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その他 (規制緩和)

2000年02月16日 第147回 通常国会 予算委員会 【98】 - 質問

大型酒販店の安売りのウラにメーカーの差別的リベート是正要求、タクシー需給調整要件規制の撤廃中止を要求

 2000年2月16日の予算委員会で、佐々木憲昭議員は、酒店、タクシーなど規制緩和の問題を取り上げました。

大型酒販店の安売りのウラにメーカーの差別的リベート 是正要求に大蔵大臣も「おっしゃる通り」
 佐々木議員は、酒メーカーが、大型・量販店に多額のリベートを提供するかたちで不当廉売をおこない、まちの酒屋さんを圧迫しているとして、公正取引委員会に調査と是正を要求しました。
 国税庁が98年に実施した調査によると、小売りでの販売額が原価(販売経費を含む)を割っているケースが90.9%、販売価格が仕入れ価格を割っているケースも15.4%となっています。
 同調査によると、「A社は大容量のしょうちゅうについて取引数量をのばすため、大きな販売力をもつ小売業者と取引関係にある卸売業者にスポットリベートを払ったことから製造原価を割るものが認められた」という事例もありました。
 佐々木議員は、不当廉売は「是正すべきだ」と強調。公取委の根来泰周委員長は、「(不当なリベートは)黙視するわけにいかない。指摘は正面から受け止める」と、調査の実施を示唆。宮沢大蔵大臣は「おっしゃる通り」と答弁しました。



「規制緩和」で商売できない 大店法撤廃が最大の原因
 佐々木議員は、規制緩和による大型店・量販店の進出で、中小商店が次つぎと廃業に追い込まれている、地域の実態を生なましく明らかにしながら、中小商店を圧迫する「規制緩和」はすべきでない、と政府に迫りました。
 佐々木議員は、小売業の7割を占める個人商店が91年〜97年に17%も減少している一方で、大型店の売り場面積は54%増加していることを指摘。最大の原因は、大規模小売店舗法(大店法)撤廃など、商業分野での規制緩和にあると強調しました。
 これに対し、深谷通産大臣は「否定しがたい」と答弁。規制強化を求める佐々木議員にたいし、宮沢大蔵大臣は「行政がしっかりしなければいけない」とのべ、河野外務大臣も一般論としながら「規制緩和には問題が含まれている」と答弁しました。

 佐々木議員は、中小商店を守るために、次のことを要求しました。
(1)大型店出店を許可制にする
(2)地方自治体が独自規制できるようにする
(3)審議会に中小小売商・消費者代表を加える

規制緩和で競争激化し、タクシー事故も増加 タクシー需給調整要件規制の撤廃中止を要求
 次に、佐々木議員は、タクシー業界で運転手の労働条件が悪化している問題について、供給過剰状態が輸送の安全の確保を困難にしていることなどを指摘し、タクシーの需給調整規制の撤廃をやめるよう要求しました。
 タクシーの乗客は過去10年間に約2割減少しています。ところが、運輸省の「規制緩和」によって、タクシー台数は逆に増加。競争が激化するとともに、1台当たりの売り上げが大きく減っています。
 タクシーの事故件数は、実車率の低下にともなうかたちで増加してきました。
 また、運転手の労働条件やタクシー企業の経営も大きく悪化。運転手の平均年収は91年の382万円から98年には327万円と10年前の水準に逆戻りしています。
 労働時間は、政府目標の1800時間をはるかに超える2515時間に達しています。
 佐々木議員は、アメリカやスウェーデンなどでは、過労運転による事故の増加など、規制緩和路線の失敗を前にして再規制にのりだしていることを指摘し、規制緩和の再検討を求めました。二階運輸相は「指摘は理解できる。十分配慮する」と答弁しました。

 この質問の後、公正取引委員会は、酒類などの不当な安売り(廉売)や不公正取引についての専門調査員を臨時職として30人増員しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 我が国の中小企業は全企業の99%を占めております。生産、流通、サービスの各分野で大きな役割を果たしております。また、勤労者の78%が中小企業で働いております。さらに、物づくりの基盤を形成し、日本経済を支え、地域経済、地域社会を支えるという意味でも中小企業は大変重要な役割を果たしていると思います。
 初めに、通産大臣に確認をしたいと思います。
 中小企業は日本の経済と国民生活にとってなくてはならない重要な存在である、当然そういう認識を持っておられると思いますが、まず確認をしたいと思います。
○深谷通商産業大臣 ただいま委員御指摘のように、その数において圧倒的に占めているのが中小企業であります。この中小企業が日本経済の活力の源泉にならなければ経済の安定とか発展はないと心得ております。
 そういう観点で、昨年は御党の御協力もいただいて中小企業国会という国会を開いて、数々の政策も立たせていただいて、ことしはそれを実践、実行する年だというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 重要な存在である中小企業、主役ともいうべきこの中小零細企業が、現在次々と廃業、倒産に追い込まれるという深刻な事態が生まれております。例えば、地域社会を支える商店街、これも同様でありまして、小売業分野の大部分を占めておりますのは一人から四人の、その程度の小さな個人商店でございます。これは商店の数の上で7割以上を占める、圧倒的な多数でありますが、今ここで深刻な事態が生まれております。
 まず通産省に実態を確かめたい。91年と97年を比較しまして、一人から四人の規模の商店数は何件減少しているか、減少数と減少率を示していただきたい。
○吉田政府参考人(通商産業大臣官房調査統計部長) 商業統計調査における一人から四人規模の商店数でございますが、1991年には127万4500件でありましたものが、1997年には105万9305件となっております。件数で21万5195件、率では16・9%の減少となっております。
○佐々木(憲)委員 わずか6年で大変な減り方であります。21万5千件も商店の数が減っております。通産大臣は、この原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。
○深谷通商産業大臣 ただいま担当者から御報告しましたように、商店数の変化を規模別に見ますと、従業員数の規模が一人から四人という小規模の小売店が大変減少幅が大きい。逆に、従業員規模が五人から49人の中小小売店及び50人以上の大型小売店は商店数がふえているという状態にあります。
