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金融(銀行・保険・証券) (銀行株式取得機構)

2001年10月29日 第153回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【142】 - 質問

“株式買取機構に業界のニーズはない”と全銀協会長が答弁

 2001年10月29日の財務金融委員会で、26日に引き続いて、「銀行株式買取機構」を設立する法案の質疑が行われ、この日は参考人質疑が行われました。
 このなかで参考人として出席した山本惠朗全国銀行協会(全銀協)会長は、銀行保有株式買取機構について「業界としてのニーズはない」と佐々木憲昭議員の質問に答弁し、政府・与党が進めている機構創設の道理のなさが浮きぼりになりました。

 佐々木議員は、銀行業界が、この間、自己責任によって計画的に株式を放出し株式保有を減らしてきていることを指摘。今回の新たな保有規制によって売却が必要となる11兆円も、計画的な売却が可能な額であるとして、「銀行が機構に株を売却するのは、どんな事態が想定されるか」とただしました。
 山本全銀協会長は、「具体的に明示できない」として政府が示している買取要件を述べるだけで、「われわれは市場売却を中心に考える」と答弁しました。

 また佐々木議員は、全銀協が、いっかんして機構に対するニーズはないと表明してきたことを指摘し、出席した全銀協、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、日本証券業協会の各会長に、「政府に買取機構をつくるよう要請を出した事実はあるか」とただしました。各協会長は、そろって「要請したことはない」と答えました。
 佐々木議員は、「答弁を聞いていると買取機構の必要性はない」とした上で、「これまで銀行業界は自己責任で計画的に株の縮小をやってきたのであり、それを自己責任でやっていくのが銀行業界の姿勢ではないか。今回の法案はそれを国の側からゆがめるものだ」と財政資金の投入で損失の穴埋めをする機構の設立を批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 参考人の皆さん、大変お忙しい中御出席をいただいて、大変貴重な御意見をお聞かせいただいて、ありがとうございます。
 先ほど来の議論をお聞きいたしまして、まず山本参考人にお聞きしたいのですけれども、株式取得機構に対する銀行業界としての固有のニーズはないというふうなお答えでございました。
 この取得機構の必要性という点でいろいろな議論があったように思いますが、全銀協としては一貫してそういう姿勢をとってこられたように思います。前会長の西川会長の記者会見を見ましても、銀行業界として株式を売却した後の下落リスクを国に負ってくださいということはとても申し上げることはできないと考えていますとか、固有のニーズはありませんとか、そういうふうにお答えになっているわけです。
 そこで、端的にお聞きしますけれども、全銀協として、この機構をつくってもらいたいという要請を政府に出したという事実はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
○山本参考人(全国銀行協会会長) お答え申し上げます。
 こうした機構をつくってほしいという要請を全銀協として関係当局に要請をしたということは、私は記憶にございません。
○佐々木(憲)委員 それでは、地銀協会の平澤会長にお聞きしますけれども、地銀としては、今回保有制限の対象になる銀行というのは非常に少ないわけでありまして、我々が金融庁からいただいた資料を見ましても、地銀は八行超えておりますけれども、しかし、150%を超えているのはそのうちの一行しかございません。ですから、地銀としては、どうしてもこの機構がなければならないということには当然ならないと思うのですね。
 それから、第二地銀協会の会長さんの一色さんも同時にお聞きしますけれども、地銀よりも第二地銀の方はますますそういう保有制限の対象になるところは少ないわけでございます。
 お二人にお伺いしますけれども、この機構をつくってもらいたいという要請を協会として出された事実はございますか。
○平澤参考人(社団法人全国地方銀行協会会長) 特にそういうことを申し上げたことはないのではないかな、正式にはそういう御意見は申し上げていないと思います。
○一色参考人(社団法人第二地方銀行協会会長) お答えします。
 第二地銀としても、要請をしたことはございません。
○佐々木(憲)委員 日本証券業協会会長さん、奥本さんにお聞きしますけれども、そうしますと、こういう機構をつくってもらいたいというのは、これは証券業界として非常に強い要望を出しておられたのでしょうか。それとも、どうも私は先ほどの御発言を聞いていて、かなり積極的な印象を持ちましたが、協会としてこういう要請を出されたという事実はありますか。
○奥本参考人(日本証券業協会会長) 協会としてこういう要請を出したという事実はないと記憶しております。
○佐々木(憲)委員 つまり、関係業界は、このような機構をつくってもらわなくても、いわば自己責任、自分たちの一定の計画に基づき、過剰な株の保有があれば、あるいは持ち合いがあれば、それを計画的に市場に放出し、そしてみずからの保有制限、保有を減らしている。これは、今までの状況を見ますと、そのように見えるわけですね。
