2009年11月17日 第173回 臨時国会 議院運営委員会 【538】 - 発言
議院運営委員会で人事官任命について意見表明
2009年11月17日、議院運営委員会で、人事官の同意人事が議題となりました。
日本共産党を代表して佐々木憲昭議員は、この人事に不同意の態度を表明しました。
10日には、議院運営委員会で、人事官候補者の江利川毅氏(埼玉医科大学特任教授)からの所信聴取と質疑を行い、佐々木議員も質問しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
人事官の同意人事について意見を述べます。
人事院は、国家公務員制度に係る中立、専門の独立行政機関として、現行の国家公務員法が憲法28条が保障する公務員の労働基本権を制限していることへの代償機能としての役割を担うとともに、中央人事について準司法的権限もあわせ持っています。したがって、人事院を構成する3名の人事官は、その任務の重要性を自覚し、政府から独立し、中立の立場で職務を遂行できる人物でなければなりません。
江利川氏は、小泉内閣のもとで内閣府事務次官、さらに安倍、福田、麻生内閣時代に厚生労働事務次官を務め、文字どおり官僚トップとして自公政権に深くかかわってきました。それだけに、政府から独立し、中立公正の立場で人事官の職務が遂行できるのか、また公務員制度改革についてどのような見識を持っているのかが問われます。
第一に、人事官には、国家公務員制度改革の根幹問題である労働基本権の早期かつ完全な回復についての明確な見識、また、日本の公務員の状態がILO勧告や国際労働基準に照らして重大な問題があることの認識が必要です。
ところが、先日、11月10日の所信聴聞会で、江利川氏は、労働基本権回復問題について、国民生活にも影響があるので多角的な角度から考えるべき問題ではないか、内閣、国会で決めていただくことではないかなどと言うだけで、みずからの見解の表明を回避しました。
また、ILOが、消防・監獄職員の団結権や一般公務員の争議権、労働協約締結権の保障など、国際労働基準に従った公務員制度改革をするよう勧告していることについても、何ら見解を示しませんでした。
第二に、この間の人事院のあり方について、小泉内閣が2002年の骨太方針で公務員一律削減、総人件費抑制政策を打ち出し、それ以降、人事院は、初のマイナス勧告を行い、さらに給与構造改革、官民比較の対象範囲の見直しなどによって給与引き下げ勧告を重ねてきました。中立公正の機関であるべき人事院が政府の意向に屈したのでは、労働基本権制約の代償機能は果たせません。新たに人事官となる人については、この間の人事院のあり方に対して批判的見地がなければなりません。
ところが、江利川氏は、民間が下がれば下がることもあり得る、政府の干渉は存じ上げないと、まともに答弁をしませんでした。内閣府と厚生労働省の事務次官を務め、官僚トップとして小泉内閣以来の構造改革路線に深くかかわってきた当事者としての反省が全く感じられません。
また、今日問題となっている非正規労働者の増大や格差社会の広がりについての認識を問われた際も、厚生労働行政にもその責任の一端があることについては一切認めようとしませんでした。
第三に、天下りの全面禁止についても、江利川氏は、そうできれば大変ありがたい、ただ、検討すべきことも多々あると、明言を避けました。江利川氏は、所信では公務員制度改革が時代の要請や変化に的確に対応した実効あるものとなるよう、人事院としても積極的な役割を果たす責任があると述べ、公務員の問題について、内閣府、厚生労働省の次官をやる中でさまざまなことを考えてきたと言いながら、結局、公務員制度をめぐる肝心かなめの問題についてはみずからの見解を表明しないのであります。これでは、内閣から独立し、中立公正の立場で人事官の職務を果たすことに疑問を禁じ得ません。
以上から、江利川氏の人事官任命には賛成できません。