 このような小規模な小売店の減少の背景としましては、やはり経済の動向が大きく影響しております。特に消費不況、これは大変深刻であろうと思います。また、価格競争が激しくなって、どうしても大量に買って大量に売るところの方が価格が安いといったような、そういう背景もありましょう。あるいは、消費者ニーズが随分変化してきているということもございます。また、新業態小売業の出現なども指摘されていますが、一方では、高齢化が目立つ、それから後継者が少ないといったような多くの厳しい背景があるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 確かに消費の低迷は大変大きな原因でありまして、昨年の全国全世帯の消費支出は実質でマイナス1・2%であります。7年連続で対前年比でマイナスになっている。しかし、それだけではなくて、今お話にありましたように、大型店との競争、これが大変重大な影響を与えております。大型店、量販店が次々と進出して商店街に大変な打撃を与えている、これがもう一面の実態だろうと思います。
 そこで、調査統計部にお聞きしますが、大型総合スーパー、それから専門スーパー、この量販店の売り場面積は91年から97年の間にどのようにふえましたか。
○吉田政府参考人 商業統計調査におけるスーパーの店舗面積でございますが、大型総合スーパーの店舗面積は、1991年から97年にかけまして、439万2794平方メートル、53・9%増加いたしました。また、専門スーパーの店舗面積は、同時期で、1066万3217平方メートル、81・9%増加いたしております。
○佐々木(憲)委員 今の数字でも明らかなように、大型総合スーパーは54%ふえております。また、専門スーパー、量販店、これは81%もふえている。わずか6年でこれだけの大変なふえ方であります。
 消費が一方で低迷している、それなのに大型店の売り場面積ばかりがふえている。巨大な商圏を持つ大型店が郊外にどんどん進出をして、町の中心部が空洞化する。これでは中小の商店はひとたまりもないという状況であります。次々と店を畳むという事態が生まれ、商店街は歯の抜けたような状態になり、シャッター通りと言われるような極めて深刻な事態が進んでいるわけです。特に、日常の生活に欠くことのできない八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん、こういうところが、統計で見ましても個人商店は半分以下になっております。
 例えば、一例を挙げますと、三重県のある大型店であります。これはジャスコですが、津の中心部分からことし7月に一方的に撤退する、こういう計画が発表されまして、大変な衝撃を与えております。一方、郊外では大型店の売り場面積をふやす、新たな郊外に出店をする、こういう状況でありまして、四日市では、町の真ん中の紡績工場跡地に出店を計画して、逆に周辺の商店街、住民の猛反発を買う、こういう状況であります。
 これに対して、三重県商店街振興組合連合会の理事長は、大型店の郊外出店は目に余る。大型店の出店や撤退の影響で中心部から商店がなくなると、交通弱者のお年寄りや子供たちにも不便を与えます。かつて大型店は、中心市街地に進出するときに、地元商店と共存共栄などと言いました。結局、土地が安いなどと外に出ていく。都市の破壊者だ。私らはそれを知らずに、大企業だからと信頼していた。共存共栄を願った。その信頼を裏切ったらいかぬと、県の商店街振興組合連合会の理事長がこのようにおっしゃっているわけです。
 通産大臣は、今私が述べましたように、大型店の進出、あるいはいきなり撤退する、これが先ほど統計で確認したような商店街への深刻な打撃、あるいは中小商店への大きな圧迫になっている、それが商店数の減少の原因になっている、こういう認識はお持ちでしょうか。
○深谷通商産業大臣 先ほど申しましたような小規模小売店が後退していく背景には、景気の動向を含め、さまざまございます。その中の一つに大店舗の進出や撤退ということがあることは、委員のおっしゃるとおりだと思います。
 かつて、私たちは、大店舗法という法律をこしらえて、大店舗が進出する際の中小商店街等が生きられるような環境をつくったのですけれども、その後しばしば改正が行われて形骸化しつつあった。そこで、私どもは新たに町づくり三法というのを皆さんと御一緒につくり上げて、いわゆる改正都市計画法、大店立地法、それに中心市街地活性化法といったようなものを組み合わせながら、何とか活性化をしていくような体制を整えつつあるところであります、まさにこれからでございますが。
○佐々木(憲)委員 町づくり三法というお話がありましたが、一番の問題は、大店法を撤廃して大型店が自由に進出できるような状況をつくったことにある。私は、そこに最大の問題があると思います。
 この町づくり三法を見ましても、これはヨーロッパと違いまして、大型店の進出に対して、例えば生活環境、都市計画に悪影響を与える、そういうことが明らかな場合に、肝心なのは出店を拒否できるかどうかなんです。ところが、出店を拒否できるという条項はございません。大型店の出店については、フランスなどでは中小小売業の保護のための許可制というふうになっておりまして、日本では原則自由、こういうことで、ヨーロッパと全く違うわけであります。
 私どもは、少なくとも、大型店の出店を許可制にする、それから自治体独自の規制ができるようにする、そして中小小売商あるいは消費者代表も加えた大規模小売店舗審議会をつくって、そこでしっかりと規制ができるようにする、そういうことを主張してまいりましたが、今後ともこの点は強く主張していきたいと思っております。
 次に、具体的な事例として、酒屋さんの問題に絞ってお聞きをしたいと思います。
 まず、統計を確認したい。商業統計で、販売小売業の個人商店数、これは酒販小売業ですね、これの個人商店数は91年から97年の間に何軒減りましたか。
○吉田政府参考人 商業統計調査における個人酒販商店数でございますが、同調査による酒小売業に属する個人商店数は、1991年には8万2428軒でございました。97年には6万1724軒ということでございまして、軒数で2万704軒、率では25・1%の減少となっております。
○佐々木(憲)委員 大変な減り方であります。6年間にまさに四軒に一軒の酒屋さんが消えた、こういう状況です。これは大変な事態でありまして、なぜこのような状況になったか。不況の影響もあるけれども、最大の問題は、大型店や量販店に酒販免許を与えるという規制緩和を行ったことにあるのではないか。
 例えば、1989年6月には、1万平米以上の大型店舗には、どんなに近くに酒販の店があっても、免許を与えるという規制緩和をやりました。90年6月には、日米構造協議最終報告を受けて、平成5年秋までに開店する大型小売店舗に対して免許を付与するということを決めました。91年5月には、1千平米以下なら、周囲の小売店との調整なしで、大型小売店舗内に輸入品専用の売り場を設けてよい、こういうことが行われました。93年7月には、大型小売店には、開店日に合わせてすべてに免許を与えるということにした。94年7月には、大型店における輸入ビールの販売を免許当初から自由化することを決めて、9月から実施をした。
 これらの一連の90年代の規制緩和の流れ、つまり、大型店に次々と酒販免許を与えてきた、ここに大変大きな影響が生まれた原因があるというふうに私は思います。
