その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP, 農林漁業・食の安全)
2009年03月18日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【501】 - 質問
関税定率法改正案 「日本の経済基盤を守る立場に立つことが大事」
2009年3月18日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、関税定率法の一部改正案について質問と反対討論を行いました。
前週のG20で、与謝野馨財務大臣がGDPの「2%」の財政出動をアメリカに約束した発言をしていること、農林漁業や中小企業を保護することが日本経済を再建する上で重要だということ、そのためにも国境措置の果たす役割が大切だということ等、質問しました。
与謝野大臣は、「2%」をアメリカに約束したものではなく、日本が2回の補正や来年度予算の規模を説明しただけと答えました。
国境措置については、その重要性については認めたものの、国際的な経済関係も大事だという答弁で、国内産業を守ることを優先させる姿勢は示しませんでした。
また、佐々木議員は関税など国境措置の役割が、日本の農業を守るうえで大変大きいのではないかと質問。
これにたいして与謝野大臣は、「農業にどんなに補助金を出してもいいんじゃないか。日本の基礎的な食料、基礎的な水産業、こういうものはみんなの力で守るということはどうしても必要だ。また子孫に対する責任でもある」と答えました。
佐々木議員は、農林水産大臣が、2007年に「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響について」で公表した国境措置が全部なくなれば40%の食糧自給率が12%に低下するという試算を紹介。
事実、こんにゃくいもの関税を無税にしたことで、2008年度の輸入数量(4月〜12月)が約3倍に増えたと指摘し、国境措置の重要性を指摘しました。
この点では、与謝野大臣は「WTO等の貿易の自由化交渉と日本の農業を守るというものの両立をどう政治がはかっていくかが課題だ」と、あいまいな態度をとりました。
佐々木議員は、国境措置の早期値下げは、日本経団連などの財界が要望していると述べ、いまの国際環境の中で弱い中小企業や農業を守るということを常に考えないと、国民の食料や国土保全が危うくなると主張しました。
そのうえで「日本の経済基盤を守るんだという立場に立つことが大事だ」と強調しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
最初に、G20の問題についてお伺いしたいと思います。
財政出動による景気刺激策というのが一つの話題になったというふうに報道されております。朝日新聞の3月16日付によりますと、ガイトナー米財務長官との会談を13日に与謝野大臣が行って、その中で、米国の主張に沿って国内総生産、GDPの2%という財政出動の数値目標を達成する意向を表明した、こういうふうに報道されております。こういうふうに意向を表明されたんでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 ガイトナー米国財務長官との会談やG20の会合において、我が国は累次の経済対策を実施していること、また、総理の指示を踏まえて、与党において今後の経済情勢の変化への対応策の検討が始まっていることなどを御説明申し上げました。その際、75兆円の規模の経済対策により、既にGDP比2%程度の財政措置を行うこととしていること等を御説明申し上げました。
ただし、それ以上に踏み込んで何かを約束したとか、2%の財政出動にコミットしたということはなかったわけでございます。
○佐々木(憲)委員 GDP2%というのは非常に大きな規模で、500兆円とすると約10兆円となりますか、大変な金額で、しかもこれからこれをやるということになりますと、何もまだ決まっていないのに新たにこういう発言をされるというのは、非常に私は問題が大きいと思ってお聞きをしたわけです。
一体この2%というのはどこから出てきたのかということなんですが、実は、ヨーロッパではなくて、サマーズ米国家経済会議議長がイギリスの新聞のインタビューで、各国が協調して財政出動を継続的に強化する重要性を表明した、それに続いてガイトナー財務長官が国内総生産の2%相当の景気対策を実施すべきだとの考えをにじませ始めたというふうに報道されているわけです。正式に提案をしたわけではなくて、にじませ始めたと。それに対してヨーロッパの側は、その呼びかけは好ましくないという反発をしたというふうに報道されているわけです。つまり、金融対策をまずはやった上でというのがヨーロッパの側の考え方で、財政から始めるというのはおかしいではないか、どうもそういう議論らしいんですね。
