策について質問
2011年4月22日、東日本大震災の被災者向けの税制上の支援策を盛り込んだ税制特例法案の質疑が行われ、法案は全会一致で可決されました。
再出発へ債務免除を
採決に先立つ質疑で、佐々木憲昭議員は被災した中小企業・業者の営業再建のためには、借金の返済猶予や債務免除が必要だと強調しました。
たとえば、工場が全壊し総額8100万円の被害を受けた石巻市の船舶修理業者が、過去の借金2600万円を抱えている事例などを紹介し「被災地ではせめてゼロからのスタートを切れるようにしてほしい」という声が上がっていると強調しました。
そのため、過去に抱えた借金の返済猶予や債務免除に金融機関が積極的に応じるよう指導すべきだと主張しました。
また、事業再生資金を無利子、無担保、長期で貸し出すよう政府系金融機関が役割を果たすよう求めました。
和田隆志内閣府政務官は、債務免除について「条件変更や返済猶予などいっぱいいっぱいの努力をし、ぎりぎりのところで判断せざるをえない」と答えました。
中小企業庁の豊永篤志次長は、「個別企業の実情に応じて無担保での資金供給に努めるよう指示した、公庫や商工中金の貸し付けで大幅な金利引き下げなどをする新たな融資制度の創設に努める」と答えました。
また、佐々木議員はガソリン価格高騰に伴ってガソリン税の税率を引き下げる「トリガー条項」の廃止が、被災者支援税制に盛り込まれたことについて「被災地の住民や中小企業・零細業者の負担が重くなる」と批判しました。
五十嵐文彦財務副大臣は、「急激にガソリン価格が上下すると受給が逼迫する可能性がある。そのリスクを排除するための措置だ」などと、制度を否定する発言をしました。
被災者への納税緩和を
さらに、佐々木議員、国税庁通達に従い被災者への納税緩和措置を積極的に講じるよう求めました。
この通達(5日)は、「東日本大震災により被害を受けた滞納者に対する滞納整理について」。被災者に対する納税緩和制度の適用基準を具体的に明示しています。同通達によれば、滞納額が100万円未満の場合、財産を失い避難所生活をしている人の滞納は他の調査を省略して滞納処分を停止するよう指示しています。
佐々木議員が3月25日の財務金融委員会で納税猶予や延滞税免除を求め、大門実紀史議員が3月30日の参院財政金融委員会で国税徴収法に基づく滞納処分停止の「大胆な適用」を求めてきました。
22日の質疑で佐々木議員は、延滞税の免除措置の適用について、東京や大阪でも対象になるのかとただし、国税庁の田中一穂次長は「納税の緩和制度は地域にかかわらず適用を受けられる」と明言しました。
さらに佐々木議員が滞納処分の執行停止の対象についてただし、田中次長は「滞納者の方が避難所、仮設住宅に居住されている場合や大部分の財産を失っている場合など、いくつかの例を上げて対応している」と表明。
「滞納処分を執行できる財産がないかどうか、生活を著しくひっぱくさせる恐れのある滞納処分になるかどうかなどを考え、判断する」と答えました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
多くの被災した中小業者のお話を聞きますと、せめてゼロからのスタートが切れるようにしてほしいというのが切実な声でございます。過去の災害で負債を負っている方もいらっしゃる。話を聞きますと、裸一貫からのやり直しというならまだ救われるけれども、二重三重のローンを抱えている、あるいはリース代、支払いを抱えている、そういう方がマイナスから再出発するというのは不可能に近い、こういう声があります。
こういう切実な声にやはり政府、我々もこたえていかなければならないと思いますが、財務大臣の決意をまずお聞きしたいと思います。
○野田財務大臣 今回の震災によって甚大な被害を受けた中小企業の事業の再開に向けた対策を講じることは、大変重要な課題であるというふうに認識をしています。
このため、今回の補正予算において、災害関係保証やセーフティーネット保証といった100%保証の充実、日本政策金融公庫等による無利子化も含めた低利融資の充実を実施する、被災中小企業等に対する資金繰り支援を行うということをさせていただきます。
被災地の中小企業等が一体となって進める再建計画に不可欠な施設の復旧整備に対して、中小企業組合等共同施設等災害復旧事業、中小企業の経営相談への対応を図る中小企業支援ネットワーク強化事業、これらの措置を講ずることも予定をさせていただいております。
また、民間金融機関が、経営判断として資本増強を行い、被災地を含む地域の中小企業等に対する金融仲介機能を積極的に発揮していく上で有効な政策手段として金融機能強化法があり、金融庁において、その活用の検討を行っていただけるものと承知をしています。