 通産大臣にお聞きします。このような、大型店への酒販免許を与えた、このことが酒屋さんが次々と消滅していく大変大きな原因となったんじゃありませんか。そのような認識はお持ちでしょうか。
○深谷通商産業大臣 商業統計のデータによりますと、酒小売業の個人商店数の減少と、酒小売店を含む諸小売業全体の個人商店の減少というのは、ほぼ同じ数字になっております。ですから、酒小売業だけの格別な減少という形では必ずしもないわけでありますけれども、ただいまの免許の問題が影響を与えるということは否定しがたいことでございます。
 私どもも身内に酒小売店がございますが、大変苦労しながら、しかし、小回りのきいた特徴を生かしながら、お客様のニーズにこたえてしっかり頑張っているところもございます。
○佐々木(憲)委員 酒屋さんの減り方というのは、一般の商店の減り方と比べまして大変大きな減り方をしていると私は認識をしております。
 大蔵大臣にもこれは当然お聞きしなければならないわけでありまして、酒販免許を与えてきたのは大蔵省所管の仕事でございますが、やはり通産大臣と同じような認識をお持ちでしょうか、大蔵大臣。
○宮澤大蔵大臣 今通産大臣のお答えは、一般の小売店の減少の度合いと、特にそれが酒類免許に関係したものとの減少のぐあいは、特段の違いはない、際立った開きはない、ただしかし、免許の問題が関係しているということも事実であろう、こういうお答えでありました。そうだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 先ほどの統計でいいますと、一人から四人の一般的な商店の減少率は16・88%、約17%ですね。しかし、酒屋さんは25%減っているわけであります。ですから、酒屋さんの減り方の方が大変激しい。
 東京商工リサーチという倒産を調べているところの情報によりますと、94年当時、いきなり酒屋さんが次々とつぶれるということがありまして、酒類流通業の倒産が小売業を中心に急増している、規制緩和による量販店の台頭に打ちかてずと、規制緩和倒産という言葉を使ってこのように報道しております。
 大型店でお酒を自由に販売できる、そういうふうにしただけではありません。問題はその売り方であります。大型店は価格が不当に安いのではないか、酒屋さんから大変な批判が出ております。周辺の酒屋さんは、大変大きな打撃を受けて、価格競争に勝てない、こういう状況になっているわけです。
 公正取引委員会にお聞きをいたしますが、酒類の不当廉売として注意を受けた件数、平成10年、平成11年について報告をしてください。
○上杉政府参考人(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) お答えいたします。
 平成10年度におきまして注意等の措置をとったものが599件ございますが、そのうち酒類は、ビールが中心でございますけれども、339件ございました。それから、平成11年度、これは12年の1月末現在の数字でございますけれども、591件の注意等を行っておりまして、そのうち酒類が375件あったわけでございます。
○佐々木(憲)委員 公取は、周辺業者から訴えがあって初めて対応するというやり方をしておりまして、しかもその是正措置は注意をするというだけでありまして、不当廉売は一向になくならない。一体、どんな体制でやっているのか。不当廉売に専門に対応する担当者の人数、これはどのぐらいいますか。
○上杉政府参考人 公正取引委員会では審査専門官制をとっておりまして、必要な事件の調査に当たっておりますけれども、現時点におきまして、専ら不当廉売等の調査を行う担当官というのは、本局、これは関東甲信越地方を担当いたしておりますが、そこに八名、それから各地方事務所に七名ということで、全体で15名でございます。
○佐々木(憲)委員 たった15名で何万もある酒屋さんの訴えに対応することは極めて困難であります。
 大蔵大臣にお聞きしますけれども、このような中小企業の訴えに対応する、例えば不当廉売に対して対応する、そういう専門の担当者の人数をふやすような方向に予算をつけるべきだと思うのです。この体制強化について、大蔵大臣の考え方をお聞きしたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 国税庁の執務体制につきましては、現場を知っております者が参っておりますので、委員長のお許しをいただきまして後から御説明をさせていただきますが、その前に、酒類の販売が免許である、免許行政であるということについては各方面からいろいろな意見が寄せられて、これは大変長いことで、きのうやきょうのことではございませんが、消費者から申せば、大型量販店でビールを売ってくれる、酒を売ってくれれば、これは当然便利でございます。お酒だけはないんだってねといったようなことはよく聞かれますから、不便ではございましょう。
 他方で、しかし大蔵省としては、一つは、やはり致酔飲料であるということ、致酔飲料であるから、どこでもだれでも売ってもらっては困るということと、もう一つ、非常に税金分が高い品物でございますので、これが毀損されますと普通の品物の毀損と違う状況が起こります。取り扱いに注意をしなければならないという、これは伝統的にそういう問題がございました。
 そういう中で小売屋さんというものが生まれまして、かつては酒だけで商売できるような時代もございましたが、だんだんコンビニや何か出てまいりますと、酒だけではやれない。商品の知識を相当持っていなければならないが、それなら僕は後を継ぐのは嫌だなというような後継ぎの問題があったり、幸いなことは、割に目抜きの場所に店を持っているということがあったわけですけれども、そういういろいろなことで、結局、消費者のニーズと、致酔飲料であるとか、あるいは税金がたくさん入っているとかいうことの免許行政の主張とがだんだんに折り合ってきている中で、後継者も少しずつ少なくなってきたというようなところが現状だと思うのでございます。
 ですから、両方になかなか主張のあることだという感じが私はいたしますのですが、それはそれとして、今の現場のことを御説明させていただきます。
○村木政府参考人(国税庁長官官房国税審議官) 御説明申し上げます。
 私ども国税庁も、厳しい定員事情の中で、例えば平成12年度につきましては180名強の減員が課せられているところでございますけれども、その中で、国税局、税務署合わせまして約1200名ばかりの酒税担当者がおります。