 全銀協の会長さんにお聞きしますけれども、これは西川会長の記者会見でありますが、大手銀行の話ですが、「1999年度、2000年度と続いて、2兆円を超える株式圧縮が行われたとのことである。この金額は、2000年1年間の三市場における株式売却代金合計額が300兆円近くであることを考えれば、十分に吸収可能なロットであろうと思う」このようにおっしゃっているわけですね。
 つまり、大手銀行としては、一定の計画のもとに着実にこの過剰な保有を解消しつつあった。しかも、その金額というのは株式市場に大きな影響を与えるようなことはなかった。つまり、年間2兆円としても、300兆の市場からいうとわずかなものである。こういう状況ですので、山本会長の認識もそういうことではないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。
○山本参考人 前西川会長がそのような発言をされたというのは私も記憶しておりますが、年間に2兆円から3兆円という銀行の売却については、これまでのところ何とか消化ができてきているということは、そのとおりだというふうに思います。
 ただ、今後の一定の時間内で、それぞれ保有株数の制限を上回っている金額、個別銀行で違いますけれども、売却のスピードがその時々で上がってまいりますと、こうした順調な吸収が可能かどうかということがあって、今回のような緊急措置としての機構というものを考え出されたのではないかというふうに私は認識しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 大手銀行としては、ティア1を超える部分というのは3月時点で11兆というふうに言われているわけですけれども、例えばこれを5年間で、つまり、過去1年間、2兆円ということでやってきたとすれば、5年程度で計画的にやっていけば、当然これは解消可能な、基準をクリアできる、その程度のロットである、こういうことが言えるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○山本参考人 計算上はそういうことになろうかと思いますが、マーケットの状況、それから、先ほど申し上げました株式の保有制限の時限性という問題を考えますと、順調な消化ができない特別な状況があるのではないか。それで、こうした機構をあらかじめ用意しておくというのが今回の趣旨だろうというふうに思います。そういう意味で、この機構は役に立つのではないかというふうに評価しているわけであります。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、では、具体的にお聞きしますけれども、先ほどの御答弁の中で、市場に直接売却する場合、それから機構に売却する場合と分けて考えた場合、市場に売却するのが中心である。しかも、その場合、株式市場の動向を見まして、株価が上がったところで売るのが常識である。これは取引先との関係でいっても、そういうことが必要である。このようにお答えになりましたね。
 そこで、それでは、機構に売却する場合には売却価格の8%を拠出金として出さなければならない。この拠出金を積むということは、これは大変高いコストになるわけでありますが、市場に出さずに機構を通じて、つまり機構に8%のコストをかけて売却しなければならないというような状況というのは、具体的に言うとどんな事態が想定されるんでしょうか。
○山本参考人 どういう事態かというのは、ちょっと具体的に例示はできないわけでありますが、先ほど申し上げましたように、保有制限がかかる時限性の中で、銀行によっては売却が間に合わない、あるいはマーケットの状況が非常に悪くて売却が進まなかったというような事態があろうかというふうに思います。それを機構が緊急事態だというふうに判断すれば、初めて特別勘定が発動されるわけでございまして、そういう段階では、8%の拠出金を拠出しても売却をするという銀行があるのではないかというふうに考えます。
 現時点で考えますと、8%の売却時の拠出金というのは、これは、まだいろいろな議論がこれからというところがございますが、自己資本を毀損するというふうな考え方もございます。そうしますと、非常に自己資本比率に悪影響を与えますので、私どもとしては、まずは市場売却を優先して対応したいということを申し上げているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 機構を通じて売らなければならないほどの緊急事態とおっしゃいました。緊急事態というのはどういう状態でしょうか。
○山本参考人 具体的に緊急事態というものを、これはむしろ政府の御提案の趣旨がどういう説明であったか私存じ上げませんので、明確なことは申し上げられませんけれども、会員のニーズがあり、それから個別の銀行の株式の処理の状況、つまり進捗度合いということかと思いますが、それから残された期間内における市場の状況、それらを総合的に判断して特別勘定の発動を決めるという御提案だと理解しておりますが、そうした状況のことを申し上げておるわけであります。
○佐々木(憲)委員 会員のニーズがありと言いますが、会員としてはニーズはないわけでありますね、先ほどの御答弁では。そうすると、進捗状況が思わしくない、つまり株式保有制限の期限がぎりぎり来まして、もう後がない、そういうときに8%のコストをかけて機構に売らなければならないのでしょうか。市場に売れば済む話なんじゃないのでしょうか。
