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金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理)

2001年12月03日 第153回 臨時国会 予算委員会 【151】 - 質問

不良債権回収は「納得ずくが第一義」佐々木議員の質問にRCC社長が答弁

 2001年12月3日、予算委員会は不良債権処理問題などをめぐり、森昭治金融庁長官、松田昇預金保険機構理事長、鬼追明夫整理回収機構(RCC)社長に対して参考人質疑を行ないました。松田昇預金保険機構理事長、鬼追明夫整理回収機構(RCC)社長に対しての質問は、11月30日の財務金融委員会の参考人質疑にも行われました
 佐々木憲昭議員は、不況の中で新規の不良債権が増えつづけていると指摘、債権回収をめぐるRCCの基本姿勢をただしました。

 佐々木議員は、「債務者が銀行と契約した約定金利や返済期間など支払い条件は、RCCにそのまま引き継がれるのか」と質問。
 鬼追社長は「(支払条件は)そのまま適用される」とのべ基本姿勢として、「納得ずくの回収を第一義としている」と答えました。また、競売や仮差し押さえを取り下げ、話し合いで解決した事例を紹介しました。

 佐々木議員は、債権回収にあたりRCCが「『人間の尊厳』を損なわない」「話し合い解決を模索」との方針をもっていることと比較して、「銀行は、競売にかけたら絶対取り下げず、話し合いでは自分たちの主張をいっさいまげないなど、身ぐるみをはぐような事例をずいぶん聞く。RCCの回収方針は、銀行も当然踏まえるべき原則だ」と、銀行に対する指導を求めました。
 森金融庁長官は「RCCがやっている程度のことは、民間銀行も当然やってしかるべきだ」「社会的批判を受ける事例が耳に入れば、事情を聴取し、対応をする」と答弁しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 森金融庁長官に不良債権問題についてお聞きをしたいと思います。
 不良債権の中には、バブル時代につくられたものと、それ以後発生したものというのがあると思うんですね。現時点の判断ですけれども、バブル時代につくられた、いわば投機的な行為で発生した不良債権というのは、基本的に処理をし終えたと考えてよろしいかどうか、まずこの点からお聞きしたいと思います。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 現在の不良債権で残っております残高、全預金取扱機関ベースで44兆円ほどでございますけれども、その発生要因別の計数というものをまだしかと把握しているわけではございませんので、断定的に申し上げることは困難でございますけれども、最近、製造業等いわゆるバブルの影響が比較的小さいとされた分野における不良債権の発生の伸びが大きいことは否めません。他方、バブル期の過剰投資等を背景とする不良債権もまだ見られる。
 一言で言えば、確かに佐々木先生のおっしゃるように、平成10年3月、平成11年3月、13兆、13兆と猛烈な不良債権処理をいたしました。これは基本的にやはりバブルのものだったと思っております。そして、今日に至った不良債権は、そういう面では、その当時に比べますとバブルの要素というのは相当小さくなって、むしろその後の足元の景況を反映したものが多いというような認識を私は持っております。
○佐々木(憲)委員 昨年の9月の時点で、主要行で不良債権額が12・7兆円というふうに言われておりまして、これが、ことしの9月の時点で、処理した不良債権額、それからその間に新たに発生した不良債権額、それぞれ数字がわかりましたら教えていただきたいと思います。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 12年9月期における破綻懸念先以下の不良債権12・7兆、それが13年3月には11・7兆、1兆減少いたしました。そして、その後のことでございますけれども、オフバラ化が2・5兆ありまして、それに対して3兆新規が加わりまして結局0・5兆ふえておりますので、12・2という数字になっております。
