2002年07月17日 第154回 通常国会 財務金融委員会 【176】 - 質問
与党が銀行株式取得機構の機能拡大法案を提案 事業会社保有の銀行株を公的資金で買い取り
2002年7月17日、財務金融委員会で、与党3党提出の銀行株式保有制限法一部改正案が審議され、佐々木憲昭議員が質問にたちました。与党提出の改正案は、現行の銀行株式取得機構の機能を拡大し、事業会社が保有する銀行株の買い取りもできるようにするものです。
佐々木議員は、前年秋の現行法の法案審議のなかで、政府が事業会社の保有する銀行株は対象外だと繰り返し言明していたことを指摘し、事業会社の保有株の買い取りは、「現行法の趣旨とまったく相容れない」と強調しました。
柳澤金融担当相が、「焦点のあて方を変えただけで、趣旨は同じだ」との答弁を繰り返したため、佐々木議員は、「事業会社からは買わないという法律をつくっておきながら、今回は買うという。180度違っている」と与党と柳澤大臣の姿勢を批判しました。
さらに佐々木議員は、株式から損失が出た場合、国民負担で穴埋めする仕組みとなっていることをとりあげ「株の下落に国民に責任があるのか」と国民負担を当然視する与党の姿勢を厳しくただしました。
また佐々木議員は、今年1月に発足した株式買取機構の実績について、国民負担につながる特別勘定の買い取りが事実上開きっぱなしとなっている一方、銀行業界の自己負担で買い取りを行う一般勘定の買い取り実績がゼロであることを明らかにし、機構の運営が、「国民負担に極力つながらないようにする」との政府答弁とまったく違う実態となっていることを批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
現在の提案されている法案の内容に入る前に、現行の銀行保有株式取得機構についてお聞きをしたいと思います。
昨年秋の臨時国会で与党三党の賛成で法案が成立して、ことしの1月に発足をしたわけでありますが、現在の銀行等株式保有制限法の内容をまず確認をします。これは、特別勘定の政府保証枠は2兆円ということで、銀行業界からは設立時拠出金プラス買い取り価格の8%の売却時拠出金、それから、銀行のこの拠出金額を上回る損失が出た場合に国民負担が発生する、こういうふうに仕組みを理解してよろしいかどうか、まず確認をしたいと思います。柳澤大臣に。
○柳澤金融担当大臣 大筋そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 我が党を初めとして野党各党は、銀行の保有株の買い取り、それから、その価格が下がった場合、なぜ国民に負担を求めなければならないのか、これが一番問題だったわけでありまして、株式買い取り機構の設立に野党は反対をしたわけでございます。
これに対して政府は、極力国民負担につながらないようにする方策を盛り込んでいる、こういう答弁でありました。例えば、原口総務企画局長は昨年の10月26日の当委員会で、「国民負担に極力つながらないようにするということで、まず、買い取りは可能な限り国民負担につながらない、一般勘定と申しますか、そこで、ETFとか投資信託の組成あるいは自社株取得を目的としたそういう勘定を設けている。それから、政府保証を付したセーフティーネットとしての買い取り。これには政府保証をつけておりますが、これにつきましても、買い取りの対象株式を限定する。それから、買い取りの開始には運営委員会の議決を要する」こういうふうに答弁をしていたわけですね。
柳澤大臣も私の本会議質問に対して同様の答弁をしておられますけれども、これは間違いありませんね。
○柳澤金融担当大臣 大筋間違いございません。
○佐々木(憲)委員 そこで、実績を確かめたいんですけれども、株式買い取り機構は、ことし1月30日に発足して、既に半年の活動を行っております。本当にこの答弁どおり、国民負担に極力つながらない、そういう運営が行われてきたのかどうかということであります。
まず、特別勘定の買い取り状況についてお聞きをしたいと思います。
この間、株式買い取り機構は買い取り期間としてどのような期間設定をされたか、また株式を幾ら買い取ったか、この点についてお聞きをしたいと思います。
○村田金融担当副大臣 機構でございますが、運営委員会を開きまして、その決定に基づきまして、2月15日から4月26日までの期間に特別株式買い取りを行いまして、1301億円の株式買い取りを行いました。その後に、運営委員会で新たに5月17日から11月1日までの特別株式買い取りを実施することを決定いたしまして、今買い取りの業務が行われているということでございますが、この買い取り実績につきましては、市場に不測の影響を及ぼすおそれもあるということで、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