 そういたしまして、私ども、規制緩和の一方で、公正な競争環境の整備に取り組むことは酒類行政の重要な柱の一つと受けとめておりまして、その観点から、平成10年4月には、公正なルールとしまして、公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針というものを出しまして、その周知啓発に努めるとともに、従来から、これは数年前から行っておりますが、取引実態調査というものがありますが、この充実を図っておりまして、酒類業者を積極的に指導しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 大蔵大臣に先ほどお聞きした私の質問のポイントは、こういう小売店、酒屋さんの要望に対応した公取ですとかあるいは大蔵省の人員配置をきちっとやるべきだ、その予算をつけるべきではないかという御質問をさせていただいたんです。それにはお答えにならなかったんですけれども、その点はいかがですか。
○宮澤大蔵大臣 それは、公取法の違反であるとかあるいは酒税確保とかいう見地から申しますと、答えはもとよりイエスでございまして、今担当官がその人数を申し上げるかと思ったんですが、おっしゃることはそうだと思っております。
○佐々木(憲)委員 先ほどの大臣の御答弁で、ニーズもあるが致酔性の飲料である、この点を指摘されて、どこでもだれでも売っていいものではない。その問題は後でまた議論をしたいと思います、それが本当に守られているかどうかについては。
 そこで、先ほど国税庁の答弁の中にありましたように、公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針、いわゆるガイドライン、このガイドラインに基づきまして、昨年10月に酒類の取引状況等実態調査を行って公表されていますね。その結果、ガイドラインに示された公正なルールに沿っているとは言いがたい取引、これが相当数認められた、こういうふうに指摘されております。
 平成10事務年度のこの調査件数と、そのうち、総販売原価割れ、これが認められたものの数、仕入れ等価格割れが認められたものの数、取引先を公正に扱っていないと考えられるものの数、それぞれの件数と比率、これを示していただきたい。
○村木政府参考人 御説明申し上げます。
 平成10年7月から平成11年6月までの平成十事務年度におきまして、メーカー、卸売業者、それから小売業者を対象としまして実施いたしました調査件数は787件でございます。これは、前年の249件に対しまして約3倍の調査を実施したところでございます。
 お尋ねの、調査対象となりました取引のうちいずれかが、総販売原価、これを割って販売をしていたと認められたものは715件でございまして、調査件数の約90%になっております。同様に、仕入れまたは製造原価割れの販売と認められたものは121件、それから、取引先等の公正な取り扱いが行われていないのではないかと認められたものは117件でございまして、いずれも調査件数の約15%になっております。
 なお、実態調査に当たりましては、効率的な調査を行う観点から、私どもさまざまな情報を収集した上で対象者の適切な選定を行っていること、さらに、一定の調査対象期間におきます多数の取引のうち一つでもこのような問題がある取引が認められた場合には一件としてカウントしていることから、公正なルールに沿っているとは言いがたい取引として計上された割合が高くなっている面もあろうかと思っております。
○佐々木(憲)委員 原価割れで売られている、これが90・9%もあるわけであります。大変な比率です。しかも、仕入れ価格割れが15%。この仕入れ価格を割り込むということは、その裏にリベートがあるんじゃないか、こういう指摘もあります。
 全国小売酒販組合中央会の平成12年度の事業計画、ここにありますが、これはインターネットでとったものですけれども、この文書にはこう書いてあるわけです。国税庁からガイドラインが出されたものの、いまだ、売上数量を求めるだけの競争や特定の商品を取り扱うことを条件として過大な利益を供与する、つまりリベート、こういった取引が見受けられると指摘しております。
 私たちが酒屋さんや酒販組合の幹部の方々と懇談をいたしますと、必ず出てくるのは、酒屋の仕入れ値よりも安い価格でディスカウントストアが売っている、こういう話であります。
 具体的な事例でいいますと、例えば静岡県のある市では、酒屋さんの350ミリリットル缶のビール24缶の仕入れ値は4194円であります。ところが、一部の量販店やスーパーでは、3880円で売っている、3680円の店もある、こういう状況であります。この酒販組合の話では、これが一般化しているというのです。酒屋さんは、とてもそんな状況では太刀打ちできない。
 大蔵大臣にお聞きしますが、こういう状況というのは、これは公正、対等、平等な競争というふうに思われますか。
○宮澤大蔵大臣 思いません。
○佐々木(憲)委員 思わないと。
 国税庁の調査でも、公正なルールに沿っているとは言いがたい取引としていろいろな事例が挙げられておりますけれども、例えばこういうのがあります。
 合理的な価格の設定をしていない事例としてメーカーの事例が挙げられておりまして、「A社は大容量のしょうちゅうについて、競合他社との関係から、顧客を確保し取引数量を伸ばすため、基本リベートに加え、大きな販売力を持つ小売業者との取引関係にある卸売業者に対して、スポットリベートを支払ったことから、一部の取引について製造原価を割るものが認められた。」これは大蔵省の調査。
 また、取引先等の公正な取り扱いが行われていない事例として、「A社はリベートの支払金額について社内的な基準を設けているが、量販店とのビールの取引数量を伸ばすために、特定の量販店に対してのみ社内基準を採用せず、取引条件の差異に基づく合理的な理由がない多額のリベートを支払っているものが認められた。」と書いております。
 さらに、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていない事例として卸売業者の例が挙げられておりまして、「A社は大きな販売力を持つ量販店Bからの要請に応じて、顧客を確保するために、算出根拠のないリベート類を支払い、その結果一部の商品について仕入価格割れ取引となっていた。」
 これらは、大蔵省が示したガイドラインに違反している。それだけではありません。独禁法19条の不当廉売あるいは差別対価などに違反する重大な問題であります。
 この根本に、量販店と酒屋さんの間の価格差が生まれる根本に、不当なリベートの存在がある。このリベートの存在を是正しないと、公正な取引が成り立たない。先ほど公正ではないと言われた。それを是正するには、リベートそのものにメスを入れる必要があるのではありませんか。いかがでしょうか。
○宮澤大蔵大臣 そこもおっしゃるとおりだと思っておりますし、国税庁としてもそういう行政を一生懸命やろうとしておりますし、また、公正取引委員会でもそこは非常に丹念に調査をして行政をやっていただいておるのですけれども、このことがなかなか直ってこない。今、基本的には過当競争があるということであろうと思いますし、大きな荷物でございますから、たくさん荷物を扱ってくれればそれだけコストが安くなりますので、リベートの財源が出てくるとか――いいと申し上げているのじゃありませんよ、いろいろな状況からなかなかそういう過当競争というものがやまないというのが、これはきのうきょうに始まったことではございません。この行政にはつきものだと言っていいくらいございます問題でございますが、行政は、しかし、それを一生懸命正すために努力をしておるということでございます。
