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金融(銀行・保険・証券) (中小企業融資, 政府系金融機関)

2009年05月27日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【521】 - 質問

日本政策投資銀行の完全民営化方針について質問

 2009年5月27日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、26日に引き続いて、政府が進める日本政策投資銀行(政投銀)の完全民営化方針についてただしました。

 自民・公明の与党議員は、経済危機対策を口実に、政投銀法改正案を提出しています。
 政府が保有する同行の全株式を処分し、完全民営化する時期を3年半先送りすることを盛り込むものの、将来の完全民営化に固執しています。
 佐々木議員は、「大企業を応援する内容に問題があるので、それは是正しつつ、公的な政策手段としての役割は放棄すべきでない」とのべ、「採算がとれないことは民間(銀行)はやらない。深刻な経済危機に対応するためには民営化そのものを中止すべきだ」と主張しました。
 これにたいして、与謝野馨財務・金融担当大臣は、「(政策金融改革が進められた)当時は、世界的な同時不況、欧米の深刻な金融危機をまったく考えないで、ただ官から民へということで進められた」と答えました。
 また、「公としてやるべきことはある。そういう時の手段、ツール(道具)として何を持つべきか、政府としても考えなければならない」と述べました。

 続いて、佐々木議員は、政策金融公庫がこの間、4兆円も中小企業向け融資を減らしていると指摘し、公的金融機関が中小企業向け貸し出しを増やすよう求めました。与謝野大臣は「そのように指導します」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、政投銀の総裁にお聞きしたいんですが、政投銀の役割は、長期にわたる事業資金を供給するということにあるということでありますが、これまでの経緯を見ますと、前身の北東公庫、開発銀行等は、むつ小川原開発、苫小牧東部開発、臨海副都心開発、こういうことで大プロジェクトを推進してきた。しかし、それが採算がとれず、膨大な税金を無駄にして国と地方に大変な財政的な負担を負わせた、そういう部門を抱え込んできた経緯があるわけです。いまだにその負の遺産を抱えているわけです。
 そういう中で、民営化されるということになっていきますと、財投機関債などの資金調達手段は失われるわけでありまして、今後、自然エネルギー、環境保護、長期資金の供給としては必要な分野というのはあるわけですが、採算がとれないということで、だんだん長期資金の分野は縮小の方向に行く、こういうことになるのではないかと思いますが、総裁の見解を伺いたい。
○室伏参考人(株式会社日本政策投資銀行代表取締役社長) お答えいたします。
 まず、株式会社化後の移行期間におきましては、自力で安定した資金調達体制の確立を円滑に進めるため、財融借り入れや政府保証債の発行といった政府信用による調達が法律で規定されております。一方、財投機関債にかわる手段として、社債の発行や金融機関からの借り入れを行うことによりまして、自己調達のウエートを高めるべく進めております。
 その上で、移行期間中に、ユーロMTNや仕組み債など多様な資金調達手段への取り組みを進めるとともに、資金提供面におきましても、借入期間を初めとするお客様のさまざまな資金ニーズに適切に対応してまいるよう努力してまいります。
○佐々木(憲)委員 移行期間の話を聞いているんじゃないんですよ。民営化後どうなるのかと聞いているんですよ。
○室伏参考人 民営化後は、先ほども申し上げましたように、財投機関債にかわる手段として、社債の発行とかあるいは金融機関からの借り入れ、その他いろいろな方法が考えられますが、自己調達についてのウエートを高めていきたい、かように考えております。
○佐々木(憲)委員 質問に答えてください。
 資金調達手段が民間の金融機関並みに変わる、つまり公的な支援がなくなるわけですね。しかし、不採算部門をたくさん抱えているわけです。長期資金の供給が減っていくのではないかと聞いているんですよ。全く質問に答えないというのはどういうわけですか、一体。
 ともかく、採算がとれなくなって長期資金がだんだん短くなっていく、こういうことになるに違いない、このことをはっきり言っておきます。
 次に、提案者に伺いますけれども、出された政投銀の改正法案では、危機対応融資として実施される融資の原資は、日本政策金融公庫が財政投融資資金と政府保証債で資金を調達して、政策投資銀行に融資することで確保される。本法案ではさらに、政府が政策投資銀行の資本増強のために、3500億円の現金出資と1兆3500億円の交付国債による支出で、合計1兆7千億円の財政支出を行う。
 今回の資本増強で政策投資銀行は、長期資金貸し付け8兆円、民間銀行の融資の債務保証5兆円、改正産業活力再生法の出資スキーム2兆円、新たに合計15兆円、こういう大企業支援というものが全体としては可能になる。こういう大変な政府資金のてこ入れによる大企業優遇策ということになるわけでありますが、中小企業向け対策というのはほとんど、これは性格上対象になっていないということであります。これは前回質問をいたしました。
 そこで、政投銀の今回の改正法では、スケジュール、先ほど皆さんにお配りしておりますけれども、3年半の先送りをしているわけですね。保有株式の売却開始の時期を3年半先送りする理由、内容的にも私どもはこの大企業奉仕、こんなのはやめろと言いたいわけですが、しかし、3年半先送りするその理由、端的に言うとどういう理由なんですか。
○七条議員 お答えさせていただきます。
 3年半ほど先送りということでございますが、恐らく、今もこれは買うことができるわけでありますから、3年ほど延長するということではないかと思いますし、そういう意味の趣旨であろうと思ってお答えをさせていただきます。
 これは、平成20年の10月よりおおむね5年ないし7年後をめどに全部を処理するということでございますし、しかしながら、今現在の危機的な経済あるいは金融情勢下のもとで、今、民間の公募増資が滞っている等々の理由もありまして、直ちに市場での政府保有株の処分を行うことが事実上非常に難しいのではないだろうか。