なお、1301億円の株式買い取りを行うに当たりまして、買い取り時の拠出金として8%、104億円の拠出を受けているということでございます。
○佐々木(憲)委員 1月30日に発足して、2月の15日から4月26日まで、2カ月以上開いて買い取りを行った。その後、今度は5月になりますと、17日から買い取りを再開して11月1日までやる。事実上、この特別勘定というのは開きっ放しであります。現在も開いている。
ですから、先ほど示したように、昨年秋の法案審議の中で金融庁は、買い取りの開始には運営委員会の議決を要するから国民負担の歯どめになるんだという答弁をされていたわけですけれども、これじゃ、議決をしたって何の歯どめにもならぬじゃありませんか。
○村田金融担当副大臣 これはもとより、専門家が集まりましてその買い取り期間を決めているものでございまして、そういう意味では、買い取り期間についても慎重な考察がなされている、こういうふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 慎重に考察をして開きっ放し、これはもう全然いいかげんだと思うんですね。
大体、運営委員会が発表した買い取り期間決定の発表文書というのがありまして、決定の理由としてこういうことを挙げているんです。会員の株式処分ニーズが引き続き高いこと、株式相場の本格的な回復の見きわめにはなお時間を要すると考えられること、こういう二点の理由を挙げておりますが、この議決が国民負担の歯どめになる、そういう発想は全くありませんし、現実に歯どめになっていないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○村田金融担当副大臣 国民負担の歯どめということももちろんあるわけでございますけれども、もとより、ニーズとか市場への影響とか、そういうことを予想して、また、現にある状態を認識してそうした期間を決定する、こういうふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 結局、銀行のニーズにこたえた、こういうことですね。これでは全く歯どめにも何にもならないわけで、銀行が、買ってほしい、はい、わかりました、こういう関係になっているわけですね。しかも、これは特別勘定で1301億円ということですね。
では、一般勘定では幾ら買われましたか。
○村田金融担当副大臣 一般勘定の実績はございません。
○佐々木(憲)委員 おかしいじゃありませんか。何で国民負担につながる特別勘定だけを使うんですか。柳澤大臣は、一般勘定が中心になると言ったんじゃありませんか。
柳澤大臣は、例えば昨年11月8日、参議院財政金融委員会で、「特別勘定よりも一般勘定の方が順番からいっても先に出てくる話でございまして、一般勘定を我々は大いに活用したい」「これを主に考えていきたい」こう答弁されているわけですね。
それから、「保有制限というものを課そう、そして受け皿がその場合には必要だけれども、しかしそれはできる限り公的支援が必要でない一般勘定というような形で、ETFとかそういうものを使う形にしようと。しかし、それでもなお、そう言ってはなんですけれども、いろんな事情でうまく売却ができなかった銀行の最後のよりどころということも考えておかなければならないという形で」公的資金を用意した、こういうふうに答えているんですね。
国民負担につながる特別勘定は最後の最後の手段である、最後のよりどころだ、最初に使うのは一般勘定だと。全く逆じゃないですか。最後のよりどころが最初のよりどころになっているんじゃないですか。これは全く逆立ちしていると思いませんか、大臣。大臣の答弁と違うんじゃありませんか。
○柳澤金融担当大臣 銀行の保有株をどのように減額していくかということを当時考えておったわけですが、率直に言って、あの当時の新聞とかその他の報道でも、また、国会の論議でも多分お尋ねいただいて、柳澤大臣は本当は反対だったんだろう、こういうような話もあったように記憶しています。
したがって、私はどういうことが――しかし、買い取り機構というものでやるということはもう決定されたわけです。そこで、何を考えたかといえば、これはETF等を使うということを考えるしかない、こういうことで、企画担当の事務方にそのことを命じて、現在のスキームができ上がっているということです。