○佐々木(憲)委員 大量に取引するとコストが安くなるということは、確かにあると思います。しかし問題は、その理由によって価格の差がついているのではありません。ここで問題にされているのは、大蔵省の調査でも明らかなように、リベートの存在によって大きな価格差がついている、それが中小の酒屋さんを痛めつけているという問題なんです。
 そこにどうメスを入れるかというのが最大の問題でありまして、昨年12月9日に開催された酒販組合中央会臨時総会で、この記録がありますけれども、次のようなやりとりがあったわけです。
 問いとして、ビールの販売についてだけれども、ディスカウントストア等は、我々の仕入れ価格を下回る価格で販売しており、ビール四社の差別的な取り扱いがなければできないものだ、こう質問がありました。
 それに対する答え、公正取引委員会は安く販売することへの取り締まりが緩いようだ、こう答えまして、大手コンビニエンスストアのビールの安売りについては、ビール四社、国税庁、公取委に対し、大手コンビニエンスストアによるビールの大幅値下げに関する要望書を提出した。その後、ビール四社を訪問したが、明確な回答は得られなかった。缶ビールの価格体系については、ビール四社、国税庁に対し要望していく。販売時の出口論ではなく、仕入れ時の入り口論を議論しており、来年4月からはメーカーを含めて議論したい。これからは裁判も辞さない態度で考えることが必要だ。こういうふうに酒販組合の中央会の幹部の方は答弁をされているわけです。
 そこで、公正取引委員会にお聞きしたい。
 リベート問題というのは大変大きな問題であります。メーカーや卸売が特定の量販店に対して合理的な理由がない多額のリベートを支払う、こうなると、酒屋さんに流れるルートとの間で大きな格差が生じることは明らかであります。結果として、酒屋さんの仕入れ値よりもディスカウントストアの販売価格が安い、こういう事態も生まれるわけです。末端の小売店は、ここに問題があるんだ、差別的な不当なリベートが問題だ、こういうふうに言っているわけです。しかし、末端の場合には、これはなかなか実態がつかめないのです。
 この問題は、公取に対してもいろいろと要望が出たり、声も聞いたりしていると思いますけれども、この点について、公正取引委員会自身が乗り出して調べてみなければ実態がわからないと思うのですが、直ちにこれは調査すべきだと思います。いかがでしょうか。
○根來政府特別補佐人(公正取引委員会委員長) 一般論を申し上げますと、リベートとか販売奨励金というものは、その取引額によって左右されるものであるということでございます。その限度におきましては問題にならないわけでございますが、御指摘のように、不当にとか、やたらにとかいう言葉が上にかぶりましてリベートとか販売奨励金が交付されるということになりますと、やはり独禁法違反になりますし、またそれが不当廉売につながるということになりますと、私どもも黙視するわけにはまいらぬわけでございます。
 そういう御意見が一方にございますから、私どももそういう意見を正面から受けとめまして、その判断する前提として、調査が必要とあれば十分調査をするつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 必要とあれば。今必要ではないのですか。
○根來政府特別補佐人 先ほど担当者が申しましたように、まず不服申し立てがいろいろあるわけでございまして、御承知のように、先ほど申しましたけれども、年間300件ぐらいあるわけでございます。そういう点も処理しながらかつ調査をするわけでございますので、必要とあらばというのは、そういういろいろの現象を踏まえまして、判断する必要があれば十分調査する、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 まさに今判断して実態を調査するということが必要だと思います。公取の担当者のお話を聞きますと、もう既に調査を始めているというような発言もございました。これはしっかりと最後まで追及をしていただきたい。その決意を述べていただきたい。
○根來政府特別補佐人 この酒類に限らず、ガソリンの問題もございますし、そういう問題はすべて決意を持ってやっておるわけでございますので、ひとつ御了解願いたいと思います。
○佐々木(憲)委員 しっかりやっていただきたい。
 次に、未成年の飲酒問題についてお聞きをしたいと思います。
 お酒は百薬の長と言われまして、多くの方々に親しまれてきたわけですけれども、同時に、先ほど大蔵大臣の御答弁にもありました致酔性を持っている特別な飲料でございます。したがって、他の飲み物とは区別して扱わなければならないと思います。飲み方によっては、さまざまな社会問題が引き起こされるわけであります。アルコール精神病やアルコール依存症で入院、通院する患者は2万人、アルコール性の慢性肝硬変の患者が3万人とも言われております。
 特に、未成年の飲酒は大変問題でございまして、我が国には未成年者飲酒禁止法、こういう法律もあります。ところが、この問題での全国調査はほとんど行われておりません。その意味で、厚生省が1996年度に行った未成年者の飲酒行動に関する全国調査、これでありますけれども、この調査は大変貴重なものだというふうに私も思っております。それによりますと、週一回以上飲酒する者の割合、中学1年では、男子が4・4%、女子3・1%、高校3年になりますと、男子16・8%、女子7%に上っております。
 問題は、一体これはどこからこのお酒を入手するかという問題であります。
 厚生省にお聞きしたいんですけれども、未成年者が家庭以外でお酒を手に入れる方法で一番多いのは何でしょうか。
○篠崎政府参考人(厚生省保健医療局長) 今先生御指摘の件は、平成8年度の厚生科学研究事業におきまして実施されました調査でございますが、その報告によりますと、これは複数回答が許されておりますけれども、家庭以外で一番多いのがコンビニの件数でございまして、9691人の回答人数のうちの、これは複数回答、今申し上げましたように、6087ということでございますので、61・5%ということでございます。
○佐々木(憲)委員 コンビニが一番多いということですね。高校3年では、先ほど言われたように、6割強がコンビニでお酒を買っている。これは大変大きな問題であります。
 国税庁にお聞きをしたい。酒屋さんが加盟している酒販組合では、未成年の飲酒につながる酒の自動販売機を廃止するために大変な努力をされているというふうにお聞きしましたが、どのように進められていますか。