 もう一方で、危機対応業務を大規模に実施し、政府が追加出資を行っている過程において、投資家が将来を見据えて投資判断を行うことができる、株式処分ができることになることも非常に難しい状況が今はある、そういうふうに考えますときに、平成24年3月までの期限を切ってこれらについても対応していこう、こういうふうにして、今延長していこうと思っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、政府が進めている危機対応策の推進、その必要のために3年半延期する、簡単に言うとそういうことですね。
○七条議員 今申し上げたとおりでございますけれども、今の現状の中ではなかなか、政府が持っているものを市場で買い取ることが事実上難しい、あるいは株式を処分することについても、投資家の判断を狂わせてしまうことになってはいけないから延長をしていきたい、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 与謝野財務大臣にお聞きしますけれども、政府系金融機関の民営化について大臣は、予算委員会で5月11日に、「一応、法律では民営化を前提として物事は書かれておりますけれども、私は、政策金融改革は大不況を前提にしていないという点で欠陥がある改革であったと思って、私自身もそれにかかわったことについては反省の念があります。」「やはりこういう不況なとき、政府あるいは政府の機関が率先して融資機能を担わなければならないときに必要な手段、ツールというものを持っていなければならないというのは、今回の不況を通じて確信に至るような気持ちでございます。」このようにおっしゃっているわけですね。
 これは、今回の政策投資銀行あるいはその他の商工中金の民営化、こういうものについても、こういう立場から見ておられると理解してよろしいですね。
○与謝野財務・金融担当大臣 あの当時はやはり、世界的な同時不況あるいは欧米における深刻な金融危機ということを全く考えないで、ただ官から民へというようなことで物事が進められていったわけでございますが、実際に、日本も経済危機に直面をいたしますと、やはり公としてなさなければならないことが幾つか出てくるわけでして、そういうときの手段、道具として何を持たなければならないのかということは、国会の皆様方にもお考えいただかなければならないし、政府としてもまた考えなければならないことであると思っております。
 そういう意味では、当面、政投銀の機能について、いわばこの経済金融危機がおさまるまでの間は多分いじる必要はないのではないかというのが、この議員立法の趣旨ではないかと私なりには理解しておりますけれども、そのとき申し上げたことと今の心境は全く同じでございます。
○佐々木(憲)委員 私も大筋で、大臣の言うことは大変理解ができるわけでございます。
 提案者にお聞きしますけれども、完全民営化されてしまったとしたら、その後は、中身は別として、政府が行う危機対応政策、こういうものは今のように実行できるのかできないのか、そこをはっきり、できるできない、どちらか言っていただきたい。
○七条議員 お答えさせていただきます。
 完全民営化をするということ、仮定ではございますけれども、今般の改正をします原点につきましては、今、100年に一度の非常に厳しい経済状況にある、それで、危機対応のために期間を限定して政府から政投銀に対して出資を可能にする、その追加出資に伴って、財政基盤の強化を土台にして、政投銀は危機対応業務を積極的にとり行う、こういうことになっていくと思います。
 完全民営化をしてしまったときにつきましては、今度は、危機対応制度は民間金融機関の申請に基づき、いわゆる指定金融機関としての業務を実施する。危機対応も、当然のことながら同行の経営責任においてやっていかなければならないことである、当然そういうことであろうと思いますし、我々もそう考えています。
○佐々木(憲)委員 つまり、採算がとれないようなことは民間自身はやらないわけでありまして、今与謝野大臣がおっしゃったように、政策手段としての公的な金融機能、これはもうなくなるわけですよ。だから、今政府がやろうとしていることを少なくとも3年半はやるために、完全民営化というのを当面先送りしておこう、そういうことになっているわけです。
 したがって、民営化された後、仮に100年に一度がもう一回起こった、そう簡単に起こるのが100年に一度かということもありますが、別な形で同様の深刻な危機が生じた場合、政府としては政策手段を完全に失ってしまうわけですよ。3年半でもう済んで、後はすべて経済は安定ということにはなりません。
 そういう意味でいいますと、何が起こるかわからないわけですから、完全民営化なんてやめてしまった方がいいと私は思う。今のような公的手段を失う。その公的手段を大企業本位に使うか中小企業本位に使うかは、そこは議論がありますよ。しかし、手段として、ツールとして国は持たなきゃならぬ。これは必要なんですよ。だから、あなた方は民営化について、これはちょっと危ないな、したがってちょっと先送り、理由はいろいろつけましたけれども。
 そういう意味で私は、今の政投銀の政策、提案された政策は本当に大企業本位でどうにもならぬわけですけれども、民営化そのものはやるべきではないという立場でありまして、ここは与謝野大臣と私は完全に一致しているような気がするんですね、どういうわけか。
 それから、もう一つ大臣にお聞きしたいのは、資料の最後につけてあります中小企業向け貸し出しの増減ですけれども、公的機関であります政策金融公庫、下の赤いところ、ずっと下がっていますね。これが、以前国民生活金融公庫であり中小企業金融公庫であった部分なんですよ。どんどん下がっていて、民間の方は横ばいで、全体として民間は、中小企業は下がっていますが、そのほかは上がっている。
 この点について、きちっとこれは指導して、公的ツールを生かすという立場でやるべきだと私は思いますので、財務大臣の見解を最後にお聞きしたいと思います。
○田中委員長 簡潔に御答弁願います。
○与謝野財務・金融担当大臣 そのように指導します。
○佐々木(憲)委員 終わります。

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