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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 中小企業融資, ペイオフ解禁)

2002年11月19日 第155回 臨時国会 財務金融委員会 【185】 - 質問

大銀行にも公的資金の道 「地域金融合併促進法」で可能に

 2002年11月19日、佐々木憲昭議員は、11月15日に引き続いて、「地域金融機関組織再編特別措置法案」にもとづく公的資金投入策の問題点を追及し、公的資金投入の対象から大手銀行が排除されておらず、合併にともない自己資本比率が低下した大手銀行にも公的資金が投入できる仕組みになっていることを明らかにしました。
 この法案には、合併にともなう金融機関の自己資本比率の低下を回復するために、公的資金で金融機関の資本増強をおこなう仕組みが盛り込まれています。

 佐々木議員は、「(たとえば)自己資本比率が15%と12%と高い水準の金融機関が合併するさいにも(15%に合わせて)公的資金を投入するのか」と質問。これに対し、竹中平蔵金融担当相は、「合併前の自己資本比率を上限として、必要性、回収可能性を考慮して決定される。制度上、資本増強の可能性を排除するものでない」と答弁しました。
 さらに佐々木議員が、公的資金の注入の対象となる銀行について「地域金融機関に限定されるのか。それとも大手銀行の合併も対象になるのか」とただしたところ、金融庁の藤原総務企画局長は、「対象金融機関から大手の銀行を排除しているわけではない」と答弁しました。佐々木議員は「体力がある金融機関に税金を投入するというのは、まったくの税金の無駄遣いだ」と批判しました。
 また佐々木議員は、政府が今回の法案によって、中小企業が資金を回るようになるかのように説明していることをとらえ、資本注入を受ける金融機関が金融庁に提出する「経営基盤強化計画」のなかに、中小企業向け融資に関する規定はないことを指摘。
 藤原総務企画局長が、「経営基盤強化計画の認定に当たってチェックする」と答弁したため、佐々木議員は、「あくまで認定段階の話だ」と強調し、「経営基盤強化計画」に中小企業向け貸し出しの計画を盛り込み、履行状況をチェックできるようにしておかなければ、投入した公的資金が中小企業貸し出しに向かう保障がないと述べました。