ただ、正直言って、このETFを活用してやるというのはかなり実はテクニカルなことでございまして、今の私もこの点、若干不満、かなり不満で、実績がないのはけしからぬということを事務方にも言っておりますが、事務方は今その取り組み方を検討しているんでという話になっているのが現状でございます。
いずれにせよ、私は、ETFを現実に銀行の保有株でやったのは、実はこの買い取り機構と独立に東京三菱銀行がやったということは新聞報道等で承知しておりますけれども、こういうことにもっともっと積極的に取り組んでもらいたい、こういうふうに考えておりまして、私としても今後督励してまいりたい、このように申し上げます。
○佐々木(憲)委員 つまり、大臣の御答弁とは違う実態になっているということを今事実上お認めになったわけでありますが、結局、公的資金で、つまり国民の税金で負担をするという方向ばかりが強まっているわけですよ、結果として。そういうことは最後の手段だと言いながら、最初にそれをやっているわけですよ。答弁と違うんです、現実が。そこのところを明確にしておきたいと思うんです。
それからもう一つは、提案者にお聞きをします。
銀行等保有株式制限法は、昨年秋の国会に政府が提出したわけですね、先ほども出ましたが。閣法なんですね。今回、与党三党の衆法で改正する。その根拠は、どうも先ほどの議論を聞いてもよくわからない。もう一度答えてください。
○相沢議員 確かに、昨年提出して成立した現行法は閣法になっておりますが、その過程におきましては、当然我々与党とも十分な連絡をとりまして、最終的には閣法という形で提出をしたわけであります。
その後、約半年になりますが、株式市場の動向、あるいはまた銀行の経営状況等を判断してまいりますと、今の法律によりますところの、銀行が事法の株を売った場合に、それを、言うなればその一部を引き受けるという形の機構になっていますけれども、それと持ち合い解消という形で、事法、事業法人が銀行株を売った場合には、この受け皿がない。そこで、やはり均衡をとって、その場合も機構で買えるようにした方がいいじゃないか、こういうことを、主としてこれは党側の議論から始まったという経緯がございます。
そういうことでありますので、今回の改正については、我々与党の議員が提案者となって、議員立法で行った方が妥当だろうというふうに判断したわけであります。
○佐々木(憲)委員 先ほども同じような答弁ですが、全く説明になっていないと思いますね。そんなことは最初から、昨年の議論の中でそういう議論もあって、バランスとか何とか、バランスの議論というのは成り立たないと思いますが、しかしそういう議論もあって、それは否定されたわけですよ。否定されて、銀行の保有株式の買い取りをやるということだけが決まったわけですね。我々は反対だけれども、しかしそれを決めたわけですよ。そのときには、事業会社保有の銀行株を買うということはやらないというふうに結論が出ていたわけですね。それを今度は覆すわけですね。
だから、結局、一般紙にも書かれていますけれども、成立したばかりの法律を改正する話は政府側から持ち出しにくいと。そういう思惑があったが、自民党の方から出そうかということになった、ただそれだけの話だ。しかし、それは全く理屈が通らない話でありまして、説明には全然なっていないと思いますね、今の答弁では。
柳澤大臣にお聞きしますが、現行法の立法趣旨で、現行法では、株式買い取り機構の買い取り対象から事業会社が保有する株式を除外しているわけですね。なぜ対象外としたのか、その理由をもう一度ここで説明していただきたいと思います。
○柳澤金融担当大臣 これは御質問になられた前の委員の先生にもるる御説明させていただいておりますが、要は、銀行に対する株式の保有制限を課するということを実施した場合に、やはりそれを円滑に運ぶためにはある種のシェルターが必要である、こういう考え方で一貫させた結果、そのようになっているということでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、一貫した考え方とおっしゃるのは、銀行が保有している株を制限するというものであるので、それに対応する法律として、その銀行保有の株を買うんだということであって、事業法人が持っているものを買うというのはこの法律の趣旨からは外れているから、その趣旨から外れているから対象にしていないんだ、こういうことですね、今の答弁では。
