税制(庶民増税・徴税), その他 (法人税, 大企業減税, 強権的徴税, 災害支援)
2011年03月25日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【597】 - 質問
法人減税撤回を 被災者の納税猶予を 納税者の立場に立った税務行政を
2011年3月25日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、法人税減税や被災者の納税について、「納税者権利憲章」について、質問しました。
佐々木議員は、震災復興財源について日本経団連の米倉弘昌会長でさえ「法人税率引き下げも検討の対象」と発言しており、政府は減税をやめるべきだと追及しました。野田佳彦財務大臣は「ご指摘のものも含めて議論する」と減税撤回の可能性を示唆しました。
また、佐々木議員は、東日本大震災の被災者の納税について、深刻な被災の状況を配慮し、十分な納期限の延期を要求。やむを得ず税を滞納している人がいることを指摘し、「延滞税が加算されていく。被災者の申請に基づき無条件で納税猶予の措置をとるべきだ」と求めました。
野田財務大臣は、「一時納付できないと認められれば申請に基づき猶予できる。猶予期間に対応する延滞税は免除される」と答弁。「滞納者の状況、心情に配慮しながら適切に対応する」と明言しました。
次に、国の税金に関する基本事項などを定めた国税通則法「改正」案についてただしました。
佐々木議員は、法案に盛り込まれた「納税者権利憲章」の作成にあたっては「納税者の要望をきちんと反映させることが大事だ」と強調しました。
野田財務大臣は「作成のプロセスの中で、納税者の要望を反映させる」と答えました。
佐々木議員は、「税務調査」が納税者の同意を得て行う「任意調査」であり、大口・悪質な脱税を摘発する「査察調査」とは違うと指摘しました。
五十嵐文彦財務副大臣は「任意調査は適正な課税を行うことが目的だ」と答えました。
佐々木議員は「質問検査権は任意調査に関するものであり、相手の都合を聞いて、同意を得て行うことが基本だ」とただすと、五十嵐財務副大臣は「その通りだ」と答えました。
さらに佐々木議員は、調査の「事前通知」に例外規定が設けられたことについて、「税務署長等の判断で拡大解釈できるようになる」と指摘し「さらに限定的な規定を設けよ」と求めました。
また、佐々木議員は「帳簿類の提示・提出」が盛り込まれたことについて、守秘義務が定められている医師が税務署からの求めに応じてカルテを任意で提出した場合など、守秘義務違反に問われる可能性があると指摘。
「任意調査で事実上、プライバシーの侵害まで求めるやり方は問題だ」と批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私は、先日この財務金融委員会の質問で、震災に対応する課題として、法人税の減税の問題について、これはもうやめるべきだという質問をいたしました。それに関連して、最近、日本経団連の米倉会長がこういう発言をしております。昨年決まった法人税の引き下げも検討対象になるだろう、あるいは法人税減税分を財源に回すことも検討対象となる、こういう趣旨の発言をされております。
私は、これは当然のことだろうというふうに思うんです。今まさに補正予算がこれから議論になろうとしている、そういうときに、ともかく黒字の上がっている企業には減税を上乗せしてやるんだ、内部留保もじゃぶじゃぶある。これはちょっと、全体として考えますと、余りにもバランスを欠くものだというふうに思います。
財務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○野田財務大臣 今は、各省庁、総力を挙げて被害の現況把握に努めています。その現況を把握した上で、適切な対策を講じるために補正予算を組んでいきたいというふうに思います。
その補正予算を組む際の財源については、いろいろ今御議論いただいておりますが、まだ特定のものを定まって今考えているところではございません。ただ、言えることは、震災の前と後では状況は劇的に変わっておりますので、まさに復旧復興に全力を挙げるという中で政策の優先順位を決めていかなければならないと思います。
歳入についても、歳出だけではなくて同じことが言えるというふうに思いますので、これは与野党が基本的議論をしながら、補正予算を通さなきゃいけませんから、スピーディーに通さなきゃいけませんから、お互いに合意形成できるようなものとするためには、今の御指摘のことも踏まえて議論をさせていただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 次に、納税の問題ですけれども、3月11日の大震災というのは、確定申告のまさに最終盤で起こったわけです。既に申告が終わった方もいらっしゃいますけれども、そういう方は支払いに対する不安を抱えておりますし、まだ申告を済ませていない方は、書類が紛失して非常に不安だということもあります。