○村木政府参考人 御指摘のように、業界でも、未成年者の飲酒防止の観点から自販機問題に取り組んでおりまして、全国の小売酒販組合中央会におきましては、平成7年5月、今から5年前になりますが、この時期に、平成12年5月を目途とします現行の酒類自販機の撤廃決議を自主的に行っております。また、国税庁としましても、こういった決議を受けまして、平成7年7月に通達を出しまして指導を行ってきているところであります。この結果、現行の酒類自販機の台数につきましては徐々に減少傾向にありまして、国税庁としては、引き続き指導に努めてまいりたい、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 ことしの5月で撤廃をするという決議が、酒販組合では努力をして決議をし、撤廃の方向でやっているそうであります。酒屋さんの場合は、個人店、個人の酒屋さんの場合には、深夜営業はもちろんやっておりません。今言ったように、お酒の自動販売機も廃止する、こういう努力をしているわけです。未成年への販売規制を熱心にやっております。しかも、コストはだれが負担しているのか。すべて自己負担でやっている。これに対する補助金もない。そういう中で酒屋さんは努力をされているわけです。
 ところが、未成年が入手する経路で一番多いコンビニは24時間営業で、いつでもお酒が買える。しかも、未成年の者がアルバイトに携わり、未成年が未成年に売っているという事例まであります。中央酒類審議会が平成6年10月に出した報告、ここにありますが、「アルコール飲料としての酒類の販売等の在り方について」、この中でこういう書き方がなされております。「一部のコンビニエンス・ストアにおいては、酒類の特性に関する理解が乏しい未成年者アルバイト等が未成年者に酒類を販売している事例がある」、こういうふうに書いているわけであります。酒販組合加盟の酒屋さんと違いまして、明らかにコンビニを通じて未成年への販売が野放しになっている。
 昨年11月1日付の酒販ニュース、業界紙でありますけれども、この酒販ニュースによりますと、大型店や主要なコンビニエンスストアの酒販免許店の比率、コンビニの店数のうち何店が酒販免許を受けているか、その比率が載っております。それによりますと、サンクスが最高で73・4%、セブンイレブンが60・6%、ローソンが44%などとなっております。これでは、未成年がどこでも容易にお酒を入手できることになるわけです。こんな野放しなのは日本ぐらいなものでございます。
 例えばアメリカでは、酒の販売に際しては身分証明書の提示を求めるなど、未成年への販売は厳格に規制されております。平成6年のこの中央酒類審議会の報告によりますと、「フランスのエヴァン法の制定やアメリカの法定飲酒年齢の引き上げにみられるように世界的には酒類に関する規制を強化する傾向にある。」こういうふうに指摘されております。
 ところが、日本は逆行しているというふうに言わざるを得ません。未成年への酒の販売を野放しにするのではなくて、適切な社会的管理のもとに置くのは当たり前だと思いますけれども、国税庁はこの点についてどのように対処していますか。
○村木政府参考人 御説明申し上げます。
 国税庁におきましては、致酔性、依存性を有する酒類の特性にかんがみまして、よりよい飲酒環境を形成しまして消費者利益と酒類産業の健全な発展を期する観点から、先ほど申し上げましたように、現行の自販機の撤廃等につきまして酒類販売業者に指導するとともに、従来から、酒類業界に対しまして未成年者飲酒防止に配意した販売や広告宣伝を行うよう要請するなど、いろいろな措置を講じてきたところでございます。
 また、平成10年4月には、年齢確認の徹底あるいは販売責任者の設置など、酒類販売におきます未成年者飲酒防止のための具体的な取り組みを関係団体に要請するとともに、国税庁、局、所を挙げましてこれらの取り組みの実施につきまして酒類小売業者を指導してきております。未成年者への酒類の販売の防止につきましては、今後とも、事業者において適切な対応がなされるよう積極的に指導してまいりたいと思います。
 また、コンビニにつきましては、一昨年秋に出しました通達の実施状況をフォローアップいたしまして、問題点をピックアップした後、さらに個別に、特に深夜販売を行っておりますコンビニ、スーパー等につきましては、税務署等に集合資料という形で集めまして、指導の徹底を図っているところでございまして、より一層こういったことに努めてまいりたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 今幾つかの対応策を述べられましたけれども、そういうことをやっても、実際にはなかなかこれは規制がかかっていかないんです。規制緩和を一方ではどんどん進めて、コンビニに免許をどんどんふやしている。この間、ずっとコンビニの免許取得件数、比率は上がっております。そういうことを一方でやりながら多少の手だてを打っても、これはもうほとんど効果がない、これが実態であります。規制緩和が進めば進むほど、こういう未成年者への飲酒の面でも重大な後退を招いていると言わざるを得ません。
 そこで、酒販制度の規制緩和というのは一体だれの要求で進められるようになったのか、これが問題だと思うんです。財界の要求としてはこれは根強くあったと思いますけれども、同時に、外圧として、出発点は90年の日米構造協議だったというふうに私は思います。
 1990年6月の日米構造協議の最終報告、ここにありますが、ここでは、「とくに、輸入酒類の販売比率が高いと見られる大型小売店舗の免許については、中間報告を踏まえて前倒しすることとし、1993年秋までに全て免許を付与する。」こういうふうに述べられておりまして、大型店でどんどん酒が販売できるという状況がつくられていった。
 NHKがまとめた「日米構造協議議事録の記録」という本があります。ここにそのコピーがございます。これによりますと、日本側がこういうふうに言っているんですね。「大型店の酒類の販売は小規模小売店にとって大きな脅威となるもので、こうした事態に対応する時間が小規模店に必要なのです」という説明をしております。つまり、大型店でお酒が売られると小規模店舗が危機に陥るという認識をしている。それでもなお受け入れるという姿勢なんですね。これはまことに及び腰の対応だと言わざるを得ません。
 当のアメリカでは実際にどんな規制が行われているか。一橋大学の中里実教授の研究によりますと、アメリカでは、酒類の規制は州の固有の権限であり、34の州で免許方式を採用し、16の州で専売方式を採用している。そしてこう書いているんですね、「アメリカにおける酒類販売に関する規制が日本よりもかなり厳しい」と。
 外務大臣にここでお聞きをしたいわけであります。アメリカは、国内では厳しい規制を現に行っております。それでいながら、日本に対して大幅な緩和を要求し、実行させているんです。では、そのアメリカはヨーロッパに対して酒販制度の緩和を要求した事実はありますか。
○河野外務大臣 アメリカがヨーロッパに対して酒類販売の規制緩和を申し入れたという事実は、承知しておりません。
 一方、ヨーロッパがいかなる規制をやっていたか。これは、ヨーロッパは必ずしも一つではないというふうにも思います。
