2006年12月01日 第165回 臨時国会 倫理選挙特別委員会 【373】 - 質問
外資系企業の献金野放しを許すな 企業・団体献金禁止こそ世界の流れ
2006年12月1日、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で、佐々木憲昭議員は、政治資金規正法の改悪案について質問しました。
これまで「外国の勢力によって影響を受ける」という理由で、株式の50%以上を外国資本が保有している法人からの献金は禁止されてきました。
ところが、提案された法案は、そのような外資企業から「献金を受けてもよい」とされています。
佐々木議員は、これまで、外国の影響を受けていた外資50%以上の会社が、実態は何も変わっていないのに、どうして外国の影響を受けない会社に変わったといえるのかと追及。
自民党の提案者は、上場してしている企業であれば「外国の勢力から影響を受けて国益を損ねることはない」としか答えられませんでした。
また自民党が、提案理由としてあげたのは、「ドイツ、イギリス、アメリカは、自国内の企業であれば外資比率によって一律に政治資金の提供が禁止されていない」ということでした。提案者は、外資献金規制撤廃は、欧米諸国の趨勢であるかのように言いますが、実態は、全く逆で、外資献金規制強化、企業献金禁止が、世界の流れです。
佐々木議員は、外資系企業からの献金禁止を撤廃しようという考えが出てきた背景には、日本経団連の会長が、トヨタ自動車の奥田氏からキヤノンの御手洗氏への交代がきっかけとなっていると指摘。
結局、カネの力で政治に影響を与えたい経団連の思惑と、企業献金をもらえる先が減って困る自民党と民主党の思惑が一致して、政治資金規正法の質的規制の根幹である外資企業献金禁止撤廃をいっているのです。
最後に、佐々木議員は、「こんなやり方は絶対に認めるわけにはいかない。今必要なのは、企業・団体献金の禁止である」と強調しました。
質問の後、討論・採決が行われ、佐々木議員が反対討論を行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
こんな重要な法案を審議しているのに、委員会には半数いないんじゃありませんか。委員長、確認してください。
○今井委員長 理事及び事務局をして出席の連絡をさせますので、質問をお続けください。至急連絡します。
○佐々木(憲)委員 では、そろうまで待ちます。(発言する者あり)
○今井委員長 速記をとめてください。
○今井委員長 速記を起こしてください。
質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 この法案は大変重大な法案で、今までの原則を根本的に変える内容を含むものであります。その審議に過半数がいないというのは極めて重大でありまして、今ようやくそろったわけであります。
内容に入りますが、まず、総務大臣に確認をしたいと思います。
これまで外国人、外国法人からの政治献金を禁止してきた理由、それをきちっと説明してください。
○菅総務大臣 政治資金規正法第22条の5の規定は、選挙に関すると否とを問わず、外国人等から政治活動に関する寄附を受けることを禁止するものであります。これは、我が国の政治や選挙が外国人や外国の組織、外国の政府など外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止しようという趣旨から設けられたものであります。
○佐々木(憲)委員 今説明がありましたように、その場合の基準として、企業の株式の50%以上を外資が保有している法人の場合は、外国の勢力によって影響を受ける、こういう理由でこれまでは政治献金を受けることを禁止されてきたわけであります。ところが、今回の法案は、そのような外資系企業からの献金を受けてもよいという方向に変えられているわけであります。
これまで外国の影響を受けていた外資50%以上の会社が、なぜ外国の影響を受けない会社に変わったと言えるのか。その会社の実態は、特に変わっているわけじゃありません。それなのに、影響を受けない会社に変わったと。この理由は何ですか。
○早川議員 まず、本改正案では、我が国の政治や選挙が外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止するという現行法の趣旨に反することがないように、日本法人である上場会社からの寄附に限って現行の制限を緩和することとしているものであります。
これは、上場会社については、所有と経営が完全に分離している、少数特定者持ち株数や株主数等に関し厳しい上場審査基準が課せられている、さらには、有価証券報告書や株式大量保有報告書の提出義務を課せられ、株主の状況等について市場による監視が徹底している、そういった理由によりまして、日本法人である上場会社から政治活動に関する寄附を受領しても、我が国の政治や選挙が外国の勢力から影響を受けて国益を損ねることはないものと判断したためであります。
したがって、御指摘のような懸念は当てはまらないものと存じておりますけれども、特に、現在は投資目的での外国人の株式の保有がふえているといったような社会情勢の変化を考慮したものであります。
○佐々木(憲)委員 その説明は私は納得できないんですね。つまり、経営支配を受けている会社もあるわけです、現実に。外国の経営支配を直接受けている50%を超えている会社はあるわけです。
しかも、市場による監視と言いますけれども、これは基準が全然違うんですよ。しかも、株式保有を目的としているだけだと言いますが、そういう場合も、ある状況によってはいつでも支配可能に転じることができる。そういう状況ですので、私は、この緩和というのは極めて重大である、問題であるというふうに思います。
