アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

税制(庶民増税・徴税), その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP, 農林漁業・食の安全)

2010年03月16日 第174回 通常国会 財務金融委員会 【560】 - 質問

農産物の国境措置で菅財務大臣に質問

 2010年3月16日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員は、関税法改正案について菅直人財務大臣に質問しました。

 佐々木議員は、法案に関連して農業や中小企業を守るための国境措置の重要性について、菅大臣の認識を聞きました。
 菅大臣は、「その重要性は認識している」と答えました。
 佐々木議員は、国境措置が撤廃された場合、国内農産業生産総額が約3兆6000億円減少し、自給率は40%から12%に激減するなどとした農林水産省の試算(2007年)を示したのに対し、菅大臣は「こういう結果をもたらしていはならない」とする一方、「交渉をやるなかで農業を守る」と述べました。
 佐々木議員は、アメリカ側が、2007年2月16日に発表された「日米同盟に関する報告書」(第2次アーミテージ報告書)で、「農業は、コメを含む全分野が交渉対象となる米日FTAの中心部分になりうるし、ならなければならない」と、日本の農産物をターゲットにする姿勢を示していることを指摘。
 民主党が促進を公約している「日米FTAの交渉」に反対であり、国境措置の維持・強化と所得補償などを組み合わせて、日本農業を守ることが重要だと強調しました。