いずれにせよ、被災した中小企業をしっかり支えるため、関係省庁と連携をして、万全を期していきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 財産をすべて失うということは大変な事態でありまして、先ほど小野寺議員の質問もありましたが、より具体的に事例を挙げさせていただきますが、お配りした資料を見ていただきたいんです。
例えば、石巻で船舶修理事業を行っている中小企業、これは工場全壊、鉄骨のみ残る、そういう被害であります。再建のために必要な設備は、そこに具体的に書いてありますけれども、工場、プレハブ倉庫、旋盤、洗浄機等々、全部合わせまして8100万円が必要であると。既往債務、既に過去の債務が2600万円。こういう方は、立ち直ろうとしますと、過去の債務が非常に重くのしかかっているわけであります。
それから下の方を見ますと、水産加工業者、年商8億円の方ですけれども、この方も3億3千万円の資金が必要と訴えておりますが、過去の借金が2億5千万円あります。次のページで、土木工事業を営んでおられる方は、2千万円、どうしても必要だと。同時に、過去の債務が1670万円。下に塩竈の例もございます。全部は紹介しませんが、見ていただきたいんですけれども、こういうのが実態であります。
そうしますと、これはやはり、すべての財産を失ってしまっているわけですから、借金もチャラにしてもらわないとやっていけないということなんです。金融庁にぜひお願いをしたいのは、こういう方に、過去の債務の免除とか、あるいは返済猶予とか、こういうことをしっかり金融機関が相談に応じて対応していくように、そういう指導をぜひやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○和田内閣府大臣政務官 何度か佐々木委員とやりとりさせていただいておりまして、問題意識は本当に共有させていただいております。
金融庁として、民間金融機関の方に各種の要請を出しながら、今おっしゃったような中では、既往債務の貸し付け条件の変更、返済猶予、こういったものに対してはぜひ前向きに取り組んでほしいというふうに何度も要請いたしており、金融機関の方からもしっかりと対応していただくようになっているかと思います。
一つだけ、問題意識は共有するものの、なかなか解が導き出せないのは、債務免除ということをよくおっしゃられますけれども、この債務免除につきましては、やはりそれぞれ貸付先企業の実情というのは千差万別でございますし、もともと貸付原資は民間金融機関、預金者からいただいたお金でございます。そうした意味におきまして、本当にいろいろ条件変更等をやってみて、返済猶予もやってみて、いっぱいいっぱい努力してみて、ぎりぎりのところで判断せざるを得ないという実情がございまして、一律の債務免除は難しいかというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 実情に応じてというのは当然だと思うんですが、私が言っているのは、すべて財産を失って、もう工場も何もすべてゼロという状況で債務だけ残る、これはちょっと、出発としては、何とかこれを手助けしなければならないというふうに思うわけです。ですから、実情に応じて当然そういうこともやっていただくというのは必要だと私は思っておりますので、ぜひそういうことでやっていただきたいと思います。
それからもう一つは、政府系金融機関の役割でございます。
政策金融公庫などの役割は非常に大きいと思うんですね。債権放棄の対象を高度化資金ということでやっておられると思いますが、さらに広げまして、被災者の過去の借金、債務を免除するとか、あるいは生活再建、営業再建の意欲をそういう形で後押ししていく、こういうことが重要だと思うんです。
設備、運転資金など事業再生資金を無利子、無担保、長期で貸し出す、こういうことが大変重要だと思いますけれども、先ほど財務大臣が一部おっしゃいました。ゼロからの出発をするというのは、これは政府系金融機関の役割として、そのことが可能になるように支援をするというのが必要だと思いますが、きょうは経産省から来ていただいておりますが、お答えいただきたいと思います。
○豊永政府参考人(中小企業庁次長) お答えをさせていただきます。
まず、債務の返済の猶予でございますけれども、中小企業庁におきましても、政府系金融機関や信用保証協会に対しまして、既往債務の返済猶予などに柔軟に対応するように指導してきております。また、返済期日を経過した場合におきましても、期日をさかのぼって柔軟に対応するよう、既に指示したところでございます。