 地域金融機関の合併を促進する「地域金融機関組織再編特別措置法案」、ペイオフ解禁を2年延期する預金保険法等一部改正案は、与党などの賛成多数で可決されました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 再編促進特別措置法についてお聞きをしたいと思います。
 この法案では、金融機関の合併を促進するということのためにさまざまな手だてを盛り込んでいるわけであります。その一つが、合併で自己資本比率が低下をした場合、公的資金を投入するという仕組みがあります。
 政府は、地域金融機関というのは自己資本比率4%以上ということを求めておられますけれども、例えば、自己資本が12%あるいは15%、こういうことになりますと、地域金融機関としては相当高い自己資本比率という部類に入ると思うのですけれども、大体そんな感じでよろしいでしょうか。
○竹中金融担当大臣 この法律的枠組みのねらいというのは、今委員既にお話しくださいましたけれども、現実に金融機関からヒアリングをいたしますと、自己資本比率が健全な水準にある銀行が合併等を行う場合においては、それよりも低いところと一緒になってその低下が認められるような場合には、やはり若干ちゅうちょする、一つの障壁になる。
 このため、この法案では、金融機関から申請があった場合には、その自己資本比率を合併前の水準に回復させるために必要な限度において、預金保険機構が資本増強を行うことができるという形にしているわけであります。
 この資本増強の申請が行われるかどうかというのは、これは個々の経営判断によるために一概には言えませんけれども、資本増強の額については、合併の前の自己資本比率を上限として、これが本当に必要であるか、ないしはこれは回収可能性も考慮して決定されることになるというふうに思います。制度上は、資本増強の可能性を排除する必要はないんだというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 お聞きをしたのは、12%あるいは15%というような水準というのは、地域金融機関としては相当高い水準にあるというふうに私は思うので、その認識をお聞きしたんですが、当然そうだろうというふうに思うんです。
 それで、その場合は、これは数字だけから見ますと、いわゆる健全性という点では非常に高いものだというふうに政府の基準では判断されると思うんですね。しかし、12%、15%の二つの金融機関が合併をするということになりますと、それでも公的資金を使わなければならない、自動的にこれは使うということに当然なるわけですね。そういう場合でも、これは資本注入をやるわけですか。
○竹中金融担当大臣 今申し上げましたように、資本増強の申請が行われるかどうか、これは個々の経営判断でありますから、一概には言えないということになります。資本増強の額については、合併等の前の自己資本比率を上限として、今申し上げたように、申請が行われるか、それと必要性、回収可能性を考慮して決定されるわけでありますから、入れることになるかどうかということになりますと、これはケース・バイ・ケースであるということになろうかと思います。
 ただし、私が申し上げましたのは、制度上は資本増強の可能性を排除する必要はないだろうというふうに考えているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 そうすると、制度上は公的資金の投入というのがあり得ると。しかし、そういう個々のケースによって、ない場合もあるということなんでしょうか。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) まず、先ほど御質問のございました12%か15%、これが高いのか低いのかというのをちょっとお答え申し上げますが、14年3月期で見ますと、大体、地方銀行の自己資本比率、これは単体ベースですが、平均で約10%弱、第二地銀も8%強、それから信用金庫で10%強、信用組合で9%強という状況でございまして、比較的高いところは多うございますが、こういう状況でございます。
 それから次の、じゃ、合併した場合、必ず投入するのかというのは、先ほど来大臣から御答弁申し上げていますように、それはそこまでは、申請してきた場合我々として排除するわけではないわけでございますが、まず、そういう高いところが申請してくるかどうかというのはよくわかりませんが、仮に申請してきた場合は、やはり幾ら高い金融機関といいましても、それが若干低い金融機関と合併することが、自己資本比率が下がるということが風評につながったりして合併を阻害する要因になるというふうに、我々はいろいろの金融機関からヒアリングした際にそういうお話がございましたので、それが障壁になっているのであれば、そういう可能性は排除しない方がよろしいというふうに私ども今考えております。
○佐々木(憲)委員 まあしかし、かなり、自己資本比率が15%などというところになりますと相当高いわけでありまして、それが合併でちょっと落ちたからといって国民の税金を使うというのは、これはなかなか国民には納得ができないのではないかと思います。
 もう一つお聞きしますけれども、この対象というのは地域金融機関というところに限定されるのか、それとも、例えば大手の銀行が合併をする、自己資本比率の差のある二つの銀行が合併する、そういう場合もこれは対象になるということでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の法律におきましては、金融機関ということにしておりまして、対象金融機関から大手の銀行を排除しているわけではございません。これは、大手といいましても、例えば地域の銀行に特化するというような選択とか、あるいは地域の金融機関と合併するというようなさまざまな選択の余地がありますので、これはあえて排除しておらないわけです。
 ただ、我々、今回の法の目的としております財務基盤の強化でありますとか健全性の確保とか、そういうことを考えます場合、合併によってより効果が達成されますのは、むしろ地域の金融機関というふうに認識しております。
 したがいまして、今般お願いいたしております自己資本の増強策の積算におきましても、大手の金融機関ということはカウントしておりませんで、専ら主眼は地域の金融機関の合併ということを念頭に置いております。
○佐々木(憲)委員 そうなりますと、これは国民の税金を使う方法をたくさん、今回、政府の金融再生プラン、それから今回の法案の提起、これを合わせますと三つのルートがある。一つは、金融システム的な危機が進行するという場合に注入できる。それからもう一つは、それ以外の枠組みを考えて検討している。それで第三は、合併の際に、大手も含めて、自己資本比率の格差がある銀行同士が合併したら税金が使われる。これは、かなり野方図な税金の使い方ではないでしょうかね。