そういう中で与謝野さんがアメリカの言い分に賛成だというふうに言うとなると、何か日本だけが対米追随ではないか、こういうふうになってくるわけでございますので、今、そういうふうにおっしゃってはいなかったというふうに言われるわけですが、では、報道は実際とは違うということなんでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 これはガイトナー長官も言っておられましたけれども、自分は、2%ということをIMFの考え方を参照にして言ったのであって、他国に強要しようとか、そんな考え方は全くない、そういうことをおっしゃっていました。ですから、これはIMFの数字だということをおっしゃっていました。
私どもは、既にやっております経済対策、20年度の一次、20年度の二次、それから国会でお認めいただければ21年度の当初予算、こういうものを合わせますと、数え方にもよるんですけれども、おおむね2%程度のところまでは行っておりますという説明をしただけでございます。
○佐々木(憲)委員 それでは次に、G20で主要な議題になったのは、国際金融危機に対する対応だと思います。前回のG20では、国際的に活動する金融機関あるいはヘッジファンドなどに対して監視あるいは規制を強化するという方向が出されて、4月にその中身が具体的に検討されて各国で合意を得る、こういうふうに方向づけがなされていたと思うんですが、今回のG20で、その方向に向けてどのような議論が行われて、日本としてどういう提案をされたのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 日本としては、国際金融に関する一定の規制は必要だということは、もちろん日本の立場を説明申し上げました。どういうものを対象にした規制かといいますと、一つはヘッジファンド、それからタックスヘイブン、こういうものはやはり考えなきゃいけないだろう。それから、日本では既に格付会社の登録制に関する法律を出していますということを申し上げました。
ただ、ヨーロッパの一部で議論されております最低自己資本比率を引き上げようという議論は、日本においては信用収縮を招くのでとても受け入れられませんということははっきり申し上げました。
○佐々木(憲)委員 前回は、国際的に活動する金融機関というのが一つの対象としてかなり重視をされていたと思うんですね。なぜかといいますと、今回の投機資金は、実際にはヘッジファンドなどがかなり投機的な行為を行っていた、その資金を供給したのが複合的国際巨大金融機関である、こういうふうに言われております。したがって、大もとの金融機関のあり方、つまり、金融だけではなく証券も含めて垣根を取り払って投機的な分野にどんどん資金を供給する、そういう活動自体がやはり問題だった、こういう反省のもとで監視というものが強調されたんだと思うわけです。それは議論にはならなかったんでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 これは、財務大臣・中央銀行総裁会議の声明の中の金融システムの強化という項目に、「全てのシステム上重要な金融機関、市場、商品が適切な程度の規制・監督の下に置かれ、」云々というところに書いてございまして、当然、今先生の御指摘になった、もともとの金融機関、証券会社というものの監督についても言及がなされ、これからいろいろ合意がなされるように進んでいくと思っております。
○佐々木(憲)委員 やはりそこのところが非常に重要なことであって、今回のアメリカにおける金融バブルというのは一体なぜ発生したのかという原因の究明、それからそれを拡大してきた主体は一体だれだったのかという問題、そして、なぜそれが起こったのかという原因として、例えば、金融と証券の分離という原則が崩れて、一体化して投機的なところに走るようになった、そういうこと全体を含めてもう一度再検討するということが私は必要だと思うんですね。
日本としても、そういう点でしっかりとした方向性をやはりもっとはっきりと提案する必要があると思うんです。途上国側、ヨーロッパの側等はある程度、特に途上国中心にそういう要望は強いと思うんですけれども、やはり日本もそういう方向をしっかり頭に入れた対応というのが必要だと私は思っております。
では次に、国境措置と農業、中小企業の問題について伺いたいと思います。
国境措置といいますと、関税が非常に大きな役割を果たすわけでありますが、その前提として、まず与謝野大臣の認識をお伺いしますが、日本の農業とか中小企業、これが雇用の面でも、あるいは国土の保全の面でも非常に大きな役割を果たしていると私は思います。与謝野大臣は、日本経済の中で農業と中小企業はどういう役割を果たしているのか、どういう位置づけ、役割を果たすべきか、そのお考えを聞かせていただきたい。
○与謝野財務・金融担当大臣 中小企業は、まず、全企業の99%を占めておりますし、従業員数を見ましても、4088万人という、日本で働く方々の7割を占めているわけでございまして、やはり、日本経済が活力を回復するためには中小企業が活力を取り戻すことが必要だと思いますし、また中小企業は日本の経済の底力でもあると思っております。そういう意味では、我々は、中小企業の資金繰りなど、できるだけのことをしなければならない。これは、中小企業を守るというよりは、そこにある雇用を守るという意味も非常に重大だと思っております。
農業の方は、私の選挙区には農業というのはないんですけれども、農業というのはやはり、日本の食料事情を考えても、日本の環境保全を考えても、日本の文化を保全するということから考えても、経済計算以上に重要な分野だと思っております。
○佐々木(憲)委員 配付資料を見ていただきたいんですけれども、まず一枚目は、「食料自給率の推移」ということで、主要な農産物の自給率、それから全体の統計が出ております。
下の方にカロリーベースの食料自給率が出ておりますが、昭和40年度は73%で、その後は50%に下がり、さらに今40%。これはよく使われる数字ですけれども、自給率が非常に低下したことが、今の食料不安、国際的な食料高騰の際には日本は大丈夫かと常に議論になってくるわけで、一番ベースになるところですね。これを引き上げなきゃならぬというのは私は基本だと思いますが、なぜこういうふうに下がったのか、その原因を明確にしなければいけないと思うんです。大臣、どのようにお考えでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 これは石破大臣に聞いていただいた方がいいと思うんですが、明らかに自給率がカロリーベースで下がった一つの原因は、日本人の食生活が大きく変わったということでございます。御飯に梅干しだけというときは自給率が高いわけですけれども、肉を食べたり鳥を食べたりといいますと、自然に自給率が下がってくる。しかし、それでも下がり過ぎだと私は考えております。
それから、下がっている原因の一つは、やはり農家所得が、一時期、最高6兆円ありましたのが、今、農家所得が3兆円しかないという、農家所得の大幅な減少が食料事情を悪くしているという側面があると思います。もう一つは、なかなか若い方が農業に従事してくださらない、農家の、特に専業農家の高齢化が進んでいるということも一つの大きな原因だと思っております。
○佐々木(憲)委員 食生活が変わったというのはもちろんあると思います。それも、アメリカのいろいろな日本に対する食料戦略といいますか、背後にそういうものがあったと私は思っております。
私は、国境措置というのが一つ重要なポイントだと思っておりまして、例えば牛肉・オレンジの自由化とか、いろいろな形で農産物の輸入自由化というのがこの間行われて、我々は、それはやるべきじゃない、もっと国内保護をしなさいという主張をしてまいりましたけれども、それが強行されたという事実があったと思いますし、それから、農家に対する支援というものがやはり十分行われてこなかった、後退したというのがあったのではないか。そういう点で、食料自給率そのものがずっと下がってきてしまう。
具体的な例を挙げますと、繭とか絹紡糸、こういう産業が日本ではもう既になくなってしまっているわけですね。それもやはり国境措置の問題とも関連をしていたのではないかと私は思うわけです。それから、自給率を見ましても、例えば小麦は14%ですね。大豆はわずか5%で、ほとんど輸入に頼っているわけでありまして、豆腐にしてももうほとんどは外国製と言っていいような状況であります。
例えば、最近の例としては、この委員会でも私、取り上げましたが、コンニャクというのがありますね。このコンニャクは、途上国向けの無税無枠措置が導入されて、かなり大きな変化が起こりました。
農水省に確認しますけれども、この輸入数量、収穫量、これはこの間どうなりましたでしょうか。
○道上政府参考人(農林水産省大臣官房審議官) お答えを申し上げます。
コンニャクについてでございますけれども、輸入数量につきましては、平成20年4月から12月までのコンニャクイモの輸入数量は267トンということでございます。それから、収穫量でございますけれども、20年産のコンニャクイモの収穫量は5万5500トンということでございます。
○佐々木(憲)委員 この輸入数量は、平成19年の場合は百トンだったわけです。二枚目の資料の右下にコンニャクイモの輸入量というのがありまして、これを見ていただければわかるんですけれども、今説明があった数字は267トン、ですから、100トンから3倍近くにふえているわけです。とりわけミャンマーからの、前年ゼロだったのが187トン、ぼんとふえたわけです。この収穫面積、収穫量というのが国内では減っております。国境措置を取り払ったり低めた結果どういうことになるかというのは、一つの、非常に部分的かもしれませんけれども、そういう事例として今紹介したわけであります。
2年前に農水省が、「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響について」という試算を出しております。大臣御存じかもしれません。
次の三枚目をあけていただきますと、これは松岡農水大臣の時代に公表したものであります。国境措置がなくなれば大変な影響が出るというのは、これはもうだれが考えてもそうなわけですが、幾らの影響が出るかということで、国内農業生産の減少が約3兆6千億円、これは大変な規模なんですね。GDPの減少は約9兆円、雇用機会が失われる人数は375万人分、食料自給率の低下は、今40%ですけれども、国境措置がもし全部なくなったら12%に下がるだろうと。そういう意味で、この国境措置というものは大変重要な役割を果たしていると私は思うわけであります。
農水省に確認しますが、この数字は現時点でも変わりありませんね。
○林田政府参考人(農林水産省大臣官房審議官) お答えします。
変わりございません。
○佐々木(憲)委員 それで、与謝野大臣にお伺いしますけれども、日本の農業を守らなければならない、そしてまたその役割は大きいと最初におっしゃいました。その中で、国境措置の役割というのも大変大きい、今後これをどんどん下げていくようなことがあってはならないと私は思うわけでありますが、大臣の基本的な考え方をお述べいただきたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 日本は貿易が成立しなければ生きていけない国であると思っておりますから、WTOの交渉などが進展するということは、私は日本の利益だと思っております。
ただし、このときに政治は、日本の農業をどうするか、水産業をどうするのかという非常に大きな難問に直面をいたします。日本の農業や水産業を犠牲にしてももっと自由化を進めるのか、そうはいかないというのかというのが政治としての重要な選択でございますが、私は、農業にどんなに補助金を出してもいいんじゃないかと思っております。やはり日本の基礎的な食料、基本的な水産業、こういうものはみんなの力で守るということはどうしても必要だ、また子孫に対する責任でもあると思っております。
ですから、WTO等の貿易の自由化交渉と日本の農業を守るというものの両立をどう政治が図っていくかということが、これから、我が党ばかりではなくて、すべての政党に課せられた大きな課題であると思っております。
○佐々木(憲)委員 私は、日本の農業をしっかり守り、しかもこれを発展させる、家族農業を中心に安定した経営ができるようにしていく、そのことが食料を守ることにつながり、かつ国土保全にもつながっていくというふうに思うわけです。
今、WTOの問題もありましたし、またEPAが各国との間で締結されていくということがあって、日本の農業をどう守るのかというのは非常に大きなテーマだと私は思うんですが、どうも動きを見ておりますと、日本経団連などの財界はEPAを早くやれ、早くやれということで、確かに、自動車や電機など大手メーカーにとりましては、国境措置が低くなればなるほど資本ですとか物ですとかあるいは人の動きを自由化できる、それで利益を拡大できる、だからそうしなさい、こう言ってくるわけです。
しかし、それをどんどんやっていきますと、相手から当然、では日本は何をやるんですか、そうすると、農産物の関税を下げなさい、こうなるわけですね。その結果、強い大手メーカーはますます利益を得ますけれども、弱い中小企業や農家はつぶされていく、こういう結果をもたらすというふうに私は思っておりまして、今の国際関係の中でだれを守るのか、だれの利益を図るのかということを常に考えないと、これは将来、日本の国民の食料あるいは国土の保全、こういう問題を危うくすることになりかねないというふうに思うわけです。
この点で、与謝野大臣の基本姿勢、先ほども少しお述べになりましたけれども、もっと明確に、日本の経済基盤を守るんだ、こういう立場に立って、国民の食料、そして中小企業、雇用、こういう面を重視するんだ、それを優先させるんだという立場に立つということは私は大事だと思うんですけれども、最後にその点をお伺いしておきたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 そのことも大事なんですけれども、そのことを突き詰めていくと各国が保護主義に走りかねないという危険もあって、こういう経済危機の状況の中で各国が保護主義に走りますと、やはり世界貿易は縮小していく、そういう危険もあって、それから日本はえらい大きな不利益を得るわけですから、そこはやはりよく考えて、自由化もやる、農業、中小企業も守る、これは多分政治が大きな知恵を出さなければならないところだと思っております。
○佐々木(憲)委員 日本の場合は、今まで自由化をやり過ぎているわけです。だから、自給率がここまで下がってきてしまったわけですね。そういう反省の上に立ってどこに重点を置くかということを今お聞きしたかったんですけれども、どうも与謝野大臣は最後は従来型の答弁になってしまったなと、まことに残念でございます。
これは、私は、根本的に姿勢を変えてもらわなければならぬと。引き続きこの点は議論をしていきたいと思います。
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