融資のお話がございました。
野田大臣のお話と重複するところがございますけれども、地震や津波で直接被害を受けた方々や取引の関係にあられた方々に対しまして、公庫や商工中金によりまして低利や長期の災害復旧貸し付けなどを実施してございますし、また、直接の取引はなくても風評被害などの間接被害に遭われた方々に対しましても、業況の悪化等に直面されておられれば、セーフティーネット貸し付けなどを実施しております。
担保のお話がございました。
かねてから、担保によらない融資をということで、政府系関係機関については指導してきているところでございますけれども、今回のような深刻な影響を受けられた中小企業の方々にとられては、いよいよ深刻な問題だと思ってございます。3月の11日でございますけれども、被災中小企業に対しましては、個別企業の実情に応じて無担保での資金供給に努めるよう、指示をしたところでございます。
今後のことでございますけれども、中小企業庁といたしましては、被災中小企業の資金繰りが最も大事だ、課題だと考えておりますものですから、その制度の充実を図るべく、今回の補正予算におきましても、公庫や商工中金における貸し付けにおきまして、大幅な金利引き下げなどを行う新たな融資制度の創設に努めてまいりたいと思ってございます。よろしくお願いします。
○佐々木(憲)委員 過去の債務の免除ということもしっかりやっていただきたいというふうに思っております。
次は、法案にかかわってですけれども、ガソリン税等のトリガー条項の廃止の問題です。
これは、我々は、税制による被災者支援とはちょっと性格が違うものが入っているというふうに思っております。本格的な復興のための補正予算、第二次補正予算もこれから議論になると思いますけれども、これはそういう財源論の中で議論すべき性格のものだというふうに思うんです。
そもそもの仕組みについてまず確認しますけれども、トリガー条項が発動された場合、財源は幾らというふうに見込んでいるんでしょうか。
○五十嵐財務副大臣 一たん発動されますと、3カ月は最低で続くということになります。国と地方分と両方あるわけですが、国分で約3400億円、地方分で約1200億円、合計約4600億円ですね、3カ月で。1年に引き直しますと、国分が1兆3500億円、地方分が約4500億円で、1年間通じてこれが継続すると、約1兆8千億円の減収となります。
○佐々木(憲)委員 本予算の中では、この条項に伴う財源措置というのはなされているんでしょうか。
○五十嵐財務副大臣 本予算では、この減収は織り込んでおりません。
○佐々木(憲)委員 織り込んでいない。
そうしますと、これは、財源の裏づけはないけれども、一応条項はつくってあるということになりますね。私はこれは非常に問題だと思っています。
廃止すると、ガソリン価格が1リットル160円を超えた場合の税制上の措置がなくなって、被災地の住民、中小業者にも負担が重くなるということになると思うんですが、どうしてこれが被災者支援になるんでしょうか。
○五十嵐財務副大臣 ガソリンが、全体的な需給関係は被災直後も特に逼迫をしていたわけではございませんけれども、さまざまな思惑から、被災地以外でも大変なガソリン不足を起こしました。
それと同様のことが、急激にガソリン価格が上下するというようなことがありますと、先に買い控えておいて、安くなってから買おう、そして安くなったらどんどんため込んでおこうというようなことが起きますと、これは逆に急激な逼迫というものを起こしかねない。需給全体のバランスとしては足りているはずが足りなくなるという状況がまた起きる可能性がある。そうすると、逆に被災地向けのガソリン等必要なものが被災地で足りなくなるという状況が容易に予想されるので、あらかじめそのリスクを排除しておきたいという混乱回避の考え方でございます。
○佐々木(憲)委員 混乱回避と言いますが、この条項をなくしちゃったら混乱回避策がなくなっちゃうわけですね。つまり、急激に上がるときに一定のクッションを置く、これは3枚目の図に示してありますように、25円分がトリガーとして発動されていくわけです、それを最大幅として。ですから、これをなくしてしまうということは、支援にならないですよ、逆に。これはマイナスなんです。財源論というのはまた別な角度で財源を議論すべきでありまして、私はこの部分については賛成できないんです、ほかは別として。
これは、何らかのガソリン価格が安定するような対策はきちっと、こういうことを廃止するというのなら、何を考えているのか、そこを示していただきたいと思います。
