2009年06月03日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【524】 - 質問
日本政策投資銀行に対して国の関与を高めるべきだと主張
2009年6月3日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、27日に引き続いて、政策投資銀行法改正案と銀行等株式保有制限法改正案について質疑・討論にたち、委員会は採決をおこないました。
佐々木議員は、日本政策投資銀行法改定案の与党と民主党の修正案にもりこまれた国の株式保有について「国の関与というなら3分の2以上は持つべきだ」と主張しました。
修正案は、国の保有する株式の割合を「3分の1としたことは一歩前進だが、それでいいと判断した理由は何か」と質問しました。
提案者の中川正春議員(民主党)は「法律上、国が50%や100%の株式を保有してもいい」と述べつつ「最低限、重要事項について否決できる3分の1を確保することが必要」と説明しました。
佐々木議員は、株式の保有割合と株主総会での権限を説明し、「仮に3分の1まで保有割合が下がったら、取締役の選任、解任などはできない」と述べました。
また、修正案に日本政策投資銀行のあり方の見直しの条項があることを指摘し、「コマーシャルペーパーの買い取りなど大企業奉仕で、損失は国民負担という仕掛けは見直し、中小企業、地域経済、環境対策などを重視すべきだ」と主張しました。
提案者の山本明彦議員(自民党)は「政府系金融機関はいろいろあるので、日本政策投資銀行は大企業・中堅企業を対象にしたい」と答弁しました。
これにたいして、佐々木議員は「日本の大企業は製造業だけで120兆円の内部留保を抱えている。さらに国から支援を受けるというのは、税金の使い方として優先順位は低い。中小企業も対象にすべきだ」と批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今回、与党と民主党で修正案がつくられまして提案された。そこで、幾つか確認をしておきたいと思います。質問通告の順番を少し入れかえますので、お答えいただきたいと思いますが、よろしいですか。
それでは、修正案の中身についてです。
3分の1の株式を国が保有するというのが大変大きな柱であります。なぜ3分の1なのかという点であります。完全民営化よりは国の関与は高まるということで、それはいいと私は思うんですけれども、しかし、国の関与ということでいいますと、2分の1以上、あるいは3分の2以上になりますと、さらに権限が強まるわけであります。3分の1でいいと判断した理由、まずそれを説明していただきたい。
○中川(正)委員 さっき質問しておいて今度は答弁というのは変な気持ちなんですけれども、お答えをしたいというふうに思います。
読んでいただいてわかるように、3分の1でなければならないということではなくて、3分の1を超える選択をするということですから、2分の1でも100%でもいいということだと思います。しかし、最低限、重要事項については3分の1ですから、これを確保していくというところは必要だろうという意味でこれを設定したということであります。
○佐々木(憲)委員 3分の1以上、2分の1以上、3分の2以上、それぞれ権限が違うんです。3分の1以上なら、株主総会の特別決議を単独でノーと言えるわけですね、拒否権が言える。2分の1以上になりますと、株主総会の普通決議を単独でノーと言える。それから、3分の2以上になりますと、特別決議を単独で提案し、成立させられるわけですね。ですから、それぞれ権限が違うわけであります。
特別決議というのはどういうものかというと、例えば、合併とか分割とか、事業の全部を譲渡するとか、定款を変更する、それから監査役の解任、新株の有利発行等々あります。普通決議の場合は、取締役の選任、解任、監査役の選任、会計監査人の選任、解任等々があります。つまり、2分の1以上あるということは、人事に対して非常に大きな権限が行使できるわけです。
そういう意味で、仮に3分の1まで保有が下がってしまった、つまり3分の2売却をした、3分の1持っている、その場合、取締役の選任、解任というのはできないということになるわけですね。そういう意味で、これは大変大きな違いがあるわけです。ですから、私は、国の関与ということでいうならば、3分の1というのはちょっと低過ぎるんじゃないかと思っているんです。3分の2以上持つべきではないかというふうに私自身は思っております。
NTTとか、あるいは先ほども議論のありました日本郵政株式会社、これは国が3分の1保有義務を負っているわけです、3分の1以上持たなければならないと。現に、NTTの場合は、かなり売りましたので、国は33・7%保有です。日本郵政は、国が100%まだ持っているわけですね。