国税通則法の第11条の規定によりますと、法定納付期限は、延期されてはおりますけれども、これは災害のやんだ日から2カ月が期限、こういうふうにされているわけですね。災害のやんだ日、これを一体どのように認定するかというのが問題でありまして、今回の被災地の状況を見ますと、かなりの期間を見込まなければならぬと思います。
納税者の声などを反映して判断されることが非常に大事だと思いますけれども、この点の対応をどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
○野田財務大臣 佐々木委員の御指摘のとおり、国税通則法第11条においては、災害その他やむを得ない理由により申告などの行為をすることができないと認められるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2カ月以内に限り期限を延長することができるとされていますが、この期日については、国税庁長官や税務署長が指定をすることとされております。この規定に基づく災害のやんだ日は、申告等をするのに差し支えないと認められる程度の状態に復した日ということで、これまで取り扱ってまいりました。
今回の期限、どこまで延ばすか、延長するかについては、今御指摘のとおり、今般の被災の状況を見きわめながら、被災された納税者の方々に十分配慮して対応していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 納税をされている方はそういうことですけれども、滞納をしている方、被災者の中には相当いると思うんですね。
ほうっておきますと、滞納に対して延滞税が加算されていく。被災者の申請があれば無条件で納税の猶予などの措置をとるというのが必要ではないかと思います。この滞納加算というのはどんどん膨れ上がっていきますから。
この点について、いかがでしょうか。
○野田財務大臣 納税の猶予については、国税通則法第46条第2項の規定により、滞納者が震災により国税を一時に納付することができないと認められる場合において、その納付困難な金額を限度として申請に基づき行うことができるとされ、その猶予期間に対応する延滞税は免除されることとなっております。
納税の猶予の要件に該当するかどうかについては、震災の被害の状況を十分踏まえた上で適切に処理する必要があると思いますが、いずれにしても、滞納整理に当たっては、滞納者個々の実情に即して、法令に基づき適切に対応することを基本としておりまして、国税当局において、被害を受けた滞納者の置かれた状況、心情にも十分配意しながら適切に対応していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 では次に、法案の関連で、納税者権利憲章の問題についてお聞きします。
税制というのは議会制民主主義の根幹であるというふうに思いますし、民主党税調が2008年12月に出された民主党税制抜本改革アクションプログラムというのがありますね。その中に、こういうふうに書かれております。「これまでの税制は為政者の立場に立ったものであった。それは税務行政にも表れている。民主党は税制の中身のみならず、税務行政についても納税者の立場に立ち、根本から改革を進める。」
私はかなりこれに共感をしておりますが、この意味、これはどういうことか、確認をしておきたいと思います。
○野田財務大臣 これは、税制、税務行政に対する納税者の納得、信頼を確保する観点から、納税者の立場に立ちつつも、適正、公平な課税の維持に配慮したものとすることが重要である、こういう考え方によって立つものでございます。
○佐々木(憲)委員 今回提出された法案によりますと、「国税庁長官は、次に掲げる事項を平易な表現を用いて簡潔に記載した文書を作成し、これを公表するものとする。」とあります。
ここで言う「簡潔に記載した文書」というのがいわゆる納税者権利憲章ということなのか、確認をしておきたい。
○野田財務大臣 御指摘のとおりでございまして、納税者権利憲章は、納税者の権利保護の観点から、納税者が受けられるサービスや求めることができる内容をお示しするとともに、課税の適正化の観点をも踏まえ、納税者に気をつけていただきたい事項などについて、一連の税務手続に沿って、一覧性のある形でお示しすることにしておりますけれども、御指摘のとおり、国税庁長官が平易な表現を用いて簡潔に記載した文書を作成し、これを公表する、そういう形になっております。