○佐々木(憲)委員 アメリカはヨーロッパに対して要求していないわけです。外務省に私どもも確かめました。
 アメリカは、酒販の自由化について、日本には要求するけれどもヨーロッパには一度も要求したことがない。それなのに日本にだけ要求するというのは、極めて不当だと私は思うのですよ。それを受け入れるというのは屈辱的だと思うのです。国際水準に合わせるというなら、アメリカの不当な要求を拒否して、国内の中小零細酒販業者を守るべきだと私は思います。それを唯々諾々と受け入れる、これは、国際的な流れにも逆行する姿勢だと言わざるを得ません。
 大蔵省が平成7年3月に出した「内外からの規制緩和要望等に対する検討状況」、こういう中間公表されたものがございます。この平成8年の部分について見ますと、いろいろな要望が各方面から出されていることが書かれております。見直しを要望している。これは大企業もそうであります。経団連なども上がっております。同時に、米国政府というのが書かれていますね。
 それに対して、緩和反対であるというのは、酒類業中央団体連絡協議会、全国小売酒販組合中央会、日本ワイナリー協会、日本洋酒輸入協会、アルコール問題全国市民協会、これは規制緩和に反対だと言っている。さらに、規制を強化してもらいたい、こういう要望を出しているのは、全国卸売酒販組合中央会、アルコール問題全国市民協会、消費科学連合会、こういうところがもっと規制を強化してもらいたいと言っているわけであります。
 大蔵大臣にお聞きしますけれども、この緩和反対あるいは規制強化、これを求める団体の意見がこのように出ておりますが、これは、どんなにこういう意見が出てもそれは聞きおくだけである、そういう姿勢なんでしょうか。
○宮澤大蔵大臣 長い年月にわたっていろいろ複雑な事情がございますけれども、日米のいわゆる自由化交渉の中で、酒ももとよりその一つのアイテムになりました、たばこなんかもそうであったわけでございますけれども。それは、アメリカ産の酒を日本産の酒と平等に扱ってくれ、そういう要求でございますから、その限りにおいて、日本の酒がいいのならアメリカの酒もいいということは、これは自由化の、平等の主張として通ることである。ただ、そのために大型販売店を開いてアメリカの酒をたくさん売るようにという部分は、私はどうもそういうことが公の交渉になったとは思いません。その点はそう思いませんが、ただ、アメリカの酒に自由なアクセスを与えるということは、これはございました。
 そこで、今アメリカの例をおっしゃいましたが、やはりその国、ヨーロッパも今外務大臣言われましたようにそうでございますが、その国、その国に伝統がありまして、アメリカのようにかつては禁酒国であったり、あるいはヨーロッパも含めまして、日曜日教会に行く日はどうとか、選挙の日はどうとか、各地域によっていろいろな規制がございますのは、やはり彼らの気持ちの中に、酒に対して時によっては厳しくなければならないという伝統がどこかあるんだろうと思います。それに比べますと、我が国は酒に対しては概して寛大でございますので、したがって、それについて、そっちの面からくる規制というものは我が国は非常にやりにくいというか、少ないのだと思います。
 でございますから、私、結局何を申し上げようとしているかといいますと、酒に伴う社会悪みたいなものをできるだけ小さくするためにどうしたらいいかということになりますので、そのために法律が要るのか。また、そうなりますと、それはそれで問題があるのかもしれませんが、コンビニに子供が買いに来たときに、お使いだと言っても、さあどうかなというぐらいのことはなきゃいけませんし、そういう行政の取り締まりがしっかりしなきゃならないことはまず確かでございます。
 もう一つは、国税庁というものは長いこと日本の酒類業の行政をいたしておりますから、そういう意味で酒類業に対する一つのポリシーがございます。逆にしかし、今度は社会悪の方が問題になっているわけですから、国税庁の行政というものがその社会悪の防止にもっとウエートを置かなきゃいけない、こういうことではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 その国、その国の伝統があるとおっしゃいました。日本には日本の伝統があります。日本のやり方があります。アメリカ、財界、スーパーなどの言い分を聞いて、国内の中小の酒販業界、消費者団体の声も無視するということになりますと、これは極めて重大でありまして、一方の意見は入れるけれども、一方はもうどうでもいいということになってしまうのですね。これはやはり私は大変重大な問題だと思います。もうこれ以上規制緩和をするのはやめてほしいというのが酒屋さん、酒販組合の強い要望であります。
 全国小売酒販組合中央会は、昨年の10月、これはコピーですけれども、読売新聞に意見広告を出したのですね。「だれでも、どこでも、いつでも、お酒が買える――それは本当に良いことですか?」「管理をせず野放しにすると危険です。」こう書かれております。これに対して、全国からたくさんの意見が寄せられたと言われておりまして、約千通の意見が寄せられた。規制緩和反対77%、賛成9%、どちらでもないが14%であったそうであります。
 昨年3月に決まりました規制緩和推進三カ年計画では、酒類小売免許に係る需給調整規制について、人口基準については平成10年9月から緩和して、15年に廃止するとされている。距離基準についてはことしの9月1日をもって廃止するとされております。私は、これ以上の規制緩和はやるべきではない、この計画は中止すべきだというふうに思います。
 自民党の中にも、規制緩和を見直す会、こういうものがつくられているそうであります。メンバーは約150人ということで、びっくりいたしましたが、現職閣僚であります河野外務大臣、玉沢農水大臣、中曽根文部大臣も入っております。
 河野外務大臣にお聞きをしますけれども、あなたはこの政府の酒類の規制緩和計画をどうするおつもりでしょうか。規制緩和計画はもう絶対に動かさない、こういう姿勢なのか、それとも再検討をすべきだと考えているのか、どちらでしょうか。
○河野外務大臣 規制緩和とか構造改善というのは、一つの時代の要求というものがあるというふうに私どもも承知をしております。しかし、すべての規制緩和がそのまま100%、社会を支え、日本のよき伝統をそのまま支えることがいいかどうかという問題提起があれば、それは見直すべきところは見直すということも、また時に必要であろうというふうに私は考えております。
 今議員がお話しになりました、規制緩和をおまえは見直すつもりかどうかというふうに言われますと、私は、一般論からいって規制緩和は進めなければならない、しかし、その規制緩和の中にも今申し上げたような問題点は含まれているのではないか、そういう認識を持っているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 この酒の規制緩和については見直す、そういう対象となるというふうにお考えでしょうか。
