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その他 (天下り, 同意人事)

2009年11月10日 第173回 臨時国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【535】 - 質問

議院運営委員会で人事官候補者の所信聴聞会

 民主党政権が初めて提示した人事院人事官任命の同意を求める件で、2009年11月10日、議院運営委員会は、人事官候補者の江利川毅氏(埼玉医科大学特任教授)からの所信聴取と質疑をおこないました。
 鳩山内閣が人事官候補として提示した江利川毅前厚生労働事務次官は、公務員の労働基本権の回復問題で、明言を避けました。

 質問に立った佐々木憲昭議員は、「国家公務員制度改革で一番大事な点は労働基本権の回復」だとのべ、国際労働機関ILOが日本政府にたいし、消防・監獄職員の団結権や一般公務員の争議権、労働協約締結権の保障など、国際労働基準に従った改革を進めるよう求める勧告を繰り返し行なっていることを指摘し見解を質しました。
 これに対して江利川氏は、公務員にも憲法の保障する労働基本権は基本的に及んでいるとのべました。
 しかし、労働基本権を制限しその代償機能として人事院を位置づける現行制度は「合理的」だとする最高裁判決に言及し、「国民生活に影響が及ばないよう多角的に考える必要がある」と答弁、肝心のILO勧告への見解は示しませんでした。

 つづいて佐々木議員は、小泉内閣が2002年に「総人件費抑制政策」をうちだし、それ以降、人事院がマイナス勧告を繰り返してきたことを指摘し、中立公正の機関が政府の意向に屈したのでは労働基本権制約の代償機能は果たせないとのべ、小泉内閣当時の内閣府事務次官もつとめた江利川氏の見解をもとめました。
 江利川氏は、「民間が下がれば、下がることもあり得る。政府の干渉は存じ上げない」と、自公政権下でその言いなりとなってきた人事院の役割について具体的な答弁をさけました。

 天下りの全面禁止については、「そうできれば大変ありがたい。ただ検討すべきことも多々ある」などと明言をさけました。
 全体として、質問にまともに答えない姿勢が目立ちました。

 この国会同意人事は、17日の本会議で採決がおこなわれ、それに先立つ議院運営委員会で佐々木議員は、同意人事について発言しました。

議事録

≪佐々木議員質問部分≫
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 二点お聞きしたいと思います。
 まず第一点は、焦点となっております国家公務員制度改革についてです。
 公務員制度改革で一番大事な点の一つは、労働基本権の回復問題であります。
 憲法第28条が保障いたします労働基本権、すなわち団結権、団体交渉権、争議権、これは本来、公務員にも保障されるべきものだと考えます。
 ILOは、日本政府が進めている公務員制度改革にかかわって、消防職員あるいは監獄職員などの団結権の保障、一般職の公務員についての争議権、労働協約締結権を保障するなど、国際労働基準に従った改革を進めることを求める勧告を繰り返し行っております。当然これを受け入れるべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
 第二点は、人事院の位置づけの問題です。
 現行の国家公務員法は、公務員の地位の特殊性を理由にして労働基本権を制限しております。その代償機能としての役割を人事院が担うこととされております。人事院は、政府から独立し、中立、公正、公平の立場で、国家公務員の身分、任免、服務、さらに賃金や労働時間など、労働条件を定める役割を担っております。
 小泉内閣が公務員の総人件費抑制を打ち出した。その中で、人事院は、政府の意向に従ってこれを実行する役割を果たしてきたと私たちは見ております。
 江利川さんは、官僚のトップとして構造改革を進める立場にあったと思いますが、2002年には人勧史上初のマイナス給与勧告を行い、2003年、2005年とその後も給与引き下げを勧告し、ことしは、自公政権、与党の政治的圧力に屈して四月に臨時調査を行うなど、従来の人勧制度のルールを踏み破って、六月にボーナスの凍結勧告を行いました。
 公正公平な機関であるはずの人事院が政府の意向に屈したのでは、その労働基本権制約の代償機能を果たせないのではないかと思います。この点をどのように評価されておられるでしょうか。
 以上の二点、お聞きしたいと思います。
○江利川参考人(人事官候補者(埼玉医科大学特任教授)) 最初は、労働基本権の問題でございます。
 私も、深くは存じ上げませんけれども、かねてから、ILOからそのような勧告があるということはニュース等で聞いております。
 一方、現在の制度につきまして、最高裁判決において、この制度も一つの合理的な制度というふうな判断が示されているというふうに理解をしております。
 先ほど申し上げましたが、国家公務員の選任とか罷免、これは国民の権利であるというふうに憲法に書いてあるわけでございます。「国民固有の権利である。」と書いてありますので、そういう意味では、このあり方はやはり国民全体の総意に基づいて決まるべきものというふうに思います。
 当然のことながら公務員にも憲法の保障する労働基本権は基本的に及んでいる、これはそのとおりであります。及んでいるわけでありますが、公務員の業務の特殊性上、その辺をどんなふうにするか。一部制限をしたら制限した分にどうやって代償機能を果たすかということは、全体として、国民固有の権利である、国民総体の意思に従うべきものではないかというふうに思うわけでございます。
 諸外国におきましても、それぞれ公務の性格に応じて制限があるようでございますので、それは全体のバランスを見て考えるべき問題、私はそんなふうに認識をしております。
 それから、人事院の位置づけの関係でございます。
 総人件費抑制の中で人事院勧告がマイナスがあったではないか、政府の意向に屈しているのではないかという御指摘だったと思います。
 私は、この間の人事院勧告の具体的なプロセスは存じ上げておりません。存じ上げておりませんが、人事院の任務は、内閣に置かれてはいるものの、内閣から独立した中立の機関でございますので、公務員の権利を制限されていることによる代償機能を果たす。それから、給与につきましては民間準拠というふうになっているわけでございます。昨今の不況の中で民間の給与もかなり下がってきていると聞いております。そういう場合には下がることもあり得るのではないかと思いますが、個々の問題について内閣から干渉を受けたということがあるのかどうか、そこまで私は存じ上げておりません。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