○佐々木(憲)委員 それで、もうちょっと内容をお聞きしたいんですが、新たに発生した不良債権の額の推移ですけれども、昨年度の前期、後期、今年度の前期それから今年度の後期の見通し、どのような数字になっているか、お答え願いたいと思います。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 緊急経済対策、骨太の方針におきまして、2年、3年ルールをつくりまして、12年9月期のものは2年ということ、13年3月以降は3年というルールを設けましたので、そういう意味で分解して物を言えというのが佐々木先生のお話かと思いますので、分解して物を言いますと、12年9月期、12・7兆ございました。それが13年3月期、8・3兆、すなわち4・4兆減っております。そして、その8・3兆が13年9月期にさらに1・7減りまして6・6兆になっております。ところが、13年3月期に新規が3・4兆発生いたしました。したがいまして、8・3と3・4を足しまして11・7になるわけです。この3・4兆が13年9月期には0・8兆減りまして2・6兆になります。一方、13年9月期に初めて新規として出てきたのが3・0兆でございます。したがって、6・6と2・6と3・0を足しますと12・2となるわけでございます。
 以上が分析した結果でございまして、それを、通期でどうなるかということにつきましては、先ほど私、通期見通しとして6・4兆という数字を挙げました。そして、2兆円はもう中間期で処分損を出しておりますので、残りは4・4兆でございます。この4・4兆というのは、ある意味で、特別検査もある、足元の景況も悪い、そういうことで各金融機関が極めて保守的に積んだ数字でございまして、その中で、個々具体的な債務者に当たっての話では、基本的にそういうものではございませんし、破綻懸念でどれくらいということについて必ずしも明確に見通しているわけではない。したがって、そこの数字はなかなか申し上げられないというふうに認識しております。
○佐々木(憲)委員 今のお話ですと、不良債権の新規発生というのが時を追うごとに次第にふえている、傾向的に。そういう感じがするわけですが、この新規発生がなぜ生まれているのか。先ほども長官おっしゃったように、不況の中で業況が悪化しているというのが一つの要因だと私も思うんです。
 そこで、不良債権の中で中小企業の部分がかなりふえているのではないか、その辺の認識はどのようにお持ちでしょうか。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 新規発生要因の増については、私は二つの要因と認識しております。
 一つは、まさに佐々木先生おっしゃいましたとおり、足元の景況という要因かと思いますけれども、もう一つはやはり、特にこれは主要行において見られるわけでございますけれども、要管理についての資産査定の厳格化、特に貸し出し条件緩和を、どういう場合に貸し出し条件緩和と見るかというときに、今まで、期限が来てそのままの金利で短期でロールオーバーしていたものについて、貸し出し条件緩和としていなかったところを、いや、これは景況が悪いので、この程度の企業にこの金利で貸すのなら貸し出し条件緩和だというふうに銀行自身が認識し始めた。そういう面で、一つは、要管理についての資産査定を厳格化したことが大きく、特に主要行の不良債権の額が大きくなったのは、要管理部分が大きくなっているというふうに認識しております。
 それで、大手行といえども、5割近くは中小企業に貸しているわけでございますので、そういう要管理に区分された中小企業ももちろんあるかと思います。
○佐々木(憲)委員 今のお話ですと、全体として景況が悪くなっているということと、それから銀行の側の資産査定がかなり厳格化していると、二つの要因をおっしゃいました。つまり、厳しく査定をして、しかもそれをどんどん処理をする。そうすると、結果として倒産が生まれる、失業が生まれる。そうなると、また不良債権がふえる、新規発生は減らない。こういうことになりますと、これは悪循環に陥るんじゃないかという感じが私はするわけです。
 今おっしゃったように、大手にとっても、融資金額の5割が中小企業で、件数では99%以上が中小企業ですよね。この中小企業向け融資が本来ふえるということが、銀行にとってはいわばもうけの源泉をふやすということになるわけであって、この中小企業向けの部分がどんどん処理される、こうなっていきますと、源泉が先細りになっていくんじゃないかという感じもするわけですが、森長官はこの辺はどのようにお考えでしょうか。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 佐々木先生おっしゃるとおり、中小企業向け融資というのは、金融機関、銀行にとりましては、大手であれ地域金融機関であれ、大きな稼ぎの源泉である、そのとおりだと思います。
 そんな中で、我々が言っておりますのは、少なくても要管理までは、要管理も要注意の中の一区分でございますけれども、要管理までは何とか健全化に持っていくよう、銀行にその旨のマネジメントというものを強化するよう要請しておりまして、最近いろいろな頭取に聞くのでございますけれども、主要行、地域金融機関含めまして、そういう健全化の努力、それは逆を言いますと、どうやって健全化するかというと、銀行の方が積極的に健全化計画、再建計画というものを企業と一緒になってつくっていく、そしてその範囲内で、その枠内で融資というものを考えて、そして正常化に持っていく、そういう努力を非常に強くし始めているというふうに認識しております。