○河野外務大臣 まだ個々具体の問題について私がすべてを承知しているわけではございませんので、御担当の方々の御判断というものをよく聞かなければ、にわかにここで御返事はできません。
○佐々木(憲)委員 宮澤大蔵大臣にお聞きしますけれども、あなたの場合は規制緩和の見直しについてはどのようにお考えでしょうか。
○宮澤大蔵大臣 佐々木委員の御質問は、いつもは大体お答えするのに易しいんですが、きょうのは非常に実は難しいんです。
 基本的には、ここまで私も規制緩和を、やむを得ないな、やむを得ないと思いつつ進めてきたというのが実は正直なところなんでございます。そうして、やはり消費者の立場からいえば、何でも致酔飲料だからとか税金が入っているとかいうことで押し切れるわけでもあるまい。
 しかし、おっしゃるように社会悪の問題が確かにかなり大きく出てきていて、酒屋さんは良心的にそれを何とか対処しようとしているのに、そうでないところは、酒というものに対してそれほど責任を持っていない、そういう人たちが売っているという問題がありますから、やはりそこはそこで、行政がしっかりしなきゃいかぬのじゃないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 行政はしっかりしていただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。
 私は、日本の将来のために、圧倒的多数の中小企業が安心して営業ができる、そういう政治が必要だと思います。青少年に明るい未来を保障できるような政治、これが今求められているというふうに思うのです。政府の規制緩和計画の根本的な再検討を求めたいと思います。
 次に、時間がなくなってまいりましたが、タクシーの規制緩和の問題について一言お聞きをしたいと思います。
 この分野でも規制緩和が重大な問題を引き起こしておりまして、運輸大臣にお聞きしたいのですが、タクシーというのは公共交通機関として重要な役割を果たしております。タクシーの最大の使命は、言うまでもなく、人命を安全に目的地まで輸送するということであります。安全輸送、これが最大の使命だと思います。この安全輸送という使命を果たす上で、需給調整が大きな役割を果たしてまいりました。タクシーの供給と需要がバランスよく保たれてこそ、タクシー会社の経営が安定する、良質な労働力の確保もできる、こういう関係にあると思います。
 そこで、運輸大臣にお聞きをしますけれども、この間、タクシーの乗客はどの程度減っておって、タクシーの台数がどの程度ふえているか、この点を踏まえて今後どうするつもりか、お聞きをしたいと思います。
○二階運輸務大臣 お答えいたします。
 一般的には、事業の活性化のためには、事業への参入や事業規模の拡大等を、経営判断によってこれを決定することにより、よりよい意味での競争が行われることが基本であると考えております。
 平成9年以降の需給調整規制の弾力化措置は、このような考え方に立ち、平成9年3月の政府の規制緩和推進計画に基づいて、タクシーについても、現行制度のもとにおいてできるだけ競争を促進し、事業の活性化を図る観点から、新規参入及び増車の枠を事業者に示したものであります。この増車の枠の中で、事業者はそれぞれの経営の判断によって増車等を行ったところでありますが、その後、景気の低迷が続く中で、輸送需要が低迷し、今日の厳しい経営状況や歩合制賃金体制のもとで、運転者の皆さんの収入の低下等があらわれているものというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 いわば、タクシーの業界は供給過剰状態であります。タクシーの乗客は、10年前と比べまして24%マイナスであります。その中で、今言われたように、タクシーの台数は、新規事業者、既存事業者にこの間ふやしてきた。そのために、一層供給が過剰となり、慢性的な供給過剰状況をつくっております。そのために、大臣のお答えにありましたように、運転手の労働条件が一層悪化している。91年に382万円だった平均年収は、98年に327万円に激減しております。まさに極限状態という状態でありまして、ハイヤー、タクシー産業の廃業、倒産は大変な数に上っており、急増しております。
 運輸大臣にもう一度お伺いしたいわけですが、規制緩和によってこのような深刻な事態が拍車をかけられようとしておるわけでありますが、外国では、需給調整を廃止したために、例えばアメリカのアトランタ、シアトル、スウェーデンのストックホルム、こういうところでは、規制緩和によって逆に長時間労働による過労運転あるいは乱暴運転で事故がふえて、遠回り、乗車拒否、不当料金請求、こういうことが横行したということが言われております。
 その後、アトランタでは、規制を撤廃したけれどもそういう事態になったので、利用者から苦情が寄せられ、81年に再規制に復帰をした。シアトルやストックホルムでも、規制撤廃の失敗から再規制、運転者資格の強化、こういうものに乗り出しております。
 運輸大臣にお聞きしますけれども、規制緩和一辺倒というのが大変危険だというのは、国際的な経験からも明らかであります。再規制に乗り出したところもある。この外国の教訓に学ぶべきだと思いますけれども、その点のお考えはありますか。
○島村委員長 二階運輸大臣。簡潔に願います。
○二階運輸大臣 御承知のように、タクシーは年間25億人もの旅客を輸送しておるわけでありますから、極めて重要な公共交通機関だという認識を持っております。
 したがいまして、今御指摘のようなことに今後我々も十分配慮してまいらなくてはならないことでありますが、同時に、タクシーが足りなくて乗車拒否等が横行し、最寄りの駅までは電車で行ったが、そこからタクシーを待つ行列が深夜ずっと続いておるというような状態が続いた日のことも、先生も御承知であろうと思いますし、私もそういう経験を持っておるわけであります。
 そういう状況から、最近のタクシーが、例えば東京駅を見ましても、東京駅全体を空車が一回り取り囲んでおるというふうな状況を見るにつけまして、今御指摘のようなことも十分理解できるわけであります。
 今後、高齢化社会の中で、例えば車いすのままで乗車できるリフトつきの車であるとか、あるいはまた福祉タクシーとか、さまざまなタクシーに対する利用が拡大しているところでありますが、そうした面につきましても、十分これから競争の中で、サービス、また新しい分野を開拓していく等の御努力が業界の中でもなされておるわけであります。バリアフリーの法律等も今提出をさせていただいたところでございますが、タクシーがそういう新しい面での公共交通機関として大きな役割を果たしていただけるように、我々も一層努力をしてまいりたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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