 市場の動向を見ると言いますが、それは株価が比較的安定した状態、あるいは先ほど株価が上がるという状態でなければこれは売れないとおっしゃいましたから、それはそういう状況を考えれば、要するに、突き詰めて言うと、期限が来てもう売らなければならなくなった、そして政府が機構を通じて買い上げるからどうぞ売ってください、8%出しなさい、こういう状態が生まれた場合、これが緊急事態ということなんじゃないのでしょうか。
○山本参考人 先ほど鈴木先生の御質問の中で、株価が低いときには我々は余り売らないで、株価が高くなったら売るという個別の経営判断のお話を申し上げたわけでありますが、これは、全体としてそういうことではございますが、個別に、売却のタイミングは取引先との関係で、例えば先ほど話題にありましたように、株式の消却をやる、自己株の消却をやるというようなケースでは価格がむしろ低い方がいいわけでございまして、その時々で判断されるということでございます。
 全般的な状況としてどういう状況かということでございますが、何分短期間に、私どもの場合は自己資本を超過している額が少ないわけでありますが、個別の銀行では多いところもございます。そうしたところが短期間でお客様とネゴをしながら売却をしていって、なお期日にまだ相当数の株式を残しているというような事態を想定されているのだろうというふうに私は解釈しております。
 ただ、業界としてニーズがないと言ったではないかということでありますが、全般としてそういうことを申し上げたわけでございまして、個別銀行のレベルにおりますと、中には保有比率が高くて、お客様との関係からそう急に全部はできないよというようなところもあろうかと。そういう場合が会員のニーズということだろうというふうに理解しておりますし、また、市場の動向ということになりますと、残りの期間、例えば今のような状況ですとこれから1年間で相当数をさばくということが非常に見通しとして暗いというような状況であれば、運営委員会が御判断と思いますが、その判断でこれが発動されますと、マーケットの消化力を見ながら機構に二次的な、セカンドベストの判断として売っていくというふうな経営判断になろうかというふうに思います。
 そういう意味で、緊急避難的なものでございますから、そう頻繁にあるいはそう多額のものが要るというようなことは今想定していないのではないかというふうに見ております。
○佐々木(憲)委員 今までの御答弁を聞いておりますと、このような株式買い取り機構というものが果たして必要なものなのだろうか、それから、一定の期限を決めても、その期限を少しでも超えてはならないというような性格のやり方で果たして正しいのだろうか、大変根本的な疑問を覚えてくるわけであります。
 もう一点お聞きをいたしますけれども、この株式買い取り機構の全体の仕組みとしては、一定年限たちますと最終的には解散をするわけでありますが、その際に、株が買い取りのときと比較をして上がった場合には利益が出ますけれども、これは10年後ですから、上がるのやら下がるのやら大変想定が難しいわけであります。しかし、下がるという可能性というのは決してこれは少なくないといいますか、考えられるわけであります。
 そうしますと、仕組みの上では、売却された株式が銀行の拠出金を超えてその総額が低下した場合、それを国民の税金、いわば財政資金で穴埋めをするという形になっております。つまり、買い取った株が損失を出した場合には、国民の税金がそこに注入される、これに対して素朴な、何でそんなところに我々の税金を使うんだ、こういう批判も出ているわけでありますが、このことについて全銀協会長としてはどのようにお感じになっておられるでしょうか。
○山本参考人 私どもとしては、法案の中に8%の拠出金というものを設けて、それから基本の基金というものを設けて、リスク部分について民間の負担すべきものをまず規定されているというふうに理解しておりまして、それを超える部分について、株式の保有構造あるいは証券市場の構造改革をやるという政府の御方針の中で御判断されたものであるというふうに理解をしております。
○佐々木(憲)委員 私の質問にどうも正面からお答えにならないわけでありますが、私は、今までの御答弁をお聞きしまして、このような機構をつくる必然性というのをどうも感じられないわけであります。銀行業界、証券業の業界としても何ら必要はないと言っておられたものでありまして、しかも、みずから株式保有相互持ち合いを解消する計画を立て、いわば、自己責任とおっしゃいましたから、その責任に基づいて計画的に保有のみずからの縮小というのをやってこられたわけでありまして、それを着実に自分の責任であるいは自己の負担で実行する、これが本来の自立した銀行業界のあり方ではないだろうか。
 私は、今度の保有機構というのは、そういう本来あるべき銀行業界の姿勢を、むしろ国の方からゆがめ、国の方からいわば護送船団的な丸抱えの仕組みをつくる、株が落ちたら国民が負担する、こんなことは銀行業界だって望んでいないはずでありますし、国民も望んでいない。
 したがって、私は、この機構そのものに根本的な疑問を覚えるという点について最後に申し述べまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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