○野田財務大臣 税の対応については今副大臣から御説明のとおりでありますけれども、被災地の復旧支援策の一環として、被災地における簡易型サービスステーションの設置支援であるとか、あるいは被災地のサービスステーションへの資金繰り対策や復旧対策、油槽所の復旧などの措置を講ずることを予定しています。
○佐々木(憲)委員 そういうことはちょっと別な話であって、ガソリン価格対策ということには直接にはならない、そういうふうに思っております。
さて次に、震災後の滞納整理の問題について国税庁にお聞きをします。
被災者の納税者に対して納税の緩和というのは大変大事だと思うんです。3月11日の震災後、参議院の我が党の大門実紀史議員が、大胆な納税緩和政策をやるべきだ、こういう提案をしております。
ことしの4月5日に通達が出されておりまして、「東日本大震災により被害を受けた滞納者に対する滞納整理について」という通達ですが、この趣旨を説明していただきたいと思います。
○田中政府参考人(国税庁次長) お答えをいたします。
今回の震災によりまして被害を受けられました滞納者の方々、これから滞納になる方も含まれると思いますけれども、その方々に対する滞納整理の取り扱いを定めまして、それぞれの方々の事情に、具体的な個別の事情によく配慮をして丁寧に対応するということで、既存の法令の制度の中身について徹底をするという趣旨で対応しております。
○佐々木(憲)委員 これを見ますと、「被害を受けた滞納者に対する滞納整理の取扱いを定め、被災滞納者に対する適切な対応に資することを目的とする」と。私たちがいろいろ要望してまいりましたことも一定程度含まれているというふうに理解をしております。
例えば延滞税の問題ですね。これで、14・6%というのは滞納者の非常に高い負担になるわけですけれども、今回の震災で適用される措置で、この延滞税は免除されるということになるんでしょうか。
○田中政府参考人 今般の震災によりまして被害を受けられました納税者の中には、いわゆる納税の猶予あるいは換価の猶予などの納税緩和制度の適用を受けられる方も多数いらっしゃると思います。例えば財産に相当な損失を受けた場合の納税の猶予、あるいは納付困難な理由がある場合の換価の猶予を受けた場合、その期間中につきましては、国税通則法の規定によりまして延滞税の免除がなされるということになります。
○佐々木(憲)委員 対象の範囲ですけれども、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県が指定地域とされておりますね。しかし、別な、東京、大阪の地域でも、震災の影響によって大変打撃を受ける、納税が困難になっているという納税者もこれは対象になるのかどうか、確認をしたいと思います。
○田中政府参考人 今御指摘にございましたように、まず国税通則法の11条によりまして、納期限の延長という制度がございまして、今回も一定の地域についての指定を行った上で、納税者の方々につきまして納期限の延長を行い、それから、その指定をしなかった地域の方々につきましても、個別の指定によりまして延長を受けることができるとされております。
この制度とは別に、先ほど御説明しましたような納税の緩和制度がございまして、この納税の緩和制度につきましては、地域指定の有無にかかわらず適用を受けることができるということになります。
○佐々木(憲)委員 通達では、今回の震災の影響で納税の滞納処分の執行停止の対象となり得るケースとして、停止見込事案というのを定めているんですが、どのような事案が停止見込事案となるのか、説明をしていただきたい。
○田中政府参考人 幾つかの例を定めまして、まず、滞納処分の停止を行う可能性がある事案というのを想定いたしまして、それをピックアップしまして、それをさらに検討するということにしております。
例えば滞納者の方が避難所あるいは仮設住宅に現在居住されている場合、それから大部分の財産を失っているような場合、これは保険がきくような場合はちょっとそこは別でございますけれども、そういう場合。それから、滞納者の方が亡くなってしまったという場合の相続におきまして、相続人に納税義務の承継手続を行っても徴収できる見込みがないような場合。幾つかの例を挙げて対応しております。
基本的考え方としましては、この例に基づいて判断をしまして、滞納処分を執行することができる財産がないかどうか、それから、生活を著しく逼迫させるおそれのあるような滞納処分になるかどうか等々を判断をして、判断をするということになります。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
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