これはもう何度も答弁をされているわけでありまして、ところが、今回のこの与党の提出法案では、スキームの中に入らない、あるいは想定されていない、そういう事業会社保有の銀行株を加える。全く否定されたものをいわば復活させているということになっているわけです。
この与党提案の法案というのは、現行の法案の考え方、趣旨とは相入れないものだというふうに思いますが、大臣はいかがでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 これもまた先ほど御答弁したことの繰り返しになりますが、今回の改正法の第1条の書きっぷりを見ていただきますと非常に明瞭であるというふうに思います。
要するに、この法律の目的は、施策としては何を実際やるんだというと、「銀行等による株式の処分の円滑を図り」、つまり株式の処分の円滑を図るということ。それはなぜか。それは制限の実施をするためである、こういうふうに書いてあるわけでございます。
今回は、銀行等の株式の処分の円滑化を図るわけですが、その株式というのは、銀行以外のものが持っている株式のうち、銀行と相互にその発行する株式を保有する関係を解消するものである場合、つまり持ち合いの場合というふうに限定しているわけです。
よく考えてみますと、そもそも、銀行に株式保有制限を課さなきゃならないほど銀行が巨額の株式を持つに至った実態的な背景というのは、やはり持ち合いなんです。そこで、今回は、その持ち合いの解消というものを円滑化するというところに焦点を当てて、やはりそれを円滑に行うためには、その相方、つまり銀行の持ち合いとそのカウンターパートになっている部分の株式の処分の円滑も図るということが、全体としてこの法律の趣旨を実現するという意味でも十分意義のあることである、こういう判断にお立ちになっているというふうに私は受け取っているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 半年前の答弁と全然違うじゃないですか。何も変化はなかったはずです。
つまり、持ち合いという状況は半年前もありましたし、それを解消するといいながら、どういう答弁をされていたかというと、柳澤大臣は10月31日のこの委員会で、「持ち合い解消ということが実態としてあることは否定しませんけれども、すべからく今度の場合には、銀行の株式保有の制限というところに焦点を当てて、これをどう円滑に実現するかということでございますから、事業会社の持っている銀行株については、これがスキームの中に入らないというのは当然の帰結であった」と。当然の帰結として事業会社はスキームの中に入らない、持ち合い解消はもちろんやるんだけれども。
この答弁と今の答弁では180度違うじゃないですか。入らないと言ったのを今度は入っても当然だ、全然違うんじゃないですか。
○柳澤金融担当大臣 佐々木先生も今読んでくださったくだりですけれども、すべからく今度の場合には銀行の株式保有の制限というところに焦点を当ててと、私わざわざ言っているんです。今度は、この銀行の株式保有のうち、持ち合いの解消ということに焦点を当てているんです。ですからこれは、それを円滑化するという意味では非常に重要なこの制度のある種の補完である、こういうお考えに多分立っていらっしゃるんだろうと私は受けとめているのでございます。
○佐々木(憲)委員 全然説明になっていないですよ。持ち合い解消ということは実態としてあることは否定しませんけれどもと、今の話の前のところでおっしゃっているんですから。持ち合い解消はあるが、しかしやるのは銀行保有の株式の買い取りである、事業会社は対象としておりません、スキームの中には入っておりませんと言ったんですよ。それが半年前のやつですね。今回は、スキームの中に入れようと。何でこれが一貫するんですか。
入らないというのが基本思想で、持ち合い解消というのはあるが、しかしそれは、銀行の株式保有の面に限って買い取りはやるんだ、そういう答弁だったのに、与党の出てきたのは、全く180度違うものが出てきた。出てきたら今度は与党のそれを合理化する立場に立つ。全然入らないと言ったのが入るということになるわけですから、何の一貫性もないじゃないですか。全然だめですよ、そんな答弁は。
○柳澤金融担当大臣 重ねて御答弁申し上げますが、よく読んでいただきたいと思います。