 佐々木議員は、提案されている法案について、次のように述べて反対しました。
 水際取締り強化のための罰則水準の引き上げ、認定事業者(AEO)制度の届出手続きについて若干の改正等が含まれているが、中心をなしている「暫定税率等の適用期限の延長等」を求める措置には反対です。
 もともと日本は、WTO協定を受け入れる以前、コメ、麦、乳製品、でん粉などの輸入数量制限などを行い、コメはいっさい輸入してきませんでした。
 しかし、ウルグアイラウンドの農業合意にもとづいて、農産物の関税化・自由化を受け入れることとなりました。
 コメについては、関税化の特例措置を受け入れる一方、その代償としてミニマムアクセスを割り増しさせられてきました。
 これによって、年間70万トン〜80万トンを押しつけられており、さまざまな問題を惹起しいています。
 したがって「暫定税率等の適用期限の延長」措置について、これまでも反対してきたが、それを延長する法案なので今回も反対します。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 法案に関連をして、基礎的なことからお聞きをしたいと思います。
 関税などの国境措置というものは、基本的には、国内の農業や中小企業を守る上で重要な役割を果たすものだと私は思っております。まずこの点で、菅財務大臣の基本的な認識をお聞きしたいと思います。
○菅財務大臣 関税を初めとする国境措置は、国境において内外価格差を調整する機能等を通じて、国内産業保護のために重要な役割を果たしている、そう認識しております。
 一方で、世界経済の持続的な発展のためには、保護主義の抑制及び自由主義、自由貿易の推進というものが重要だと考えております。
 また、国境措置が消費者に与える影響も、諸外国との関係に与える影響についても十分に考慮する必要があり、関税政策においてはこれらの点を総合的に勘案することが必要だと思っておりまして、基本的には、佐々木委員が言われたような性格を持っているということは私も認識をいたしております。
○佐々木(憲)委員 もしこの国境措置というものが撤廃されたら、例えば日本の国内の農業というのはどうなるのか。その影響を試算したものが、農水省から平成19年2月に出されております「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」というものでございます。結論だけで結構ですが、紹介していただけますか。
○佐々木農林水産大臣政務官 お答えさせていただきます。
 今、委員から御指摘がありました試算というのは、当時の経済財政諮問会議の民間議員から、国境措置が撤廃された場合に国内農業への影響はどうなるのかということを公表すべきだという指摘があって、関税あるいは国境措置を撤廃した場合の影響について、財政負担等追加的な対策を行わないという前提でまとめたものでございます。
 事実関係でありますが、それによると、国境措置の撤廃により、内外価格差が大きくて外国産品との品質的な優位性がない米、麦類、砂糖、生乳などを中心に、国内農業生産額が約3兆6千億円減少。これは当時の農業総産出額の42%に相当するわけであります。国産農産物の大幅な減少により、自給率は40%から12%に低下。それから、農産加工など関連産業を入れますと、国内のGDPが約9兆円減少。さらに、就業機会等でありますが、これらの関連産業を合わせますと、約375万人の就業機会が喪失するというような試算が行われております。
 また、国境措置の撤廃により国内農産物の価格低下分を補てんするための費用ですが、それについては、少なくとも毎年約2兆5千億が必要というふうな試算が出てございます。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 これは、私も最初に見たときは大変衝撃を受けたわけであります。非常に重大な結果がもたらされるという感じがしますが、菅大臣はこれを見てどういう感想を持たれるか、感想をお聞きしたいと思います。
○菅財務大臣 まさに、もしこのとおりになるようなことをやったとすれば、日本の農業を崩壊させることになる、こういう結果をもたらしてはならない、このように思います。
○佐々木(憲)委員 国内産業を守るための国境措置の重要性というのは共通の認識があると思いますが、今後どういう対応をするかということが問われると思います。
 昨年の総選挙の際に、民主党はマニフェストで、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進」する、こういうふうに明記されました。それまでにあった、これは案というんでしょうか前段では、FTAの締結と書かれていたわけです。この批判が非常に強く起こったために、交渉の促進というふうな表現に変えたのだと思いますが、この締結と交渉促進というのはどう違うのか。これは、直接これに携わった菅大臣としてのその当時の認識をお聞きしたいと思います。
○菅財務大臣 当時、結果として私はこの調整に当たりまして、よく経緯は覚えております。
 基本的には、当初、米国との間で自由貿易協定、FTAを締結し云々と書いたことに対して大きな誤解を生んだ。つまりは、米国との間でFTAを締結するというのを、米国の要求をすべて受け入れて締結するというふうに、決してそういう意味ではないとは申し上げたんですが、いや、そうだそうだと言われて、大変な誤解を生み、あるいは生みかけたものですから、やはりそういう意味では誤解されない表現にするために、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、」というふうに改めたということでありまして、考え方を変えたというよりも、つまり、米国の言うことを100%聞いて締結するんだというような誤解を招かないように表現を改めた。
 そして同時に、記者会見をいたしまして、「食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」ということもあわせて申し上げました。
○佐々木(憲)委員 誤解を与えたので表現を変えた、しかし基本的な考え方は変えたわけではない、こういうふうな答弁でした。
 果たして、交渉をするという場合、日本の農業に打撃が与えられることになるのか、あるいはそれ以外の方法というものがあるのか、これは大変重要な問題であります。
 日米の関税というものを比較してみますと、日本が競争力を持っている鉱工業製品、この関税というのはかなり低くなっております、アメリカに比べて。非農産物というくくりで見ますと、日本は2・6%、アメリカは3・3%。アメリカよりも日本の方が低いです。他方で、農産物というものをとってみますと、平均関税率は日本は23・5%、アメリカが5・3%。これは日本の方が格段に高いわけであります。高い関税率が実施されているのは、例えば米ですね、778%、こういう品目があります。
 こういう状況の中で日米のFTA交渉というのを推進するということになりますと、一体どういうことになるか。農産物、とりわけ米などが、アメリカ側の関心事、あるいは我々に言わせると標的といいますか、そういうものになりかねない。
 それが仮に関税の大幅引き下げ、あるいは撤廃ということになれば、これはもう農業にとっては大打撃になるわけでありまして、交渉といいましても、アメリカは日本の農産物の関税を下げなさいと言う、日本はアメリカに対して鉱工業製品の関税を下げなさいと言う、こういう関係にならざるを得ないんじゃないでしょうか。