外国から影響を受けている会社が、その性格が突然変わるということではないわけでありまして、50%を超えている会社から献金を受けてもいいだろうという立場に変わったのは提案者の側じゃありませんか。しかも、上場している会社は献金額が大きいわけです。政治的な影響力が非常に重大であります。上場企業だから健全な企業とは言えません。これまでも上場企業は、いろいろな不祥事、事故を多発させているわけであります。
そこでお聞きしますが、法案では、外国系の団体からの献金は禁止のままであります。上場するような大きな会社の献金を認めて、小さな会社あるいは団体からの献金は認めない、その理由は何ですか。
○早川議員 御承知のとおりでありますけれども、株式会社が上場するためには、少数特定者持ち株数が一定比率以下であること、すなわち、大株主上位10人とかあるいは役員等の特別利害関係者等の持ち株の合計が例えば70%以下とか、こういった一つの制限が課せられる。あるいは、株主数が一定数以上である、こういった、証券取引所がそれぞれ設けております審査基準をクリアする必要があるところであります。
この審査基準の内容を検討いたしますと、言ってみれば、非合法な活動をするような、そういう会社の上場というのは認められない。これは、監査法人等の監査等の報告に基づいて、最終的には証券取引所が上場を認めるかどうかを決定するということになっております。
上場会社には、投資家保護の観点から、有価証券報告書や株式大量保有報告書の提出など、企業情報開示のためのさまざまな義務が課せられております。それらを通じて、先ほども御説明を申し上げましたけれども、市場による監視が恒常的に行われております。
さらに、上場会社の株主構成が非常に流動的であります。外国人あるいは外国法人の持ち株比率が50%を超えるかどうかは、偶然に左右される面も大きいわけであります。
したがいまして、上場会社と非上場会社やその他の団体では、これらの点において異なるものと承知をしているところであります。
○佐々木(憲)委員 今の説明は私は全く納得できません。大きな会社ほど影響力が大きい。しかも、その性格はそんなに急に変わったわけじゃありません。外国の影響力がある会社、そこから献金を受ければ、当然影響を受けるわけです。
総務省にお聞きしますが、ドイツ、イギリス、アメリカ、これは自国の企業であれば外資比率によって一律の政治資金の提供が禁止されていないというふうに説明をされているわけですけれども、具体的に聞きますが、アメリカの連邦レベルでは企業献金の規定はどのようになっているか、また、政党への献金の上限は幾らですか。
○久元政府参考人(総務省自治行政局選挙部長) まず、ドイツでありますが、ドイツにおきましては、国外からの外国法人による寄附は原則として禁止されておりますが、出資持ち分の過半数をドイツ人、EU市民が保有している企業からの寄附、またEU加盟国内に本拠を置く企業からの寄附は、例外的に認められているところであります。また、ドイツ国内からの寄附については、外国法人であっても制限されていないところであります。
また、イギリスにおきましては、外国法人からの寄附は原則として禁止されておりますけれども、EU加盟国内で設立され、国内で事業を行っている登録会社については、例外的に認められているところであります。
次に、アメリカでありますが、アメリカにおきましては企業献金は禁止されておりますが、企業が、政治活動委員会、ポリティカル・アクション・コミッティー、PACというふうに呼ばれておりますが、このPACを設立して寄附を集め、政党に対して政治献金を行うことは可能とされております。
このPACが政党に対して行う政治献金でありますけれども、政党の連邦選挙運動に関するもの、いわゆるハードマネーに関しましては、これは平成16年の国立国会図書館の調査によりますと、以下のとおりとなっております。
まず、全国政党委員会に対するものは、年間2万5000ドル、116円で換算いたしますと約290万円ということになろうかと思います。それから、州・地域政党委員会に対するものは、年間1万ドル、約116万円ということで制限されているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今説明がありましたけれども、ドイツ、イギリスなどヨーロッパの場合は、EU域内にある会社からの献金のみでありまして、それ以外からの献金は禁止されているわけでございます。EUの場合も、フランスはもともと政治献金は禁止ですよね。それから、アメリカの場合も、企業、労働組合の献金は禁止であります。PACを通じてやる場合も、外資系企業の場合、親会社であろうが子会社であろうが、完全にこれは禁止されているわけですね。しかも、上限がある。ですから、日本の今提案されているこの法案のように無制限ではないわけです。むしろ、国際的な流れは企業献金の禁止の方向であります。外国からの献金規制を強化しているわけですね。大体、上場基準というのも、これは証券取引所によって違うわけであります、先ほども若干質問がありましたけれども。そういうように、今回の法案というのは、結局、これまでの外国人、外資系企業からの献金の禁止に穴をあけるものだと私は思わざるを得ません。
なぜこんな法案が出てきたのかということでありますが、結局、日本経団連の会長がトヨタ自動車の奥田氏から今度はキヤノンの御手洗氏に交代した、それがきっかけじゃありませんか。金の力で政治に影響を与える、そういう経団連の思惑があり、政治献金をもらえるということで、だんだん先細りになってきた、では、この際、外資系企業からでもいいやということで、外資系企業からの献金も認めていこうと。いわば自民党と民主党の思惑が一致して、こういう形で行われている。
私は、こんなやり方は絶対に認めるわけにはいきません。今必要なのは、企業・団体献金の禁止であります。このことを指摘して、質問は終わらせてい