すべからく今度の場合はかくかくしかじかのところに焦点を当ててという前提を私置いてお話ししているんです。ですから、まさに今回は別のところに焦点を当てれば別のことが付加されるということは、これは論理の当然の帰結でございます。趣旨は同じなんです。
○佐々木(憲)委員 全然だめですよ、それは。答弁になっていないですよ、そんなの。
だって、入らないという法律をつくっておきながら、入れないんだとわざわざ説明しておきながら……(柳澤国務大臣「今回は」と呼ぶ)今回だって同じ法律じゃないですか。この同じ法律じゃないですか。持ち合い解消も同じだし、全然状況は変わっていないにもかかわらず、中身を180度変える。全然違うんじゃないですか、この答弁。そんなものが何が一貫しているんですか。説明になっていない。
○柳澤金融担当大臣 ですから、もうたびたびで大変恐縮には存じますけれども、今度の場合にはここに焦点を当てて考えておりますのでこのスキームの中には入らないという議論をしているんです。ですから、今度は別のところに焦点を当てれば、今度は入るという結論になるスキームも十分考え得るということは、この段階でもほぼ明確に、いわば裏の議論としてはあり得るという話を私はしておるというふうに、私の発言でございますけれども、そういうふうに解していただくということは十分可能ではないでしょうか、こういうことを申し上げているわけでございます。(佐々木(憲)委員「それは全然だめだよ、そんな答弁は」と呼ぶ)
○坂本委員長 佐々木君。――佐々木君、時間がたっていますよ。
○佐々木(憲)委員 私が質問しているのは、この法案の趣旨について言っているわけです。
柳澤大臣が法案の説明をされたときに、持ち合い解消というのはもちろんあるけれども、しかし、法律の対象となるのは銀行株の制限である、したがって、それを、銀行が持っている株を買い上げる、ここに限定しているのであって、ですから、事業会社の株の買い上げというのは対象外ですと。スキームの外です、想定外ですというふうに言っていたんですよ。それが趣旨なんですから。それと全く違うものを持ってきて、事業会社の株を買うと。買わないと言っていたのに今度は買いますというものを、なぜそこで一貫した形になるんですか。一貫していないじゃないですか。その説明は、一貫しているという説明は成り立たないと思いますね。
何度同じ答弁を聞いても、これ、このまま進まないですよ。同じ答弁じゃだめだよ。
○柳澤金融担当大臣 これは、言葉の問題もさることなんですが、言葉の問題でもいいですよ、言葉の問題、幾らでも議論させていただきますけれども、要するに、私は、焦点をここに当てて今度法律のスキームをつくらせていただきますということを申し上げたのです。
ところが、今度は少し焦点をずらしている。私、最初の答弁で申し上げているんですよ。そうじゃなくて、銀行の保有株式の制限をするほどに銀行はなぜこの株式を保有するに至ったかというと、その大宗は持ち合いという動機によるものである。ですから、その持ち合いの解消というものに焦点を当てたスキームということも付加的に十分成り立ち得ると私は考えます。
佐々木先生、それはもう私は前提を加えてこの命題を話させていただいているわけでありますから、その前提を少しずらすことによって違う結論を導くということも十分可能なんです。そんなことは、本当に、もうこれ以上説明するというのは非常に佐々木委員に失礼になるかと思いますよ、本当のことを言って。私はそう思います。
○坂本委員長 佐々木君。――柳澤金融担当大臣。
○柳澤金融担当大臣 問題があります。問題がここにあるとします。そのときに、ここに焦点を当ててどういう措置をとるか、少しずれたここに焦点を当てたらどういうことを付加しなきゃならないか、こんなことは私は当たり前のことだと思いますよ。
○佐々木(憲)委員 全然違いますよ。(柳澤国務大臣「問題は同じ問題なんです」と呼ぶ)問題はあります、同じ問題が。その問題に対して、全体として検討して、いろいろな意見があって検討した結果、最終的に選んだのが銀行保有株の買い取りなんですよ。ほかの事業会社の株は買い取らない、対象外、全体の問題を検討した結果そういう結論を出したのじゃないですか。そういう選択をしたのでしょう、そのとき。そういう選択をして、今度出てきたのは全く違うものじゃないですか。
つまり、否定したものなんですよ。否定したことが今度出てきているということなんですよ。買わないと言ったものを買うという結論、全然違うものを持ってきている。何でそれが一貫しているんですか。どう考えてもこれは一貫したものではないですよ。