 そして、今度、佐々木先生がおっしゃったのは、むしろ、要管理にとどまらず破綻懸念まで落ちた場合はどうなのかということでございますけれども、これについては、中小企業の特性等を考慮しながらやるということが骨太の方針にも書いてございますけれども、基本的には、当該借り手の中小企業とよく話し合った上でどうするかということ。仮に、できますれば、我々が願っていますのは、なかなか中小企業にミシン目を入れるのは難しいとは思いますけれども、やはり残せるものは残して、グッドカンパニー部分はグッドカンパニーとして再生できないかというような努力を金融機関には強く要請しております。
○佐々木(憲)委員 ミシン目が入る中小企業があればいいけれども、中小企業がミシン目が入るほど大きなものではないわけで、不良債権というレッテルを張られると、もうほとんど展望が生まれてこないというのが現状なんですよね。
 それで、11月5日の記者会見で、森長官はこうおっしゃっているんですね。
 一体何が起こったら不良債権処理が進んだと言うのですか。それが私には良く分からないですね。一つの答えは企業がどんどん潰れて行けば、そういうものが進んだと仰るのかなあとも思いますけれども、我々からすれば企業を潰すことが目的ではございません。
こういうふうにおっしゃっていまして、私も部分的には共感を覚えるわけでありますが、不良債権処理を急ぐということになりますと、結果的に、大手企業はともかくとして、中小企業の方はどんどんつぶされるということになるわけでありまして、不良債権処理を進めるということは、中小企業の分野がもうけの源泉であると先ほどおっしゃいましたが、それを縮小するというふうになるのではないか、これにはかなり大きな矛盾があると思うんですが、長官、どのようにお考えでしょうか。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 中小企業がもうけの源泉というのは、私、基本的には正常な状態での物の言い方でございまして、基本的には健全な中小企業がもうけの源泉であるということでございます。
 したがって、破綻懸念まで落ちて、なかなか正常な利息の返還さえ滞っている中小企業、あるいはキャッシュフローがほとんどなくなっている中小企業、こういうものに対して金融機関がどう対処するか、これはまた少し別の問題もあろうかと思うんです。
 そういう中にあっても、我々は、その中小企業の特性、地域の特性等も考えながら、中小企業に対してよく相談しながら物を進めるよう銀行を監督している次第でございまして、確かに、いわゆる破綻懸念まで落ちた中小企業をどういうふうにしていくのかというのは、極めて難しい問題を持っていると思います。
○佐々木(憲)委員 破綻懸念まで落ちてもまだ生きているわけでありまして、やはりその企業が生きていけるような銀行側の対応というのが、今後の再生の方向に向けての支援というのが銀行がとるべき方向だというふうに私は思っておりますので、そういうふうな指導をぜひやっていただきたいと思っております。
 さて次に、預保の松田理事長にお聞きをしたいと思います。
 最近は、自殺者が非常に多発しておりまして、年間で3万人を超えるという驚くべき数字であります。交通事故で亡くなる方の三倍も自殺をするなんというのは、これは異常な事態でして、きょうの日経によりますと、破産の申し立てが最悪であります。このペースですと、年間約16万7千件に達するだろう、前年を2万件も上回る、7年連続前年増という状態であります。特に、50代の自殺者がこの数年間で倍増しております。
 殺伐たる社会だと思うんですが、預保としては、あるいはRCCに対する指導方針としては、銀行から引き受けた企業に対して、いきなり回収、破綻に追い込む、そういう対応をするのではなくて、やはり相手を尊重して、できるだけ支援の方向というのが私は大事だと思うんですね。財金でもこの点について私お聞きしましたけれども、できるだけ支援というふうにお答えになりました。
 ただ、問題は、そういう基本姿勢を現場にどれだけ徹底できるか、ここがやはり大事だと思うんですが、この徹底の仕方についてお聞きをしたいと思います。
○松田参考人(預金保険機構理事長) 実際に回収に当たりますのはRCCの職員でございますので、その現場への徹底は一には鬼追社長の責務ではないかと思いますが、預金保険機構としても、例えば、年に二回なら二回、回収責任者会議という、一線で働く弁護士さんとか役職員を集めて会議をやっております。そういう席などを利用しまして、このように企業再生にも積極的に取り組んでいくんだという姿勢をよくよく説明を改めてする、従来もやっていないわけじゃないんですけれども、特に改めて説明もする。