○菅財務大臣 十分おわかりの上で質問されていると思いますが、マルチの交渉のWTO、あるいはバイでの交渉のFTAなど、やはり日本が一方で貿易立国の国である中でいえば、そういった自由貿易の原則というのは、やはり我が国にとっても大変、これだけの経済大国といいましょうか、経済成長にとっては大変大きな国際的なプラスのインフラになっているということは、これはお互い認めなければならないと思うんです。
 その中で、いかにして日本における農業を、安心して若い人も農業で子供を生み育てることができ、そして地産地消を拡大して自給率を高めることができ、そして一方で、そういうバイやマルチの中でそこは守りながら、鉱工業製品などを含めた自由化をより進めていくか。
 確かに、交渉は簡単ではないと思いますし、この間も、そのために、必ずしも他の国に比べてそういったものが進展しているとはやや言えないといいましょうか、おくれているという見方も強いわけであります。
 ただ、交渉でありますから、何か相手がそういうことを要求しているから初めからもう交渉はしませんという姿勢ではなくて、交渉は大いにやりましょう、しかし、主張すべきことあるいは守るべき原則はしっかり守ろう、そういう意味を含めてのマニフェストである、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 私は、日本の大手企業にとっては、アメリカに対して輸出をふやしたい、そのためにアメリカの関税は下げてもらいたい。それに対して、アメリカは日本に対して、そのかわり農産物の関税を下げなさいと言ってくる。こういう交渉にならざるを得ないと思うんです、今の状況は。したがって、そういう交渉に日本が臨む、あるいはそういう交渉に入るということ自体非常に危険であると私は思っております。
 交渉をするなということは言うな、交渉はするんだ、これは今の政権の姿勢かもしれません。しかし、私は、その方向に行くと大変危険な事態になる、こういう危惧を持っておりまして、日米FTA交渉というものはやるべきではないという立場に立っております。
 なぜかといいますと、例えばアメリカが日米同盟に関する報告書というのを2007年2月16日に出しております。これはアーミテージ報告と言われておりますが、いろいろな分野を書いております。
 この報告書によりますと、農業は、米を含む全分野が交渉対象となる、米日FTAの中心部分になり得るし、ならなければならないと。つまり、米を含む農産物は対象にする、そうしなければならない、こういう立場でありまして、これは農産物を除外するという立場には全く立っていないんですね。
 だから、交渉によって日本の農業を守ることができると言いますが、交渉に入ること自体こういう危険性を惹起するという意味で、多くの農民の皆さん方が、日豪FTAあるいは日米FTA、これはもう絶対に反対である、そういう交渉自体を阻止するんだ、こういうふうな大運動も展開されている状況でありますので、そういうことをよく理解していく必要があるというふうに私は思っております。
 日米FTAで関税が仮に撤廃されるということになりますと、日本の農業に対する打撃は、例えば日米経済協議会の委託研究というのがありまして、「日米EPA 効果と課題」、これは2008年の7月に出されております。
 その報告書によりますと、米の生産は82%マイナス、穀物は48%マイナス、肉類は15%、それぞれ減少するという結論が出ているわけです。したがって、この日米FTA、交渉に入ったら、最悪の場合そういう事態も招きかねないということを私は指摘したいと思います。
 菅大臣はどのようにお考えでしょうか。
○菅財務大臣 私どもも、このマニフェストでいろいろ当時指摘を受けたときに、当時の与党であった自民党のマニフェストも、マニフェストといいますか政策も拝見をさせていただきまして、結論的には、表現は微妙に差はありましたが、交渉の促進という点では、結果として共通の表現であったというふうに記憶をいたしております。
 先ほど来申し上げていることを繰り返して恐縮ですが、交渉するということと相手の言うことを丸のみするということは全く違うわけです。ですから、私たちは、きちっとした原則を立てて、そして守るべきものは守る。
 しかし一方で、これは日米だけではありません、まさに最近では、韓国などがかなりの国々とFTAを締結して、ある意味で、そういった世界の自由貿易の中で積極的な活動をしていることは御承知のとおりでありまして、ややもすれば日本が、必ずしも日米ということだけではなくて、他の国々とのFTA交渉等もやや足踏み状態にある。ですから、交渉自体を一切しないんだという姿勢はとるべきではない。あくまで、交渉はするけれども原則は守る、農業は守る、こういう姿勢でいくべきだと私は考えております。
○佐々木(憲)委員 交渉をするということは、締結に向けてお互いに譲歩するということになるわけですね。
 今の日本の状況でいいますと、財界側はぜひ結びたいと言っているわけです。農業、農民の側は、それは絶対に反対であると言っているわけです。
 そうなりますと、いわば財界が、輸出自由化、貿易の自由化をどんどん進めるという立場で、利益を求めてどんどん国際的な国境措置を取り払っていく。それに対して農民の側は、国境措置を取り払われると農業がだめになる、先ほどの農水省の試算によっても、大打撃を受ける、こういうふうにされているわけですね。もちろん、譲歩しない、譲歩しなければいいんだと言うんですけれども、これはなかなか、一度交渉に入りますと非常にシビアなことになります。
 例えば、鳩山内閣としては戸別所得補償制度の創設というのを言っていますね。国境措置が低下をしていくあるいは撤廃される、そうすると、その差額を埋めるために、先ほど御答弁がありましたけれども、2兆5千億円というお金が必要になるわけです。財政的にも果たして耐えられるのかという問題につながるわけですね。
 だから、我々としては、国境措置をしっかり維持強化する、それと同時に、この所得補償なども組み合わせていくということをやらないと、日本の農業は守ることができない、こういうふうに私どもは考えているところであります。
 今回提案されている関税というのは、この国境措置を取り払うというものではありませんが、しかし以前は、日本の例えば米あるいは麦、乳製品、でん粉など、これは輸入数量制限というので規制をしていたわけですね。米は一切輸入はだめだったわけですが、ウルグアイ・ラウンドの合意に基づいて農産物の関税化、自由化を受け入れることになって、高い関税率だけれども自由化の方向に行った。そのことによってミニマムアクセスの割り当てをふやされたり、あるいはさまざまなそれにかかわる問題というのが発生してきたわけですね。
 私たちはそういう意味で、今回提案されている法案については、この暫定税率等の延長ということでありますので、従来我々はこの点では反対してまいりましたので、今回もこの法律については反対をいたします。
 今後の展望について、先ほど、鳩山内閣は、この日米FTA等々については前の政権と余り変わらないという姿勢をとられるように感じましたので、この点については、私どもは明確に違う立場をとっておりますので、今後さらに議論をしていきたいというふうに思います。
 きょうは、以上で終わりたいと思います。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる