税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (保険業法)
2010年02月19日 第174回 通常国会 財務金融委員会≪大臣所信に対する質疑≫ 【552】 - 質問
財務大臣が所得税の最高税率引き上げ検討を表明/自主共済の法的整備を今国会での実施約束、金融担当大臣が表明
2010年2月19日、財務金融委員会で、財務大臣・金融担当大臣の所信に対する質疑が行われ、佐々木憲昭議員は、所得税の最高税率の問題と自主共済の問題について取り上げました。
この日の佐々木議員質問に対し、菅直人財務大臣(政府税調会長)は、所得税の最高税率の引き上げを検討すると表明しました。
佐々木議員は経済格差が拡大している現状で、税制の所得再分配機能が重要だと強調。「アメリカやイギリスではすでに所得税の最高税率や配当の税率の引き上げを実行している。日本でも参考にすべきだ」と迫りました。
菅財務大臣は「日本では最高税率を下げてきたが、必ずしもそういう考え方だけでは日本経済全体が持ち上がらなかった」「アメリカやイギリスの措置については認識している。所得税の最高税率については税制調査会で見直しを含めて検討したい」と答えました。
亀井静香金融担当大臣は、佐々木議員の質問に対し、改定保険業法によって運営が困難になっている自主共済などについて「今国会できっちりと法的な整備をしたい」と明言するとともに、法整備を待たず困難に陥っているところには「相談に乗って対応したい」と表明しました。
保険医の団体や知的障害者の会などが行ってきた、内部の助け合いである共済や互助会の活動が、原則として保険業法の適用を受けることになり、保険会社や少額短期保険業者になるか、廃業するかの選択をせまられています。これまでの活動ができなくなった自主共済は、基金を取り崩すなどの努力で運営をつづけてきましたが、それも限界にきつつあります。
佐々木議員は、前年11月に亀井金融担当大臣が「(自主共済に)支障が起きないような対応をする」と答弁したことを取り上げ、具体的にどうするのかただしました。
亀井金融担当大臣は「この国会で法的な整備をしたい。現在作業を進めている」と答弁。自主共済の救済を法令の改正によりおこなう考えを、初めて明らかにしました。
佐々木議員は「これまで継続してきたが解散を検討している団体もある。今、法整備ができるまでつながるような臨時措置を考えるのが人情味のある行政ではないか」と、さらに政府の早急な対応を求めました。
亀井金融担当大臣は「行政に『困っている』などの申し出があれば、具体的に相談に乗り、対応する」と約束しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、初めての所信質疑でありますので、今後の議論の前提となる点を確認していきたいと思います。
まず、菅財務大臣にお聞きしますけれども、大臣は、この約10年ぐらいの間を振り返りまして、経済格差というものが拡大した、こういう認識はお持ちでしょうか。
○菅財務大臣 持っております。
○佐々木(憲)委員 確かに、それまでも格差は拡大しつつあったと私は思いますけれども、2001年、小泉内閣が成立して以来、急速に格差拡大したと私自身は感じております。
一つは、非正規雇用が非常に大幅にふえまして、不安定な雇用が広がり所得が低下する、ワーキングプアと言われる人々がふえる。それから二つ目に、庶民の負担が非常にふえたんじゃないか。税の負担、それからいろいろな保険料等の国民負担がふえた。我々の調査によりますと、大体、政府発表の数字でも、合わせて13兆円、それ以前に比べて負担がふえた。さらに、制度上の点でいいますと、社会保障、福祉、こういう面が非常に冷遇された。こういうさまざまな国民の面からいっての生活貧困化というものが進んだと思います。
しかし、その一方で、大きな会社になればなるほど内部留保というのがどんどんふえる、株式配当がふえる、経営者の所得がふえる、そういう格差というものが非常に拡大したんじゃないか。その上に、大企業、大資産家に対する減税というものが今度は逆に行われる。格差に輪をかける、加速させるような政策が構造改革の名のもとで推進された、私はそういうふうに思っております。
この格差解消のためには、これらのさまざまな要因に対して適切な対応をするというのが必要だと思います。その上で、税制というものが果たす役割、これは大変重要だと思いますけれども、菅大臣は、この税制の役割、格差解消の上でどういう役割を果たさなければならないと思っておられますでしょうか。
○菅財務大臣 まず、この過去の10年間の見方は、共通の部分もありますが、若干私の見方を申し上げますと、いわゆるそれ以前が、比較的公共事業に頼った形での景気刺激をやろうとしたことに対して、一般に言われる小泉・竹中路線というのは、つまりは、企業の生産性を高める、それをみんながやれば日本の経済がよくなるんだと言って現実にやったことは、例えば象徴的に言えば、カルロス・ゴーンさんがやったように大リストラをやって、そして、その企業は立ち直ったかもしれないけれども、多くの人が失業なりあるいは非正規の雇用に移っていく。
つまり、デフレ状況の中で、個別企業の効率化をやればそれがうまくいくといった考え方そのものが時代に合わなかった。そういうことが、先ほど言われたような労働法制等の行き過ぎた規制緩和もあって、大きな格差につながった、私はこのように見ております。
その上で、税制の役割というのは、もちろんこの間のやり方でいえば、どちらかといえば、所得税でいえば、最高税率を下げてフラット化する、それも同じように、お金持ちがお金持ちになればなるほど下の人を引き上げるんだという考え方がベースにあったと思いますが、先ほど言ったように、必ずしもそういう考え方だけでは日本経済全体が実は持ち上がらなかったわけでありまして、そういうことを含めて、税制調査会の中に専門委員会を今度設けることになりましたけれども、この10年間の所得税あるいは法人税、あるいは他の税制も含めてどうであったかという検証を始めたい、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 今の菅大臣の御答弁のかなりの部分、賛同できるところがあります。
ただ、構造改革というものは、いい面もあったといいますけれども、私は、かなりいい面は少ないというか、ほとんどないんじゃないかと思っていまして、競争力のあるところ、あるいは強いところを応援すれば全体がうまくいくという発想自体が間違っていまして、弱いところは切り捨てるという発想につながり、逆に国民の多数が疲弊する、そのことが経済の基盤を弱体化させていく、こういうことになったのではないかというふうに思っております。
税の機能という点では、所得の再分配機能というのがありまして、そういう経済状況を是正していく上で大変重要な機能だと私は思います。つまり、大手企業あるいは大資産家に富が過剰に蓄積されている部分に対して、適切に税、社会保障などの応分の負担をしてもらって、それを通じて庶民の側、低所得者に適切にその富を移転させる、そして結果として格差の縮小につなげていく、この発想が非常に大事だと思いますが、自民党、公明党政権のもとではこの所得再分配機能が私は弱体化した、あるいは低下してきたというふうに思います。
大臣は、どう認識されていますでしょうか。
○菅財務大臣 私は、構造改革という言葉の意味はいろいろですけれども、必ずしもこの構造改革というものが全部だめだとは思いません。そこは、もしかしたら若干認識が違うかもしれません。
今言われた競争力という問題も、確かに国際的な競争の中にあるわけですから、競争力を維持強化しなければいけないところは多いと思うんです。ただ、問題なのは、余り長い時間をとると恐縮ですからあれしますが、やはり需要を拡大する、あるいは雇用を拡大して需要を拡大するというところにもっと焦点を当てて、場合によったら財政出動も必要だったのに、それを翌年のGDPが上がるからといって、余り長期的な効果のない公共事業にお金をやったり、あるいは先ほどのように、構造改革と称してデフレ下においての効率化をすることによって大きな間違いがあった、私はそういうふうに思っております。
その上で、税において所得の再配分といった機能があることはそのとおりだと思っておりますし、また、現在の所得税がそうした再配分機能が低下しているという指摘もそのとおりだと思っております。と同時に、先ほど申し上げたように、全体を成長させるためには、今度はどういうふうな形で財政出動をしていくかということもあわせて考えなければならない、このように思っております。
○佐々木(憲)委員 アメリカ、イギリスでは、所得税の最高税率を引き上げる、あるいは株の配当の税率の引き上げというのを実行しております。この点は私は注目しておりますが、大臣、どう評価されていますでしょうか。私は、これは参考にすべきだと思いますが、いかがでしょう。
○菅財務大臣 アメリカあるいはイギリスにおいて所得税の最高税率の引き上げが行われているということは、私も認識をいたしております。
そういった意味で、日本ではかなりこの10年間で最高税率が下がってきているわけですが、それに対する見直しも含めて税調の方で検討していきたい、このように考えています。
○佐々木(憲)委員 亀井大臣にお聞きします。
このところ、経済情勢は非常に厳しいものがありまして、中小企業の倒産も非常にふえております。サラリーマンは、リストラですとか賃金の抑制ですとか、生活が大変苦しい。
そういう中で、昨年の臨時国会で成立した中小企業金融円滑化法、これはそれに対応して出されたものだと思いますが、実施状況はどうなっていますでしょうか。いかがでしょうか。
○亀井金融担当大臣 私どもとしては、資金繰りを少しでもよくしたいという思いでああいう措置をとったわけでありますが、本来は、これは金融機関がそういうことを自主的にやっていくべきことであったというように私は思っておるわけであります。
結果といたしましては、そうした借金の返済猶予を求めると新規の貸し付けが受けられなくなるんじゃないかという危惧が働いて、なかなか相談をされないんじゃないかという危惧を持ったわけでありますが、当初そういう状況が相当ございましたが、これは金融庁が全力を挙げまして、金融機関に対して、また借り手に対して等もいろいろとPR等もいたしました結果、現在では相当、そういうことについて懸念が払拭をされてきておる、非常に効果を上げてきておると思います。
特に、これはちょっと議員が質問されたことと外れますが、サラリーマンの住宅ローンについては大変な効果を発揮しておると思います。これはそういう懸念が起きないケースでありますので、大変そういう点では相談が激増して、それに対して金融機関も相当きっちりと、9割方対応しておるような状況があると思います。
○佐々木(憲)委員 実数を確認したいんですけれども、債務者が中小業者の場合、それから住宅資金の借入者の場合、この申し込み、実行、謝絶、それぞれについての一番新しい数字、これを示していただきたいと思います。
○畑中政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
先日、主要行9行、都銀等でございますが、金融円滑化法の施行日、すなわち平成21年12月4日から21年の12月末までのほぼ一カ月間に受け付けた、貸し付け条件の変更等の申し込みに関する対応状況を開示いたしました。
これによりますと、主要行全体といたしましては、中小企業向けの貸付債権につきまして、全体で1万5542件の申し込みがございましたうち、条件の変更等が実行されたものは3143件、謝絶されたものは20件、また住宅ローン、住宅資金借入者向けの貸付債権につきましては、全体で4018件の申し込みがございまして、そのうち実行されたものは111件、謝絶されたものは19件となっております。
実行率で申し上げますと、中小企業向けにつきましては99・4%、住宅ローンにつきましては実行率85・4%という数字が公表されているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは比率としては非常に高いと思いますが、全体の数が中小企業の場合は1万5千件、それから住宅ローンは4千件でありまして、九行ですから全体の中の一部ということかもしれませんが、しかし、まだこれは周知徹底が足りないように私は感じておりますので、その点をぜひ徹底していただきたいと思います。それから、対応も親切丁寧に、ぜひそういう指導を、監督をお願いしたい。
次に、自主共済、互助会の問題でございます。
今から5年前に保険業法が改正されまして、そのために、ある目的を持ってつくられている団体の内部の構成員がお互いに助け合いをしようということで共済ですとか互助会というものはつくられて、運営されてまいりました。ところが、新しい保険業法によって適用を受けるということで、今までのような互助の助け合いがなかなか難しい。規模の大きなものは保険会社になりなさい、小さなものは少額短期保険業者になりなさいとか、それができないと、これはなかなか続けられなくて廃業する、そういう事態が生まれておりまして、非常に深刻であります。
昨年11月のこの委員会で私は大臣にお聞きしましたが、大臣は「共助という、鳩山総理の友愛の精神を実践している、そういう団体に支障が起きないような対応をする」「そうしたちゃんとした団体がきちっとやっていけるような方向で処理をしたい、」というふうに答弁をされました。この立場は今でも変わりませんね。
○亀井金融担当大臣 現在、そうした問題が非常に多いということを金融庁といたしましても認識いたしておりまして、この通常国会にこれについての法的な整備をやりたいと現在作業を進めておる最中でございます。
○佐々木(憲)委員 1月22日の金融庁政策会議で、共済事業の規制のあり方に係る検討についてという議題が出されております。
既にいろいろな聞き取りもされていると聞いておりますが、今までどおり、自主的に、かつ健全に活動しているこういう自主共済、互助会を継続したいと思っている方々、そういう方々の意向あるいは実態をきちっと把握しているのかどうか、そういう継続をしたいという熱意を生かすようにやっているのかどうか、その点を確認したいと思います。
○亀井金融担当大臣 小さいのまで入れますと、何百あるいは何千とございますから、全体の実態を掌握するのに1年以上かかるという事務方の話でございましたから、そこまで気の遠くなるようなことをやったってだめなので、とにかく徹夜をしてでもあとう限り調査を進めて、かつてオレンジ共済のような悪質なことがありましたけれども、性悪説というような立場に立たないで、一様な線引きをして今国会に法案を提出しなさいと言って、今督励をしておるところであります。
○佐々木(憲)委員 以前、政府が自主共済、互助会の調査をしたことがあります。対象となったのは431で、そのうち廃業したのは46件ということですが、廃業の理由というものは一体何なのか、これを示していただきたいと思います。
○畑中政府参考人(金融庁監督局長) お答えいたします。
今委員御指摘になられました、事業を単純に廃業したという区分に属しております46団体のことだと思いますが、単純廃業を含めまして、改正保険業法への対応につきましては、各団体の皆様がおのおのの事情を踏まえて自主的に判断をされているところでございまして、例外的に以下の5団体、すなわちベルル生命医療保障共済会、FJ共済、全国共済連合会、無限責任中間法人全国養護福祉会、MFP共済会、これら五団体については当局から廃業命令を発出いたしましたけれども、それ以外の団体につきましては、各団体がどのような理由からそれぞれの対応に至ったかについて、特に私どもとしては聴取をいたしておりません。
○佐々木(憲)委員 これは聞いていない方がおかしいと思いますよ。要するに、やれなくなって廃業しているのか、自主的に廃業と言いましたけれども、私はかなり深刻な事態に陥って廃業しているのが相当あるんじゃないかと思うんです。
例えば、知的障害者の互助会がありますね。今までどおりどうしてもやりたいと言っているわけですよ。知的障害者が例えば入院をする、その場合は、なかなかお医者さんとか看護師さんとの意思疎通というのができないんですね。病院からは、付き添いあるいは差額ベッドを求めてくるケースが実態としてあったり、あるいは入院を拒否されるというようなこともあると聞いております。
こういう場合、本来なら公的な医療制度でそういう方々の支援をするというのが筋なんですけれども、それができていないわけでありまして、やむを得ず、そういう知的障害者の子供を持つ親などが集まって助け合いで始めたのがこの互助会なんです。すべての親たちが参加して助け合おうということで運営をされてきたわけであります。
こういう実態を、大臣、きちっと把握して対応しようとされているんでしょうか。
○亀井金融担当大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、私の部屋にもそういう方々が大勢やってこられまして、いろいろ実態をお教えいただきました。そうした方々の共済事業がきっちりと継続できるように、先ほども申し上げましたように、直ちに今国会できっちりとした法案を出すように今懸命に作業中でございます。
○佐々木(憲)委員 新保険業法が施行されて、かなりの互助会が廃業に追い込まれております。ある県の知的障害者の互助会というのは、入会金あるいは掛金を集めることができなくなって、基金が底をついて解散をせざるを得ない。あるいは、民間の保険にしようがないから入る、そういう場合もこれまでのような給付がもらえない、大幅にカットされる。例えば一つの事例を挙げますと、死亡保険が300万円だった、ところが、ことしに入って、2010年度から10万円だ、30分の一に下がってしまう、こういう例もあるわけです。だから、民間保険に入りなさいといったって、簡単に、入っても給付ががくっと下がってしまう。
それから、互助会の場合はみんな集めますから、一定の基金が積み上がっていきますと、では、会費は少し下げましょうかという話ができるわけです。ところが、民間の保険会社は保険料を下げましょうかなんて言いませんから、高い保険料を取られる。そういう中で給付が非常に不安定になるということで、続けられないと言っているわけです。4月にやめるというところもあるんですから。
ですから、法律をつくるのも結構時間がかかっていますから、こういう方々は暫定的にも、今臨時にも、その法律ができるまでつなげられるような、つながるような何か措置を考えるというのが人情味のある行政じゃないんでしょうか。大臣、これは何とかしてください。
○亀井金融担当大臣 今議員御指摘のように、共通の生活基盤といいますか、いろいろなそういうことの中で細かくお互いに助け合っていくという面で、そうした共済が大きく機能しているということは、これは事実であり、私は大事なことだと思います。
そういう意味で、先ほども申し上げましたように、時間をかけて対応していくのではなくて、これはやはり個々に、これはいい、これは悪いというようなことじゃなくて、法律でこれをきっちりと早くするように今しておるわけでございますが、それまでの過程において、やはり議員御指摘のように、そうしたちゃんとした共済が困ることのないような対応をしていくようにしていきたい、このように考えています。
○佐々木(憲)委員 具体的な指示をして、つぶれたらもう復活は非常に難しいんですから、やらせる、今そういうふうにしたいという意向は伺いましたが、具体的に指示してやりますか。
○亀井金融担当大臣 これは今、私、どの共済がということで具体的にというわけにはまいりませんが、うちの事務局の方において、そうした現に申し出があった、そういう面で困っておられるところについて、やはり具体的に相談に乗りながら対応するという措置をとっております。
○佐々木(憲)委員 これは具体的に本当にやっていけるようにしていただきたい。これは本当に死活問題でありまして、以前は保険もきかないようなそういう方々が、保険会社はやってくれないので、自分たちでしようがないから助け合って少しでも援助しようということでやっているわけですから、それが、保険業法を変えたからもうやっていけないよというのじゃ、何のための互助会か、何のための自主共済かということになってくるわけでありまして、しっかりと今後対応していただきたいということを要請して、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。