 これは、健全な銀行同士の合併になぜこういう公的資金を使う必要があるのか。金融機関というのは、どのような形で経営を強化していくかというのはこれは自己責任に基づいた経営判断の問題でありまして、対象となる金融機関の自己資本比率に上限がない、それから対象となる金融機関の規模にも上限がない、これは、体力のある金融機関に税金を投入するというわけでありまして、全く税金のむだ遣いだということを指摘しておきたいと思うんです。
 それでは、仮に、投入した資金が中小企業の融資に回る保証はあるのかという点ですが、資本注入を受ける金融機関というのは、経営基盤強化計画を提出するということになっております。しかし、法案の経営基盤強化計画の記載事項を見ましても、「経営基盤強化による収益性の向上の程度」という項目はありますが、中小企業向け融資に関する規定というのはありますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の法律におきましては、合併等の組織再編というのが経営基盤強化を通じまして融資の円滑化を可能にするものであって、健全な中小企業融資の拡大に資するものというふうに考えております。
 ただ、本案におきましては、その政策支援の前提としまして、先ほど先生がおっしゃいました金融機関等が提出いたします経営基盤強化計画、この認定に当たりまして、金融の円滑が阻害されないということを要件としまして、融資体制等については、計画認定に当たりましてチェックをしていきたいというふうに考えております。
 それとあわせまして、先ほどから申し上げておりますように、今回の施策は、主として地域の金融機関のことを念頭に置いておりますので、地域の金融機関、すなわちその融資対象は中小企業ということでございますので、そういうところの融資が円滑化されるということに資するものというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 阻害されないという程度の規定があるわけでありますが、しかしそれも、計画を認定する要件なんですね。これはあくまでも認定段階の話でありまして、計画の中に中小企業向け貸し出しをふやすというものは盛り込まれていないわけであります。
 ですから、中小企業向け貸し出しについては、本来こういう計画の中に盛り込んでその履行状況をチェックするということをやっていかないと、税金は投入されたわ、しかし中小企業向けの全体の貸し出しは減ってしまう、こういうことがあってはならないと思うんですね。
 竹中大臣にお伺いしますが、やはり中小企業向け貸し出しの中身もこの計画の一環としてきちっと履行状況を判断する、指導する、あるいは監視する、こういうことが大事だと思うんですが、いかがでしょう。
○竹中金融担当大臣 委員のお尋ねは、中小企業向け貸し出しのいわば数値目標みたいなものをつくるべきではないかということなのだと思います。
 そもそも今回は、地域金融機関を主として念頭に置いているわけでありますから、現実問題としてかなりのウエートが中小企業向け貸し出しであるというのが現状であろうかと思います。
 加えて、これは自主的な合併等に係る支援措置でありますから、経営の自主性をやはりできるだけ尊重しなければいけない。そうすることによって合併等経営基盤の強化を図るわけでありますから、貸し出しの金額に関する数値目標まで徴求するということは考えてはおりません。
 しかしながら、融資体制等については、先ほども言いましたように、計画認定に当たりチェックをすることとしていますし、また、中小企業貸し出し等資金供給の円滑を図ることの重要性については、あらゆる機会を通じて金融機関に対して努力を要請しているところでありますので、この法案の運用においても同じように十分留意をしてまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 塩川大臣にお伺いしますが、前回のこの委員会で大臣がおっしゃっていた、金融機関の合併の一つの基準として、腰だめの数字とおっしゃいましたが、預金量で、この地域金融機関、特に信金、信組の場合には8千億円、それから地銀は1兆円という一つの基準を示されまして、あくまでも金融機関の合併が必要であるということをおっしゃったわけです。
 しかし、先週金曜日、15日の参考人質疑で各協会の代表に私お伺いをいたしました。そうしましたら、信用組合の田附会長は、この基準というのを聞いてびっくりした、量的なものでミニマムラインを設けるのは極めて問題があるというふうに言っておられましたし、信金の長野会長は、金融機関の適正規模は地域によって違う、1千億円でもその地域で役割を果たしている金融機関もあるというふうに述べておられます。また、第二地銀の森本会長も、規模の大小で物差しを当てるということについて、個人の意見ですが余り賛成できないと。それから地銀の平澤会長は、規模が大きくなると効率性がよくなるという面もありますが、それによって地元と密着して相手の懐まで入って金融をやっていく面が失われる、こういうふうに述べているんですね。
 実際に地域金融を担当している方々は、塩川大臣の考えと全く違うわけであります。これはやはり現場感覚と塩川大臣はかなりずれているということになると思いますが、いかがでしょうか。
○塩川財務大臣 それは聞く相手によってそうなりますよ。当然ですよ。だって、自分で経営している人が、いや私は小さいから合併を望みますとか、そんなばかなこと言いませんわな。しかし、佐々木さんは金融を業務でやったことないでしょう。私はそれをやってきたんです。地域金融をやってきましたからね、よくわかります。金融機関ほど生産性というもののきついところはないんです。つまり、従業員一人当たりの預金量、動かし得る生産性ですね、量というもの、これは決定的な条件を持ちます。
 それはなぜか。これは、現在金融機関が不安状態になっておりますけれども、この中の一つの原因にオーバーバンキングがありますよ。このオーバーバンキングを解消しないと、ペイオフの問題も解決しないんです。そうなるとするならば、金融機関はある程度体力があるものにしなきゃだめです。都市銀行の従業員一人当たりの預金扱い量は22億ぐらいだと思います。私、ツボカンでちょっと当てました。信用金庫ですと7億です。これじゃ勝負にならないんです。信用組合では5億ないんです。農協は3億ぐらいです。こういうのを、やはり金融機関は自由競争でやっているんですから、そこらをよく考えていただいたら、適正規模が必要だということを考えていただけると。一番賢い佐々木さんなんか、こんなことわかり切った話じゃないですか。
○佐々木(憲)委員 塩川大臣、大分、大きいことがよいことだという古い考えにかなりとらわれていると思うんですね。現場の実際に金融をやっている方が、やはり規模よりも内容だと。特に学者の研究、私、きょう時間がないので紹介する時間ありませんが、学者自身も、地域密着で、狭い地域で密度の高い金融をやっている、そういう金融機関が安定しているというふうに実証的に研究もされていますので、どうかそういう点も、よく現場の声を聞いていただきたいというのを最後に申し上げたいと思います。

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