そこで、先ほどの議論と少し関連して、与謝野大臣にここで幾つかお聞きしたいんですが、現在100%持っているわけですから、社長を含む取締役の解任の権限というのは国が既に持っているわけです。仕組み上は、国の意思で社長を交代させる、あるいはこの人を取締役にということはできる、事実上今そうなっているわけですが、それはそのとおりでよろしいですね。
○与謝野財務・金融担当大臣 国が100%株を持っているというのは例外的な初期の状況でございまして、一般的な株主総会の原則が郵政会社に対しても適用されるという理解でございます。
○佐々木(憲)委員 株主総会をやりますと、今は国が、代表が一人参加するだけなんですね、100%持っていますから。ですから、とりわけ財務大臣の権限というのは非常に強いわけです。それで、総務大臣は許認可に関連をする権限がある。ですから、株主総会というふうになりますと、財務大臣の意思、これがすべてを決する、それほどの大変大きな力を持つわけであります。これは将来3分の1まで売ることができるというだけであって、現に今、権限があるわけであります。
そこで、総務大臣は先日、こう言っているわけです。かんぽの宿の譲渡問題に言及し、こう言っているんですね。日本郵政の上層部を私が許してしまったら、この国には正義はなくなってしまう、こういうふうに厳しく批判をしたわけです。この考え方に与謝野大臣は賛成でしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 かんぽの宿の問題なんかは、実際自分で研究したわけではないので、何がどうなっているかというのは正確な知識がないわけでございますけれども、鳩山大臣は業務改善命令を会社に出されております。それから、その他の問題についても問題提起をされておられますので、そういうものに会社は誠実にこたえるかどうかということはやはり見る必要があるのではないかと私は思っております。
○佐々木(憲)委員 これからどうこたえるかというものは一つの判断材料でしょうが、これまでの経緯からいって、この上層部を許したら、この国には正義はなくなってしまうと言っているわけでありまして、与謝野大臣は、何かどこかで、鳩山大臣と考え方はほとんど同じだとか一心同体だとかというような発言をされたようですけれども、大体そういうことですね。
○与謝野財務・金融担当大臣 鳩山大臣も予算委員会の御答弁の中で、私は麻生内閣の一員であり、内閣の意思に従って行動しますという御答弁をされておられます。これは私と全く同じ立場でございます。
○佐々木(憲)委員 では、次に提案者に伺います。
3分の1以上ということですが、政府の判断で、先ほども少し答弁されましたが、例えば100%当面持ち続けていこう、こう判断すれば、それも可能ということでよろしいですね。
○中川(正)委員 ここ3年かけて、そこのところも含めて議論をしていった上で法定化していこうということであります。だから、今の時点では、そういう議論の上で100%持ち続けていくということも可能だということであります。
○佐々木(憲)委員 提案されている修正案では、「会社による危機対応業務の在り方及びこれを踏まえた政府による会社の株式の保有の在り方を含めた会社の組織の在り方を見直し、必要な措置を講ずる」というふうに書かれています。
これはどういう意味かという点と、見直すということは危機対応業務の中身も当然入ると思うんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
○中川(正)委員 その点については、実は一番大事なところだという思いがありまして、先ほど私の質疑の中で方向性だけを議論させていただきました。
いわゆるビジネスモデルということだと思います。こういう緊急時あるいは危機対応をしていく中で公正性をどういうふうに担保していくかという仕組み、それからその規模についても、先ほど申し上げたように、20兆円からの貸出額が膨らんでいくというものに対して、後どのようにそれを整理していきながら平常時に持っていくかというそのプロセス。
あるいは、平常時については、これは民業圧迫にならないということが大前提なんですが、もう一つは、さっき二つのモデルで、民営化モデルと危機対応モデルを区別していこうという考え方もあるかもしれませんし、そうじゃなくて、もうこれは政策金融だけでいこう、その財源は財投で、国の保証で低利の資金を活用しながら政策金融をしていこうという考え方、これ一本でいこうということになるかもしれない。これはこれからの議論の中でモデルを構築していこう。