○佐々木(憲)委員 国税庁長官が作成するとなると、いわば徴収する側からつくるということになるわけでありまして、「税務行政についても納税者の立場に立ち、根本から改革を進める。」そういう民主党の先ほどの立場からいうと、このつくり方に問題があるんじゃないでしょうか。
事前に案を公表して、納税者の要望がきちっと反映されるということが私は大切なことだと思うんですが、それはどのようになされるのか、手だてについてお聞きをしたいと思います。
○野田財務大臣 憲章については、策定根拠や記載すべき項目を法定化した上で、行政文書として国税庁長官が定めるわけでありますけれども、基本的には、改正税法の施行後、国税庁長官が改正税法の規定に従って作成し、財務大臣の承認を経て、税制調査会に報告した上で公表するという段取りを踏みますが、この際、財務大臣の承認を経て、税調において報告した上で公表するのでありますので、その過程において、委員の御心配のところの納税者の要望ということでございますが、このプロセスの中で反映することができるというふうに理解をしています。
○佐々木(憲)委員 次に、税務調査について伺いたいと思うんです。
この法案で言う税務調査というのは、これはあくまでも相手の同意を得て行う任意調査のことだと思うんです。これは、大口、悪質な脱税を摘発する捜査とは違うと私は思うんですが、この違いについて説明をしていただきたい。
○五十嵐財務副大臣 おっしゃるとおりでございます。
任意調査というのは、適正な課税を行うことが目的でございまして、各税法に規定されている権限、いわゆる質問検査権に基づいて実施するものでございます。これに対して、今言われました捜査といいますか査察調査は、脱税事件として検察官に告発し、刑事訴追を求めることを目的とし、法律的にも国税犯則取締法に基づいて行われるということでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、質問検査権というのは任意調査に関するものでありまして、相手の都合を聞いて同意を得て行う、これが基本だと思いますが、いかがですか。
○五十嵐財務副大臣 基本はそのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 その場合、原則として事前に通知するということとしているようであります。税務署は、事前に納税者に調査を行う旨を通知して、日程や場所について調整を行うと。
この事前通知の必要な理由について説明をしていただきたい。
○五十嵐財務副大臣 税務調査については、手続の透明性、それから納税者の予見可能性を高めるという観点から、事前に通知をするということでございます。
○佐々木(憲)委員 事前通知をしない場合、例外についての規定がありますね。それにはこう書かれているんです。一つは、違法または不当な行為を容易にするおそれ、二つ目は、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、三つ目は、国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ。全部、おそれなんですね。
つまり、税務署長がおそれがあると判断をすれば、事前通知がなくても調査ができる、こんなことになるのではないか。これは幾らでも拡大解釈ができるんじゃないかと思いますが、どうですか。
○五十嵐財務副大臣 この書きぶりは、情報公開法の適用除外規定などと符合が合うようになっておりまして、過度に広過ぎるといったものではございません。
また、実際の適用上も、これは何らかの情報、確実な情報があって、あるいはそれまでの事前の調査状況からそういうおそれが強いと判断されるときに限って行われるものと承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 この議論の過程で、峰崎直樹内閣官房参与はこういうふうに言っているんですね。その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれというのは非常に広い包括規定になり過ぎているのではないか、こういう意見を述べておられまして、私もそのとおりだと思うんです。
例えば、税務署に対して少しでも逆らえば、この規定に合致すると判断されて、通告なしで調査がされる、こういうことが可能になるのではないか。したがって、峰崎氏は、政府に指摘をしたが直らなかった、こういうふうに言っているんです。
なぜこれは修正しなかったんですか。
○五十嵐財務副大臣 お言葉でございますが、国税当局と納税者とは、敵対する関係ではございません。