 それから、債務者といえども期限の利益のある債権をお持ちの方については、もちろんそれは尊重しなければいけませんから、いきなりそれを破って、いきなり任売にかけるとかそういうことは一切しない、そういうコンプライアンスはきちっと高める、そういう指導は従来からやっておりますし、鬼追社長の方も十分留意をしてこれからもやっていくだろう、このように思います。
○佐々木(憲)委員 鬼追社長にお聞きをしたいと思います。
 債権回収の考え方でありますが、銀行から引き継ぐ場合、実務的には、債務者と銀行との間の契約がありますけれども、その場合、例えば約定金利ですとかあるいは返済の期限ですとか、そういう支払い条件、これは基本的にはそのまま引き継ぐという形になるのか、それとも、直ちにそれを破棄して新しい契約に書き直すということになるのか、その辺はどのようにされるんでしょうか。
○鬼追参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 御承知のように、私どもの譲り受けます譲り受け方というのは、指名債権譲渡という形で譲り受けますので、もとの契約、原契約の中で交わされております約定でありますとか、あるいは抗弁が仮についている場合にはそのままそれが適用されるということになろうかと思います。
 したがいまして、銀行さんと同じ立場で債権者として私どもは振る舞う、こういう状況になります。
○佐々木(憲)委員 これまで話し合いによって解決した事例が少なくないというふうに言われておりますけれども、今度新しくRCCに役割が付与されたわけですけれども、そうすると、かなり多くの不良債権が移動してくるということになるわけです。したがって、話し合いによって解決する案件というのがこれまでより一層ふえるという予想をされておられるか。それとも、いついつまで、3年というような区分で期限を切りますので、ともかく回収の比率を高めなきゃいかぬ、処理を早くしなきゃいかぬ、こういうおそれもあるのではないかという感じもしますが、その点は基本姿勢としてどういう立場でやっていかれるか、お聞きしたいと思います。
○鬼追参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 今回の改正ができたといたしますと、私どももその回収の多様性ということも求められるようになると思います。再生もそのうちの多様化の一つでありますし、また債権の処分、つまり流動化あるいは証券化というふうにも言っておりますが、そういった形での回収もしていかなければならない、かように思います。
 従来から、整理回収機構は、債務者との納得ずくの回収ということをまず第一義といたしておりまして、したがいまして、任意弁済でありますとか、担保物件の任意売却でありますとか、あるいは約定弁済でありますとか、そういった債務者の納得をいただいた上での弁済というのは、これはもう半分以上、50%以上を占めておるわけでございます。
 したがいまして、私どもは、そういった基本方針につきましては今後とも変わりなく、さらにまた、いわゆる企業再生の可能性を追求するという意味での、いわゆる再生マインドとでもいいましょうか、債権者として再生マインドを持った回収も進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 それで、具体的に紹介していただきたいんですけれども、例えば不動産を競売にかけるというような場合、その競売を取り下げた事例があれば紹介をしていただきたい。それから、強制執行を取り下げた事例。時間がありませんので、この二つだけでも紹介していただけますか。
○鬼追参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 相当件数あろうかと思いますが、まず競売を取り下げた事例はどういう事例かといいますと、調べてまいりましたのは、債務者は中国地方でパチンコ、カラオケ店を経営する法人でありまして、当社がその当該パチンコ店の土地建物の競売の申し立てをいたしました。競売期日前に競売事件の評価額が出されましたけれども、当社の不動産部の評価額を下回る評価であったわけであります。そういうことでございますので、債務者にも任意売却を強く促しまして、債務者サイドでも任意売却に努めました結果、中国地方に進出をもくろんでおりました同業者から、RCCの評価額あるいは競売事件での評価額を上回る購入希望者が出てきた、こういうことでございまして、そのために競売手続を取り下げまして任意売却に切りかえまして、比較的当社の債権回収にとってもプラスになるような結果が出たということでございます。