○相沢議員 改正案を提出しているのは我々でございますので。柳澤大臣に、おまえ、なぜ改正案をあれしているんだ、こういうことを言って余り責めていただいてもいかがかという気もしまして立ちましたのですが。
やはり、世の中いろいろと動きますし……(発言する者あり)いやいや、それはやはり動きますですよ。それは世の中、日進月歩ということもあります。去年の段階では、確かに、銀行の保有株式を減らさにゃならぬと。繰り返しになって恐縮ですけれども、アメリカじゃ、もう銀行が株を全然持たないようにしよう、グラス・スティーガル法がありました。だけれども、そこまでいかないけれども、せめて自己資本の範囲内に抑えようじゃないかと。
そうなると、相当、当時11兆と言いました。放出をする、その受け皿をつくる、そういうようなことで制度がスタートしたわけですが、その際にも、記録にもありますけれども、やはり同時に事法が銀行の株も買うということも当然考えられるじゃないか、持ち合いですから。ですから、そういうことでやったらどうかという意見もありました。正直言いまして、我々は、一緒にやったらどうかという意見も相当強くあったのです。
しかし、やはり事は銀行の持ち株を減らすということが第一義であるから、それに対応するところの受け皿、シェルターをつくるということでもって、とにかくスタートをしたらどうだろうということでいったわけです。ですから、全く、その反対の事法が今度は銀行株を買うということは考えられもしないというような状態では、少なくとも我々はなかったのであります。
ですから、ちょっと待ってください、そういうことで、やはりこの不均衡になっている状態を解消するということで進めた方が、法の本来の目的にも沿っていくのじゃないかということでもって、今度の改正案を出させていただいたわけであります。
○佐々木(憲)委員 相沢委員の提案されているこの内容というのは、昨年、法案の提案のときに、検討された上で否定された考え方なんです。否定された考え方を復活させたのです、ここで。それを、政府がやると格好悪いから、与党がやろうということになっているんですよ。全く私は、つじつまの合わないことをこういう形で出してくるというのは、やり方として非常に問題があると思います。
では、ちょっと角度を変えますが、相沢委員にお尋ねしますけれども、事業会社が保有している銀行株が落ちる、値段が下がる。今回のスキームでは、最終的にそれが一定限度穴があいたら政府保証で国民が負担しなきゃならぬということですね。事業会社の株の値下がりの責任を、それは国民にその責任があるというふうにお考えでしょうか、それとも国民には責任はないとお考えでしょうか。
○相沢議員 それは最初に制度をつくったときに十分検討したことでありまして、銀行の持っている事法の株を買う、それは、買った段階から両方考えられるわけですね。上がることもあるし、下がることもある。(佐々木(憲)委員「いや、事業会社の保有株」と呼ぶ)だから、事業会社の保有株も同じことですね。事業会社の持っている銀行株についても、買った時点から上がることもある、下がることもある。
ですから、そこは同じだろうと思うのですが、要するに、上がっても下がっても、そこはバランスをとって考えておるんです。ですから……(佐々木(憲)委員「いやいや、そういうことを聞いているんじゃない。国民に責任があるのかと聞いている」と呼ぶ)それは法律でもって、最終的に、とにかく拠出金を、売却時拠出金も食いつぶし、当初拠出金も食いつぶし、そして、それでも足らぬときには、それは国が保証していますから、国の責任でそれを補てんするということになっております。
○佐々木(憲)委員 事業会社が保有している銀行株の値下がりに、国民は責任があるのかと聞いているんです。
○相沢議員 それは、言いましたとおり、拠出金を食いつぶして、なおかつ不足した場合は、それは国が保証していますから、責任になる。
同時に、そこを申し上げないといけませんけれども、仮にもうかった場合も、全部それを銀行に返すんじゃないので、とにかく、当初に出した拠出金、それから売却時の拠出金、その金額を超えて、なおかつもうかったら、それはもう銀行に上げません、国でいただきますと。そこでそのバランスをとっているわけですから。
○佐々木(憲)委員 事業会社は拠出金を出すんですか。どうなんですか。
○相沢議員 事業会社は拠出金を出しません。
○佐々木(憲)委員 今の説明と違うじゃないですか、拠出金を食いつぶしてなんて。それは銀行保有株の話でしょう。
○相沢議員 それはもちろん、銀行が保有している事法の株についての話です。