そういうことではなくて、互いに信頼関係を保ちながら、国の基礎となる財政を支えるために、大部分の納税者は正直に、また誠実に納税義務を果たしておられるわけで、国税当局も、その信頼関係を高めながら職務を務めているわけです。一方的に強制的に、昔の非民主的な社会、国家における徴税というのとは、現在は全く違った姿でその事務が行われておりまして、そうした拡大解釈のおそれはない。
お互いに、納税道義と信頼関係を高め合うことによって、公平、納得できる、そういう税務を行うということを心がけている。現在もそうだと思いますし、そういうおそれはないものと考えております。
○佐々木(憲)委員 その説明だけでは納得できませんね。
政府税制調査会の納税環境整備小委員会の座長をされていた三木教授は、税務署長などが主観的に判断していいこととなると、裁量の幅がどこまでも広がってしまい、実質的には原則と例外がひっくり返ってしまうおそれがあるということも指摘をされております。
恣意的判断を避けるというのは非常に大事なことでありまして、先ほどの説明も若干ありましたけれども、法律上の手だてというものはしっかりあるんでしょうか。
○五十嵐財務副大臣 事前通知等の例外事由につきましてですが、税務署長等が、調査の相手方である納税者等の申告もしくは過去の調査結果の内容、また、その営む事業内容に関する情報その他国税庁等が保有する情報にかんがみ、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準または税額等の把握を困難にするおそれ、その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合と、きっちりと書かれております。
例えば、事前通知することにより、帳簿書類の破棄が行われる、あるいは正確な課税標準や税額の把握を困難にするような行為が行われるおそれがあるという場合に限って事前通知は行わないものとするということでございまして、例外事由が法律上明確化されることに伴い、国税当局においては、例外事由に該当するかどうかについて適切に判断がなされるものと考えております。
○佐々木(憲)委員 それはちょっと、限定的な対応ということの説明にはならないですね。先ほどの、おそれがある場合というその範囲内のことであります。これでは恣意的な調査ということもあり得るので、さらにここは厳密な、限定的な規定をしっかりやってもらわなきゃならぬ。
政府部内でも、それから税調の中でも、この点についてはいろいろな疑義が出ているわけですから、そういうことはきちっとしてもらわなきゃいけないというふうに思っております。
それから、帳簿書類その他の物件の提示もしくは提出を求めることができると書かれておりますが、これは当然、相手の承認を得て提出させるということだと思うんですが、いかがですか。
○五十嵐財務副大臣 そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 例えば、病院のカルテなどはどうなるのか。
医師、弁護士、税理士などは、法律上、守秘義務が定められております。そういう職業の方が、例えば、税務署から医師がカルテの提出を求められて任意で提出をした。その場合、後で、情報元になる人が、自分のプライバシー、個人情報を開示したのは守秘義務違反だということで訴えられた場合、それは守秘義務違反には当たらないというふうに断言できるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○野田財務大臣 刑法上、医師が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときには、秘密漏えい罪に問われることになりますが、正当の理由のある秘密の漏えいは犯罪を構成しないと考えられます。
この場合において、税務調査は一般的には正当の理由に当たると考えていますが、いずれにしましても、御指摘の事例が秘密漏えい罪に当たるか否かについては、事実関係に即して個別に判断されることになると考えます。
○佐々木(憲)委員 これも、明確な守秘義務違反に当たらないという断言ができないわけでございまして、そういう書類まで、任意調査という枠の中で事実上プライバシーの侵害まで求めるような、そういうやり方をするというのは非常に問題があるというふうに思います。
ほかにもいろいろな問題がありますけれども、私は、もう質問時間が参りましたので以上で終わりますが、先ほどの山本幸三さんの質問と全く別な角度から、つまり納税者の立場、そこから考えると非常に問題がいろいろあるということを指摘しておきたいというふうに思います。取る側の論理、そればかりが先行するようなことではならないということを明らかにしておきたいと思います。
以上で終わります。