 なお、その際、私どもは、購入者が債務者と特別濃密な関係にあるかどうかということも一つの判断材料にいたしておりますけれども、この場合は、債務者とは利害関係を持たない、いわゆる公正な第三者といいましょうか、そういう第三者が購入希望者として手を挙げられた、こういう事例がございました。その他、競売申し立て案件は、今のような状況の場合には幾らでもあろうかというふうに申し上げたいと思います。
 二番目は、差し押さえを取り下げた事例とおっしゃいましたか、強制執行とおっしゃいましたか。(佐々木(憲)委員「強制執行の取り下げです」と呼ぶ)差し押さえも強制執行の中の一つでありますが、強制執行を申し立てた後に取り下げをした事例はこういうケースがございます。
 債務者は、首都圏郊外の主要ターミナルの駅前にあるビジネスホテルを経営しておりました。債務者の隠匿資産を預金保険機構さんの資産調査によって発見いたしました。まず、仮差し押さえをかけて保全する一方、話し合いと並行して貸し金請求訴訟を提訴して、勝訴したわけでございます。債務名義を得まして、所有不動産を仮差し押さえから差し押さえに切りかえました。つまり、強制執行に切りかえたわけでありますが、強制競売の手続を進めていたところ、債務者側から和解の申し出がありまして、そうした和解に応じて、徹底した法的対応を貫徹する場合の弁済見込み額を相当程度上回るというような弁済提示がございました。したがいまして、当社といたしましては、その弁済提示を受けて強制執行を取り下げをした、それによって債権回収を図っていった、こういう事例がございます。
○佐々木(憲)委員 今、幾つかの事例を紹介していただきましたけれども、森長官にお伺いします。
 RCCとしては、ここにも「RCCの概況」というパンフがありますが、この中に、「契約の拘束性の追求」と「人間の尊厳の確保」という二つの両立ということを非常に強調していまして、特に「人間の尊厳の確保」ということが大変重要であるという意識を持ち、債権回収に当たっても相手側の要望に耳を傾け、競売あるいは強制執行を行う場合でも話し合いに応じる、そして、できるだけ話し合いで解決していく姿勢をとっているということがわかりました。
 そうしますと、当然、銀行の側もそういう姿勢をとるのが当たり前だと私は思うんですが、どうも、話を聞いていますと、銀行の方はかなり無慈悲に、いわば身ぐるみはいで追い出すようなやり方をしている事例を随分私は聞くわけです。競売に一度かけたら絶対取り下げない、話し合いに応ずると口では言うけれども、応じても自分たちの主張は一切曲げない。それで、ともかく法的処理、回収、競売ということで、路頭に迷う人が随分あるわけです。
 私は、そういう銀行の姿勢を正すことが大変重要だと思うんですけれども、森長官、RCCのこういう基本理念を踏まえて、銀行に対しても当然そういう対応をすべきだという指導をされるべきだと思いますが、森長官はどういうお考えでしょうか。
○森参考人(金融庁長官) お答え申し上げます。
 銀行の公共的性格、そういう面から、銀行は免許業種になっているわけでございまして、また、銀行自身、他の銀行と競争しているわけでございますので、今おっしゃられたような面で、当然、銀行はレピュテーショナルリスクを自覚して、一定のモラルを持った対応というものが期待されるわけでございますし、そのような対応をしていただいているものと考えております。仮に、銀行が、不祥事件だとか、あるいは、そこまでいかなくても社会的批判等を受けるようなことをやっているということが監督当局の耳に入れば、それは必ず事情を聴取しておるわけでございまして、それに基づいて適正な対応、非常に極端な場合は24条報告をかけるとか、そういうことも監督当局はやっております。
 ただ、一般的には、佐々木先生のおっしゃるように、RCCという国の公的サービサーがやっていることは、競争の激しい、民間の、レピュテーショナルリスクを抱えている銀行は、当然、その程度まではやってしかるべきではないかというふうな認識を持っております。
○佐々木(憲)委員 今、対応していただいているものと思うというふうにお答えになりましたが、実態は、かなりいろいろな、無慈悲なやり方をしておりますので、また、それに対する訴えも随分来ております。
 これはやはり、今おっしゃったように、具体的に、行き過ぎたものについては是正をしていただきたいというふうに思うんです。バブル時代には、大型フリーローンなどを組んで、必ずしも借りる必要のない個人に対して提案型融資を行って、バブルが崩壊した、さあ、裁判にかけてともかく回収なんだということでどんどんやってきて、今、ホームレスになったり、あるいは自殺に追い込むような大変ひどい事例というのも聞いておりますので、その点は是正されるように最後に要望して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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