ただし、民間の金融機関に競合して圧迫していくというふうなこと、低利の資金が手に入るから、それでそうしたビジネスをやっていくんだという、ここの流れについてはしっかりとめていく、整理をしていくということでなければならない。そういう中身をこれから構築していく、そういう意味合いだと思っております。
○佐々木(憲)委員 その見直しの期間ですね。この提案によりますと、「政府は、一の措置が講ぜられるまでの間、その保有する会社の株式を処分しないものとする」というふうになっていますね。つまり、新しい業務をビジネスモデルを含めてどうしていくかということ、それを見直して検討していくということになると思うんですけれども、それができるまでの間は株式は売却しない、こういうふうに理解していいわけですね、この条文は。
○中川(正)委員 そういうことです。3年とありますけれども、私の気持ちとしては、もっと時間を縮めてこの議論はしっかりしていくべきだというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 現在の政府の補正予算とも関連をして組まれている危機対応業務というのは、長期低利融資あるいはコマーシャルペーパーの買い取り、こういうものをかなり大きな会社に対して行う、直接そこに資金を供給するという内容になっているわけでありまして、しかも、損失が出ると国民が負担するという、結果的にはそういう仕掛けになっていますよね。こういうものは私は見直しの対象にすべきだと思います。つまり、中小企業、地域経済あるいは環境対策、こういうものを重視した内容に変えていく必要があるのではないか。
今のやり方ですと、従来、かなり苫小牧東部ですとかむつ小川原とかああいう巨大開発につぎ込んで焦げついて、大変な負債を自治体や国が負ってしまった。ああいう経緯を振り返ると、二度とああいうことはしてはならないと思いますし、それから、今一番危機で重大な事態になっているのは中小企業の側ですから、そういう側に対しても、今は対象が中堅・大企業というふうになっていますけれども、中堅・中小企業に広げていく、そういうことも当然含めて検討すべきだと思いますけれども、どのような見解でしょうか。
○山本(明)議員 お答えさせていただきます。
中小企業へもというお話でございますが、政府としては緊急経済対策というのは中小企業からというのは当然だと私も思っております。したがって、昨年の一次補正、二次補正、本予算につきましても、中小企業のセーフティーネット貸し付けだとか保証100%だとかいうことで30兆円、対策を練っておるわけでありまして、世の中はやはり中小企業が弱者でありますから、まず救うのは私も同じ考えであります。
しかし、中小企業だけで成り立っておるわけではありませんで、やはり大企業もあるわけでありまして、大企業の従業員も全従業員のうちの30%あるわけでありますし、中小企業は大企業の下請である場合も多いわけでありますから、大企業が危機になったときにほっておいてもいいという理屈にはならない、私はそんなふうに思っております。
やはり中小企業からまず救う、そして、今のこの経済危機というのは大企業まで大変なんだ、本来なら大企業は自分の力で再生しなさいと言えますけれども、今そこまで大変な危機になっておりますから、したがって、政投銀、商工中金、政府金融公庫、いろいろあるわけでありますから、今回、政投銀については大企業、中堅企業を対象とする、こんなふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 アメリカのGMの危機などと日本の今の大企業の危機というのは、質が違うと思いますね。日本の場合には、製造業だけで120兆円という莫大な内部留保を抱えていますから、それを保有しながらさらに国から支援を受ける、これはやはりちょっとお金の使い方としては優先順位は低いと私は思っております。
最後に大臣にお聞きしますけれども、政投銀の今後の政策的な内容として、対象に中堅だけではなく中小企業も念頭に置いた政策展開、地域経済、それから長期資金ですから例えば環境対策、こういう問題も含めた新しい展開というものが今後求められると思いますが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 余り制約を持たないで、政投銀の中で自分たちの理想的な業務形態はどうかというのをまずお考えいただきたいと思っております。当然、環境とか新しい分野のものも検討されると思いますので、そういう意味では地平線を広く持って物を考えていただいたらどうかと思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。