○佐々木(憲)委員 私が聞いているのは事業会社の話ですよ。質問の趣旨をよく聞いていただきたいし、提案している法案の中身を正確に認識して答弁していただきたい。こんないいかげんな答弁じゃだめですよ、そんなのは。
事業会社の持っている銀行株が値下がりする、それは国民に責任があるんですかと聞いているんです。きちっと答えてください。
○相沢議員 それは、事業会社が買った、事業会社の持っている銀行株を機構が取得した際に、それは値上がりすることもあるし、値下がりすることもあります。ですから、それは……(佐々木(憲)委員「そんなこと聞いていない」と呼ぶ)いやいや、それは、ですから、銀行が出している拠出金との関連において考えればいいことなんです。
○佐々木(憲)委員 私が聞いていることに答えていただいておりません。きちっと答えてください。
○相沢議員 だから、申し上げますと、事法が持っている銀行株が値下がりをした場合にどうかとおっしゃったから、それは、まずやはり銀行が出した拠出金を食うわけなんですから、最終……(佐々木(憲)委員「私が質問している趣旨と違うじゃないですか、答弁が」と呼ぶ)すぐ国の責任じゃないんです。
○佐々木(憲)委員 委員長、ちょっと正確に答弁させてください。私が聞いていることに対して直接答えてくれるように言ってください。
私が聞いているのは、極めて当たり前の単純な話なんですよ。事業会社が持っている銀行株が値下がりして損失が出る、その損失に国民は責任があるんですかと聞いているんですよ。あるんですか、ないんですか。
○相沢議員 ですから、それは、お答えしているように、銀行が出している拠出金、それは当初とそれから売却時とありますが、その拠出金の中で処理される、第一義的には。(佐々木(憲)委員「責任があるのかどうかと聞いているんです、国民に」と呼ぶ)ですから、それを超えた場合には責任がありますよ。
○佐々木(憲)委員 銀行の株が落ちたことに、なぜ国民の責任があるんですか。銀行の株が落ちる、事業会社が持っている銀行株の値下がりが起こる、どうしてそれが国民の責任になるんですか。はっきり答えてくださいよ。何で国民の責任なんですか、それが。
○相沢議員 それは、何遍も申し上げますけれども、要するに、銀行の持っている事法の株を取得したときに、さっき申し上げましたように、プラスになってもマイナスになっても、そのときには、そういうような責任の分担をしているわけです。だから、もうかった場合でも、全部は国がもらわないということになっているわけでしょう。
ですから、今、事法の持っている銀行の株を買った場合も、それじゃ、それが値下がりしたら、それはすぐ国の負担になるというものじゃないので、拠出金の中で、ここを食っていく、それを超えたらそれは国の責任になる。同時に、事法から買った銀行株が値上がりして、それでそれが倍を超したら、それは国の、来るんですから、そこはバランスをとっているわけです。
○佐々木(憲)委員 委員長、答えていないです。だめだよ、これ。答えていないんですよ、私の質問に。イエスかノーかですよ、答えは。
○坂本委員長 直接的に、もっとわかりやすく。
○佐々木(憲)委員 国民が何で責任を負わなきゃならぬのか、国民に責任はあるのかと聞いているんですよ。
○相沢議員 何遍も同じことを申し上げますけれども……(佐々木(憲)委員「同じことじゃだめだよ」と呼ぶ)同じことを申し上げますけれども、それは当初の閣法においてもそういう形になっているということを御認識いただきたい。(佐々木(憲)委員「答えていないよ。だめだ、これ。答えていないよ」と呼ぶ)
○坂本委員長 もう時間でしょう。最後の質問。
○佐々木(憲)委員 全然質問に答えていないんですよ。私はまだこの倍ぐらい質問を用意していますけれども、終わっていないんですよ、まだ入り口なんです、これ。一番基本的なことを聞いているんですよ。
今回の法案の提案というのは、事業会社が保有している株を買い取る、銀行株を買い取る、もしそれが、値上がりすることもあれば値下がりすることもある、値下がりするときには国民が負担しなければならない。銀行株の値下がりに国民に責任があるのか。そういう単純な話を聞いているのに、わけのわからぬ仕組みの、仕組みなんていうのはわかっていますよ、そんなこと言わなくたって。そういうことにさえ答えられない、まともに。これはもう審議、私はこれだけじゃとても済まない。あと2日や3日はやらないと、これは本当に内容がきちっと解明できないということを申し上げまして、終わります。