≪中略≫
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 天下りの問題についてお聞きしたいと思います。
 一昨年の公務員法改正で、政府は省庁による天下りあっせんは廃止するといいながら、官民人材交流センターという新たな天下り、天上がりあっせん機関をつくるということをやりまして、本格的に稼働するまでの移行期間3年間は再就職等監視委員会というもので天下りを容認する、こういう仕組みをつくったわけです。省庁あっせんはだめだといいながら、内閣あっせんは結構だという理屈は、私は通らないと思っておりますが、江利川さんにお聞きします。
 この天下りは本来全面的に禁止すべきものという認識がおありかどうか。それから、天下りについては、独立行政法人への天下りだけではなく、公益法人あるいは民間への天下りもありますが、そういうものも含めて禁止すべきとお考えなのかどうか、この点お聞きしたいと思います。
○江利川参考人 いわゆる天下り問題は、長いこと労働慣行の中から一つ出てきたのではないかと思っております。
 それは、幹部公務員については一定の年齢で退職していくというのがありました。正直、私の同期も、50ぐらいから退職をしている人がおります。まだ子供が小学生です。そうすると、どこかで働き口を考えなければいけないということになってきます。
 一方、組織がピラミッド型になっておりますと、この中での処遇というのは結構難しいわけでございます。そしてまた、早くやめる人の方が組織内での相対的評価というのは、大ざっぱに言えば、相対的には能力が少し低いということになるわけです。そういう人たちが出ていって、仕事をしっかりする体制を組んでいくこと自身は、私は組織論としては悪いとは思っておりません。民間企業でもそういう工夫は行われているのではないかと思います。
 ただ一方で、職務の、例えば組織の権限等を背景にして行われれば、これはさまざまな癒着が生じたり、不公正な行政が出てくるおそれがあります。そういうことはあってはならないのではないかと思います。
 それから、人によっては、公務員の仕事に限界を感じたり、あるいは別の仕事に魅力を感じたりして、自分の力で転職をすることがあります。それはあっても差し支えないのではないかと思います。
 新しい民主党内閣では、天下りは全面的に廃止だというふうなことを言われているわけでありまして、そうしますと、全体の公務員の管理をどうするかということが大事だと思います。これはこれで一つの方針ですので、そうできればそれは大変ありがたいのではないかと思います。
 ただ、定員の枠が決まっている中で、退職すべき人が少なくなれば、当然採用する人が少なくなってくるわけでありまして、公務員の組織全体をどう考えたらいいか。それから、総人件費というのはどんなふうに考えたらいいか。これをやっていく上には検討すべきことも多々あるのではないかと思います。
 私は、天下りがなくて定年までしっかり働けるというのは、働く公務員にとってはこんなありがたいことはないと思いますが、それを実施するためにはたくさんの課題があって、それを整合的に解決することが必要だというふうに考えております。

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